ごめんなさい、皆さん。
『………なあ、晴。旅の目的って………』
「わかってるよ………忘れてないよ?だけどさあ。観光も少しくらいはさせてよ」
「そうですよ。私の行こうと思ってるところも後少しで着きますから。ちょっとした寄り道ですよ、よーりーみーちっ!」
『………はあ』
………夜はどうもエリカが嫌いなのか、それとも苦手なのか。こんな感じにとっつきづらそう。
というか………夜が早く生体アンドロイドを見つけたそうのはわからなくもない。でも、僕らにはその為に必要な街についての情報が何もない。
正直街が消えたのかもしれないと思ってる節もある。
それが本当なら………永琳は。もうこの世からいなくなってるのかもしれない。
それなら………墓の一つくらい、建ててあげたい。
とにかく。今は情報だ。勿論、日本に街があるという前提での話だけどね。
話を変えよう。僕らは今村の中を歩いている。目的はエリカさんの言っていた『居てくれても構わない』と言ってくれた人達に挨拶しにいくらしい。ちなみに服装を怪しまれなかったのは驚いた。
エリカさんに聞いたら「陰陽師とかは変わった格好をしてるから多分陰陽師に見られてるんだと思う」と言われた。妖怪退治ならとことんやったことがあるからある意味間違ってないかもしれないだけど。
でも………
「………あのさあ。もうここ通るの三回目だと思うんだけど………」
「そ、そんな事無いよ!………多分」
………この人………エリカさんはものすごい方向音痴だ!妖怪に襲われてた理由も休憩所を探してフラフラしてたかららしいし!!どこぞの三刀流マリモか!?
………よくもまあ今まで生きてこられたねぇ………というかいつまでふらふらしてたらいいの?
………はあ。
「大体僕らって今どこに行ってるの?それを先に教えてよ………」
「え?言ってませんでしたっけ?」
『全く。というか方向音痴なんだったら行きたいところくらい先に教えてくれた方がいいって………』
「うっ………ご、ごめんなさい………私は守矢神社ってところに行こうと思ってたんです。そこにいる人にお世話になってたんです」
ふーん………神社、かあ。お参りしておこうかな?というか早く行きたいなあ………はあ。いつになったらたどり着くのか………
「………あっ!やっぱり!!エリカお姉さんじゃないですか!?」
「ん?………あ、沙苗ちゃんじゃない!!大きくなったね………」
後ろの方から一人の小学生になりたてぐらいの女の子がやってきて、エリカさんに抱きついた。それをエリカさんはうれしそうになでてあげていた。沙苗………かあ。どこかで聞いた名前のような………気のせい?
女の子はなんというかすごい感じの髪の色をしていた。基本的には黒髪なんだけど………右側にあるサイドテールの部分だけ緑色の髪だった………どことなく、全ての髪の色が緑色に見えてしまう。なんでだろう?
「えへへ………そんなに大きくなってませんよー。ところでエリカお姉さん、この人は誰ですか?」
「ええ、紹介するわ。この人は八意 晴。私を妖怪から助けてくれた命の恩人よ。で、後晴には夜っていう名前の家族もいるのよ?」
「………へー!すごいですね晴お兄さんって!ところで晴お兄さんの家族の夜さんはどこですか?」
『………ここです』
「わわっ!!お、お化けさん何ですか!?」
『………もう、お化けでいいです………』
………何があったんだろう。さっきから疲れ気味な感じだなあ、夜。なんか悪いものでも食べたのかなあ………あ、夜には口が無いか。一体何があったんだろう………
「ほへー………世の中には不思議がいっぱいです………あ、とにかくエリカお姉ちゃんを助けてくれてありがとうございます!!」
「あ、ありがとう………」
………おかしい。さっきからなんか変な幻覚っぽい物が見える。沙苗ちゃんを見ていると、なんだか………セーラー服を着た大きくなった………さなえさんが見えて………
『川西能勢口、絹延橋、滝山、鴬の森、皷滝、多田、平野、一の鳥居、畦野、山下、笹部、光風台、ときわ台、妙見口っ!』
「なんで駅の名前を言ってるんだっ!!」
「きゃあっ!!」
思わず叫んでしまった………なんであんな幻覚が見えたんだ!?
「………もういいよ。君の名前教えてくれる?」
「は、はい………私は洩矢沙苗です!守矢神社の風祝をしています!」
「風祝………?聞いたことがないなぁ………」
「ようするに巫女さんなのです!」
なるほd………待て待て待てっ!!巫女だとしたら格好がおかしい!!白地に青の縁取りがされた上着と、水玉や御幣のような模様の書かれた青いスカート………色が違うけど、ここまではいい!!だけどなんで脇を出してる服なの!?そんな服が巫女服な訳………
あ、あった。未来での話だけど………霊夢さんという前例がいた!!
ええい、この世界はおかしいことだらけだ!!気にしていられないっ!!面倒事が多い………
『………はあ。とりあえずさ、沙苗ちゃん。その………守矢神社まで案内してくれない?エリカが迷子になっててもう三周くらいしてるんだよ』
「ちょ!私迷子じゃないよー!!」
「それはない。というかもさすがに僕も喉とか乾くし。少し疲れた………」
「エリカお姉さんの方向音痴っぷりは筋金入りですからねー………」
『判決を言い渡します。エリカ・エクスチルダは………有罪です』
「やっぱり………僕はいつかやらかすと思ってたんだよ、エリカさん」
「何の話!?」
知らない。というか判決って。この間の合衆国日本とかいい、そんな知識一体どこから仕入れてるんだろう。永遠の謎にしておいた方がいいかなぁ………
「………と、言うわけで。エリカお姉さんは私が拾ったんですよー」
「あはは………何やってたんですかエリカさーん?」
「うっ………私も若かったんですよ!!」
どうも今から行く神社に沙苗さんのお母さんがいて、その人にエリカさんはお世話になっていたそうです。で、エリカさんは雨がふって増水した川に流されていたのを沙苗さんに拾われたそうです。
というか、今も若そうだけどねえ………多分17歳ぐらいじゃないかな?で、沙苗さんは7歳かそこらかなあ。ちっこいっ!!
「………なにか変なこと考えてませんか?」
「か、考えてないよ!?」
「ふーん………さて、つきましたよ?ここが私のお家、守矢神社です!ようこそ、晴お兄さん!」
「あはは、お邪魔しまーす!とりあえずお参りしようかー」
『違うっ!早くエリカのお世話になった人に会おうよ!!』
「むー………夜さんはせっかちなのです!!今なら私の特製風砲をお見舞いしただけで許してあげます!!さらに特別台風砲もおまけにつけちゃいますよ!?」
『「何それ!?」』
「出るよ………沙苗の特製風砲………!!」
え、何驚いてるのエリカさん!?
「私の神社の十分の一を破壊しかけたあの、風砲………だと!?」
え、いつの間にか隣にいたこの子供って誰!?というか神社の10%を破壊しかけたって!?威力高すぎでしょ!?オーバーキルって言葉はないの!?
「さらに台風砲とか………本気でやめてくれよ、沙苗?」
「大丈夫です、神奈子様!!私のこの怒りももう止まりそうにもありませ「落ち着け」ひゃうっ!!」
今度は大人の女の人が出てきて………沙苗さんを抑えた。というか………風砲って結局何だったんだろう?
「ふう………うちの沙苗が迷惑をかけたね。この子は感情が高ぶると何かやらかす子だからね。後………風砲は本当に撃たせないでくれよ」
「………あのー。風砲ってなんですか?僕風砲について全く知らないんですけど」
「ふふふ………説明しよう!沙苗には『風向きを操る程度の能力』があって、沙苗は風向きを操って風をものすごい勢いで飛ばして相手を吹き飛ばす技が風砲なんだよ!それで、その威力が最高峰にまで高ぶった時に撃たれる風砲が台風砲なのだよっ!!」
ふーん。よくわかった。イマイチわからないところはなんとなく理解しておこう。というか、沙苗さんはいったいなんなんだ。ふつうに化け物に近いよ………僕ほどじゃないけどねー………というか誰だよこの子。
「そして………それの被害者がここにいるエリカね。いやー本当にあれでエリカが死んだのかと思って埋めかけたのも今となってはいい思い出だね………」
「今でも私にはものすごく悪い思い出なんだけどねー!!………相変わらずですね、諏訪子さん」
………あのー………
「ふふー。私は多分これからも変わらないよー?………お久しぶり、エリカ。元気そうだね」
…………あのー…………
「私も元気ですけど、神奈子さんはどうです?あ、沙苗ちゃんはすでに元気いっぱいなのを確認してます」
……………あのー……………
「りょーうかいっ。私も元気だよ、信仰もいつもと変わんないねー。ま、もともと信仰は多かったし、特に変化はないのも仕方ないけどさ。今でも十分幸せだよ………それで、ここに来たってことは………答えを出したのかい?」
………………あのー………………
「ええ、もちろん出しましたよ………私の答えは…………」
………ていっ。とりあえず近くにいた沙苗ちゃんの髪をワシャワシャしてみる。
「ひゃわっ!何をするんですかー!!」
「僕は完全に放ってかれてて寂しいんだよ!!沙苗ちゃんあの人ら誰!?」
「え、知らないんですかー!?あの二人は神様ですよ!?」
………え?エリカと………神奈子って人が?よーくみると………神奈子って人の髪の色は青紫色で、赤い目で………よく見たら、しめ縄みたいなのが首元、白い長袖上着の袖、腰回り、足首………いろいろなところに巻かれてる。
それになんだかきれいな感じの鏡が首元にある。
………神だ!なんのかは知らないけどこの人は神だ!多分エリカは絶対違うけど!あのおっとりさんは神じゃない。
「おおっ、拝まれると悪い気はしないねえ。気に入ったよ。だけど………少しはこっちも拝んでやりな」
そう言われて神奈子さんは………さっきからあまり気にしていなかった子供を指さす。なんだかウキウキしてる感じで少し可愛かったけど………いや、神なわけがないと思う。まだエリカの方が神っぽいし。
頭のヤツのせいで。あれ………何?帽子に目玉がついてる。どっちかっていうとこの子は妖怪だよ………ん、妖怪?
「よーし沙苗ちゃん。あそこにいる子供型の妖怪に風砲撃っちゃっていいよ」
「まさかの妖怪扱い!?私一応神なんだけどー!?」
「あんなのは神じゃないと思う。撃って、沙苗ちゃん」
「うーん………撃ちたいのはやまやまなんですけど、お母さんに撃つのはちょっと………」
えー………じゃあ僕が殺る必要が………ん?お母さん?
「………え、あの子供がお母さん?」
「?そうですよ?」
「………こっちの………えっと。神奈子さんですよね?」
「ああ。ちなみに私は八坂神奈子。あっちは洩矢諏訪子だよ」
「なるほど。とにかく、この神奈子さんがお母さんじゃないの?」
「神奈子様は第二のお母さんって感じです!諏訪子様が私を産んでくれた本当のお母さんですよー!」
『………は?ねえ、エリカ………』
「大丈夫。言いたいことはわかってる。私も叫んだから。叫んだ声の大きさでうるさいっていわれてボコボコにされたねー………」
「………はは………夜。せっかくだから………一緒に叫ぶ?」
『同感だね。盛大に叫ぼうか………』
「ほう。叫ぶのならよそでやれ………と言いたいけど、私に一発お前を攻撃させてくれるだけで許してあげよう」
その程度で済むのなら別にいいや………それじゃあ………
『「そんなわけがあるかぁぁぁぁぁ!!!!」』
そして、僕の視界は真っ暗になった。