第13話は、クリスマス休暇中のお話。ホグワーツから離れクリミアーナへとご招待。
クリスマスが近づいていた。それとともに寒さも増していき、暖炉が恋しくなるのは理解できる。その気持ちはわからなくもないが、アルテシアのそれは異常だと、パーバティは思っていた。パーバティだけではない、寮は違うがこの話を聞いたパドマもそうだし、ハーマイオニーも同意見だった。なにしろ、この数日というものアルテシアは暖炉のそばから動かないのだ。もちろん、授業には出席する。だが授業中も、どこかうわのそらといった感じだ。アルテシアは魔法が使えないということになっているので、教師の側もほったらかしだし、まわりの生徒たちも、そんなアルテシアには関心を示さない。
だが、パーバティはそういうわけにはいかなかった。暖炉のそばに座り、じっと燃え上がる炎を見つめているアルテシアのことが、気になって仕方がない。でも、話しかけてみても返事はないし、腕をつついてみても反応はない。まさに、心、ここにあらずだ。こんなことはまえにも何度かあったが、今回はとくにひどい。こんなに何日も続くのは初めてだが、とにかくそばにいるだけだ。
「アル、あんたがなにしてんのかわかんないけど、あたしはここにいるからね」
自然の成り行き、とでもいえばいいのか。パーバティも暖炉のそばで過ごすことが増えた。さすがにラベンダーはそんなパーバティにも話しかけてくるが、ハーマイオニーはなにやら忙しそうで、近づいてはこない。忙しそうだと言えば、ハリーとロンもそうだった。3人共通の調べ物があるらしく、揃って図書館に行ったりしている。一度、ラベンダーが何をしているのか聞いたことがあったが、ハーマイオニーは教えてはくれなかった。
そんな、いわば静かな日々のまま、クリスマス休暇を迎えた。
※
「待ちなさい、それはどういうことですか」
マクゴナガルのまえにいるのは、パドマ。クリスマス休暇となり、実家へと戻る生徒たちはすでに出発したはずだった。もちろんパチル姉妹もそうなのだ。なのに、その妹のほうだけが、学校にいるのはどういうわけか。
「どうやら姉は、アルテシアのところへ行ったようなんです。実は、実家のほうでは姉がいないと困る用事がありまして。ですから迎えに行こうと思うんですが、行くにも場所がわからないので先生に教えていただきたいんです。先生ならご存じですよね」
「待ちなさい。お姉さんは、その場所を知っていたというのですか。クリミアーナには、簡単には行けませんよ」
「え?」
「このごろ、いろいろとわかってきたのです。やはり、勉強というものは必要なのです。あなたは、かなり優秀だと聞いています。わたしの授業でも、積極的に学ぼうという姿勢を感じていますよ」
そんなことはどうでもいいが、簡単には行けないというのはどういうことなのか。単に住所を知り、そこを訪ねるだけではダメだということなのか。そういうことであれば、この計画はあやうくなる。だが、そんなことってあるのか。パドマは、ごくりとのどを鳴らす。
「あなただから言いますけどね、ミス・パチル」
「は、はい」
「クリミアーナ家に関する書物を、アルテシアに借りて読んでいるのです。難しい本ですが、このごろほんの少しですが理解できるようになってきました」
「そ、そうなんですか」
いったい、何を言われるのか。心臓のドキドキが極限に達しようとでもしているらしく、その音が聞こえてくるようだ。マクゴナガルは、めずらしく笑顔を見せた。
「ウソですね、ミス・パチル。あなたはウソを言っています。まあ、その気持ちはわからないではありませんが」
「あの、先生」
「まあ、いいでしょう。ここ数日のアルテシアの様子は、たしかにおかしかった。あなたがたが、親しい友人であるということもわかっています。心配してのこと、なのでしょうね」
自分のウソなど、こんな簡単に見破られてしまうのかと、パドマは思った。姉と2人で考えた計画だったが、その最初のところでつまずくことになろうとは。
「支度は済んでいるのでしょうね、ミス・パチル。わたしが『姿くらまし』で連れていきましょう」
「あの、ホントですか、先生。いいんでしょうか」
「よくはありませんが、あなただって引き下がるつもりはないでしょうし、わたしにも、気になることがあります。ようすを見に行きましょう」
「すみません、先生」
「知っているとは思いますが、学校の敷地からでは『姿くらまし』はできません。ついてきなさい」
ということで、いったん学校を出なければならなかったが、それでも1時間もしないうちに2人は、クリミアーナ家の門をくぐることになった。出迎えたのは、パルマという50歳くらいに見える女性。パルマによれば、いまアルテシアは不在だという。
「出かけている、のですか。外出は控えるようにと言ってあったのですが」
「ああ、そうですか。でもね、先生さま。それはムリってもんですよ。怒らないでやってくださいね」
「どこへ行ったのです?」
家の中へと通される。パドマは、まだ一言もしゃべっていないし、話しかけられてもいなかった。
「森、ですけどね」
「森? それは、この家の裏手にある森のことですか」
「そうですがね。なんでもホグワーツには、自由に散歩できるところなんてなかったそうで。ほれ、なんていうんでしたっけ、ええと、ホグワーツにも森はあったそうですけどね。とにかくあの森ならば、なんの心配もねぇですから」
「まあ、そうだとは思いますが」
マクゴナガルが初めてこの家を訪れたときにも通された応接室。そこでパドマと2人、腰を落ち着ける。
「飲み物でもいかがです? お嬢ちゃんは、甘いやつのほうがいいですかね?」
「あ、わたしは… あの、パドマ・パチルと言います。学校では友だちで」
「わかってますよ、パドマさん。双子の姉妹さんがアルテシアさまと仲良くしていただいている、そういう話は聞いてますです」
マクゴナガルの前に用意されたのは、紅茶。パドマには違うものが置かれたが、どちらからも温かい湯気が立ち上っていた。
「学校とやらで、アルテシアさまはどんな様子ですかね。うまいことやれてるんですかねぇ」
パドマに対しての問いかけなのだが、さて。パドマは、すぐには返事ができなかった。魔法が使えないということで、アルテシアはずいぶんとつらい思いをしただろう。それを知っているだけに、安易な返事はできなかったのだ。
「まあ、戻ってくるなり森に行ってしまいましたからね。どう過ごしていたかは想像できますけど、でも、それだけじゃないような気がするんですよね」
「アルテシアからは、何もきいておられないのですか」
「おや、先生さま。たしか、ミス・クリミアーナとか呼んでらしたんでは」
「いろいろありましてね。呼び方は、変わってしまいました」
「もしよければ、先生さま。森に案内してもいいんですけど、アルテシアさまが戻ってくるまでお待ちいただけますかねぇ。なにか、いろいろ考えることがおありのようでして」
そう言えばアルテシアは、あのトロール騒動のあと、クリミアーナ家に帰りたいと言ったことがある。許可することはできなかったが、家に戻りたいというより“森に行きたい”ということだったのかもしれない。
「すぐ戻ってくると思いますよ。来客があったことはあの森にいてもわかるはずですし」
「どういうことです? その森には、なにがあるのです? わざわざ行くのはなにかがあるからなのでしょうが、アルテシアはそこで何をしているのです?」
マクゴナガルがそれを知りたいと思ったのは、当然のことかもしれない。隣に座っているパドマも、同じ思いだったろう。そんな2人にすれば、パルマの説明は、望んだものではなかったのかもしれないが、話はつながっていく。
「アルテシアさまは、あの森がお気に入りでしてね。小さいころから、なにかあるとお出かけでした。毎朝の散歩の場所でもありましたねぇ」
「では、とくになにもないと」
「墓地はありますけどね。そこにはマーニャさまが、あ、マーニャさまっていうのはアルテシアさまのお母上ですけどね」
「では、その墓参りということですか」
「違うとは思いますけど、そうかもしれないですねぇ。まあ、クリミアーナ家の娘さんですからね。こういうことはよくあるっちゃあ、よくあることなんですよ」
そこで、マクゴナガルが席を立った。あわてて、といった感じではないが、ピンと背筋を伸ばして立ち、パルマを見る。
「森に行きます。案内してください」
「お待ちいただいたほうがいいと思いますがね。じきに戻ってくるはずですよ」
「かもしれませんが、ほおってはおけません」
「べつに、危険なことなんかねぇですよ。むしろ安全だと思いますよ、あの森は」
そんな話となったところへ、アルテシアが戻ってきた。なるほど、来客があったことに気づいて戻ってきたらしい。
※
「ねぇ、パドマ。明日の朝、散歩につきあってくれない。森の中なんだけど、みせたいものがあるの」
「いいよ。こうなったら、なんでも見て帰らないと。おみやげ話だけじゃ、姉は満足しないんだろうけど」
そう言って、クスッと笑ってみせた。本来なら客間を使うところなのだが、今夜はアルテシアの部屋にベッドを並べさせてもらい、同じ部屋で寝ることにしたパドマである。ちょうどいま、ベッドの中に入ったところだ。ちなみにマクゴナガルは、アルテシアと1時間ばかり話し込んだあとで、学校へと戻っている。いろいろと用事があるらしい。
「パーバティも来ればよかったのに。この部屋は、3人だって寝れるよ」
「そうだけど、2人とも家に戻らないとなると、ちょっとね。親だってさびしがるだろうし」
「ああ、そうか。そうだよね」
「この次は姉がここに来て、あたしが家に帰るんだ。交替でそうしようって約束したの。最初はあたしから。いいでしょ、あんたたちはいつも同じ寮の同じ部屋なんだから」
パドマは、レイブンクローだ。パーバティとパドマは双子の姉妹でありながら、別々の寮に別れてしまったのである。
「そうだ。わたしが魔法が使えるようになったこと、パーバティから聞いてる?」
「聞いてるよ。でもしばらく内緒にしとくんだって? そんなことする意味なんてないって思うけどな」
「さあ、どうなんだろ。わたしにはわからないけど、マクゴナガル先生がそうしなさいって。でもね、授業で習う魔法は覚えたものから使っていいことになってるの。クリスマス休暇が終わってからだけど」
「じゃあもう、これで誰にも無視されたりせずにすむんだね。成績だって、実技ができるようになったら、すぐにハーマイオニーを追い抜けるんじゃないの」
成績の学年トップは、間違いなくハーマイオニーだった。知識面だけで言えばアルテシアも相当なものだが、これまでは魔法の実技がお話にならなかった。かたやハーマイオニーは、実技もトップクラス。総合成績ではとてもかなわない。
「学校の成績はね、あんまり気にしてないんだ。詳しいことは明日話すけど、やるべきことができれば、それでいいんだ。わたしの魔法は、そのためのものだから」
「やるべきこと?」
「うん。わたしがやるべきこと。クリミアーナの娘として生まれたからには、やらなきゃいけないことがある。ずっと、それができるようになりたいと思ってた。そのために勉強もした。これからは、それをやりとげなきゃいけないんだよね」
「ふうん」
その具体的な内容は、おそらくは明日の話ということだろう。そう思ったパドマは、それ以上は尋ねなかったし、アルテシアもそれ以上のことは言わなかった。
そして、翌朝。焼きたてのパンにサラダが食卓に並ぶ。パルマの陽気な声が響く中、いつになくにぎやかな朝食が終わると、アルテシアはパドマを連れて家をでる。アルテシアにはいつもの散歩コースというものがあるが、今日はパドマがいることもあり、主な目的地である森へとむかう。
森へは、いったん庭へと出て家の裏手を回って行くことになる。冬場のことでもあり寒さ対策もした2人が、森の中をゆっくりと歩いていく。そして着いた先は、クリミアーナ家の墓地だった。
※
墓標を前にして、アルテシアが祈っていた長い時間。パドマはその後ろに立ち、アルテシアの背中を見ていた。クリミアーナ家歴代の墓地だというからもっと広い場所を想像していたが、並んだ墓標は20個ほどか。木々のあいまから日の光がさし、柔らかな風が吹く。そばを流れる小さな川のせせらぎ、どこからか小鳥のさえずりも聞こえてくる。そんなのどかな場所だった。
ようやく、アルテシアが立ち上がる。終わったのかと思いきや、その右隣の墓標の前に移動。これには、さすがのパドマもその目を疑った。まさかすべての墓標の、そのひとつひとつに祈るのか。20個ほどもあるのに。
だがアルテシアは、その墓標のなかほどに手を置いただけだった。ほどなくして振り返ったアルテシアは、パドマに笑顔をみせた。
「パドマ、これ」
その手にはあったのは、一握りの透明な玉だった。直径にして3センチか4センチ。せいぜいそれくらいのものだが、それをアルテシアはどこから持ってきたのか。たしか、なにも持っていなかったはずなのに。
「これが、どうしたの? どこからこれを」
「もらったの。譲り受けたって言うべきなんだろうけど、パドマには特別にみせてあげる」
「え?」
「ほら、よく見て」
いわゆる、無色透明。透き通ったその玉は、もしかすると水晶玉だろうか。だがよくみれば、その中になにかがあるようだ。それがなにか、よく見ようとして顔を近づける。その中には。
「うわ。これ、なに。魔法、だよね?」
そこには、たとえばとても高い塔から地上を見下ろしたような、そんな風景が映っていた。いわゆる田園風景、のどかな田舎町とでも言おうか。風景が動いていき、景色が変わる。どうやら中央あたりの広い道に沿って動いているらしい。その先に白い家と森が見えてくる。
「ああ、これってクリミアーナ家だよね」
「そうだよ。いま見てもらったのが、クリミアーナ。ここに住む人たちのことも含めて、わたしがすべて引き継いだ。この玉は、その証明みたいなものだね」
「引き継いだって?」
「うん、そう。これまではわたしのお母さん、マーニャって名前だけど、マーニャの名によってこの地は守られてきた。わたしが5歳のとき亡くなったけど、まだ魔法が使えなかったわたしは、そのあとを引き継ぐことができなかったんだ」
「あの、よくわかんないんだけど」
わからないのも、ムリはない。アルテシアの説明は、簡単すぎた。だがアルテシアには、細かなところまで説明するつもりはないようだ。
「ごめん、説明ヘタで。でもね、これで私は、正式にクリミアーナ家を継ぐことができたの。この玉を持っている人が、クリミアーナ家の当主なの。つまりこれで、クリミアーナの娘だと、堂々と名乗れるってことなの」
それでもパドマには、いまひとつピンとこなかった。だが、アルテシアが喜んでいるのはわかる。きっと、彼女にとっては待ち望んだ瞬間だったのだろう。あの玉は、おそらくはご両親の遺品に違いないとパドマは思った。保管場所としてはどうかと思うが、魔法が使えるようになるまで、たぶんお墓に保管されていたのだ。それをいま、取り出したってことなんだ。
「よかったね、アルテシア。これは、嬉しいことなんだよね」
「うん。でも責任重大だよこれからは。わたしには、まだわからないことがいっぱいあるし、できないことも多いし、魔法だって未熟だし。でもね、パドマ。どんなことがあろうと、守りとおしてみせる。この森とあの家とクリミアーナを守るんだ。パドマ、あなただってそうだよ」
「え、わたし?」
「うん。パーバティもだけど、パドマはわたしが守る」
「ええっと、もう少し詳しく説明してくれる? その“守る”ってことが、きのうの夜に言ってた、あなたのやりたいことなの?」
笑って応えず。そうやってごまかすつもりなどないのだろうが、アルテシアは、楽しそうに笑いながらうなずいた。そして、もう一度手のひらの玉をみせる。パドマがのぞき込んでみると、今度はそこに、まったく同じ顔をした姉妹が映っていた。
「パドマ、紹介するね」
「え?」
そして、墓標のひとつの前へと引っ張っていかれる。アルテシアが、長い間祈っていた墓標だ。その墓標には、名前だと思うのだが、なにやら文字が刻まれていた。だがパドマには、それを読むことができなかった。
「ここには、わたしのお母さんが眠ってる。マーニャ・クリミアーナ。8歳のときには魔法が使えたくらいの天才だったんだけど、身体が弱くてね。医者からは子どもを持つことはあきらめるようにって言われてたそうよ」
「えっ、まさかそれって」
「あなたの身体は出産には耐えられない。あなたか、こどもか、それとも両方か。不幸な結果となるからあきらめるようにってね」
「そんなことって。じゃあ、お母さんが死んだのは」
アルテシアが首を横に振らなければ、最後まで言ってしまっていただろう。言わなくてよかったとパドマは思った。
「お母さんが死んだのは、わたしが5歳のとき。だから、違うよ。母は、病気で死んだんだ。そのとき、25歳。早すぎだって思うけど、こればっかりはどうしようもないもんね」
人は、かならず死ぬ。それが自然の摂理、つまりがあたりまえということだ。だが25歳でそれを迎えるのは、たしかに早すぎる。母は、やりたいことをやりおえたのだろうか。したいことをすることができたのだろうか。アルテシアのなかには、常にその疑問があった。だが、だれもその答えをくれはしない。自分のなかで考え、導き出すしかない。
「こっちの墓標は、クリミアーナ家初代の当主の墓だって言われてる。そう言われてるだけで、名前もいつごろの人かもわからないんだけどね。クリミアーナには失われた歴史っていうのがあって、そのころのことは、誰も知らないの」
今度は、アルテシアがあの水晶玉らしきものを取り出した墓の前へと来ていた。
「でも墓標になにか書いてあるよ。名前とかじゃないの」
「そこにはこう書いてある。『そのときは突然やってくる。だが歴史は終わらない。意志を継ぐ者がいる限り』」
「どういう意味?」
アルテシアは首を振る。その言葉が意味することの、本当のところはわからないのだという。だが、後の世代の者たちによってさまざまに解釈はされてきた。有力な説のひとつが『いずれ争いごとに巻き込まれることになるのではないか。だがクリミアーナ家の血筋を絶やさぬ限り、クリミアーナは存続する』というものだ。だがアルテシアは、少し違う解釈であるらしい。
「たぶん、その解釈は正しいんだと思う。でも意志ってなんだろうって思うんだ。たしかにクリミアーナ家は魔女の血筋だし、わたしの母は、その血筋を絶やさぬためにと命がけでわたしを生んでくれた。でも意志とは血統のことなのかな」
「意志ってさ、考え方とか気持ちとか、そんなことだよね」
「わたしは、これが、その意志だと思ってる。この玉に、その意志が込められてるんだと思ってるんだ」
その水晶玉らしきものを墓におさめたままにしておいてはいけないのだ。その手につかみ、実際に行動するものがいてこそ、新たな歴史は生まれていくことになる。歴史は終わらない。アルテシアの解釈は、そういうことであるらしい。いまその手に、玉がある。そのなかにあるものを守りたい。ずっとずっと守っていきたい。それが、クリミアーナを引き継いだアルテシアの願い。
そのなかに、ホグワーツをもいれるべきかどうか。このところのアルテシアは、そのことを考えていた。そうしてよいのかどうかの判断は、まだできていなかったのだ。いまは保留でいい。そうしようと思った。せめてもう少し、事情がわかるまでは。
クリミアーナ家の娘である、アルテシア。彼女が背負っているもの、それが見えはじめてきた回となりました。最初にこの話をもってきて、あの玉にホグワーツらしきものが写り、アルテシアがなんだろうと思っているところへ入学案内が届き、ああこのことかと気づき入学を決意する。そんなふうにして物語が始まるといった構想があったりもしましたが、ここでようやく追いついたといった感じですかね。
では、また。次回もよろしく。