でろりん
E 鉄の剣
E 布の服+鉄の胸当て
E うろこの盾
ずるぼん
E ひのきのぼう
E 旅人の服・改
へろへろ
E 鉄のよろい
E 鉄のかぶと
E 鉄の盾
カンダダ子分
E 鉄の槍or鉄の剣
E 鉄のよろい
E 鉄のかぶと
E 鉄の盾
主人公パーティーの鉄装備は借り物で返却予定。
「でろりん君、君達は逃げるんだ」
ある意味、「邪魔だから帰れ」と言われている気がする。
と言うのも、俺達が逃げれば護衛役の2人も戦闘に参加できるし、そうなれば勝利の可能性はグンと増すだろう。
元々、この場にいるのはカンダダ一味の中でも精鋭だ。少数で来たのは、大勢で来れない幾つかの事情も有るが、このメンバーなら充分に任務を果たせる見込みが有ったからだ。
一瞬、門番の男の指示に従いかけたが、もっと良い方法を思い付いた。
「ダメですよ! 皆で逃げましょう。イオラならまだ使えます。緑がアジトの中でもがいている内に弾幕張って逃げ切りましょう!」
いや、目眩まし目的ならイオでも構わないな。
イオなら後五発は放てるし、この場を逃げ切るダケなら十分だ。
そもそも予定が狂ったんだし、既にアジトは半壊してるし、アジトの奪還なんてやらなきゃ良いんだ。
「ありがとう。でも、それは出来ないんだよ」
門番の男は爽やかな笑顔で礼を言いながらも、俺の提案を断固拒否する様だ。
「どうしてですかっ!?」
「この作戦には一味の面子が掛かっているからね」
面子?
なんだそりゃ?
そんなモンの為に命を張るというのか?
「面子なんて、どうだって良いじゃないですか! 死んじゃったら面子とか関係無いですよ」
「んなこたぁガキに言われんでも解ってんよ。だけどなぁ?俺達の世界じゃ面子を潰されたら生きてけねぇんだ! 解ったら大事なネェちゃん連れてササッと帰ぇりな!」
子守り役のカンダダ子分はソレだけ言うと、ずるぼんの背中を″トン″と押して俺に預け、武器を構えて闘う子分達の元へと走り行く。
「ダメですって!!」
俺の叫びは彼の心にも届かない様だ。
どうして解ってくれないんだ!?
「でろりん君、子供のキミには解らないだろうけど、大人の世界には死んでも護らないといけない事があるんだ」
「死んだら何も護れないですよ!」
死んだことある俺だから解るんだ。
死ねば全てが終わる。
生きてればこそ楽しい事もあるんだ! 面子なんかに拘って死んでしまうと何もかも失うのに・・・。
「はっはっは。やっぱりキミには難しいかな?なに、僕達だって充分訓練を積んでるしそう簡単に死ぬつもりは無いさ・・・いいね?君達は逃げるんよ!」
ソレだけ言った門番の男は俺の頭に″ポン″と手を乗せ笑顔を見せると、鉄の槍を握り締め走り出した。
「なんだよそれ…死んだら意味、ないのに…」
意味が解らない。
どうしてあんな笑顔になれるんだ!?
悪党は面子が潰れると生きていけないと言うなら、他の生き方を選べば良いダケじゃないか!
こんな誰も見てない場所で、面子なんかの為に命を賭けるなんて馬鹿げてる。
「だったらアンタが助けてあげなさいよ?」
「え? でも…」
「ルイーダさんが言ってたじゃない? アンタ強いんでしょ?」
「あんなの出鱈目だよ。魔法を使わなきゃあの人達に勝てないよ」
「なに変な事言ってるのよ? アンタが闘うのはお猿さんだし、魔法も使えるじゃない? もしかしてさっきのでMP切れてるの?」
「MPはあるよ。でも、ネェちゃんはどうするのさ」
「あたしはここで見ててあげるわ。危なくなったら庇ってもらうし、ねぇ、へろへろ?」
「お、お、おでが護るだか!?」
いきなり話を振られたへろへろは、声に詰まるほど驚いている。
「当たり前じゃない?
その盾何の為に持ってるのよ? 怪我したらホイミかけたげるから頑張るのよ!」
いや、ネェちゃんのホイミ効かねーし、怪我で済む保証もないぞ。
でも、言い出したら聞かないんだよなぁ。
戦闘区域と100メートルは離れてるし大丈夫、かな?
それに、もう少し力を見せておくのも必要か。
「分かったよ。だけど危なくなったら逃げるから、ネェちゃん達も絶対付いて来て!」
こんな時に瞬間移動魔法である″ルーラ″が使えれば便利なんだけど、残念ながら今の俺には使えない。
「なによそれ? アンタ、あのおじさん達を見捨てる気なの?」
「兄貴、見捨てちゃダメだで」
え?
なんかスゲェ批難されてるんですけど…。
俺の考え方っておかしいのか?
大体、俺の役割はイオラだし、見捨てるもクソもない、筈…だよな?
「卑怯な事言ってないで、早く行きなさいよ! アタシの事を護るんでしょ?」
「兄貴が倒すたら、逃げなくても良いだで」
え?
俺って卑怯なのか?
常識的に考えて、勝てなきゃ逃げる! コレが普通で当たり前じゃないのか?
鉄の剣を握り締めた俺は、釈然としないまま走り出した。
◇◇
「くらえっ! メラミ!」
乱戦の中へと飛び込んだ俺は、一体のあばれザルの背後からメラミを放った。
あばれザルにとって突然の攻撃は交わされること無く命中し、毛皮を焼いて炎が包み込む。
焦げ臭い匂いが鼻につく。
視界を遮るあばれザルが″ドサリ″と前に向かって倒れ込むと、そのあばれザルと対峙していたカンダダ子分と目があった。
「エゲツねぇな? 背後からメラミかよ」
「いけませんか?」
まさか、卑怯だなんて言うんじゃないだろうな!?
っと、いけない。
ずるぼんに言われたせいで無駄に突っ掛かりそうになっている。
今、彼等と険悪になるのは得策じゃない。カンダダ一味には色々とやってもらわなくてはならない。
勇者と悪党が手を組むってどうかと思うが、俺はどうせ偽勇者だ。
目的を果たす為ならなんだってしてやるさ。
「いや、良くやった。オメエ見込みあるぜ?」
何の?
とは聞きたくない。
「見込みなんて要りませんから、″報酬″をシッカリ上乗せしてくださいよね」
俺が彼等に求める報酬はラーの鏡の情報と別にもう一つある。
彼等には裏のネットワークを使い、「アルキーナの神童は噂以上に強い」と触れ回ってもらいたいのだ。
出来れば、王宮に届くほど盛大に、だ。
その為に危険を省みずこの地に留まったし、役割以上のイオラの連射も披露したんだ。
バランが処刑される日迄に、王宮から呼び出しが掛かれば言うこと無し。
最低でも処刑の地に集まる群衆の耳には入れておきたい。
「へっ。可愛げの無いガキだぜ。姉御が気に入る訳だ」
「そんなモノも要りませんから、早く数を減らしましょう。緑が出てきたら面倒です」
恐らく、1対1ならあばれザルよりカンダダ子分達の方が強い。
つまり、あばれザルの数的有利が無くなれば、形勢は一気に逆転し、単なる殲滅作業に変わるだろう。
「んなこたぁ言われなくても判ってんよ。猿の攻撃は俺が防御してやるから坊主は遠慮なくメラミをブチ込んでやれ」
「それこそ言われなくたって判ってますよ。でも、メラミは四発も撃てば限界ですから」
「へっ。口の減らねぇガキだぜ。ま、4発も要らねぇよ。ササッと数を減らしゃあ後はこっちのもんよ」
子守り役を勤めた男の背後に隠れ、メラミを放つ事に専念するとしよう。
この戦場において、MPの有る俺は最強の攻撃力を誇る事になる。
この限られた最強攻撃を有効に使うのが″アルキーナの神童″をアピールするポイントになる。
戦場を見渡す。
敵の数は後5体。基本的にマンツーマンで戦闘が繰り広げられており、そんな中で門番の男は槍を巧みに操り2匹を相手取って奮戦している。
「あの一匹を倒しましょう」
門番の男が相手する猿を指差す。
「おう! しっかり付いて来やがれ!」
子分達が距離をおいたのか、あばれザルが跳び跳ねたのか、互いの戦闘場所は離れている。
子守り役が走ると同時に追いかける。
「喰らいやがれっ!」
ダッシュで戦場を駆けた子守り役は、スピードを落とすこと無くあばれザルに体当りをブチかました。
あばれザルがひっくり返って悶えている。
「的を狭めてどうするんですかっ・・・メラミ!」
子守り役の背中を駆け登り、肩を蹴って高く飛び上がった俺は、空中から下に向かってメラミを投げ付ける。
「俺を踏み台にしたぁ!?」
子守り役がすっとんきょうな叫びを上げている。
もしや、この人も転生者か!?…って違うか。
「遊んでないで、もう一匹片付けますよ!」
着地した俺は盾と剣を構えてあばれザルの背後から斬りかかる。
「あぁん!? 遊んでねぇよ!」
子守り役も″ブンブン″と剣を振り回しあばれザルに切り傷を付けていく。
程無く、あばれザルの背中から槍の穂先が姿をみせる。
「ありがとう。助かったよ」
槍を引き抜いた門番の男はお礼の言葉を述べているが、多分、時間さえ掛ければ一人でも倒せた筈だ。
まぁ、今はその時間が死活問題なんだけどな。
「とんでもねぇガキだな」
「全くだね。魔法使いはその高い攻撃能力の反面、体力に劣るのが当たり前なのに君は違う様だね。まるで機動砲台だ。勇者というのは皆そうなのかい?」
二人は懐から布キレを取り出し武器に付いた血を拭いながら語り出した。
「そんなの知りません。俺は勇者じゃないし、勇者に会ったことも有りませんから」
「そうかい? 君がそう言うならそう言う事にしておくよ。だけど、剣も魔法も使える人はそう多く無いんだ。でろりん君がその力の使い道を誤らない様に祈ってるよ」
「悪党に言われましてもね」
「はっ。ちげぇねぇ!」
「これは一本取られたね。さぁ、厄介なのが出てくる前に他を片付けよう」
門番の男が爽やかに締めたところで″バキッ″と音と共にアジトの扉が内側から吹き飛ばされて、緑色の物体が転がってきた。
『ウォォ…』
緑色の物体、コングと呼ばれる個体がふらつきながら立ち上がる。
コイツ、まさか…。
「回復、してねぇのか?」
「その様だね」
アジト内でもがいていたらしいコングは、ガルーダのベホマラーの範囲外だった様で、こちらが何もするまでも無く、既に瀕死の状態だ。
モンスターと言っても生物に変わりないし、あんな高所から飛び降りたら、そりゃそうなるよな。
でも、コレはチャンスで有ると同時にピンチだ。再びあの鳥を呼ばれたら堂々巡りになってしまう。
いつまでもずるぼん達を放っておけないし、サッサと片付けるとしよう。
俺は驚き戸惑う二人の男を置き去りにして、頭を抱えて身体を揺らすコングに向かって全速力で駆け出すと、そのまま勢いを緩める事なくコングの頭部に飛び蹴りを入れた。
バランスを崩したコングが尻餅をついて怯えた瞳を向けてくる。
俺は黙って右手のひらをコングに向ける。
このまま見逃してもアジトの奪還は可能かもしれない。
だけど・・・殺るしかない。
俺は表情を崩さず呪文を唱えた。
「メラミ!」
◇◇◇
厄介だと思っていたコングは自爆で弱っておりあっさり倒すことが出来た。
完全な数的有利を確保した俺達は、程無くあばれザルを殲滅しアジト奪還に成功する。
正直、勝手に弱った相手を殺すのは気分の良いものじゃなかったし、容赦ない俺の行動に悪党ですら少し引いていた。
しかし、この世界で″生きる″という事はこういう事だ。
綺麗事を言う気はない。
この世界で力強く生き抜く為にも、例え卑怯と言われようとコレからも殺し続けるだろう。
今回の冒険は得難いものが得られた。
終わってみればそんな気がする。
そして、今。
任務を達成した俺達の前で、激しい戦いが繰り広げられていた。
「ちょっと! なんで攻撃しないのよ!?」
「そげな事言われだて、おで武器持ってねぇだ」
「もう〜ナニしてんのよ!? えいっ!」
「キャーキャー」騒ぐ
ずるぼんの声に焦って駆け寄ったが何の事はない、2人はオレンジ色をしたスライム、″スライムベス″と戦闘中だ。
へろへろが両手で構えた鉄の盾で攻撃を防ぎ、ずるぼんがひのきのぼうで″ポコッ″と叩いている。
スライムが鉄の盾に体当りをしたら逆にダメージを受けそうだけど、そうでもない様だ。
俺達が見守る前で、何発かの攻撃を食らったスライムはドロッと液状になると″チャリン″とゴールドを落とした。
それを素早く拾いあげたずるぼんが満面の笑みを浮かべこちらに見せ付ける。
「ふっふーんだ。見てよコレ! 1Gよ、1G!!」
ネェちゃん…。
それ、先日は一万Gでやってたんだぜ?1Gを有難がるのも良いけど、お金も大事にしよう。
「そ、そうだね…」
ほら、門番の男も対応に困ってるじゃないか。
「アタシが見つけてアタシが倒したんだからアタシのモノね! でも、お金を稼ぐのって結構簡単なのね?」
″ビシッ″とポーズを決めたかと思えば、顎に指先を当て小首を傾げている。
我が姉ながら忙しい事だ…って呆れている場合じゃないな、後半の意見は訂正しておくべきだな。
本来、ゴールドのドロップ率は非常に低いためゴールド狙いのモンスター退治は割に合わないとされているんだ。
ちょっとモンスターを倒せる位で生業に出来る甘いモンじゃない。
ん?
いや、コレはずるぼん達を強くするチャンスか。
「ネェちゃんさー。強くなったらもっと簡単に倒せるよ?」
「アタシがやらなくてもアンタが倒せば良いじゃない?」
「今みたいな時、ネェちゃんとへろへろも強かったらもっといっぱい稼げるじゃん」
金で釣るようだが、コレが一番簡単だ。自分の手でゴールドを得た今こそ説得の好機だろう。
いつまでも俺が護ってやる訳にもいかないし、護れるとも限らない。実際、今も2人と別行動をとっていた。
「おでが強くなったら、マネーいっぱいだか?」
目を輝かせたへろへろが早速食い付いた。
やっぱチョロいな。
「そうだよ。へろへろが見つけて倒したら全部へろへろのモンだね」
「何よソレ!? そんなのずるいじゃない!」
「ずるくないよ。ソレが悔しいならネェちゃんだって強くなれば良いんだよ」
「うーん…? それもそうねぇ」
かかった!
やっぱチョロいな。
こうして、ルイーダの依頼をこなした俺は、色んなモノを得て帰路についたのだった。
カンダダってカンダタが正式名称だと最近知りましたが、このままカンダダでいこうかと思います。