東方晴天録   作:あおい安室

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かなり話がぐちゃっとしました………
理由はこの次に投稿予定の活動報告にて。


第31話+:思い通りにいくことなんて滅多にない。

窓を破って入る………却下。どう考えてもバレる。というかこの時代にガラスってあったの?なんでガラスがあるの?まあいいや。

ドアから入る?………普通だけどバレる可能性も少なくないし………保留。

 

『………何考えてるの?』

 

「んー?誰かさんの盗んだ服を返すために来たのはいいけど、どうやったらバレずにすむかなーってね。絶対バレたら半殺しだ」

 

『………無理じゃない?』

 

「その誰かさんが言うか」

 

と、いう訳で。現在僕らは花妖怪、風見幽香の自宅前にいる………色々ツッコミ要素はあるけど。

なーんで洋風の家なんだか。細かい事は気にしたら面倒だから気にしないけど。

それで、どうやって家主にバレずに返せるか考えていたけど………

やっぱり無理?

 

『無理。それに記憶が曖昧だから覚えて無いけど………風見幽香を私が縛ってあるかもしれないし。それならバレるもへったくれもないと思うなー』

 

「………縛ってあったらとりあえずほどくよ?もういいや、ドアから入る」

 

そして、玄関にあたる部分のドアを慎重に開けて中に侵入する。

鍵?そんなものは全く無かった。

そこまでは文化レベルは高く無いみたいだ………

そんなことを考えながら色々部屋を見ていく………それにしてもお花多いな。なんだか癒される………

 

『………よくよく考えれば玄関に服と手紙をおいて置けばよかったんじゃない?』

 

「あ………その発想はなかったなあ………でも直に謝った方がいいでしょ………っ!」

 

後ろから何かの気配を感じて振り向く。そこには………何もなかった。

おかしい………さっき感じた気配は何だったんだろ………勘違い?

それとも………後ろに気配の主がいるパターン?

自分の元々向いていた方向に向き直ったその瞬間。

 

「うわぁっ!!」

 

「ま、全く…………だ、誰よ、私の家に入ったふとどきものは………」

 

後ろにいた誰か………顔は見えないが恐らく風見幽香に首を締め上げられた。

すぐに抵抗して振りほどいけたけど………やけにあっさりとしてる………

後ろに振り向いてして首を締め上げた人物を確認すると、やっぱり夜から聞いていた風見幽香だった。

………だが………着ているシャツ、そして顔や足には。

 

赤黒い液体。血液が大量に流れていた。

 

「っ………あなた………昨日の奴じゃない………今度は何をしに来たの………?」

 

「あ、えっと………服を返しに来ました。って違う!!大丈夫ですかその体!?」

 

「そ、そんな事………聞かなくったっわかるでしょうよ………そもそも………服を返すだけの為に………わざわざ………人の家に………入ってこないで、よ…………」

 

そこまで言うと………風見幽香は倒れた………

 

「っ、大丈夫ですか、風見さん!?………まさか夜………昨日こんなになるまで殴ったの!?」

 

『し、してないよ!?………多分………っ、とにかく急いで治療した方がいいよ!このままの出血が続いてると命が危険だよ………治療道具は残ってるよね!?』

 

「ちょっと待ってよ………止血剤と消毒液少し。鎮痛剤は無し。軟膏もあるけど、残念ながら二回使えたらいいくらいの量。そもそも妖怪に使えるのかどうか………それとエミリーさんが作った治癒効果を高める特殊な包帯が5セット………多分足りるはず。すぐに始める!」

 

そこからはもうがむしゃらだった。どこをどうやったのかはいまいち覚えてないが、夜の指示にしたがって治療した。

夜は自らの肉体を改造されていたこともあり、体の仕組みは僕よりも詳しい。怪我の治療についてならだいたい夜に任せれば問題ない。

………風見幽香と僕は友人関係ではなかったし、治療する義理はなかったとも言える。だけど僕はそんな人でも見捨てようとは思わなかった。

目の前で死にかけてる人を見捨てるのは………二度とごめんだ。

 

 

 

 

話を変えよう………夜いわく風見幽香の怪我は酷かった。僕は治療こそしたけど、がむしゃらだったので、細かくは覚えていない。

夜曰く、顔に大きな切り傷。右腕4箇所、左腕2箇所。両足共に3箇所、脇腹に1箇所の刺し傷があった。

脇腹は幸い内蔵を掠めていなかったが、どれもろくに治療がされておらず動いていたのが奇跡。妖怪の成せる技なのかもしれない。

それでも放置していれば3日持つかどうか………とのこと。

これだけで充分怪我の具合が解るが、僕と夜には気になることが二つあった。

それは治癒速度、だ。どんな妖怪でも人間より治癒速度は種族にもよるが、恐ろしく早い。

今回のケースでは刺し傷は深いものもあったけど、顔の切り傷に関してはおかしい。そこまで深くなかったそうだからすぐに治ると思うんだけど………

それにどこの傷からも血液がまだたくさん出ていた。

僕と出会う少し前に襲われた………という考え方でも、出ていた血液の量がおかしい。

今の風見幽香は僕が後ろで持たれかけてるベッドですやすやと寝息を立てて眠っているけど…………一体どうなってるんだ………

 

『………晴、さっきから考えてたんだけど………風見幽香は生体アンドロイドと戦ったのかもしれない』

 

「………どういうこと?」

 

『確か………生体アンドロイドには刃物系の武装を大量に搭載する、とか言ってたんだ』

 

「………それだけじゃ判断材料にはならないと思う」

 

刺し傷なら刃物を持ったやつじゃないと出来ない。でも刃物ってくくりならたくさんの人が該当する………

妖怪を狩る奴等なんていっぱいいる。

 

『ううん。刃物系の武装を搭載する………そういったのは永終、ある意味永琳だよ?』

 

「………!そうか!永琳ならただの刃物系の武装を搭載させるわけがない!」

 

なんせ僕の中に動きを止めたりするための機械を埋め込むような人だ。何か特殊なしかけを施してあると考えれる………

 

『例えば。治癒速度を落として切りつけた相手を治療しないと死に至る仕組み。例えば。血液を大量に出る様にして大量出血で死に至らせる………とか。そんな仕組みを仕込んでるとすればこの怪我の状態も納得かな。それに風見幽香ってすごい強いんだよ?』

 

「そうなの………?」

 

『うん。私が晴をのっとろうとして意識が朦朧としていたとはいえ、晴を一度殺したんだから』

 

「………何があったのか知らないけど、今は放っておくよ。とりあえず、生体アンドロイドを探さないと………」

 

『そこなんだよ。問題は。いい?昨日の夜の時点ではこんな怪我を風見幽香はしていなかったんだ。だから今日の間でここから行って戻ってこられる範囲に生体アンドロイドがいる。それはつまり………街そのもの、もしくは跡地が近いってことにもなる。そこに永琳がいることも考えられる』

 

………っ、永琳、か………

 

『………永琳と会って話ができる?』

 

「………無理だよ………僕は………永琳に別れを告げた。会ってもいいのかもしれないけど………あの時の僕は間違いなく永琳を傷つけた。そんな僕に会う資格なんて………」

 

『………あ』

 

僕がしゃべっていると、急に後ろから頭に鈍い痛みがはしった。

痛みで思わず手を頭に当てた瞬間。背中に同じ様な痛みがはしり………床に押し付けられる。

 

「さっきから………何をうじうじ言ってんのよ!!」

 

「あぎゃああぁぁぁ!!!い、痛い痛い痛い!!」

 

『あー………あ。やり過ぎにはご注意をー………』

 

な、何を呑気に言ってるの夜!?………ちょっ!!い、痛い!その上から殴らないでぇっ!!

 

「え、ちょっ、待ってぇ!僕特に何もしてないですよ、風見幽香さーん!?殴るのやめて!!」

 

「いーや。私のプライドを、ズタズタにしたやつを!!無傷でなんか!!かえさないわよ!!」

 

「あ、ちょっ………ぼ、僕怒ると何するかわかんないんですよ!?意識もな………あたっ!!」

 

しゃ、喋ってる途中で普通殴る!?もうやめてぇ!!

 

「これは、私を、昨日ボコボコにした分!!!」

 

「ぐああっ!!」

 

やめ、て…………

 

「これは、私の服を奪った分!!」

 

や、め……………

 

「そしてこれは………私を治療したぶっ!!」

 

バキィ、と音がした。だけど………そんなこと知ったもんか。

マウントポジションを逆転させ、僕は風見幽香を殴り付ける。

 

「人の………人の話を聞かない、このバカガキが!!修正してやるよ!!」

 

「それは………こっちの台詞よ!!!」

 

 

 

『………あーあ。晴がキレちゃった………子供の喧嘩になっちゃった。もう知らない………』

 

 

 

「……ヨ………」

 

静かな、夜。誰もいない、屍の山の中。そこには、確かにいた。

 

「………ル………………」

 

黒い、影の様なコートを纏った、闇が。確かにいた。

 

「…………ハ…………ル…………………」

 

 

 

 

闇はまだ、止まらない。

 

 

 

晴天録第一章、完。

 


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