TS転生だとしても、絶対に諦めない。   作:聖@ひじりん

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12話『介入開始』

 

「いい眺めね」

 

 私は旅団の気球に乗り、夜空を旅していた。

 

「ちょっとアンタ。気安く身体に触れようとしてんじゃないよっ」

 

 マチとじゃれ合いながら。

 

「しょうがないわね。やめてあげるわ」

 

 残念ながら、まだ一方通行の気持ちでしかないので、私は大人しく手を引く。

 

 一応、マチの手さばきを確認する意味もあったけど、本気の私には及ばない事がわかった。これならいざって時に力技で抑えられる。

 

「団長が連れて来い、って言ったから手荒な真似はしないけど……この状況で良く動じないね」

 

「ガールズハンターですから」

 

 マチに笑顔で伝えて、今度はシズクの横に移る。

 

 本を読んでいる所を邪魔するのはちょっと嫌だったけど、本能に従って胸に手を伸ばす。

 

「ん」

 

 どうやら、本を読むのに集中しているらしく、シズクは無抵抗で触らせてくれる。ただ、反応が薄いのはあんまり面白くない。

 

 頑張って、声だけでも引き出しましょうか。   

 

「んん」

 

 服と下着の上からでも、しっかりと分かる柔らかさ。着痩せするタイプではないらしく、大きさは見た目より小さいけど、もちろん文句はなし。微乳でも、女の子のおっぱいには変わりない!!

 

「アンタ、いい加減にやめな」

 

「マチが触らせてくれるなら」

 

「……はあ」

 

 マチの呆れ顔、頂いたわ。お金を払ってもいいレベルね。

 

「はっはっはっ、いい女じゃねえか。今度、手合わせしようぜ」 

 

「いいけど、死なないでよ……って、どうかした?」

 

 ウボォーの言葉に笑顔で返すと、何故かきょとんとされた。

 

「んーや。どれくれぇの実力があるか、本気で知りたくなっただけだ。俺達が蜘蛛だって知っていて、いつでも嬢ちゃんを殺せそうな状況でありながら、殺されないという確固たる自信。その上で挑発にも取れる言動なんて、並大抵の実力者じゃそうはいかねえからな」

 

 なるほど、そういう考えをしていたのね。

 

 ウボォーって、どちらかと言えば馬鹿なのかなと思っていたけど、中々に賢いわ。戦闘狂であると同時に、戦闘に関わる事に対して、物凄く真面目な観点も持てる。

 

 これこそ、並大抵の実力者じゃない証拠ね。

 

「お褒め頂き光栄よ」

 

 男なのが非常に残念だけど、クラピカに殺させるのは勿体ないかも知れないわ。場合によっては、助ける選択肢もありになる。

 

「フェイタンは、リナとちょっとだけ戦ったんだろ? どれくらい強い?」

 

 シャルナークがフェイタンにそう訊ねて、シズクを除き皆の視線がフェイタンに向かう。

 

 ただし、私はそんな事を無視して、またシズクの胸を揉む。一応、ちょっとだけ意識は向かわせるけど。

 

「……実力は能力次第ね。体術なら、蜘蛛の誰よりも強いと思たよ」

 

 どうやら、私の実力を読めるくらいには、実力があるようね。お陰で、体術なら基本的に負けないと理解できる。

 

「フェイタンがそこまで言うなら、嬢ちゃんはかなり強いって事だな。おーい、嬢ちゃん。能力は何系だよ?」

 

「特質系よ」

 

 私は手を止めないで、顔だけをウボォーに向けて答えた。

 

「団長やパクノダと一緒か。こりゃ、手合わせが楽しみになってきたな」

 

「手加減はしてあげるから安心していいわよ」

 

 手合わせが決定事項になっている事を無視して、私は微笑んだ。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 それから、気球が撃ち抜かれ、一時間くらい続いた空の旅が終わりを迎えた。

 

 不時着した場所は、原作と同じ通りの荒野。目下の地面には、黒服のおじさんがうようよしている。

 

 空に向かって適当に発泡される銃が、なんかリズミカルで音楽に聞こるのが面白い。

 

「オレがやって来らぁ。嬢ちゃん、一緒に行くか?」

 

 ……あれ、誘われた? ウボォーって一人で戦うのを好むんじゃなかったかしら。

 

「そうね……手伝うわ」

 

 多分、実力を見極める一端なんでしょう。

 

 私は素直に従って、ウボォーの後ろに付いていく。

 

「待て」

 

 一人の黒服が手で仲間を静止しウボォーに近づいて、ウボォーの顔に銃を構えた。

 

「客をさらったの、テメェらか?」

 

「ああ」

 

「この場面でええ──」

 

 面倒だったので、フライング気味に黒服の首を刎ねる。

 

 一般人相手なら、素手に念を込めるだけで余裕なのが非常に助かるわね。

 

「おいおい嬢ちゃん。俺の獲物を取らないでくれよ」

 

「だって、面倒だし……」

 

 できれば、クラピカが来る前に帰りたい。ばれても問題はないけど、ばれない方が面倒じゃない。

 

「それもそうか。なら、さくっと終わらせちまおう」

 

「ありがとう、ウボォー」

 

「いいって事よ。んじゃ、逃げたい奴は逃げな。一人も逃さねえけどな!!」

 

 ちなみに、こう呑気に会話している間も、しっかりと弾丸が命中していたのだけど……まあ、それは置いておきましょう。

 

 どうせ、取るに足らない出来事だわ。

 

「さてと……」

 

 視界の端で捉えた狙撃手二名の為に、手頃な大きさの石を二つ用意した。

 

 そして、視線を向ける事なく石を二つ投擲して、狙撃手の殺害に成功する。

 

 これで服が傷つく可能性を一つ排除できたので、黒服を適当に殺していく。もちろん、剣は使わずに身体のみで。

 

「そこまでだ、バケモンが!!」

 

 恰幅のある、ハゲのおっさんがバズーカーを構えた所で、小石を銃口に投げ入れる。

 

「あ?」

 

 気づいた頃に、時すでに遅し。案の定、爆発した。

 

 爆煙が晴れると、黒服たちとハゲの肉片らしき物が落ちている。焼き具合は、こんがりっぽい。

 

「焼き鳥、食べたいわね」

 

「オレは肉が食いたいぜ。この後、皆で飯でも行くか」

 

「賛成」

 

 逃げまどう黒服たちの悲鳴を無視して、ウボォーと会話を続けた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「っ!?」

 

 クラピカは、双眼鏡を使って見た光景、人物に息を飲んだ。

 

 体格がかなり良く、素手で人を紙屑の如く千切る男。

 

(なぜ、リナさんが……)

 

 その相方は、場違いな美少女。白いワンピースに、茶髪のポニーテール。どこか気怠そうに黒服を殺す様子は、ある意味、クラピカが知る普段のリナと相違が無かった。

 

「どうしたの、クラピカ?」

 

「いや……見てみるといい。相手たちは、桁外れに強い念能力者だ」

 

 クラピカは、動揺を隠せない相手に、動揺を隠そうと試みながら双眼鏡を渡す。

 

(理由は、後で訊けばいい。今はただ、任務に集中する)

 

 そう自分に言い聞かせて、クラピカは一度、リナに対する思考を止める事にした。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「まず、一人目よ。絶は中々のものだったけど、私に遠く及ばないわ」

 

 ウボォーと陰獣の犬が会話している途中で、地中から出てきそうだった陰獣を、地面を砕くついでに叩き潰した。

 

 確かな感触があったから、運が良くても瀕死状態ね。

 

「まじか、全然気づかなかったぜ」

 

「私は円が使えるからよ」

 

 実際には、事前情報を持っていたのと、使うまでもなく気配が分かったからだけど。

 

「あの面倒なやつか……細けえ作業は嫌いだ」

 

「ウボォーはそうでしょうね」

 

「なめやがって……死んで貰う!!」

 

 私たちの会話に痺れを切らしたのか、犬の言葉をきっかけに、三人で突っ込んでくる。

 

「美少女にそれは酷いと思わない? 死ぬのは貴方たちよ」

 

「は?」

 

 犬は首。

 

「え?」

 

 毛玉は胴体。

 

「あ?」

 

 虫は手足。

 

「全く。自分の実力をわきまえなさい」

 

「うぉぉぉ。何したんだ、嬢ちゃん!?」

 

 ウボォーが驚くのも無理はない。

 

 三人との距離はおよそ10m。飛び道具を使った様子もなく、私は右手を数回振っただけ。

 

 考えられる可能性は、具現化系の何かを"隠"を使って隠していた場合。そして、斬撃性の何かで、距離があっても攻撃が届く物。

 

 つまりは、"凝"で私を見ていないと分からない。想像だけだと、ちょっと判断するのが難しい事になる。

 

「ま、これが私の念能力なのよ」

 

 実際に使ったのは剣……まあ、気づかないでしょう。手の動きを、わざわざ曲線軌道にしておいたし。

 

 もしかしたら、後ろにいる旅団員には勘付かれているかも知れないわね。"凝"による視線は感じなかったから、恐らくだけど。

 

「そうか、こりゃ本当に楽しみだ。残る陰獣は六人……競うか?」

 

「乗ったわ。今のこれはノーカンにして、先に四人倒したら勝ちね。負けた方がご飯奢りで……何か問題あるかしら?」

 

「んや、問題なしだ。次は少し全力で行くぜ」

 

「期待してるわ」

 

 一つ、問題があるとすれば……。

 

 私は少しだけ移動し、ウボォーの背中で間接的に隠れている、ノストラード組を視界に捉える。

 

 クラピカと、ばっちり目が合った。

 

 やっぱり……いたわね。フォローが必要かしら。

 

「どうしたよ、ため息なんかついて」

 

「残る陰獣が、馬鹿じゃなければいいなと思ったのよ」

 

 つまらなさそうに見せて、足に付けておいたホルダーから携帯を取り出し、クラピカ宛にメールを作成して送信する。 

 

 ほどなくしてメールが返ってきたので、内容を確認してからホルダーにしまう。

 

 無事に帰ってくれて助かるわ。こんな所で戦闘なんて、誰の得にもならないし。

 

「あ、陰獣がそろそろ来るわよ」

 

 相手からすれば、"円"の範囲内に入っているなんて思ってもいないでしょうね。

 

「おお、まじか。お前ら、陰獣が来るってよ」

 

 ウボォーの言葉に、残りの旅団員が近くに集合する。

 

「マチィィィ!!」

 

 とりあえず、私はマチに飛びつく。

 

「来るんじゃないよっ」

 

 すると、全力で回避されてしまった。

 

「酷いわ。少しくらい触らせなさい」

 

「さっきも言ったけど、アンタはどこか胡散臭い」

 

 凄く的を射ているので、反論できないのが痛い。だけど、私はめげないわ。

 

「それでもっ!! マチが大好きなのよ!!」

 

 私の想いを、素直に伝えてみる。

 

「性的な意味で?」

 

「うん。あ、いや違……わないわ。そうよ、全部好きなのよ!!」

 

 的確なシズクの合いの手に、思わず本音が出てしまった。

 

「……アンタ、一回病院に行ったほうがいいよ。割りと真面目に」

 

 そう言って、マチは私から遠ざかる。

 

 どうやら、外したようね。今度は、別の方向を検討しないと駄目だわ。

 

「リナって、残念な人だね」

 

 シズクの言葉が胸にクリティカルヒットし、私はその場で項垂れた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 ……完全に、忘れていた。間違いなく、私のせいだ。

 

「よし、ウボォーの居場所がわかった。地図を用意したから、今直ぐ向かうよ」

 

 シャルナークの言葉で、数人が慌ただしく部屋から出て行った。

 

 クロロの隣でその様子を眺めていた私は、ため息をついて奴を睨む。

 

「熱い視線を感じる」

 

 語尾にトランプマークが付いてた、似非マジシャンの事を。

 

「知り合いだったのか?」

 

「一応。しゃべった事はないわ」

 

 クロロに質問され、ヒソカに対して嫌味を込めた言葉で返す。

 

「そんなナチュラルに嘘を付かないで欲しいな。僕と君の仲じゃないか」

 

「……はあ」

 

 本当に、余計な事をしてくれたわ。

 

 結論から言うと、クラピカの手によって、ウボォーが攫われた。

 

 その原因は、トランプを使って遊んでいる変態。原作の通りなら、この辺りの時間帯でクラピカと会って話をしている所のはず。

 

 なら、何故。アジトにまだいるかと言えば、恐らくはメールで済ませたから。

 

 とりあえず私が手を回して、クラピカとウボォーの戦闘を避けようと試みたのに、陰獣との戦闘中にウボォーが攫われた。

 

 手段は原作と一緒。キッカケは、両方に確認を取った訳じゃないけど、多分ヒソカの密告。大方、私が旅団と一緒にいると聞いて──「面白そうだ」の理由でやったんでしょう。

 

 もっとも、私が旅団と一緒にいると伝えて起こったはず。ウボォーが攫われたのは偶然じゃなくて必然で、その理由は強化系が良かったから、に違いない。

 

「どうやら、ヒソカに気に入られているようだな。で、リナと言ったか。お前の目的はなんだ?」

 

 ただ、ただ冷静に。それでいて強い意志を全身から感じる。

 

 特に強く感じるのは、交わした瞳から。返答次第じゃ、容赦しないという明確な殺意だわ。

 

「そうね……」

 

 目標は色々ある。その中でも最優先は……やっぱり、アレになるわね。

 

「救済よ」

 

「…………その言葉に、偽りは?」

 

「ない」

 

 私は、一段と鋭くなったクロロの視線を受けながら、そう断言した。

 

 ヨークシンでの最優先事項は、パクノダの死亡回避。彼女は蜘蛛の為に望んで死んだのかも知れないけど、私が存在していて原作女子を死なせる訳にはいかない。

 

 だから、遠回しにウボォーを守ったのだけど……ヒソカのせいで無駄になった。

 

 正直、今からでも余裕で間に合う。けれど、クラピカの事を考えると転がる方向に転がれ、としか思わない。

 

 私が介入するのは、一度だけ。ウボォーの救済に一回手を回したから、この後でウボォーに手を回す気は、恐らく起きないはず。

 

 自分の事なのに予定が未定なのは、私の気まぐれな性格から。それに加えて、対象が男という点。ぶっちゃけ、目標に関係ない点。

 

 この三つの理由から、私は動かない事になりそう……と、自己判断している。

 

 もちろん、マチ、シズク、パクノダから、誰かの身体を対価として出してくれれば、問答無用でクラピカを殺すのだけど……まあ、それは私から提示する事もないし、よっぽどの状況だわ。

 

「…………なるほど。蜘蛛の未来を知っているのか。すると、タレコミはお前が……いや、その可能性は皆無か。お前が何らかの能力を使って知っていても、競売品を守る意味がないしな。なら、お前の目的は他にもあるはずだ。しかも、今の救済という言葉と、ほぼ同レベルの目的だろう?」

 

 で、この男、賢すぎない?

 

 確かに言葉の選択が危ういとは思っていたけど……やっぱり、クロロあってこその旅団って訳ね。カリスマ性が半端じゃないわ。

 

「ええ。クロロの推測通りよ。お望みなら、それも教えるけど?」

 

「いや、フェイタンの言葉で理解した。ガールズハンター……つまり、女だな。ここからは俺の推測になるが、お前が知っている未来だと、三人の内の誰かが死ぬんだろう。だからお前はここに来た。救済とは……ある対象にとって、好ましくない状態を改善し、望ましい状態へと変えることを意味した言葉。自分の目的が救済なら、その蜘蛛の未来を変える事によって、お前に利益が出る。つまり、三人が無事なのだろう。ガールズハンターが女を手に入れると直訳して、手段や合意を問わず身体を手に入れる事であるなら、お前にはその実力がある訳だ。そして、その実力は蜘蛛の未来を容易く変えるほどの力。それと同時に、蜘蛛の事情はお構いなしと見た。お前の、女に対する執着は分からないが、節操なしでもないはずだ。蜘蛛の三人を狙いに来たのが良い例だな。これらから考えられるお前の性格は……欲望に実直でいて気まぐれ。目的の為なら手段を問わず、親しい者でも男なら手に掛ける冷酷さを持っている。逆に、女の為なら自身の命を差し出すほどに狂っている。もっとも、そうならない為の力なのだろう? 救済の成功率も、軽く100%と見た。言い換えると、私の要求を飲んでくれたらオマケも付ける。三人のオマケに、蜘蛛が無傷で済む可能性も選ばせてあげる……って所か。どうだ? かなり的確だと思うが?」

 

「驚きを通り越して、久々に危険を感じたわ」

 

 原作じゃ分からなかったけど、ここまで賢いなんてね。

 

「ある意味、危険を感じているのは俺の方だ。これだけ的確に突いたのに、オーラに微塵の揺らぎも感じられなかったからな。お前……いや、リナ。取引をしないか?」 

 

 この言葉が、このタイミングで来るって事は……なるほど。こんどは逆に驚かせてあげましょうか。

 

「蜘蛛全員が私の為に無償協力と、未来の情報及び、適度な協力ね?」

 

「…………そこまで分かっているなら、言葉にする意味もないか。どうだ?」

 

 蜘蛛が私個人の傘下に入り、その代わりに蜘蛛への協力……ま、美味しい条件ね。取引に見えて、一方的な協力関係だし。

 

 クロロは、それを見越してでさえ、取引と言った。

 

 私の性格を読んだ上での持ち掛けだから、取引で間違ってはないけど。

 

「もちろん、オッケーよ。契約書は、蜘蛛全員の命で良いかしら?」

 

 本当に一方的。もう、脅迫といっても差し当たりない。

 

「愚問になるが、リナにその力があるならな」

 

「愚問ね」

 

「取引、成立だ」

 

 クロロが右手を伸ばしてきて、私は笑顔でそれに答えた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「集まって貰って早速……お前たちには勝手で悪いが、蜘蛛はリナに無償協力する事になった」

 

 あれから数時間経って日付は変わり、九月二日。ウボォーを除く全員が、アジトのメインルームに集められ、クロロからの説明が始まった。

 

 ただ、あれだけじゃ意味が分からなかったのか、何人かが首を傾げている。

 

 当然よね……あ、レアアイテムゲット。

 

 私はそんな中、モンスターをハントするゲームで遊んでいるけど、これが中々面白い。

 

「もちろん、俺の独断だ。だからこれから、簡単な説明を行う」

 

 クロロが一拍置いて口を開く。

 

「まず、リナがガールズハンターで、実力のある念使いだと知っているな?」

 

 旅団員が全員頷き、クロロはそれを見て言葉を続ける。

 

「その実力は、確かめた訳じゃないが、ここにいる俺たち位なら余裕で殺せるそうだ。そして、リナは……今日、ウボォーが攫われる事と、俺たちが競売品を奪う事を知っていた」

 

 クロロの言葉で十人から、それぞれ濃度の異なる殺気を向けられた。

 

 もちろん、スルー。私は任務報酬を受け取り、鍛冶屋にキャラクターを走らせる。

 

「それがリナ自身の能力かは不明だ。しかし、その情報を悪用された訳じゃない。そこで俺は、リナの持つ未来の情報と、ガールズハンターのリナに無償協力を交換した。ここで最初の言葉に戻るが、俺の勝手だ。協力的になるかどうかは自分で決めてくれ。ただし、契約書は蜘蛛の命。こちらからの契約破棄は、蜘蛛の壊滅だと思って貰っていい」

 

 バキッ──と、木が砕ける様な音が響き、そちらに視線を向けた。

 

「ならここで契約破棄して……その女を殺せばいいだけだろ? 団長よ」

 

 ノブナガ右横には砕けた木箱があり、強く握られた右拳で壊した物だと気づく。

 

 今度は視線をゲーム機に戻す事で、スルーに決め込む。

 

「そうだな、それもありだ。リナは女を殺さないと決めているようだし、パク、マチ、シズクは最低でも殺されない。蜘蛛の復帰も可能だろう。ただ、それでどうなる? さっきも言ったが、リナに協力すれば未来が手に入る。これは本人からの情報だが、このまま進めばメンバーが半数以下になるそうだ。これを回避するにはリナの情報が不可欠で、場合によってはリナの協力を仰ぐ事になる。つまり、リナが俺たちに譲歩してくれただけに過ぎない。リナにとってこの取引は、ノーリスク・ハイリターン。俺たちにとって、ローリスク・ハイリターンだ。分かるか?」

 

「分かるが、ならその情報だけで良いんじゃねえか。半数を失う事を念頭に置いて、安全に進めば──いてっ!? 何しやがる、マチ!!」 

 

 このくらいの敵、一撃で倒してほしいわ。

 

「分からないのかい? アイツはガールズハンター。そもそも、私を含めた三人にしか興味が無い。そして、それが目的って」

 

「分かってるよ。だから、あの女を殺して終いだろ」

 

「ノブナガ。ならなんで、俺からこの条件を出した?」

 

 クロロがノブナガに近づいて、質問を投げかける。

 

「そりゃ……未来の情報が欲しいからだろ?」

 

「ああ、そうだ。そして、リナ側の条件はなんだ?」

 

「無償協力……ん? 何にどう協力すんだ?」

 

「つまり、そう言うことだ。別に、内容は決まっていない。そして、リナが情報を出す条件もない。言っただろ? 気まぐれだと。情報が正しいかは不明だ。だけど、正しいかも知れない。そして、情報がなくても、明確な協力という対価を差し出せばリナは答えてくれる。こちらからの破棄と言っても、リナの情報が間違っていれば契約破棄でもない。当然の権利だ。それに、前提条件として……リナが、蜘蛛を滅ぼす可能性は未定。あるかも知れないし、ないかも知れない。未定と未定。これは、取引と称した、友好関係だと思ってくれ」

 

 あー、やっと倒したわ。話も終結に向かっている様子だし、そろそろ口を挟みましょうか。

 

「ただのギブアンドテイクよ。私は三人の身体で遊べればいいし、クロロは未来の情報が手に入る可能性があればいい。そもそも、最初から三人を奪う事は可能だし、別に我慢する意味もない。そりゃ、蜘蛛を壊滅して、反抗的なマチを快楽で堕とすとかは中々にそそるシチュエーションだけど……あ、本気でやらないわよ? 女の子の幸せが一番だわ」

 

 あのオーラが出ていたので、想像の途中で思考を切ってフォローを入れる。

 

 もっとも、マチから離れていたのに、マチに離れられたのはちょっとショックを感じた。

 

「ま、つまりは……信じるも信じないも自由よ。私は本当の事しか言わないし、実力も本物。疑っているなら、少しだけ能力を見せてもいいわ」

 

「……なら、少しだけ見せてくれよ」

 

「了解」

 

 これで露骨に警戒されるのは嫌だけど……とりあえず、フェイタンの能力でも見ましょうか。一応、原作知識として知っているから確認の意味を込めてだけど。

 

 原作キャラで、知らない人の能力を見るのは流石に怖い。身体に影響は出なさそうだけど、心に影響が出ると困る。もしかしたら、見えない可能性もある。

 

 じゃあなんで、こんな能力にしたかって言われたら、原作キャラ以外を見る為なのよね。戦闘補助としての能力だし、原作キャラとは余程の事がない限り、戦闘もしないと思っていたから。

 

「ペインパッカー」

 

 あ、ライジング・サン以外に、数種類もあるのね。知りたくなかったわ。

 

 フェイタンの能力を知る全員が息を飲む中、私はそんな事を考えていた。

 

 

 




遅くなった、変な所で切った気がした……でも、気にしない。


書きたかったクロロとの会話が終了、しかしプロットなしはやっぱえり厳しいなぁ。

今度から、しっかりつくろう。難しい話、難しいし。

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