東方晴天録   作:あおい安室

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これ………いつもにましておかしいような………もうどーにでもなーれ。


第16話+:雷華の話。

………私の名前は雷華。一人の神といえる人物です。

神といわれるのにはもちろん理由がある。それは世界を管理する者だからです。

世界に異常があれば取り除き、修復不可能と判断されれば最悪世界を消滅させる。それが私、いや、私達神のしてきた事です。

これは、私にとってとても大切な一人の少年についての話。

 

彼の名前は、私も知っているけど、彼自身が自分につけた名前をここでは使わせてもらいます。

彼の名前は『八意 晴』。後に神の間では『ジェミニ・トラベラー』、つまり『双子の旅人』と呼ばれる二人の片割れです。

彼の存在について………話しましょう。

 

彼は元々一つの世界に起きた異常レベル1の『イレギュラー』、つまり『異常』でした。

異常レベルというのは世界においての異常のレベルです。レベル1は一般レベル。

『本来いるはずがないが、あってもほとんど世界に影響を与えない程度』です。私達神は基本的には対処しません。

ちなみに異常レベルは五段階です。

レベル2は『いるはずはないのに加え、世界に影響をもたらす程度』です。

神のミスによって稀に生じる転生者はこれになります。これも対処はほとんどしません。

レベル3は『いるはずがないのに加え、世界をある程度破壊する程度』です。こちらについては一部を除き対処します。

ある程度破壊するというのがわからない、ですか?

例えばの話をしましょう。先程話した彼………『八意 晴』は転生者です。転生する前は『魔法少女リリカルなのは』というアニメの世界にいました。もちろん本人はその事に気付いてはいません。

その世界で彼は『魔法少女リリカルなのは』の主人公『高町なのは』の『友達』でした。

しかし、彼と彼女の関係は『友達』で止まっているので、世界の中心ともいえる、主人公、『高町なのは』にはあまり影響を与えていません。

しかし、彼女と友達になった時期が早く、本来彼女に友達がいない時期からの関係でした。

そのため、彼は『イレギュラー』なのです。ですが、関係が『友達』止まりなので異常レベルは1なのです。

ですが、もし。彼と彼女が『恋人以上』の関係になれば。世界、つまり主人公に大きい影響を与えています。彼女は悲しい事に本来は結婚していませんしね。

あっ、これはアニメとかでの状況ですよ?ただ彼女同性愛っぽいところが………いえ、何でもありません。

とにかくこれは影響が大きいので異常レベルは2になります。

そしてある程度の世界の破壊というのは、世界において生きていないはずの人物が生きている、また、その逆などがあたります。

本来であればいないことによって進んでいた物語が、いることによって歪む事になりますからね。

これには記憶消去や意識操作を行ったりして対処します。

例外として転生者が関わっている場合は対処しませんが。

そしてレベル4は破壊のレベルがさらに大きく、世界そのものが大きく破壊される場合です。

例えばの話、この『魔法少女リリカルなのは』は三部作くらいなのですが、最初の方の話で主人公や主要人物のほとんどが死んだとします。

すると、後々出てくる悪人に立ち向かう人がいなくなることに繋がり、その悪人が世界を支配したりする………

という本来ならありえないことになります。

これの対処もレベル3と同じですが、転生者も異常を起こした理由によっては消去します。

そして、レベル5は他の世界にも影響を及ぼす場合なのですが………

そろそろ、『八意 晴』に話を戻しましょう。

 

あるとき、私はレベル4の異常を発見しました。

それは『東方project』というゲームの世界に起きていました。

『東方project』に登場する人物、『八意永琳』が全ての世界において定期的に行っている世界をリセットしたり、新しくつくりかえるという名目の世界滅亡、『ワールドリサイクル』に耐えたというのです。しかも、それを発見した時点で確認したところ1000回を越えるほど。それによって彼女は狂っているようになっており、このままではレベル5相当になる危険がありました。

前述のものも含めて彼女は世界というシステムでは異常でした。

そのため、私は即座に上層部に報告。そして、上層部から対処方法が渡されました。

それは………他の世界の『イレギュラーで、異常レベルが1の者』を殺し、わざと転生させる。さらにその『イレギュラー』に『八意永琳』を消させるために用意した特殊な能力をつけさせ、色々な人物の思考を誘導させて『八意永琳』の存在を消す、という方法だった。

『イレギュラー』とはいえ、生き物。私は反対したかったけど………できなかったんです。上層部には………勝てないんです。

そして選ばれたイレギュラーが………彼、『八意 晴』だったのです。

計画は順調に進みました。時々起きる危険は、うまく思考を操作して回避させました。

一番うまくやれたのはクローン、ZEROSとの戦闘回避です。大きかったのは『八意 晴』の説得でしょう。思考操作は神の特権とはいえ全く考えていないことをさせることはできませんからね。

………戦いは訓練という形にはなりましたけど。

彼は計画通りに『八意永琳』の存在を消しました。

そして、彼女のワールドリサイクルに耐える体質を受け継ぎ、彼は世界の表舞台からしばらく身を隠す事になりました………

さあ、彼の事を語るのであれば彼女についても話すべきでしょう。

彼女の名前は『夜』。『ジェミニ・トリッパー』の片割れ。

そして………殺人鬼、キラードールと呼ばれた、『八意 晴』のクローンでした。

彼女は前述の『八意永琳』が作り出した存在で、同時に心も、体もボロボロにされていました。

そんな彼女に私は接触を図ることにしたのです。

理由は、『八意 晴』への色々な事の伝達役をさせるためでした。そして、彼女にはその代償としてどんな願いでも叶える事を約束しました。

………ここまでした理由は、二つありました。

一つ目は『八意 晴』にあわせる顔がなかったからです。『夜』は願いを叶えるために騙した事を彼に謝っていますが、私には彼を私達神のせいで殺してしまったということを話していませんでした。それに、話すことを上層部に禁止されていました。

こんな私は、彼に会う資格がありません………

二つ目は………彼女が私に似ていたからでしょうか。

私は昔、一人の人間でした。あるときに、私は仕事で乗った飛行機が墜落するという事故にあいました。

そして、奇跡的に命をとりとめた私は、墜落現場をあさりに来たやつらに誘拐されたのです。

誘拐したやつらの目的は………私を奴隷にして、外国に売り捌くためでした。

色々な薬を、使われた。果てしない痛みや、快楽に気が狂いそうになった。

それでも、私は生きたかった。

体じゅうにタトゥーを入れられたり、発信機を埋め込まれたりもした。

体は、ガタガタだった。

それでも、生きたかった。

奴隷として売り捌かれた後は、色々な人物に売られていき、心も、体も、何もかもが。

壊されていった。

それでも、生きたかった。

いつの頃か、奴隷としての人生から逃げ出すチャンスが来たとき、私は、これで、自由に生きれると思っていたけど………駄目だった。

私を奴隷として買ったやつに、捕まった。

まるでサンドバックのように、もういらないおもちゃを壊すかのように痛めつけられ、体はもう綺麗だった頃の面影を失った。

そんな私の最後は………奴隷としての私を買ったやつが飼っていた動物に、体を食べられる事だった。

そして………精神は折れそうになった。実際折れていたのかもしれない。

だけど………

それでも、生きたかった。

生きたい。生きたい。生きたい。生きたい。

 

生きたい!!

 

どれだけの辛いことにあっても持ち続けた生きることへの執着心を、私は死んだ後で認められたのです。

そして私は………神になりました。

ただ………それでも、私の体が神となった今でも治っていない。

体じゅうにはタトゥーが。そして、動物の噛み痕が。下手なホラー映画にでる、ゾンビのようだった。それは、服でごまかすしかなかった。

不幸は、消えなかった。私の歴史そのものなんですから。

話を戻します。どんな目にあっても、彼女………『夜』は生きたいと願っていた。そして、私は『私の様にはなってほしくない』と。強く思い、彼女に関わったのです………

 

 

 

「………以上が、彼について。そして、あなたに関わった訳です」

 

「………ありがとう、雷華」

 

「………怒っていないんですか?私はあなたも騙してたんですよ?」

 

「その内容を聞くと怒る気にもなれないよ………それに、雷華の過去。確かにどことなく私にそっくりだったし………涙が出てきそうだよ」

 

「ふふっ………同情はしなくていいんですよ?私はあなたにとことん同情したんですから」

 

「それもそうだね………ところで、私の願いの形、あんなの………『晴の側にいること』になったけどよかったの?」

 

「ええ。構いませんよ?あなたが幸せなら………ただ。もう一つの頼みの、あなたの体はやっぱり与えれそうにはないです。転生扱いになるので申請が通りません」

 

「別にいいよ?………私は晴が好きだよ。だけど………よく考えたら私と晴は、ほとんどおんなじ人間だもの。愛し合うのはなんだかおかしいような気もするんだよね」

 

「でも自分の体が手に入ったら」

 

「「押し倒す」」

 

「………晴の何があなたをこんな人に変えたんでしょうか」

 

「さあ………優しさじゃない?………あっ、そろそろ晴が起きそう。私晴と睡眠とかを共にしてる意識体だしね。こうやって会ってるのもいつバレる事か………」

 

「まあ………大丈夫だと信じましょう………それじゃあ、またいつか、お会いしましょう。夜、さん………」

 

 

 

物語の歯車は、回っている。

 

 

 

 


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