俺は今、兄さんの仕事場にいる。
仕事の見学とか、兄さんへの用事ではなく。
あの女───ニーナ・ヴォルスングというらしい───や、他の今回の事件に関わった人間の無罪を主張するために、「聖剣騎士団」を訪れている。
遅れて到着した彼らや教諭たちが、殺さずに捕縛して詰問を行おうとしていたからだ。
「この人たちは皆"寄生"されてるんです」
「慎哉、ふざけてるのか?」
「兄さん、本当のことなんだ」
兄や面識のある人もいるなか、なんとか説明しようとするが、証拠も何もないので信じてもらえない。
「まぁ、待て。話を聞こうじゃないか」
周りの人、兄さんも含めた全員が姿勢を正した。
何事かと振り返ってみると、テレビなどでよく目にする「聖剣騎士団」の団長で、聖剣『
慌てて自分も姿勢を正す。
しかし、京司さんは笑いながら、
「ハハ、そう畏まらなくてもいい」
「は、ハイっ」
この人はかなり強いし、ルックスも最高。老若男女問わず、人気なのである。
そんな超が付くほどの有名人を前にして、緊張しないわけがなく声が裏がえってしまう。
それを見て、再び笑みを浮かべる京司さん。
「ところで、慎哉くん………だったかな?少し話を聞かせて貰えないかい?」
そう問われ、断るわけもなく説明を始める。
「まず、僕はニーナ・ヴォルスングという女性と戦い、異変に気付きました」
「ほう、その異変というのは?」
「妙に好戦的な態度に反して、目が虚ろでした」
「ふむ」
「そこで僕は、魔法で薄く伸ばした焔で彼女の体内を探りました」
なんというか、変態的な物言いだが上手く言葉が見つからなかった。
しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに、京司さんは続きを聴いてきた。
「そうしたら、脳の一部に彼女の生体反応とは異なるモノを発見しました」
「つまり、それが『蟲』………ということかい?」
先に言われてしまう。流石は歴戦の猛者。ある程度まで説明すると、大方わかってしまう。
しかし、説明が省けたのでさらに話を続けた。
「そして、その『蟲』を僕の焔で灼き尽くしたところ、彼女の目に光が灯りました」
「ふむ、なるほど。わかった。至急、残りの人の体内からも消してやってくれ」
なんと、俺の話を信じてくれた。
自分で言うのもなんだが、俺だったら絶対に信じないだろう。他の騎士団の人も、そう感じたらしかった。
「団長!いくら奥斑隊長の弟と言えど、信用なりません!」
ごもっともだ。というか、兄さんって隊長だっのかよ。初耳だわ。
「そうか、君が和騎くんの!いやぁ、すばらしいね!兄弟揃って強者とはねぇ………」
京司さんは知らなかったらしい。が、それは関係なく納得のいっていない人が、
「こんなガキ、信用なりません!ただでさえ、時間が惜しいのに!」
と、訴えかけた。
それに対し京司さんは、
「時間が惜しいからこそ、僅かな可能性にかけるべきだ」
そう言われ、団員は何も言えなくなる。
「それじゃあ、頼むよ」
「はい!」
そう言い、詠唱を始めた。
◇◆◇◆◇
十分後、全員の体内から『蟲』を消した。
団員の驚きだったのが、全員が全員、一様に感謝の言葉を言ってから気を失っていったことだ。
「確かに、表情に変化がみられた」
京司さんも、驚いていた。
「ありがとう、慎哉くん。君には感謝しても尽きない」
「いえ、当然のことをしたまでです」
すると、兄さんが一つ質問をしてきた。
「そういえば、慎哉も剣を手に入れたらしいな。見せてくれないか?」
と、言われた。
隠す理由もなかったので剣を出した。
「出てこい、『バルムンク』」
顕現させるのに、まだラグがあるが成功した。
しかし、周りの反応は普通だったが、兄さんと京司さんは驚愕していた。
「どうかしたんですか?」
そう、京司さんに問いかけると、
「『魔剣』………、まさかこんな身近に現れるとは」
「慎哉が、『魔剣』の………!?」
「今回の件は、それも原因かもしれんな」
何の話をしているのか、自分や兄さんたち以外の団員もわからなかった。
「あの、何かおかしいですか?」
そう聴くと京司さんが、心して聴いてくれ、と言って続きを話した。
「『魔剣』………、神をも殺す剣。それ故に、強者たちが所持者を殺してまで手に入れようとするもの」
今、なんと言ったか。強い奴らが、俺を殺してまで手に入れようとする可能性がある、ってことか!?
「………これから、大変なことになるぞ」
「なんか、よくわかんないっす。けど、殺される気はないです。寿命以外で死にたくないんで」
恐らく、こうでも言っておかないと兄さんは俺から、この剣を手放させようとしてくるだろう。
現に、兄さんはとても苦い顔をしている。だからこそ、一つ頼みごとをした。
「お願いがあるんですけど、いいですか?」
「何かな?我々にできることならいいぞ」
よし、こうすれば納得してくれるんじゃないかな。
「僕の学校─────