そして第3次スパロボZ発表来ましたね
時獄篇ということでαシリーズに通じる絶望具合が感じられます
だがマブラヴは出ません
個人的にはあとGガンが来て欲しかったです
今後のPVに期待でしょうか
国連軍横浜基地 地下19F 通路
地上から地下に戻った俺は90番格納庫に立ち寄り、デルタプラスから忘れ物を回収して香月博士の部屋へ向かっていた。
――いたのだが。
「……なんか、誰かに見られてる気がするんだよなぁ」
通ってきた通路を振り返るも、誰もいないようだ。このフロアに来れる人間は限られるため、必然的に出入りする人は絞られる。
俺の後をつける可能性が一番高いのは霞だが、あいつは隠れるのに致命的な欠陥を抱えているから除外。
武はまだ地上にいるはずだし、あいつならコソコソなんてせず堂々とやってくるのでこれも除外。
香月博士? 論外だ。あの人がコソコソ人を付け回す姿が想像できない。
未だ消えぬ違和感を探すため、もう一度通路を確認する。
少し離れた資料室の前に大きな段ボール箱があるが、それ以外に隠れられる場所は見当たらない。
「……気のせいか」
首を傾げつつ、通路の別れ道で博士の部屋に通じるルートを選択する。
――待て、段 ボ ー ル だ と ?
反射的に振り返ると、資料室の前にあった段ボールが――1メートルにも満たないが――確実に動いていた。
この世界にあの蛇は存在しない。だからあれを知っててスニーキングツールに使う奴は存在しないはずだ。
だがもし自力でその有用性に気づいた者がいるとすれば、使い手はこのフロアに来れる奴より少ない。
そして少ないが故に、俺はやりかねない人物に心当たりがあった。もしその通りならば、相手は博士の部屋にも現れるだろう。
ならば今無理に詰め寄る必要はない。無視を決め込み、再び進路を正して一歩踏み出す。
「おやおや、一度見つけた物を素通りするのは感心できませんな。それが宝の箱だったらどうするつもりだったのですかな?」
突然背後から聞こえた男の声で顔に出そうになった嫌な表情を無理やり抑え込み、平静を装って振り返る。
予想通り、夏場にもかかわらずトレンチコートを平然と着こなしている鎧衣課長が、下半身を段ボールに突っ込んだ状態でそこにいた。
話しかけられたことに半ば諦めを持ち、言葉を返す。
「では聞きましょう、もしその宝の箱に中身を護るとても強い竜がいたらどうしますか? おとなしくウェルダンにされてお食事されろとでも言うのですか?」
「ふむ、それはお断りしたいところですな。 しかし、逆に食べてやろうという気概を持って反撃に出るというのはどうでしょう?」
「生憎、俺は生身で怖い竜と戦う精神は持ち合わせていませんので。 ところで、あなたはどちら様で?」
「おっと、これは失礼。 初めまして、私は微妙に怪しい者です」
「なるほど、段ボールに隠れて盗撮をするのが趣味でありながら微妙に怪しい者で済んでしまう人ですか」
「はっはっはっ。なかなか面白い返し方をなさる人だ。ところで私は鎧衣 左近と言う者ですが、あなたが神林 零 中佐でよろしいでしょうか?」
「正確には臨時中佐ですがね。ちなみに、盗撮が趣味というのは否定されないので?」
「もちろん否定はしますとも。確かに私はこっそりと写真を撮ることが好きですが、私が撮ろうとした風景に人が勝手に入ってきてしまうだけですよ。盗撮が趣味だなんてことはありませんね」
物は言いようとはまさにこのことか、よくそんなのがホイホイ言えるよ。
「それで、俺にどんなご用ですか?」
「中佐とお話をしようと思いましてな、少し趣向を凝らして話しかけてみたのですよ。時に、これからお時間はありますか?」
「今から香月博士の元へ向かうところでしてね、その後でよければ」
「ほぉ、博士のところにですか。ちょうどいい、私も博士に用があるのですよ。ご一緒してもよろしいか?」
「ご随意に」
おそらく殿下の件についてだろう。ならば博士も交えていた方が効率がいい。
互いに無言のまま移動し、何事もなく博士の部屋に辿り着く。
ノックしてから名を告げ入室を促す声に従い部屋に入ると、デスクで作業をしていた博士が「あら」と意外そうな顔をした。
「珍しいわね、鎧衣がまともにここまで来るなんて」
「そうでもありませんよ。なんせ段ボールに隠れて俺の後を付けていたんですから」
「いやはや、彼はなかなか感が鋭いですな。あの追跡は今までばれたことがなかったのですがね。正直、最後まで隠し通せたならスーパーエリートソルジャー、通称SESでも名乗ろうかなどと考えましたな」
俺の発言で呆れた表情を浮かべる博士だが、鎧衣課長は「はっはっは」と笑って流していた。
しかし今の発言、この場に武が居たならば間違いなくズッコケるか噴き出すかするだろう。
「それで、あんたがここに来たってことは……神林のことね」
「はい、殿下は中佐との会談を所望されてます。しかし非公式のため、夜に顔合わせになることを承知していただきたい。また、その場にここに記された人物が同席されます」
そう言って差し出された一枚の紙を受け取り、内容を確認する。
月詠 真耶 大尉、紅蓮 醍三郎 大将、鎧衣 左近 課長、珠瀬 玄丞斎 事務次官、榊 是親 総理大臣。ほぉ、巌谷 榮二 中佐まで来るとは、予想以上に錚々たるメンバーが集まったな。
まあ何ら不都合はない。むしろ巌谷中佐が来るなら技術面で大きな信用を得られるだろう。
「それで、日時はいつですか?」
「要望があれば、今夜にでも」
おやおや、そんなに早く会えるなら使わない手はないな。
あとはこちらの条件を飲ませることか。
「了解しました。それとこちらから一つお願いがありまして」
「なんでしょう?」
「こちらから一人、本日訓練兵たちの特別教官になった白銀 武と言う男を連れて行きたいのですよ」
「なんと、私の息子の教官ですか」
「おや、娘さんでは?」
「あぁ、そうでした。息子のような娘なので、私自身たまに間違えるのですよ。 ――しかし、何故その教官を?」
「彼は少々特殊な事情がありましてね。そして彼がもたらす情報は、殿下にも関係するのですよ」
「ほう、具体的には?」
「そうですね……現在帝国内で画策されているクーデターの情報を知っている、というのは如何ですかな?」
一瞬、鎧衣課長の片眉が上がるが、すぐに不敵な笑みに戻った。
「それはまた物騒な話ですな。しかし、それが本当であるという証拠はあるのですか?」
「確かに物としての証拠はありませんし、話だけなら妄想や与太話で片付けられます。しかしこれが現実となった場合、一番痛手を受けるのはどこの誰なのかも一目瞭然では?」
「ふむ。しかし中佐、あなたは確たる証拠が無いことを信じろと言われ信じることができますか?」
「では鎧衣さん。そのクーデター戦の中で、御剣 冥夜訓練兵が殿下の影武者として動くとなれば、どうでしょうか?」
「――!」
今度はハッキリと、鎧衣課長の表情が変わった。飄々とした雰囲気がなくなり、ナイフのような鋭さを感じさせる眼を向けている。
「殿下の御顔は写真で拝見しています。そして今日会った御剣訓練兵の顔。あれほど瓜二つの顔を見てそっくりさんと断言できるわけがない。まだ生き別れた双子の姉妹の方がしっくりきますよ」
「……そうですか、わかりました。ではその白銀大尉にもご同席願います」
観念したように目を伏せお手上げのポーズを取る鎧衣課長。
「では今夜そちらに伺いますので、殿下にお伝えください」
「了解しました。では、私はこれで」
鎧衣課長は小さく礼をすると、悠然と部屋を後にした。
「あんた、あの鎧衣を相手にしてよく疲れないわね」
「そういう博士は完璧な静観に徹してましたね」
「当たり前よ、面倒だし。それで、あんたの用事はなんなの?」
やれやれと嘆息し、俺はデルタプラスから回収してきた袋を取り出す。
「これ、昨日渡し損ねた俺からのお土産です。100%天然の焙煎済みブルーマウンテンコーヒー」
「あら、気が利くじゃない。――で?」
嬉しそうに袋を受け取りながら本命の説明を促す博士。流石にわかるか。
「国連軍から人材を2、3人ばかり引き抜きたいのです。特別開発部門なのに雑務を含めて全ての担当者が俺一人では流石に無理です」
「ああ、なるほど。情報漏洩の危険がなければ別にいいけど、うちの部隊からは無理よ」
「A-01から引き抜きなんかしたら、武が怒りますよ」
それ以前に、あそこから引き抜きなんて最初から考えてないし。
「いいわ。オルタネイティブ権限で閲覧と引き抜きを許可するわ。ただし、身元調査までしっかりやるのよ」
「無論です。ではすぐにやらせてもらいます」
「はいはい――ん~、さっすが天然モノ。香りが違うわ」
早速お土産のコーヒーを淹れ始めた博士は少し軽い足取りでデスクへと戻った。
俺も長居する理由がないし、とっとと面子を集めるか。
国連軍横浜基地 神林零の執務室
さて、香月博士より許可をもらって早速国連軍のデータベースから自分のチームに入れる人材を探し始めたわけだが――見事に並の人間しかいない。
今、俺は一般の衛士か開発者で検索をかけて人を探していたが、これと言えるような人材が全く見当たらなかった。
流石に将官や佐官付きの人間を引き抜くわけにはいかないから、一般部隊に埋れた原石を発掘しなければならない。
だが流石に人が多すぎる。
しかもそのあと身元調査までしなければならず、正直骨が折れそうだった。
どうしたものかと悩んでいると、不意に扉から短いノックと共に武が「失礼します」と言いながら姿を現した。そしてその後に続くように、何故か霞がトコトコと入室してきた。
「零、お前霞に何を吹き込んだ? さっきから俺を研究するってずっとついてくるぞ」
「武、その言い方だと社が邪魔なようにも聞こえるぞ」
「白銀さん。私のこと、邪魔ですか?」
「ばっ! そんなわけないだろ! だから涙目になるな霞!」
自分で広げた修羅場だが、慌てふためく武が面白いので放置する。
「と、ところで、俺を呼んだ理由ってなんだ?」
どうにか霞をなだめ、人心地着いた武が尋ねる。
「殿下との会談が今夜に決まったからお前もこい」
「……マジで!? 早すぎだろ!」
あり得ねえと叫ぶ武だが、俺もそう思う。
「偶然にも鎧衣課長に会ってな。今夜にでもいけると聞いたから即決した。で、お前の持つ情報は必要不可欠になる。だからお前も来る必要がある」
「なるほど……。しっかし、鎧衣課長か。あの人と話してると疲れるんだよな」
段ボールに隠れて現れたのとスーパーエリートソルジャーの話をしたらどんな反応をするか非常に気になるが、また今度話してやろう。
「でも殿下と上手く話がまとまれば、いろいろいい傾向になるんじゃないか?」
「そうだな。個人的にはトレミーの簡易整備ドッグの建設許可を是非とも取り付けたいとこだ。Gステーションから持ってくる物資の搬入出が死ぬほど楽になるぞ」
「プトレマイオスか。まだしばらく乗れないんだよな」
「少なくとも、博士と殿下を連れて行くまではな。しかもGステーションまでは通常航行で片道約4日、最速で移動したとしても2日弱かかる」
帰りはブースターをつければもっと速いが、むこうでの積み込みやブースターの接続を考えれば5日程の旅になる。
それだけのスケジュールを、殿下がどれくらいで確保できるかだな。
「帝都への出発は1700時を予定している。博士はXM3の開発があるから来れないため、今回は俺たちだけだ。準備が完了次第、正門に集合」
「了解。 ――で、結局お前は霞に何を吹き込んだ?」
「さてな、心当たりがありすぎてどれのことがわからん」
「やっぱテメェの仕業か――っ!」
……十分後。
「と、とりあえず1700時だな?」
「おう。頼むぜ」
ぜぇぜぇと息を切らしながら確認する声に返答してやると、武は来た時と同じ様に霞を連れて退室して行った。
そして俺はというと、また人材を求めてデータベースと格闘する羽目になるわけだ。
「しかし、本当に面倒くさい。死んだはずの人間ばっかがこの世界に来てくれれば、話が早くて楽なんだけどな」
あまり笑えないことを言いながら、適当に名前を入れて検索をかける。
数名が表示されたリストを流し読みしてまた検索フォームに戻ろうとキーを叩く。
「――ん?」
実行しようとした直前、不意にその名前が目に止まった。
同姓同名の、全く別の人間可能性もあったがとりあえず詳細データを開いてみる。
そして今度こそ、俺に衝撃が走った。
「オイオイ、確かに死んだはずの人間がいればいいなとは言ったが、まさかその通りなんてオチはないよな……」
データをキープしつつさらに浮かぶ限りの名前を検索するが、このデータベースで新たに見つかったのは一人だけだった。
しかしこの二人が俺の思った通りの人物なら、これほど心強いことはない。
何より、二人とも場所は違えど一般の衛士として戦っているから引き抜きもし易い。
迷うことなく二人に横浜基地への出頭命令を出し、俺は再びその名を確認する。
欧州戦線から呼び寄せるのは癖のある茶髪をしたアイルランド出身の優男。
アフリカ戦線から呼び寄せるのは顔に大きな傷跡が目立つアメリカ出身の金髪白人。
国連軍欧州戦線所属、ニール・ディランディ中尉。
国連軍アフリカ戦線所属、グラハム・エーカー大尉。
どちらもダブルオーガンダムの世界で戦死した、偉大な戦士だ。
兄さんと公登場です
これからもう数名、別の作品から参戦予定です
ところで冒頭でスパロボの話に繋げて一つ思うことが
最近再世篇の主題歌、「鋼のレジスタンス」の歌詞が武ちゃんのためにあるように聞こえてます
年内の次話更新は難しいと思いますが、頑張ってみます
では、また次回
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追記
感想で多く挙がったニルハムについてですが、ネタバレするとそっくりさんです。
スペックは本人に近いですが、ガンダムもELSも知らないです。
次回投稿で書こうかと思いましたが、混乱を避けるため先にネタバレしました。
ご了承ください。