魔剣伝説   作:夢雨麻

5 / 15
第四振

 学校へ着き、教室へ行く。

 いつも通りの動き。

 ただ一つ、違うものがあった。

 ヒソヒソ、と。ニヤニヤ、と。

 奇異なものでも見るような眼で。

 すると、そんな俺に近付く影が。

 

「おい、慎哉。あの噂、本当か?」

 

 あの噂………、そう言われても何もわからない。

 

「何のことだ?」

 

「あ、知らなかったのか?」

 

 知らないも何も、俺には回ってこないだろ?どうせ俺に関することなんだろうし。

 

「どんな噂だ?」

 

「えっとだな、お前がササガワに稔原さんを寝取られた、っていう噂なんだが………」

 

 ………………はぁ。くだらない。そもそもあいつと付き合ってたわけでもない俺が、どうしたら寝取られるんだよ。

 

「付き合ってもない女をどう寝取ると?」

 

「えっ!?付き合ってなかったのかよ!!?」

 

「逆に俺があいつと付き合ってると思ってた理由を知りたい」

 

 俺があいつと釣り合うわけがない。

 今更だが、あいつは美少女中の美少女だ。

 

「あいつは中学の頃に一日で最高243通のラブレターを貰った伝説があるんだぜ?俺なんか精々121通だよ、はぁ………」

 

「それでもかなり伝説だよ!!」

 

 俺はそこそこ見た目には自信がある。

 いや、断じてナルシストとかではなくて。兄さんは超絶イケメンで妹は超絶美少女。真ん中の俺もそこそこ顔はいい方だと思いたいしな。

 

「けど、相手があのササガワだ」

 

「まぁ、『聖剣』適性度90%だもんな」

 

「それに学年一のさわやか君だ」

 

 実際、顔だけなら負ける気はしない。

 ただ、『聖剣』が扱えるかどうかの差で、俺は実悠と釣り合えない。

 

「そうだなぁ、なんでお前は『聖剣』が使えないんだ?」

 

 うーん、とうなる友人。紹介が遅れたけどこいつは友人の橋本雅(はしもとみやび)、中学の頃からの友人だ。

 

「知るか、知らないから使えないんだろ」

 

「魔法はすごいのになぁ~」

 

 けれど、悩んでも仕方がない。と、そんな話をしていたら朝のHRの時間になった。

 しかし、いつまで経っても担任の教師が来ない。

 何かあったのだろうか、とクラスの奴らが騒いでいると、緊急校内放送が流れてきた。

 そして、その内容は─────

 

 

『緊急放送です、生徒の皆さんは静かに耳を傾けてください。 緊急放送です、生徒の皆さんは静かに耳を傾けてください。この地域に未所属の聖剣所持者の集団が現れました。教師の誘導に従って適性度80%以上の生徒は校庭に、それ以外の生徒は体育館下のシェルターに避難してください、繰り返します!……… 』

 

 

 なんだと………、まさか兄さんの言ってたことは、本当のことだったのか!?

 だとしたら実悠が!!………………いや、ササガワがいるじゃないか。

 『聖剣』も持っていない俺の出る幕はない。

 

「おい、慎哉!早くシェルターに行くぞ!」

 

「あ、あぁ。わかってる、わかってるさ」

 

 結局、俺はどう足掻こうと『聖剣』を持っていない。あいつを、実悠を守る資格は………、ないんだ。




一日に三話も投稿しましたね。
書き溜めなんて物はないのでつかれました。

これからも一日に二話くらいのペースでやっていけたらな(遠い目)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。