少年の異世界道中~まどか☆マギカ編~   作:クロイツヴァルト

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act9

 

 

 「さて、今日はこの位で切り上げるか。」

 

 「そうね。 けどここ数日魔女の反応が無いのも不気味な感じね」

 

 あれから数日してサーチャーも使った索敵で見滝原市に潜伏する魔女を探していた。 そして今日の見回り組は戒翔と睦美ほむらであった。

 

 「ところでこんな薄暗い裏路地の様な所を調べているみたいだけど何をしているの?」

 

 「・・・なに、ちょっとしたお呪いを要所要所に書き込んで打ち込んでいるんだ。 万が一の時に作動する・・・ね」

 

 ほむらが振り向いた時に路地の片隅で戒翔は魔法陣を用いて術式を刻んでいた。 その様子に疑問を抱いたほむらは質問をするが明確な答えは返ってこなかった。

 

 「お呪い?」

 

 「万が一だから作動しないに越した事はないが、常に最悪の状況を想定しておいて行動しなければ取り返しのつかない事態になりかねないからな」

 

 「・・・それは経験の上での事?」

 

 「・・・想像にお任せする」

 

 『戒翔! まどかちゃんに異常発生!』

 

 「ッ!?」

 

 「・・・どうしたの」

 

 「少し待て」

 

 ほむらと会話をしている所にフェイトの切羽詰った念話が届き一瞬息を詰まらせる。 そしてそれを訝しむほむらの疑問に答える前にフェイトの念話に答える。

 

 『・・・それでどうした?』

 

 『まどかちゃんの反応が見滝原の工業地帯の廃工場付近で消えちゃったんだ。 一応シュテル達にも念話を送ったけど場所的には今戒翔達のいる場所からの方が早く着けると思う』

 

 『分かった、ほむらと急いで向かう。』

 

 『お願い。』

 

 「・・・ほむら、緊急事態だ。 まどかが近くの廃工場付近で消息不明になった。 魔女の結界に捕らわれた物とみて間違いない。 急ぎ救助に向かう。」

 

 「なんですってッ!? ・・・すると美樹さやかが」

 

 「さやかちゃんがどうかしたのか?」

 

 「・・・私の経験上では廃工場でまどかが結界に捕らわれた場合、高確率で美樹さやかは魔法少女となっている筈・・・」

 

 「魔法少女に・・・(不味いな、まだ確証が掴めていない状況でさやかちゃんまで魔法少女化してしまうとは・・・しかし魔法少女になる条件とは・・・いったい) 兎に角急いで向かうぞ!」

 

 「えぇ!」

 

 そして戒翔達が向かう先の廃工場では

 

 「さやかちゃん・・・なんで」

 

 「へへへ、初めてにしては上手く出来たと思うっしょ?」

 

 魔女に止めを刺し、結界が崩れる中で不安そうな表情のまどかにさやかが苦笑しながら剣を閃かせて見せる。

 

 「・・・貴女まで魔法少女になる必要があったのかしら?」

 

 「暁美ほむら・・・アンタに言われる事じゃ無い。 これはアタシの選んだ道なんだ。」

 

 「貴女は・・・あんな事の為に契約したの?」

 

 さやかが廃工場に侵入する為に斬り裂いた壁から文字通り飛んできたほむらが入って来て開口一番にそんな事を言えばさやかはそんなほむらを軽く睨む形で言い返すが、ほむらがある事を言った次の瞬間、憤怒の表情で剣を突き付ける。

 

 「あんな事? あんな事じゃ無い! 恭介の腕を治せるんだったら契約でもなんでもしてやるって決めたんだ! 恭介は・・・恭介はバイオリンのプロを目指していたんだ・・・だけど事故でその利き腕が使えなくなって、毎日毎日、アタシはそんな恭介の見舞いをしていたんだ。 そんな時に恭介の担当の医者が諦めろって言ったんだよ。 それをはいそうですかって聞けるわけがないじゃんかよ!!!!」

 

 激情のままに喋るさやかの瞳は今にも零れ落ちそうなほど涙が溜まっていた。

 

 「・・・そう。 けど、その選択に後悔が無い様にね。 貴女が選んだことだけれど鹿目まどかを巻き込む事だけは止して欲しい所ね。」

 

 そう言ってほむらは後ろで待っていた戒翔の方を向き

 

 「今日の所は解散にしましょう。 私も今日の所はこのまま帰るわ。」

 

 「・・・そうか。 シュテル達には既に連絡を入れて通常警戒に戻って貰った。」

 

 「・・・そう。 美樹さやかの事をお願い。 最悪の場面だけは絶対に回避しなければならないのだから」

 

 「分かった。」

 

 ほむらは戒翔の横を通り過ぎる時に戒翔にだけ聞こえる声量で注意を促し、戒翔もまたそれに小声で了承する。

 

 「・・・さて、さやかちゃん。 この事について訳を聞かせて貰えるかな?」

 

 「・・・キュウベエと契約したのは私の意志だ。 それは先生にだって否定はさせないよ」

 

 「キミの在り方を否定する気は無いが、早まった事をしてくれたな。 こちらが調べている所にキミは相談も無しにあの生物と契約してしまうとは・・・当分の間は美樹さやか、キミは俺とほむらの二人で行動を共にしてもらう。 拒否権は無い」

 

 「それは大人として? それともただの偽善?」

 

 「それはキミの受け取り方で違うな。 ま、今日はもう遅い。 まどかちゃんとさやかちゃんの二人は送っていかないとならないな。」

 

 「アタシなら危なくないと思うけど」

 

 「魔女相手ならね。 警察官とかに補導されたのなら良いけど?」

 

 不遜な態度のさやかに対して告げた言葉にさやかはバツが悪い顔をする。

 

 「・・・確かに警察の人にはお世話になりたくはないね。」

 

 そうしてさやかとまどかの二人を送る課程でさやかはすんなりと家に送る事が出来たのだが

 

 「あんたがまどかの言っていた新しい先生か! こんな夜遅くにまどかを送ってくれた事には感謝するけど・・・」

 

 にこやかに話をするのはまどかの母親である鹿目詢子は次の瞬間

 

 「なんでこんな遅くにまどかを送ったのか訳を教えてもらっても良いですか?」

 

 そこには理由を言うまで帰さないと言う強い意志を持った母親の顔をして戒翔を睨んでいた。

 

 「それは(参ったな・・・どう説明したものか・・・まさかお宅のまどかちゃんは町で起こっている不可思議な異変に関わっていますとは言えないよなぁ)どう説明したものでしょうか」

 

 渋い顔をした戒翔と戒翔を睨む様に見ている詢子にまどかは双方をおろおろとして見つめている。

 

 「お母さん! もう夜も遅いから」

 

 「そうだな、明日は確か休みの予定だし、改めて我が家に招待して話を聞かせて貰おうかな」

 

 なんとか勇気を振り絞ってまどかが助け船を出す事によって今日の所は難を逃れたが明日の予定が母親への理由説明になってしまった事に戒翔はまた頭を悩ませることになるのであった。

 





 皆様あけましておめでとうございます。

 色々と勉強をしながら文言を見直しつつ頑張っていきますので今年も私の小説をよろしくお願いします。

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