魔剣伝説   作:夢雨麻

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第九振

 ─────奥斑慎哉を抹殺すること。

 

 

 転校してきた彼女─────シルヴィオン・アーサーが、全校生徒の前で言い放った言葉。

 そんな彼女から逃げる生活を始めてから、はや一週間。創部間もない『聖神部』の活動もままならない状況で、一筋の光明が見えた。

 それは、ナナバ先生。

 彼女がこの学校に訪れた理由の一つでもある。

 

「こら、アーサーさん。廊下を走ってはいけません!」

 

 そう先生が注意する。

 しかし、

      (`・ω・´)

の様な表情で言われても怖くない。

 ただ、とてつもないほどに可愛いので、争う気もなくなってしまう。

 そもそも、注意している点が俺への攻撃ではなく、廊下を走っていることなのは、かなりブロークンハートだったりする。

 

「アンタもホント、災難よねー」

 

 ハァ、とため息まで付いてるのは幼馴染の稔原実悠。先日の事件の際に、寝取られ疑惑が出たが、全くの出鱈目。

 事件後に実悠自身が嘘だと言ったため、その件は収束した。

 それと、ササガワのことについて。

 アイツは俺の体内(なか)から聖剣を抜き出していたことで、逮捕された。何とも後味の悪い終わり方だが、自業自得なのでモーマンタイ。

 話は戻るが、俺が『魔剣』を手にしたことによって、様々な人間に狙われるようになった。

 それを防衛するための組織が、『聖神部』であり、メンバーは今のところ俺、実悠、雅、そしてシルヴィオン。顧問教諭は、ナナバ先生だ。

 雅というのは、中学の頃からの友人で、俺は親友だと思っている。

 しかし、活動もまともにできないため、防衛も何もなく既に二回ほど襲撃を受けている。

 けれど、常に俺を追っている聖剣『エクスカリバー』の使い手、シルヴィオン。そして魔剣『バルムンク』の使い手である俺に対抗できる奴は見たことがない。

 二回の襲撃は、両方とも撃退している。

 そんなことを考えていると、部室の近くまで来ていたようだ。

 部室の確認がてら、休憩をしようとする。

 

「ほう、私に追われながら優雅にお茶を飲むか………」

 

「少し休憩しません?」

 

 ガラッ、と勢いよく部室のドアを開けて入ってくるシルヴィオンに、茶を勧める。しかし、

 

「魔の使い手と飲む茶など、茶ではない」

 

 じゃあなんなんだよ、とツッコミたい気持ちを抑え再び話しかける。

 

「ほら、あれっすよ!俺らがこんなとこで争ったら、皆消し飛びますよ!?」

 

と、よく考えたら有り得なくもないことを述べてみると、

 

「ふむ、それもそうだな。よし、わかった。一旦休憩をとり、その後校庭で死合だ」

 

 

 

 

         ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 なんとか延長はしたものの、殺し合いをすることに変わりはないらしい。現に、校庭に出た瞬間から殺気を全身から放っている。

 

「さっさと始めよう。余り気は長くないんだ」

 

 そう言われ、渋々剣を顕現させる。

 

「俺は殺し合いなんてしたくないんすけど?」

 

と、言ってみるが、

 

「私とて人殺しはしたくない。ただ、お前を殺すのは仕方ないことだ」

 

 何とも理不尽である。ただ、一つ言えることは、

 

 

「俺だってね、持ちたくて『魔剣』を持ってるんじゃない。普通の『聖剣』がよかったんだよ!!」


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