さて、今回はアラスカからやってきたメンバーをどうするのかを書いてみました。
文字数が減少傾向にあることに危機感を抱きますが、筆が乗らないので投稿できる分だけ投稿していくというスタンスで行こうと思います。
それでは第36話、どうぞご覧ください。
国連軍横浜基地 特別機密区画 ドック
目的の人物が思いのほか近くにいてホッとし、零はプトレマイオスを眺めていた彼に声をかける。
「この船、貴官の目にはどう見える?」
「……正直、この艦がどれほどの力を秘めているのか、私の経験や知識では推し量れません」
「まあ、それが当然か。だが、俺はあなたにこの艇の特性を完璧に覚えてもらうつもりでいる」
「それが私をアラスカから呼んだ理由ですか?」
「そうだ。 グルーデック・エイノア少佐。あなたにはこのプトレマイオス2の指揮と、そこからの部隊指揮を任せたい」
零の言葉にグルーデックはゆっくりと振り返る。
サングラス越しから自分を見極めようとする視線を感じつつ零は部屋から持ち出した端末を差し出す。画面には『プトレマイオス2 概要』と表示されており、それが艦のスペックをまとめたものだとグルーデックは直感的に感じ取った。
「……詳しいお話を、聞かせていただけますか?」
タブレットを受け取りながら返された言葉に零は満足そうに頷き、グルーデックを連れてブリッジへと向かった。
国連軍横浜基地 プトレマイオス2 ブリッジ
システムの駆動音だけが響くブリッジで零はグルーデックに艦の状況を説明した。
機体の整備と衛士こそ帝国軍より人材を得ることに成功したが、艦の運用のほとんどをハロに任せていることと、自分が前線に出ている間はせっかく戦闘に参加できる艦が十分に扱えないことを。
内容自体は非常にあっさりとしたものだったが、その説明だけでグルーデックは自分に求められることが何なのかすぐに理解した。
「――言いたいことは分かりました。しかし、艦の指揮どころか部隊指揮も私が預かって良いのですか?」
「少佐の指揮能力は俺より高いとみている。今でこそ俺も指揮官という立ち位置にいるが、元々は指揮される側のMS乗りだ。それに比べて少佐は現場経験が豊富だし、今までの実績もある。それらを踏まえて、俺は指揮を任せても大丈夫だと考えた。それに指揮を預けると言っても、それは俺がMSで出撃しているときだけだ。それ以外は副長として俺を補佐してくれればいい」
「アルゴス試験小隊と紅の姉妹は、どうするおつもりで?」
「余程のことがない限りアルゴス小隊の指揮は篁中尉、もしくはドーゥル中尉に一任するつもりだ。紅の姉妹については諸事情につきこちらで面倒を見るが」
クリスカを治療するために新型の回収をするタイミングでGステーションへ向かうことが決定しているが、新型の建造が終わるまではまだ半月ほどかかる。それまでは零の部隊で預かり、いざという時に備えて鍛え上げるつもりだ。加えて寒冷地仕様ジム()を贈ることが功を奏したのか、彼女たちの乗騎であるSu-37UBチェルミナートルまでこちらに送られてきている。彼女たちの力を完全に引き出せる複座の機体がない現状、これは零にとってもうれしい誤算だった。
旋風を複座にすれば機体バランスが崩れるし、かといって彼女たち向けのMSは建造するのはともかく、XM3にも馴染んでいない彼女らに候補の機体を任せるには早すぎるという考えもあったからだ。
――複座ってことで彼女らに合う機体を考えたが、MSサイズじゃアレ以外ないんだよな。
零の脳裏には自分のガンダムを除けば現状で最高クラスのスペックを持つ太陽炉搭載機、ガンダムハルートが候補として浮かんでいた。
機動特化であるキュリオスの系譜を受け継いでいるため機動力は言わずもがな。さらに超兵という、いわゆる強化人間が二人も搭乗することを前提にしているため、操縦技術も非常に高度なレベルで要求されることとなる。
しかも超兵は「超兵のあるべき姿」と言われる反射と思考の融合を実現するべく、一つの体に二つの人格を宿させたという説がある。本来の搭乗者であるアレルヤ・ハプティズムにハレルヤが。マリー・パーファシーにソーマ・ピーリスがいたように。
この考えで行けばクリスカとイーニァも多重人格を要求されることになるが、彼女らは最初から機動と火器の役割を分担して戦ってきているので、あとは練度さえ上げれば
さらにチェルミナートルは改修前のA-01の不知火同様、XM3の適用と関節部の強化さえしてしまえば直ぐに使用が可能になり、ステップアップにはうってつけの機体になるという利点を持つ。グラハムとニールにはすぐにMSが与えられたが、あれは零がシミュレーターの様子を確認して大丈夫だと判断したことが大きかったりする。零としては絢香たちも旋風に慣れてきたのでタイミングを見て専用機の配備を検討しなければと考えていたりする。
「さて」と言葉を区切り、改めて零は問う。
「エイノア少佐。以上の話を聞いた上で、改めてオーバーワールドの部隊指揮を担ってはくれないか?」
その問いにグルーデックは手にしたタブレットに視線を落とすと、居住まいを正し零にピシッと敬礼をする。
「――謹んでお受けします、神林中佐」
「ありがとう。部隊長として貴官を歓迎する」
返礼とともに零が笑みを浮かべると、グルーデックもまた口元を緩めるのだった。
苦し紛れの執筆なので文章がおかしかったりするかもしれませんが、第36話、いかがでしたでしょうか?
次あたりで操舵士とオペレーターを導入させるつもりです。
そろそろ事態を動かさないとは思うのですが、ブシドー風に言うなら「興が乗らん」という状態です。
他の作品もどうにか執筆しないと……。
ともあれ、今回は一先ずこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。