東方晴天録   作:あおい安室

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後何話で終わるんだか………


第29話+:謎はまだ残っている。

ぜーんぜん理解できない。

なんで僕は平安京出入り禁止になったんだかー。正確には違うけど。

まあ、原因というのもこの服装。これが完全に問題だった。

どうもこの服装はある妖怪の服装と同じもので。さらに日傘もその妖怪が持っていたとかなり似ているらしく。

妖怪と勘違いする人もいるかもしれないから、できれば入らないでくれと警備らしき人に言われた。

勘違いされて住民に槍とか向けられても面倒だし、僕は外で待機することに。

ぎゃふん。

おまけに夜もエリカさん達についていった。

エリカさんと情報を集めて、その情報から必要なものを抜き出す………とか言ってたけどさ。平安京見たいだけでしょ。

というかいつの間にか夜の耳とか目の役割をするのがあの万年筆になったんだ。

僕の体と感覚は共有しているとか言ってなかったっけ。

訳がわからないけど、一言言わせて。

 

「暇だー………」

 

「な………何やってるんだお前………」

 

「誰だっ!!ってのわああぁーーー!!」

 

暇だから登った木の上の方の枝に腰掛けていた僕に対して後ろから声がかけられたので振り向こうとして………落下した。後ろくらい確認しようよ僕………

 

「ぐえっ!!」

 

「おわっ!?だ、大丈夫か!?」

 

「あ、頭から落ちそうだったけど………というか落ちたけどなんとか無事です………で、貴様、見ていたな!!」

 

「いや、何を言いたいんだ!?というか見ていたけどさ!?」

 

ネタを言ってみただけ。立ち上がって埃を落として、話しかけてきた黒髪の少女に向きなおる。

 

「さて、と………僕に何か用でもあるんですか?」

 

「え?い、いや………そんな訳じゃないんだけど………」

 

「そ。じゃ、僕は戻るけどさ………君は人間でしょ?この辺妖怪が少しいるから村とかに戻った方がいいよ?」

 

「む、むう………じゃあ、一つ聞いてもいいか?お前は………花妖怪、風見幽香じゃないのか?」

 

「人違いです。というか誰ですか風見幽香って………」

 

「知らないのか………?それによく見てみれば噂とは違って髪の毛も黒色だしな。別人だな………」

 

「そもそも僕が本物だったらどうするの。人間は妖怪に狩られちゃいますよ?」

 

「なら妖怪だったとしたらこんな近くにいるとは考えられないな。ここは平安京の近くだぞ?妖怪が見つかったらすぐに殺される。私を待ち伏せしていたとしても、ただの気まぐれでこの辺を歩いていただけだから、待ちぶせっていうのは考えにくい………となると、お前は人間で私と同じように気まぐれでこの辺を歩いていたか、はたまた花妖怪に似た格好が原因で追い出されたか。そんなとこだろう?」

 

なんと。当たってる。この少女………探偵とかか………?

怪しい………

 

「ん?そんなに怪しまなくてもいいぞ?私は通りすがりの………まあ、平安京の住民だ。ところで………どうして木の上に登っていたんだ?何かいいものでも見えるのか」

 

「特には………ま、君も一緒にどうですか?今なら護衛の一つや二つくらいしてあげますよ?」

 

「いや、私は木に登れない。というか登ろうとしたこともない………やろうとしても多分親に怒られたな」

 

箱入り娘なのかこの子。

 

「なら、おんぶしてあげるからどうですか?」

 

「ふむ。それなら………お願いしてみようかな」

 

そういったので、僕は少女を背負ってあげて、手をさっきまで登っていた木の幹のくぼみに手をかけて登っていく。ロッククライミングはそこそこ経験があるから、できないわけでもない。

そういえばビルに登る達人がお母さんの友人にいたなあ。というかUFOに乗ってやってきてたような気がするんだけどあの人………記憶違い?

名前は確か………クレイジークライマーだっけ………?どうでもいいかー。

 

「おお………木に登るのがうまいなお前。そういえば名前はなんだ?」

 

「八意 晴です。君は?」

 

「藤原妹紅。妹紅って呼んでくれるか?」

 

「わかったよ………妹紅?もこう………もこう………もこたん?」

 

「いらんことをいうのはどの口かなぁ………!!」

 

いひゃい。いひゃいれす。ほっぺた引っ張らないで。振り落とすぞコラ。

 

 

 

「おおお………眺めはいいんだけど………落ちそうで怖いな!!」

 

「よし、さっきのお返しとして枝を揺らしてあげようか」

 

「やめろっ!!」

 

さっき座っていた枝よりも上にあって、そこそこしっかりしてる枝には幹の方に妹紅が。そのとなりには僕が座っていた。景色はなかなか良かった。いろいろな景色が見える。

豊かな森林、竹林、そして何かわからない黄色の集団。

ていうかなんだあれ。

 

「あの黄色いやつは太陽の畑って言われているひまわり畑で、花妖怪風見幽香の根城だぞ………知らないのか、風見幽香の格好している癖に」

 

「知らないよ。さっきから風見幽香風見幽香いってるけど、そもそも風見幽香っていう人に会ったこともないし。この服も僕の妹みたいな人が多分どっかからパクったものだと思う」

 

「パクった………?」

 

ん、知らないのかな?………そういえば今って平安時代らしいけど………この頃って外国とのつながりって殆ど無いよね?外国語とかって知らないよね。パクったって何語になるのか知らないけど。

 

「パクったっていうのは盗んだってことかな」

 

「なるほど………それって風見幽香からお前の妹は服を盗んだってことになるじゃないか。地味にすごいな」

 

「すごいのかな………」

 

そこまで言って、一つの発言を思い出した。

『ここから西にいったところに平安京があるんだけど、その周辺にある花畑に一人の人型の妖怪がいるんだ。そいつがものすごく強いらしい。その妖怪に近づかない限りは襲われないらしいよ』

諏訪子さん達から得た情報だ。

妹紅の言っていたこの格好の主とも言える存在、『ひまわり畑にいる花妖怪、風見幽香』。これは………

特徴が合っている?

調べてみる必要があるな………ん?待ってよ?妹紅の予想が正しかったらもしかすると………夜は風見幽香にあったことがあるかもしれないってこと?

戻ってきたら入手経路について問いただしておかないと………というかなんで僕は違和感持たずにこの服を着てたんだ。着れる服がなかったとはいえ警戒心がなさすぎるでしょ………

 

「………なあ、晴。今度は私からも少し聞いてみてもいいか?その………もしも、自分の家族が誰かにバカにされたらどうする?」

 

どうしてそんな質問を………と思ったけど有力な情報をくれた人だ。答えてもあげるべきだろう。

 

「それは状況によってはバカにしたやつを怒るかな」

 

「状況?」

 

「うん。自分の家族にバカにされた原因があるんだったら僕は怒らない。その自分の家族にバカにされた原因を悟らせる。バカにしたやつが単なる自己満足とかでやったんだったら………ま、とことんお仕置きしてやるかなー」

 

「そうか………それなら、怒らなくてもいいかな。ありがと、晴。気が楽になった」

 

「それなら嬉しいかな。というかそれ妹紅の実体験だよね………多分」

 

「そうだけど?私のお父さんがなんか求婚まがいなことした」

 

「ぶっ!?」

 

ちょ………妹紅さん、つまり娘さんいるのに何やってるのお父さん!?

 

「まあ、お父さんの仕事の関係上仕方なかったらしいから別にいいんだけどさ。それでその求婚相手がどうも結婚の条件として蓬莱の玉の枝っていうのを取ってくるように命じられたらしいんだ」

 

………蓬莱の玉の枝?はて………どこかで聞いた名前だな………どこだろう………

 

「それで、探しても見つからなかったから職人に偽物を作らせたんだけどさ。渡しに行ったところで給料を払い忘れていたのが発覚して。大恥かいたってわけなんだよ」

 

………偽物?給料を払い忘れた?

 

「それで、その求婚相手はどこかに行ってしまって行方不明になったんだ。ただその求婚相手が親族とかに不老不死の薬を残したらしいから、お父さんが大恥かかせられたからその仕返しとしてそいつを奪ってやろうかなんて考えてたんだけど………止めた。晴の言ってる通り父さんが原因だからな」

 

………不老不死………偽物………給料を払い忘れた………蓬莱の玉の枝………

 

………………………か………ぐ………や……………

 

「そうだ………かぐや姫の話にそっくりなんだ………」

 

「よく知ってるな。求婚相手の名前はかぐや。蓬莱山輝夜だ。一部では姫とも呼ばれていた………って有名だったから知ってても普通のことか。少し前までおもいっきり話題になってたからな」

 

………え?蓬莱山輝夜…………ぐ、ぐーやか………同姓同名の別人………っていう可能性も捨てきれないけど………会えばわかるはず………

 

「それで………ぐーやは今どこにいるの?」

 

「ぐ、ぐーや?な、何だそれ………アダ名か?いや、それよりも………蓬莱山輝夜と友人関係だったのか?」

 

「昔………ね。もう長い間会ってないし、今までどこにいるのかも知らなかった。まさかこんなところで名前を聞くとは思わなかった………」

 

「そう、か………なあ、思い出話とか少し聞かせてくれないか?暇つぶしにはなる」

 

「いいよ。そうだなあ………ぐーやとの出会いから、始めようか」

 

そして、僕は語り始めた。街についての話などはぼかして、輝夜について話した。

ついでにかぐや姫のオチから推測した輝夜の行方についても。

………しかし、本当にかぐや姫のストーリー通りだったとしたら。永琳達がいるのは………月?もしそうならどうして月にいるのかとか考えたくなるけど………それほともかく、月に街が移動したとかだったら街を探すのはどうしようにもない。

街の跡地を見つけるのはかなり難しい………かといって月まで行く手段もない。

絶望的だ………

 

 

 

 

「まさか、そこまで知っていたとはな………正直驚いた。というかそんな正確なんだな、蓬莱山輝夜って。てっきりいつも気取ってて人を見下すことしかできない最低なやつかと」

 

「地味に評価が酷いな!本人に伝えたら泣くよ!?」

 

「ま、冗談だよ………さてと、私はそろそろ帰るとしよう」

 

そういって妹紅はなんと枝から飛び降りて………見事に着地した。そして地面に倒れ伏した。

 

「ちょ、妹紅ー!!大丈夫!?」

 

「あ、足がしびれる………!!」

 

その程度で済んだのか。未来少年コナンですか?しばらく見物していると立ち上がって僕を見上げた。

 

「そ、それじゃあ………縁があったらまた会おうな、晴」

 

「あ、うん………帰り道気をつけてねー!」

 

「もちろんだ………そうだ、晴!いいことを教えてやる!蓬莱山輝夜はお前の言っていた月にいかずに赤と黒の変な服を着た女性を連れて逃げたって噂があるぞー!!」

 

そういって妹紅は立ち去ったけど………僕の中ではひとつの疑念ができた。

 

「ま、まさか………どこかにいるの………?」

 

 

 

僕の姉、八意永琳が。

 

 

 


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