Muv-luv Over World   作:明石明

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どうも、おはようございます。
最近クロネコ氏のSSに触発され再びポケモンのプレイ衝動が再燃し、艦これやりつつフルブ(最近エクシアで10連勝達成)とポケモン(ダイヤモンド)を並行してプレイするという荒技をやっている作者です。

お待たせしました、第15話です。
今回はGステーションに向かう間の内容となっています。一部Gステーション到達後、もしくは地球帰還後に書いてもよかったかなというシーンがありますが、それを抜くと話が薄すぎたためこちらにねじ込みました。
ちゃんと書けているか正直ビクビクしながらの投稿です。

それでは、本編をどうぞ。


第15話

宇宙 プトレマイオス2 ブリーフィングルーム

 

 

 宇宙空間。

 それはこの世界や俺の元いた世界でも一部の人間しか足を踏み入れたことがない広大な星の海だ。

 その海を緑の粒子を放ち突き進むトレミーことプトレマイオス2。その艦内は今――

 

 

「た、武様! 避けてくださいまし!」

 

「白銀! 死んでも殿下をお守りしろ! 傷が付こうものなら貴様を叩っ斬る!」

 

「ちょ、急にそんなこと言われてもぶふぉ!?」

 

「ほう。身を呈して殿下をお助けするとは男の鑑だな、白銀武。だがいかに男の夢とはいえ女性の胸に顔を突っ込むのは如何なものかと思うが」

 

「白銀貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ふ、不可抗力ですよ!」

 

「社、下手に動かずあたしの側にいなさい」

 

「はい」

 

「く、重力の有り難みがよく分かりますな」

 

「全くです。しかし、衛士の方々は流石ですな。上手く体を馴染ませている」

 

「いえ、自分は初めての無重力であれほど的確に移動できる香月博士を尊敬します」

 

「天才物理学者は伊達じゃねぇな。どう力を込めて動けばいいのか計算し尽くしてやがる」

 

 

 ―― 一部を除き無重力に悪戦苦闘する人たちの動きが混沌とした光景を作り上げていた。

 今後の予定を説明するためにブリッジからブリーフィングルームへ移動したものの、予想以上に酷い空間へと昇華してしまった。

 ちなみにノーマルスーツは既に脱いでおり、全員が比較的動きやすい服装になっている。

 

 

「えー、そろそろ話を進めたいのですがよろしいでしょうか?」

 

 

 俺の声でようやく殺気を収めた月詠大尉と命拾いして安堵する武を確認し、床面のモニターに宙域図を表示する。

 

 

「現在この艦は最大戦速でGステーションを目指しており、到着予定時刻はグリニッジ標準時で明日の6時ごろ。日本時間にしておよそ明日の15時ごろとなります」

 

「予定より若干早いわね。何をしたの?」

 

「大気圏離脱時に使用した特殊システムのおかげです。地球へ降りる前に強化改造したおかげで予想より速度と継続時間が伸びたので予定より半日以上早く到着の目処が立ちました」

 

 

 オリジナルの太陽炉があればこそだな。粒子貯蔵タンクだけではこうなはらなかった。

 

 

「それでは少し質疑応答と行きましょう。こちらで開示する機体や武装などはGステーションのデータベースから引用していますが、一部の物は答えられる範囲でしかお答え出来ませんのでご了承ください」

 

 

 そう言って俺が取り出したのは人数分の出力端末だ。俺の手にあるマスタータイプとは違い決定、戻る、選択の機能しか出来ないため簡単に抜き出されたりする心配もない。

 

 

「神林。このデータベースにあたしの研究に役立ちそうな物はあるかしら?」

 

「博士が今取り組んでいる研究は……4番目の物でしたね」

 

 

 データベースから量子演算システムヴェーダの基礎理論を引っ張り出し、さらにサイコフレームとネオサイコミュシステム。オマケでモビルトレースシステムの理論を添付して博士の端末に送り込む。

 届いた資料内容を見た博士の目がくわっ!と見開き、一瞬こちらを一瞥。

 すると自室でじっくり読ませてもらうと言って無重力初体験者とは思えない動きでブリーフィングルームを後にしていった。

 

 

「零。前にお前のガンダム以上に強い武器があるって言ってたけど、どんなのだ?」

 

「ちょっと待て。いろいろあるが――とりあえずこの二つは鉄板だ」

 

 

 呼び出したデータはガンダムDXのツインサテライトキャノンと、ウイングガンダムゼロのツインバスターライフルだ。

 

 

「この二つの威力を簡単に説明すると、最大出力で核兵器並の威力がある」

 

「か、核並!?」

 

「ああ。しかもビーム兵器だから放射能汚染は発生しないし射程も長くて比較的汎用性が高い。そして俺の見たてに間違いがなければ、この武器を使う元々の機体は条件付きでフェイズ3のハイヴを単機で攻略出来る」

 

「なんと……。頼もしいやら恐ろしいやらだな」

 

「ちなみに、その条件とは一体何かね?」

 

 

 珠瀬事務次官が冷や汗を流し、巌谷中佐が尋ねる。

 俺は説明として正面モニターにガンダムDXを表示する。

 

 

「まずツインサテライトキャノンを持つこのガンダムDXについてですが、一発を撃つのに必要なエネルギーのチャージに非常に時間がかかってしまうことです。本来この兵装は月面に建造された発電施設から大規模なエネルギーをスーパーマイクロウェーブとして発信し、リフレクターという受信装置で受け取った後エネルギーに再変換してようやく使用が可能になるのです」

 

「なるほど。まあそんな危険な武器を簡単にバカスカ撃たれちゃ堪ったもんじゃねぇけどな」

 

「では神林中佐、もう一つのツインバスターライフルを使用する機体についてはどう言った条件があるのですか?」

 

 

 グラハムの質問に答えるべく、俺は4機のガンダムのデータを呼び出す。

 その左から2番目に表示された機体を目の当たりにし、全員が息を飲んだ。

 その中でおそるおそると言った風に殿下が尋ねる。

 

 

「神林中佐。真ん中の左にあるガンダムは、天使なのでしょうか?」

 

「これは一番左の機体、ウイングガンダムゼロのカスタムタイプです。最大の特徴としてはご覧の通りバックパックの羽にありますが、説明すると少々長くなってしまいますので今回は割愛させて頂きます。ツインバスターライフルの使用自体に特筆すべき条件はありませんが、それを使用する機体の方に大きな問題があります」

 

「紹介されていない右側の機体もそうなのかね?」

 

 

 鎧衣課長の問いに首肯する。

 

 

「単刀直入に説明しますと、これらの機体には未来を見せるシステムが搭載されています」

 

「み、未来を見せるだと!? 戦術機にそんなことが出来るのか!?」

 

「出来てしまうんですよ、月詠大尉。ただし膨大な量の演算情報が脳に直接フィードバックされるため人体への負担は生半可なものではない上、勝利のための戦略ならばあらゆる手段を見せるのです。それには自爆や味方殺し、衛士自身の倫理も無視した破壊行動も含まれています」

 

「なんだそりゃ!? 欠陥機もいいところじゃねえか! なんだってこんなもんを……!」

 

「この機体の開発テーマだったらしい。この機体が出来る前に完成した機体以上に性能やコストを度外視した最強の機体を作るというテーマで作られたこれは、その性能故にシステムに翻弄されない強靭な精神力が求められ使いこなせなければ高確率で廃人になってしまうなど開発者たちでさえ持て余すほどの力を備えてしまった。完成から間も無く機体は封印措置が施されたが、皮肉にも時代は戦争を終わらせるためにこのガンダムを必要とした」

 

「確かにそれ程強力な機体なら戦争を終わらせることは出来るだろうが、衛士――っと、この場合はパイロットか。それはどうなったのかね」

 

「最終的にこのシステムを使いこなしたパイロットは4人だけで、内2人はシステムを使った戦況予測で戦い、一人はウイングゼロを駆ってその戦争を終わらせました。同じようなシステムを積んだ右の機体――ガンダムエピオンを操る最後のシステム適合者との一騎打ちの末に勝利し、戦闘の余波で地球へ落下していた巨大な宇宙戦艦の残骸をツインバスターライフルで破壊するという結末で」

 

 

 流石にそれをやってのけたパイロットが15歳の少年工作員だったということは伏せるが、それを差し引いても巌谷中佐たちには衝撃的な話だったようだ。

 

 

「なるほど。機体の危険性は十分に理解しましたが、まさか中佐はそれらを所持しているのでしょうか?」

 

「いや、俺がこの世界に来た時にはハンガー内の機体が大きく変わっていた。あったはずの機体がなくなっていたり、なかったはずの機体があったりとな。残っていた機体についても稼働しているものがあれば調整中だったりと原因は不明だ」

 

 

 あの時確認した調整中の中でも比較的早く使用出来そうなのがハイゼンスレイⅱ・ラーとジェガンだったな。

 少し時間をかければジムカスタムやアッガイ、バイアランにジムキャノン2も使用可能になる。

 ガンダムタイプで一番早いのはストライクだが、他の機体と比べたら遥かに時間がかかる。

 それに今必要なのは機体じゃない、改造に使うパーツだ。

 既にGステーションには旋風に使うパーツの製造指示を出しているし、武器庫からも必要な物を搬出するようにしている。

 あとは一つ機体を作りたいところだが、旋風で一度データを取らないとわからないな。

 そこからはMS関連の質問が続き、ある程度時間が経ったところで続きはGステーションに着いてからとなりお開きとなった。

 

 

 

宇宙 プトレマイオス2 ブリッジ

 

 

 日付が変わり日本時間で一夜明け、いよいよGステーション到着まであと僅かと迫ったその時、操舵席に座る零が唐突にぶるっと震えた。

 

 

「中佐、どうかしたかね?」

 

「いえ、なんだか嫌な予感がしまして……。喜ばしいけど迷惑さを感じるような感覚が……」

 

「なんだそりゃ?」

 

 

 何事かと尋ねる巌谷中佐に少し青ざめた表情で答えると、隣の席で話を聞いていた武が首を傾げる。

 と、突然ブリッジの扉が開き俯き加減の夕呼が現れた。

 その姿を認めた瞬間、零の中に渦巻いていた感覚が一気に警告して来た。

 

 ――生贄を捧げろ、と。

 

 

「神林いいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「武シールドおおおぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

 無重力下とは思えない瞬発力でこちらに抱きついてこようとする夕呼を見た瞬間、隣の席にいる子羊(武)を捧げる。この間、約1秒。

 

 

「え!? ちょ!? ぎゃあああぁぁぁぁ!?」

 

 

 

~~天才暴走中 しばらくお待ちください~~

 

 

 

「うぅぅ……純夏ぁ、俺また穢されちまったよ……」

 

 

 顔中に付けられたキスマークを拭きながらレイプ目で最愛の女性の名を呼ぶ武。隣で頭を撫で慰めている霞がなんとも健気だ。

 一方、当事者である夕呼は非常に上機嫌である。

 ちなみに巌谷中佐は零に促され別室へと退避して行った。

 夕呼は零の前にやってくると先ほどまでの態度を一変し、真剣な眼差しを向ける。

 

 

「感謝するわ、神林 零。あなたのおかげでようやく第4計画の完遂に手が届くところまで来れたわ」

 

「! ということは……!」

 

 

 一緒に話を聞いていた武がガバッと起き上がり、夕呼は唇を釣り上げて首肯する。

 

 

「00ユニットの理論が完成したわ。これでやっと次の段階に進めるわ」

 

 

 その報せに武は歓喜した。

 前回と比べて理論補完が3ヶ月近く早く、しかも因果の流出もない上に反則的存在が味方にいるのだ。

 しかし慢心する訳にはいかない、それでどれだけ痛い目を見て来たことか。

 

 

「モビルトレースシステムなんて巫山戯た代物だと思ってたけど、正直あれば大事なきっかけになったわ。ネオサイコミュシステムの資料とセットでなければたどり着けなかったかもしれない」

 

「そ、それは何よりで……」

 

 

 もちろん零も考えなしで送ったわけではない。

 昔オルタをプレイしている時、元の世界で武が授業中に聞いた話がどんな内容だったのかを調べたことがあった。その時の内容を思い出しどうにか繋ぎ合わせた結果、この世界で理論に到達するのに必要な物を揃えた。

 ただしモビルトレースシステムは本当におまけ程度にしか考えていなかったため、面と向かってそれがなかったらたどり着けなかったかもしれないと言われ内心で助かったと冷や汗をかいていた。

 

 

「素体の方は戻ってからの作成になるけど、完成まで最速で半月ってところね。調律には白銀、あんたが必要不可欠だわ。下手こいたらホルマリン漬けにしてやるから気合い入れてやりなさい」

 

「了解です」

 

 

 夕呼の脅しに全く動じることなく、武は力強く応えた。

 

 

「で、神林。Gステーションまであとどれくらいなの?」

 

「このまま何事もなければあと5時間と言ったところですね。到着後は各プラントを順番に見学し、最後に殿下と協力体制を結ぶつもりです」

 

「なるほどね。でも今の日本帝国上層部には米国――特に第5計画の狗が犇いてるわ。それはどうするの?」

 

「全く問題ないですね。連中を排除して殿下に復権していただき、クーデターを瓦解させる策も用意しています」

 

 

 零はオペレーター席に移動しあのデータを引っ張り出す。

 

 

「これって……。神林、あんたどこまで規格外なのよ」

 

 

 夕呼が半ば呆れたように指摘したそれは、武がこの艦に現れた時と一緒に入手した売国奴たちの名簿リストとその証拠である。しかも紙媒体から後丁寧に写真付きでデータ保存された代物だ。

 

 

「これを殿下に提出し帝国上層部の掃除をしてもらい、その間に沙霧大尉を呼びつけて説得する。説得役は武、お前に任せる」

 

「お、俺!? 零じゃないのか!?」

 

「お前の方が沙霧大尉をよく知ってるだろ。何、お前は自分の思ってることをぶつければいい。そこから戦闘に発展しても心配するな、対策は立ててやる」

 

 

 確かに説得なら零で出来ないこともないだろうが、説得し切るためのあと一押しが足りない。

 そして零が持ち得ない一押しを備えているのが武だった。

 

 

「大丈夫だ、自信を持っていけ。お膳立てはしてやるからさ」

 

「……わかった。なんとかやってみる」

 

 

 その答えに満足し、零は再び操舵席へと戻る。

 

 

「博士は少しお休みになった方がよろしいのでは? 理論を完成させるために完徹したんじゃないですか?」

 

「そうね、少し寝させてもらうわーー白銀」

 

「なんですか?」

 

「あたしを部屋まで送っといて、おやすみ」

 

 

 それだけ言い残し、夕呼は一瞬にして無重力に身を委ねて眠りに落ちた。

 

 

「相当疲れてたみたいだな。 で、ご指名を受けたお前はどうする?」

 

「霞に運ばせるわけにもいかないだろ。送ってくるついでに飯食ってくる」

 

 

 武も無重力にだいぶ慣れ、夕呼の身体を掴むと流れるようにブリッジを後にする。

 それを見送って「さて」と呟き、零は操縦桿を握り艦の進路に集中することにした。

 目的地は、もう目と鼻の先である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん? 社は行かないのか?」

 

「……まだ、うまく動けませんから」

 どうやら無重力に適応するにはまだ時間がかかるようだった。




第15話、いかがでしたでしょうか?

武ちゃんがはしゃぐ描写を書こうと思いましたが、脳量子波が乱れて修羅場となりました。

技術公表になるとGジェネSSに必ずと言っていいほど出てくるゼロカスタム。
正直抜こうか考えましたが、ゼロシステムの説明の際必要になるかと思いやはり出張ってきました。
ちなみにエピオンはTV版とEW版を並べています。

さて、ついに00ユニット理論を回収しました。
エクストラで夕呼先生がモーションキャプチャーの話をしていたので、それに近い性質を持つモビルトレースシステムを出しました。
ちなみにブレインモーションキャプチャーと聞いて作者はカロッゾが頭をよぎりました。(しかも脳h(ry
理論完成がやたらと早いのは天才独自の処理能力と閃きスキルと解釈してください。(早い話がご都合主義です

色々なフラグやら伏線やらが出てきた今回の第15話でしたが、いかがでしたでしょうか?
次回にようやくGステーションに入ります。
一緒にずっと出したかったフラグも出します。
投稿はまた未定になりますが、出来るだけ早く投稿出来るよう頑張ります。

それでは、また次回にお会いしましょう。

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