空間が震える。空気が悲鳴を上げる。物質が破壊されていく。
聖剣『エクスカリバー』は、その姿形を変えていく。
そして、凍てつくほどの聖光が止んだとき、聖王剣『コールブランド』が顕現する。
「この剣はあらゆる魔を屠った、聖なる剣。貴様の魔剣も我が『コールブランド』の前では鉄屑に過ぎん………」
気のせいだろうか、性格も変わっている気がする。
その力を使うための代償は強大であるのだろう。
考えていると、シルヴィオンは剣を構える。
「さぁ、これで終わりにしよう。貴様の命、頂くぞ?」
マズい、なにがというのはわからないが、この場に止まっていたり、あの攻撃を受けるのは危険すぎる。
圧倒的オーラを放ちながら、突進してきたシルヴィオンに対し、跳ぶことでその攻撃を避ける。
そして、隙のできた背に攻撃を加える。
はずだったが、そこにシルヴィオンの姿はなかった。
「なッ!?」
どこに、それを言う間もなく弾き飛ばされる。
しかし、それは斬撃ではなく鈍い打撃であった。
「………………ふむ、流石にそれは見逃せません」
シルヴィオンの攻撃を、当然であるかのように受け止めている。
それは、俺のクラスの担任の先生、ナナバ先生だった。
「邪魔をするな、貴様も殺すぞ?」
理性という箍が外れているようなシルヴィオンは、ナナバ先生に追撃しようとする。が、それを流されて首筋に手刀を入れられる。
途端に意識を失うシルヴィオン。
そして、駆け寄る実悠。その後をビクビクと歩いてくる雅。
「慎哉君、怪我はありませんか?」
「は、はい」
一体全体、この先生は何者なのだろうか。
そんな疑問を持ったが、それよりも先に確認すべきことがあった。
「あの、先輩は大丈夫なんですか?」
そう問うと、先生は驚きの表情を露わにしていた。
「先程まで貴方を殺そうとしていた娘を心配してあげるなんて、先生は慎哉君の将来が心配です。でも、やさしいんですね!」
ほんわか笑顔の先生に褒められて、疲れがすべてどこかにとんでいったような気分になる。
とりあえず、無事でも何でも保健室に連れて行こうとするが、運び方で悩んでしまう。
「保健室へ連れて行くべき何ですが、先生は忙しいし実悠さんは女の子。雅君からは変なオーラを感じるので、慎哉君に任せますね!」
それでは、と去っていくナナバ先生。
嫌な予感がする。何故、俺が運ぶのか。
なんだ、雅からの変なオーラって。
なんだ、実悠は女の子だからって。
しかし、俺は考えることを放棄し、俗に言う『お姫様抱っこ』でシルヴィオンを運ぶことにした。