魔剣伝説   作:夢雨麻

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第七振

 俺は今、兄さんの仕事場にいる。

 仕事の見学とか、兄さんへの用事ではなく。

 あの女───ニーナ・ヴォルスングというらしい───や、他の今回の事件に関わった人間の無罪を主張するために、「聖剣騎士団」を訪れている。

 遅れて到着した彼らや教諭たちが、殺さずに捕縛して詰問を行おうとしていたからだ。

 

「この人たちは皆"寄生"されてるんです」

 

「慎哉、ふざけてるのか?」

 

「兄さん、本当のことなんだ」

 

 兄や面識のある人もいるなか、なんとか説明しようとするが、証拠も何もないので信じてもらえない。

 

「まぁ、待て。話を聞こうじゃないか」

 

 周りの人、兄さんも含めた全員が姿勢を正した。

 何事かと振り返ってみると、テレビなどでよく目にする「聖剣騎士団」の団長で、聖剣『天叢雲剣(あまのむらくも)』の所持者、須佐京司(すざきょうじ)さんだ。

 慌てて自分も姿勢を正す。

 しかし、京司さんは笑いながら、

 

「ハハ、そう畏まらなくてもいい」

 

「は、ハイっ」

 

 この人はかなり強いし、ルックスも最高。老若男女問わず、人気なのである。

 そんな超が付くほどの有名人を前にして、緊張しないわけがなく声が裏がえってしまう。

 それを見て、再び笑みを浮かべる京司さん。

 

「ところで、慎哉くん………だったかな?少し話を聞かせて貰えないかい?」

 

 そう問われ、断るわけもなく説明を始める。

 

「まず、僕はニーナ・ヴォルスングという女性と戦い、異変に気付きました」

 

「ほう、その異変というのは?」

 

「妙に好戦的な態度に反して、目が虚ろでした」

 

「ふむ」

 

「そこで僕は、魔法で薄く伸ばした焔で彼女の体内を探りました」

 

 なんというか、変態的な物言いだが上手く言葉が見つからなかった。

 しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに、京司さんは続きを聴いてきた。

 

「そうしたら、脳の一部に彼女の生体反応とは異なるモノを発見しました」

 

「つまり、それが『蟲』………ということかい?」

 

 先に言われてしまう。流石は歴戦の猛者。ある程度まで説明すると、大方わかってしまう。

 しかし、説明が省けたのでさらに話を続けた。

 

「そして、その『蟲』を僕の焔で灼き尽くしたところ、彼女の目に光が灯りました」

 

「ふむ、なるほど。わかった。至急、残りの人の体内からも消してやってくれ」

 

 なんと、俺の話を信じてくれた。

 自分で言うのもなんだが、俺だったら絶対に信じないだろう。他の騎士団の人も、そう感じたらしかった。

 

「団長!いくら奥斑隊長の弟と言えど、信用なりません!」

 

 ごもっともだ。というか、兄さんって隊長だっのかよ。初耳だわ。

 

「そうか、君が和騎くんの!いやぁ、すばらしいね!兄弟揃って強者とはねぇ………」

 

 京司さんは知らなかったらしい。が、それは関係なく納得のいっていない人が、

 

「こんなガキ、信用なりません!ただでさえ、時間が惜しいのに!」

 

と、訴えかけた。

 それに対し京司さんは、

 

「時間が惜しいからこそ、僅かな可能性にかけるべきだ」

 

 そう言われ、団員は何も言えなくなる。

 

「それじゃあ、頼むよ」

 

「はい!」

 

 そう言い、詠唱を始めた。

 

 

 

 

         ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 十分後、全員の体内から『蟲』を消した。

 団員の驚きだったのが、全員が全員、一様に感謝の言葉を言ってから気を失っていったことだ。

 

「確かに、表情に変化がみられた」

 

 京司さんも、驚いていた。

 

「ありがとう、慎哉くん。君には感謝しても尽きない」

 

「いえ、当然のことをしたまでです」

 

 すると、兄さんが一つ質問をしてきた。

 

「そういえば、慎哉も剣を手に入れたらしいな。見せてくれないか?」

 

と、言われた。

 隠す理由もなかったので剣を出した。

 

「出てこい、『バルムンク』」

 

 顕現させるのに、まだラグがあるが成功した。

 しかし、周りの反応は普通だったが、兄さんと京司さんは驚愕していた。

 

「どうかしたんですか?」

 

 そう、京司さんに問いかけると、

 

「『魔剣』………、まさかこんな身近に現れるとは」

 

「慎哉が、『魔剣』の………!?」

 

「今回の件は、それも原因かもしれんな」

 

 何の話をしているのか、自分や兄さんたち以外の団員もわからなかった。

 

「あの、何かおかしいですか?」

 

 そう聴くと京司さんが、心して聴いてくれ、と言って続きを話した。

 

「『魔剣』………、神をも殺す剣。それ故に、強者たちが所持者を殺してまで手に入れようとするもの」

 

 今、なんと言ったか。強い奴らが、俺を殺してまで手に入れようとする可能性がある、ってことか!?

 

「………これから、大変なことになるぞ」

 

「なんか、よくわかんないっす。けど、殺される気はないです。寿命以外で死にたくないんで」

 

 恐らく、こうでも言っておかないと兄さんは俺から、この剣を手放させようとしてくるだろう。

 現に、兄さんはとても苦い顔をしている。だからこそ、一つ頼みごとをした。

 

「お願いがあるんですけど、いいですか?」

 

「何かな?我々にできることならいいぞ」

 

 よし、こうすれば納得してくれるんじゃないかな。

 

 

「僕の学校─────私立神琴学院(しりつみことがくいん)に、『聖剣騎士団』の私立神琴学院支部を創らせてください!」


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