今日は何話か更新する予定です。
実悠が斬られた。
他でもない、俺のせいで。
「実悠!!」
俺はすぐに実悠のもとへ走った。
「慎哉………、逃げ……て…………」
未だに俺を逃がそうとする実悠。
「あらあら、間違って斬っちゃったわね」
女はそう言うと、こちらへ近付いてきた。
「それじゃ、『アロンダイト』は貰っていくわね」
そして、俺たちから4、5m先に落ちている、聖剣『アロンダイト』を拾おうとした。しかし、女を拒絶するかのように聖剣『アロンダイト』は光の粒子になって消えた。
そして、女は何かを悟ったようにこちらに近付いてきた。
「ごめんね、坊や。その娘を殺さないと、手にはいらないみたいなの」
しかし、俺は最初から疑問に思っていたことを問いかけつつ、実悠を背に立ち上がる。
「『聖剣』を奪う?そんなことできるわけないだろ?」
すると、キョトンとした表情でこちらを見つめてくる女。
そして、数秒の間を置き話し始めた。
「あら、坊やは知らないのね。坊や、『聖剣』出せないでしょ?」
確かに、俺は『聖剣』を出していない、正確には出せない。それを話していないのに、女にはバレている。
「坊やの
『聖剣』が、
俺は、『聖剣』が無いんじゃなくて、抜き出されていたのか!?
「そんなわけ………」
無いだろ、と言おうとしたが、続いた女の言葉にかき消された。
「さっき、その娘を護らずに逃げ出した臆病者の、"ササガワ"と言ったかしらね?その子から抜き出されたのよ」
ササガワが、俺の
つまり、あいつは俺と実悠を離すために、俺から『聖剣』を………………?
「でも、何かしらね?坊やから禍々しい程のオーラを感じるわ………………」
「なんだ、そういうことだったのか」
俺はたまらず笑みを零してしまった。
また、いつもの不幸があいつの心を駆り立てたのだ。俺を苦しめようとしたのだ。
「?………よくわからないけど、この娘の命、貰うわね」
と、気付かぬうちに女に近付かれてしまった。
しかし、そんなことは気にならない。
すると、突如、昨日の夢の中で聴こえた声が、聴こえた。
あの、身体の芯から震えるような重低音。その声で、俺に語りかけてきた。
『おい、いいのか?お前はあの女を護りたいんじゃないのか?』
護りたい。
『力が欲しいんだろ?』
欲しい。
『なら、俺の
あぁ、呼ぶさ。
『俺の銘は─────』
「な、なんなの?」
突如として現れた突風に驚きを隠せない女。
そして、その中心に立つ男。
男は、自分の胸に手を当て叫んだ。
「顕現せよ!!
轟ッ!、と吹き荒れる風に大地が耐えきれず削れていく。そして、一振りの巨大な両刃剣を携えた男。
圧倒的なオーラを纏い、手にする剣を一度、縦に振るうと風が二つに割れる。
空には暗雲が漂い、まさに混沌と化した校庭に声が響きわたる。
「殺させねぇーよ、誰も。そして、お前も、なッ!!」
そう言うと、人並みはずれたスピードで女のもとに疾走する。突然のことに驚いていた女も、それに対抗するかのように剣を構える。
「『魔剣』?そんなの、聞いたこともない!」
女が言い終わるやいなや、慎哉の『魔剣』と、女の『聖剣』が衝突する。しかし、女の『聖剣』にひびがはいる。
「なッ!?私の聖剣『リジル』にひびが!!?」
驚きを隠せない様子の女。
それでも、負けを認めず斬りかかってくる。
それをいなすように流し、蹴りを入れる。それをなんとか持ちこたえた女に、追撃を放つため詠唱する。
「
知らない言葉が頭に流れ込んでくる。こんな
しかし、圧倒的な力を感じる。
「
俺の想像が、魔法を創造していく。
「喰らえ、『
轟ッ!、と女めがけて飛んでいく黒色の焔。全てを燃やし尽くす漆黒の焔。
「あがががっ!」
身体を燃やされ、もがき苦しむ女。
俺は、女に向かって呟く。
「諦めろ、お前にもう勝ち目はない。潔く負けを認め、今は寝ていろ」
すると、苦しんでいた女が静かになる。
「全ての
段々と目を閉じていく女、最後にこんな言葉を残して。
「ありが…とう……、目が覚めたら、また………会いに来ても宜しいですか?」
その問に対し、俺は、
「あぁ、いつでも会いに来い。待っているぞ」
と、応えた。それを聴くと、女は力が抜けて、気を失った。