魔剣伝説   作:夢雨麻

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日曜、月曜と忙しくて更新できなくて申し訳ありませんでした。
今日は何話か更新する予定です。


第六振

 実悠が斬られた。

 他でもない、俺のせいで。

 

「実悠!!」

 

 俺はすぐに実悠のもとへ走った。

 

「慎哉………、逃げ……て…………」

 

 未だに俺を逃がそうとする実悠。

 

「あらあら、間違って斬っちゃったわね」

 

 女はそう言うと、こちらへ近付いてきた。

 

「それじゃ、『アロンダイト』は貰っていくわね」

 

 そして、俺たちから4、5m先に落ちている、聖剣『アロンダイト』を拾おうとした。しかし、女を拒絶するかのように聖剣『アロンダイト』は光の粒子になって消えた。

 そして、女は何かを悟ったようにこちらに近付いてきた。

 

「ごめんね、坊や。その娘を殺さないと、手にはいらないみたいなの」

 

 しかし、俺は最初から疑問に思っていたことを問いかけつつ、実悠を背に立ち上がる。

 

「『聖剣』を奪う?そんなことできるわけないだろ?」

 

 すると、キョトンとした表情でこちらを見つめてくる女。

 そして、数秒の間を置き話し始めた。

 

「あら、坊やは知らないのね。坊や、『聖剣』出せないでしょ?」

 

 確かに、俺は『聖剣』を出していない、正確には出せない。それを話していないのに、女にはバレている。

 

「坊やの体内(なか)から、『聖剣』を抜き出された人間特有のオーラを感じるわ」

 

 『聖剣』が、抜き(、、)出さ(、、)れた(、、)

 俺は、『聖剣』が無いんじゃなくて、抜き出されていたのか!?

 

「そんなわけ………」

 

 無いだろ、と言おうとしたが、続いた女の言葉にかき消された。

 

「さっき、その娘を護らずに逃げ出した臆病者の、"ササガワ"と言ったかしらね?その子から抜き出されたのよ」

 

 ササガワが、俺の体内(なか)の『聖剣』を………………?

 つまり、あいつは俺と実悠を離すために、俺から『聖剣』を………………?

 

「でも、何かしらね?坊やから禍々しい程のオーラを感じるわ………………」

 

「なんだ、そういうことだったのか」

 

 俺はたまらず笑みを零してしまった。

 また、いつもの不幸があいつの心を駆り立てたのだ。俺を苦しめようとしたのだ。

 

「?………よくわからないけど、この娘の命、貰うわね」

 

と、気付かぬうちに女に近付かれてしまった。

 しかし、そんなことは気にならない。

 すると、突如、昨日の夢の中で聴こえた声が、聴こえた。

 あの、身体の芯から震えるような重低音。その声で、俺に語りかけてきた。

 

『おい、いいのか?お前はあの女を護りたいんじゃないのか?』

 

 護りたい。

 

『力が欲しいんだろ?』

 

 欲しい。

 

『なら、俺の()を呼べ』

 

 あぁ、呼ぶさ。

 

『俺の銘は─────』

 

 

 

「な、なんなの?」

 

 突如として現れた突風に驚きを隠せない女。

 そして、その中心に立つ男。

 男は、自分の胸に手を当て叫んだ。

 

 

「顕現せよ!!()()『バルムンク』!!!!」

 

 

 轟ッ!、と吹き荒れる風に大地が耐えきれず削れていく。そして、一振りの巨大な両刃剣を携えた男。

 圧倒的なオーラを纏い、手にする剣を一度、縦に振るうと風が二つに割れる。

 空には暗雲が漂い、まさに混沌と化した校庭に声が響きわたる。

 

「殺させねぇーよ、誰も。そして、お前も、なッ!!」

 

 そう言うと、人並みはずれたスピードで女のもとに疾走する。突然のことに驚いていた女も、それに対抗するかのように剣を構える。

 

「『魔剣』?そんなの、聞いたこともない!」

 

 女が言い終わるやいなや、慎哉の『魔剣』と、女の『聖剣』が衝突する。しかし、女の『聖剣』にひびがはいる。

 

「なッ!?私の聖剣『リジル』にひびが!!?」

 

 驚きを隠せない様子の女。

 それでも、負けを認めず斬りかかってくる。

 それをいなすように流し、蹴りを入れる。それをなんとか持ちこたえた女に、追撃を放つため詠唱する。

 

死ノ灯火ヲ有スル者ヨ(暗黒の龍よ)我ノ力トナリテ全テヲ灼キ尽ツクセ(力を貸してくれ)!」

 

 知らない言葉が頭に流れ込んでくる。こんな詠唱(スペル)は聴いたことも、見たこともない。

 しかし、圧倒的な力を感じる。

 

刻限ハ絶(殺しはしない)救世ノ刻ヲ待ツノミ(ただ救うたけだ)!!」

 

 俺の想像が、魔法を創造していく。

 

「喰らえ、『黒ノ焔(ネロ・フィアンマ)』!」

 

 轟ッ!、と女めがけて飛んでいく黒色の焔。全てを燃やし尽くす漆黒の焔。

 

「あがががっ!」

 

 身体を燃やされ、もがき苦しむ女。

 俺は、女に向かって呟く。

 

「諦めろ、お前にもう勝ち目はない。潔く負けを認め、今は寝ていろ」

 

 すると、苦しんでいた女が静かになる。

 

「全ての()()も燃やしてくれるさ」

 

 段々と目を閉じていく女、最後にこんな言葉を残して。

 

「ありが…とう……、目が覚めたら、また………会いに来ても宜しいですか?」

 

 その問に対し、俺は、

 

「あぁ、いつでも会いに来い。待っているぞ」

 

と、応えた。それを聴くと、女は力が抜けて、気を失った。


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