東方晴天録   作:あおい安室

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つ、疲れた………



第21話+:晴さんと、私。

「う………うぅん」

 

ここは………何処だろう?

目をあけるとここは窓から少し光が入ってきている、小さな小屋だった。

外から入ってくる太陽の光の強さからすると多分夜明けくらいなんだろうと考えた。

………どうしてこんなところにいるんだろう………そんな疑問は私の近くで眠っている一人の少年………八意 晴を見て解決した。

 

「っ!!」

 

思い出した。私は………妖怪に殺されかけたんだ。そこに、この子が現れて、私を助けてくれたんだ。

晴さんに向かって手を伸ばそうとして………気付いた。

 

「う、腕が治ってる………!!それに、声も出る!!」

 

どうして?私はあの妖怪にボロボロにされたはずなのに………腕には傷痕がほとんど無い!触ってみないとほとんどわからない………

………まさか、この子が………私を治療してくれたの?

でも、一体どうやって………それに、晴さんはどうして銃なんか持ってるんだろう。

この世界で見た飛び道具なんてまだ弓くらいなのに………

そこまで考えて気付いた。晴さんの服装だ。これは………迷彩の施された軍服だ。

こんな物、いったいどこで手に入るのか………彼の右肩付近にはワッペンがあった。

 

「『Militaires Sans Frontierès』………国境なき軍隊?」

 

そんな組織がどこかにあるのだろうか?聞いた事は無い………

ワッペンを見るために右肩に近付いた時に気付いた。

晴さんが自ら切り落とした右手は………切り落とされたのが嘘みたいにピッタリくっついていた。

触ってみて傷が無いか確かめようとしたその時。

気付いたのだ………

 

「この子………私よりも肌質が良さそう!?」

 

柔らかすぎもしないし、張りすぎてもいない。一体なんなんだ、この肌は………

 

「………妬ましい。私女なのに………それよりも良さそうとか………」

 

………それに、なんだかいい匂いがする。頭の方から?

私はその匂いをもっと嗅ぎたくなってしまい、彼に覆い被さったところで気付いた。

 

「………私がこの子を押し倒したみたいに見えちゃうじゃない………」

 

何を考えてるんだろう私………早く退かなきゃ………そう思った時。

 

「ん………むう………」

 

彼が寝返りをうった。私を巻き込んで。つまりそれは………上下が逆になるってこと。

 

「え?ちょっ………」

 

彼の顔が………私の顔に近付いてくる。嘘………何このラブコメ雰囲気!?

は、早く降ろさないと………

 

だけど、抵抗できなかった。いいえ、しようともしなかった。

この子は私の命の恩人とも言える人だから………別にこの子の寝相が悪かったからこの子がいい思いを少しくらいしたって………

………でも、この身長からしたらこの子、元の世界だと中学一年くらいの年齢だし………いい思い、なのかなあ。

 

『………バカでしょあなた』

 

「~~~~!!!???」

 

叫びそうになったところで必死に自分の口を押さえた。いったい誰の声!?それにどこから………!?

 

『………ここです。ここ。晴の胸ポケットです』

 

「………え?」

 

そういわれて確認すると、胸ポケットには万年筆が入っていた。

 

「ま、まさか………喋る万年筆………!?」

 

『………説明も面倒だし、今はそういう事にしておくよ。とりあえず晴を退かしたら?いつまで晴の下にいるんだか………』

 

「す、すいません!!」

 

そういって私はこの子を自分の上から退かして仰向けにした。

 

『ふう………とりあえず、はじめましてかな、怪我人さん。私は夜。この子………晴の家族かな?とりあえずよろしくね?』

 

「は、はい………」

 

どうして万年筆が喋るんだろう………ううん、晴さんが空を飛んでた時点で色々おかしいんだし気にしちゃいけないんだ。そう思って自分を無理矢理納得させる。

 

『………それで、怪我人さん。あなたの名前は?』

 

「え、あ………エリカです!エリカ・エクスチルダです!昨日は本当にありがとうございました!」

 

『へえ………いい名前だと思うよ?それと、昨日の事なら晴が起きてからお礼をして欲しいかな。私がやったんじゃないんだし………あ、でも晴はしばらく起きないよ?』

 

「………どうしてですか?」

 

『昨日ね………晴を女装させたら、以外と似合ってて。それを見て落ち込んじゃってるの。精神閉じちゃってる』

 

何をしてるんだろうか。というか精神ってそんなに簡単に閉じれるんだろうか。

 

「………あの、夜さん。少し聞きたいんですけど、私の怪我を治したのって晴さんなんですか?」

 

『んー?うん、そうだよ?怪我人とかは晴は放っておけないからね。幸い治療道具は全部揃ってたのと怪我が見た目程酷くなかったから、簡単に治せたよ』

 

「そうですか………あの、夜さん。まだ気になる事があるんですけど………どうして切り落とした腕が戻ってるんですか?どうして銃を晴さんは持っているんですか?それにどうして空を飛べるんですか?それになんでそんな服を着てるんですか………?」

 

『ちょっと待ってよ。質問が多いって。最後から順に答えるよ?まず服はよくわからないの。どうも未来から来た人からもらったらしいんだけど、詳しくはよく知らないかな』

 

………未来から来た?そんな人っているんだ………ドラえもんみたい。

 

『空を飛べるのは、この子は体を実体のある風に変えれるからなんだ』

 

「実体のある………風?」

 

『何ていったらいいのかな………風みたいに体をとても軽くできるけど、人間と同じに潰されたり触れたりするって感じかな。ちなみに同じ様に晴は炎、雷、水になれるんだよ?すごいでしょ!』

 

………この人本当に人間?

 

『それで、銃の話になるんだけど………その前に、聞かせてもらえるかな。エリカ………本当に、この世界の人間?』

 

「っ!?」

 

な、なんでそんな質問が!?私が驚いていると、質問に合わせるかの様に晴さんが起きようとしていた………

 

「ん、んん………おはよう、エリカさん」

 

「お、おはようございます………え?な、なんで私の名前を知ってるんですか?」

 

『晴は実を言うとね………落ち込んでたのは本当だけど、精神を閉じたりなんかしてないよ。というかできないし。私とあなたの話を目を開けずに聞いてたんだ』

 

「ごめんね?ちょっとあなたが信用できなかったんだ………騙しててごめんね?でも………あなたも何か隠してるみたいだし、おあいこだね」

 

さらに驚いてしまう。まさか、あの寝返りもわざとだったの………!?

この思いどうすればいいの………って、違う!!そうじゃない!!

どうして怪しまれたの………!?

 

「話を戻すよ。銃について、ちょっと気になるんだよ………日本に銃が入って来たのは外国からのはず。なのに僕は外国を色々まわったりしたけど、銃について見たことも聞いたこともない………どうしてあなたが知ってるの?」

 

「あっ!?」

 

「正直に言って………あなたは何者?」

 

バ、バレてる………正体はバレてないけどマズい………逃げられそうにもないし………

 

「………そうそう。あなたの正体が何者だったとしても、僕はあなたを殺す気もないし、正体が何だったとしてもあんまり気にするつもりはないよ。僕の秘密も多分見られてるからね………僕が自分で自分の手を切り落とした後、何が起こったか見たでしょ?」

 

コクコクと、頷く。手を切り落とした後、闇の様な物が出てきて妖怪を切り殺した………

あれは今でも鮮明に思い出せる。

 

「教えてあげるね………僕の体は炎、風、雷、水に変えれる。だけど何にも変えていない時、体の中では炎、風、雷、水のエネルギーがお互いにお互いを打ち消しあって、無ともいえるエネルギーが生まれる………それが闇の正体。その無のエネルギーは、自分の体をある程度傷つけると出てくるんだけど、無のエネルギーは自分の意思で形を変えれるんだ。ちなみにあのときは剣をイメージした形にしてたんだ………さあ、エリカさんの番だよ」

 

「っ!!………本当に、信じてくれるんですか………!?」

 

「うん。さあ、話して。あなたは、何者なの?」

 

「………私は………前世を覚えている人間、転生者なんです」

 

『「転生者ぁ!?」』

 

「お、驚きますよね………すいません」

 

「え、あ、うん………まさか、二人目がいるなんて………」

 

………?なんて言ったのだろう。よく聞こえなかった。

 

「それで………前世で、銃を見たことがあったのでどうしてあるのかなと思っていました」

 

「そ、そうなんだ………えっと、話を戻すと僕の銃は未来から来た人にもらった感じかな?」

 

………こんなことを言える立場じゃないけど………少し怪しいような。思い過ごしだといいんだけど………

 

「さてと………エリカさん、これからどうする?」

 

「えっと………私は、旅をしていたんですけど………次の目的地についたらもうやめようと思っています」

 

『………あんなに辛い目にあったから?』

 

昨日の………痛めつけられたことを思い出すと………体が震えそうだ。

 

「わかった。とりあえず………」

 

ぐう……………

 

「え………あっ!ご、ごめんなさい!!」

 

「ご飯に………しようか」

 

は、恥ずかしい………!!




エリカの前世についてはいつか、書きます。

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