「………ふはあ。お風呂が気持ちいい………」
『妬ましい………風呂に入ることは私にはできないのに………』
ふふん。人を変なもの扱いした仕返しだ。この守矢神社にはお風呂があった。せっかくなので入らせてもらった。
お風呂でだらけてます。夜は相変わらずの万年筆。風呂に入れたっていいじゃない。
ん、晩御飯?もう終わったよ?
でも僕が調子に乗りすぎて旨いものを作りすぎちゃって。沙苗ちゃんが少し凹んだ。
僕のことをキチガイとか呼んだ仕返しだと言ってやったらごめんなさいと謝ってくれた。お詫びとしてレシピとかコツを教えてあげた。というか沙苗ちゃんは本当に素直でいい子だなあ。
思わず撫でたら沙苗ちゃんがキャーキャー言って諏訪子さんが心配して来てくれたりした。蹴られるのは想定外だったけど!!
えっと。こういうのは………何だっけ?ドタコン?
まあいいや。ついでに食事前にエリカさんもボコボコにした。
神奈子さんからエリカさんは頑丈だと聞いたので、遠慮はしなかった。ん?女の子を殴るな?
………え、僕やたらと女の子にいじめられたりする事あったんだけど。いじめと言ってもからかう程度だったり、ツッコミで殴られたり。いつの頃だったか女友だちの犬に潰されそうになったこともあったなあ。その犬もその友だちの指示で犬が向かわせてたらしいけどー。あの友だちは鬼だったのかねえ。いや、アタシ・バーニングスだっけ?
私、燃えています?訳がわからない。
「いやー………僕も日本人だったからねえ。お風呂は好きだー………いつか、夜もお風呂に入れるかもしれないけどね………」
『くっ………私にも体があれば………晴の体とか乗っ取れないかなあ』
「ふふ………僕は男だよー?夜はその体を使える?」
『………くっ!!』
「ふふふ………夜に勝ったっ!!」
『何に!?………あ』
「んー?どうしたのー夜?何か変なものでもぬわっひゃあぁぁぁ!!」
「晴さん確保しましたっ!!」
こ、この声は………エリカさん!?後ろから抱きついてきてる!?思わず変な声が出ちゃったよ!?
「ちょ、ちょっと………一体どこから湧いて出たんですかエリカさん!?」
「実は最初からいましたよ………晴さんと夜さんの話を聞いていてもたってもいられませんでした………」
「な、何に!?」
「晴さん………女装したことがあるんですよね?」
「ぎくっ!」
「女装したことがある………つまり、晴さんは女の子っぽいってことですよ!!」
「うっ!し、仕方ないんですよ!?夜に夢の中でよくわからない服を持って迫られたんですよ!!僕はなぜか体が動けなかったし!!」
「それでもあんまり抵抗しなかったんじゃないんですかー?」
「抵抗はとことんしましたよ!!それに僕は女装が嫌いなんです!!そもそも喫茶店で働いてたら何故か制服がメイド服しかなかった事があったんですよ!?おかげでその日はメイド服着て働いたし!!そのお店のパティシエみたいな人がイタズラかと思ったら実は単なる手違いだったらしいし!!さらにそれをわざと閉店まで黙ってたし!!僕に女装趣味があるって勘違いされたし!!おまけにそれを一部の友だちにも見られたし………あんなのはトラウマだよ!!というかいい加減離れてよエリカさん!!」
「ふふふ………私には三つの晴さんを離せない理由があるんですよ!」
「じゃ。じゃあそれって何!?」
「一つ目。わたしは今………完全に裸、つまり全裸なんです!!晴さんに振り向かれたかこの体を全部見られちゃうんです!!」
「おもいっきりその体を僕に当てているのは関係ないの!?」
「当てるのは別にいいんです!これからも朝とか夜になる度に抱きつくからいいんです!!服の有無は関係ないんです!!見られるのはなんだか嫌なんです!!夜のおかずには私を食べて欲しいんですー!!」
「おかしい!僕は人肉を食べるつもりはないからね!?」
「………はあ。晴さんってその辺の知識はないんですねー………はっ、それって晴さんを私好みにできるってことですね!?こうしちゃいられません、今すぐ私と布団に行きましょう!!」
「な、なんか嫌だ!!布団に行きたくない!!抱きつきっぱなしでもいいからと、とにかくその理由の2つ目って!?」
だ、抱きつかれてて興奮っぷりがおかしい感じだけど………このままだとエリカさんの裸を見ることになりそうな気がするし………とりあえず話を聞いていよう………
「二つ目は………とりあえずこのまま沙苗ちゃんがここに来るまで待って晴さんをさらにからかいたいんです!!」
「前言、いや、全言を撤回するよ!もう僕はお風呂を出るからね!?」
『それなら三つ目を聞かせてほしいなあ、エリカ?』
夜は何を考えているんだ!?
「ふふふ………いいですよ………それは………晴さんが男なのかどうかを確かめるんです!!」
「んなあっ!?そ、それだけは嫌だからぁ!ちょ、ちょっと!!タオルを取ろうとしないでえぇ!!」
………あれぇ?視界が、もう………というか、また………視界が、暗くなってく?………いったい、なにがぁ………
「………あうぅ………こ、ここは?」
「おや、目が覚めたかい?」
「あ………神奈子さん?」
気がついたら………ここは、さっきまで晩御飯を食べてた部屋だった………あれ、今までのは何だったの?
「あの………僕は一体どうしてここにいるの?」
「あー………お風呂で溺れてたんだよ、お前は」
「え?」
「それをエリカが偶然見つけたらしいよ?」
「………え?というか、エリカさんってどのタイミングで僕を見つけたんですか?」
「エリカが風呂を出た後に風呂に入った晴が風呂を出るのが遅かったから見に行ったら溺れてる晴を見つけたそうだ」
………うーん………なんだか怪しいけど………本人に問い詰めればいいか。
「ところで、エリカさんはどこにいるんですか?」
「ん?お前の寝る布団に入って寝てる」
「………えっ?なんで?」
「布団の数が足りなかったからねえ。誰かが一緒に寝るしかないんだよ………なんか目がギラギラしてたような気がしてて、怪しかったけど」
「とっとと外に捨ててきます!!あんななーんか変な方向に進んでる人と一緒に寝たくない!!」
「鬼かい!?いくらなんでもひどすぎるだろう晴!!」
「いやいやいや!!僕はちょっと前までお風呂でエリカさんのせいで酷い目にあってたんだけど………」
「?お前………エリカと一緒にお風呂に入っていないだろう?私もなんとなく嫌な予感がして首を絞めながら聞いたけど一緒には入ってないらしいよ?なんか晴の叫び声が聞こえたから入って調べたら晴が溺れていたって言ってたよ?」
………あれ?沙苗ちゃんが来るのを待ってたエリカさんの事だし………嘘は多分つかないとは思うけど………
まさか。夢オチ………?
………僕の中でのエリカさん変態すぎるよ!!!
僕は一体どんな目でエリカさんを見てたんだ………!!
「………はあ。もう疲れました。もう寝たいです。布団はどこですか?」
「縁側に出て左に進んで突き当りの部屋だよ………それじゃあ私も寝ようかねえ。おやすみ、晴………」
そういって神奈子さんは多分自分の寝室に行った………
「………はあ。なんだか酷い目にあったけど………」
………エリカさんって一体何なんだろうか?と思って隣ですやすやと眠ってるエリカさんを見る。
………ん?捨てなかったのかって?最初はそんなことを考えてたよ。実際一回庭に捨てた。
でも………
「いや………捨てないで………お願いだから………いなくならないでよぉ………」
と。なんだかわざとらしい感じの寝言を言い出した。
ただそれでも放っておけなくって、結局拾って帰った。
………エリカさんは自称だけど転生者だ。僕はそのことについてあまり聞いてない。
それでも今は構わないと思う。
………一生ついてくるとか言ってたからね。とりあえずゆっくり一緒に過ごしていけばいいと思う。
その中で転生したことについて聞けばいい。時間は、きっと。まだまだたくさんあるはずだから………
『………私は放置?というか、晴って………なんで男なんだろうなぁ………』
本当に夢だったのかは内緒………まあ、きっとわかるはず。