やおよろずっ!!   作:グラゼロ

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天使と堕天使

学校、今は部活動が活発に行われている。その中で俺は一人で教室を掃除していた。

ランドに会ってから、そういえば……と思い時計を見ると九時という余裕で遅刻の時間だったのだ。今日あった出来事を話しても信じられないだろう。だから素直に教室掃除に臨んだ。

「早くしてよね天ちゃん。」

何故かコイツが待ってくれている。何故? 俺のこと好きなの? ……思い上がりすぎたか。

今思うと天ちゃんと天て分かりづらいな……因みに天ちゃんが恵美が言う俺で天が俺の言う天使である。

天使といえば、ルシフェルか……

堕天使の長ルシフェル、堕天使はほかにグリゴリとかアザゼルとかいたかな?

そして気になったのは狂った人形の存在、そして最後にルシフェル?が呟いた言葉だ。

『今日の二十一時十五分……そう言ったんだ、あれは多分その殺戮劇が繰り広げられる時間だ!!』

ランドの言葉を思い出す。思い過ぎでなければいいがその可能性は今までの出来事が夢でない限り無いと思う。

「天ちゃん、天ちゃん、どうしたの?」

 

「! すまん、何でもない、」

 

「そういばさー、」

 

(ギクッ!!)

恵美が思い出したように言う。……嫌な予感しかしないな。

「朝のあれは何なの?」

 

「ほら来た。」

 

「何がよ……」

コイツをこんなことに巻き込むわけにはいかない。なぜならコイツ、は俺と同じ平凡を愛する人間だから、

「朝? 何のことだ?色々ありすぎて覚えてない。」

 

「とぼけないで!!」

 

「うっ……」

 

「何よ。誰もいない場所に話し掛けてたりカバンの神とか訳のわからんこと言ったり……」

 

「おい、恵美」

 

「な、何よ急に……」

少し真剣に話そうとしたら割れながら怖い声になってしまった。

「別に俺を痛い人物だと思ってくれてもいい、けど、それは聞かないでくれ。」

 

「な、何でよ……」

 

「知らぬが仏、触らぬ神に祟りなしとか言うだろ?」

今回の件では仏も神もあまり関係ないが、

「そ、それでもさ、」

 

「恵美」

俺は諭すように両手で肩を掴んで言う。顔が赤いな……これからは怖がられないような顔を作らなくては……

俺は言葉を続けた。

「お前をあまり巻き込みたくない、だから分かってくれ。」

恵美はこの説得に応じてくれるかな?

「わ、分かったわよ、だから手を離して。」

 

「おっとすまん、」

 

「あんなことされたらうん、って言うしかないじゃない……」

恵美が何か言うがよく聞こえない。

「あん? 何か言ったか?」

 

「何もないわよ! とりあえず早く掃除をする!!」

 

「へいへい……」

 

 

家、リビング

俺は学校で疲れきった心を癒すためルシフェルと狂った人形の情報収集と称して天と話していた。

「え? ルシフェル様が?」

 

「様? まさか、天お前……」

天は最初なんのことかわからないのか首をかしげるが、そのあと何かを閃いたような表情をする。 ……可愛い。

「ち、違うよ。私は普通の天使だよ。ルシフェル様は堕天使とは言え私より上級の天使だから、聞いたことない? 天使の理ってやつ、」

 

「あー、聞いたことはある。」

下級天使はどうあがいても上級天使に逆らえないというアレか、なのに神には逆らえる。訳がわからん。

「ルシフェル様は八尾君も知ってると思うけど堕天使の筆頭、言わばリーダーだよ。」

 

「強いのか?」

 

「生身の喧嘩だと天使は基本的には弱いけど不思議な力を持ってる。だから強い……のかな?」

天から喧嘩というワードが出たのに少し驚いた。

でも今はそいつはいい、俺が聞きたいのは……

「じゃあ狂った人形を知ってるか?」

 

「もちろん。私たち天使は世界の監視と未練で地上に残った魂の成仏だからね。狂った人形は成仏するのに手こずってると聞いたから、有名だと思うよ。」

あれも魂が人形に宿ってできた産物ってのは聞いた。なら……

「じゃあ、そいつはどんな人間だったんだ? 普通のいいやつとは聞いたが、」

 

「それも有名だよ。彼は珍しいケースだから。」

ひょっとしてウチの居候の中で一番役に立つのって天じゃないか? 物知りだし、癒されるし、

「彼には愛する人がいた。そしてその人と結婚をすることになった。彼は幸せだった。だけど、」

 

「だけど?」

 

「結婚する前に二人は旅行に行ったんだ。アメリカだよ。二人の予定を考えて別々の時間に行ったんだけど、彼の乗った飛行機がジャックされてそのまま、海に墜落、ついに彼女とは式を挙げれず死んでしまった。」

 

「そんなことが……」

 

「それで彼の魂は地上に残った。そこまでは普通なんだけど……」

 

「その魂が人形に乗り移ってしまったと、」

 

「まあ、人形に乗り移るケースもあるんだ。普通だったら成仏させるのに手こずるけど彼のような善人は大丈夫、だった筈なんだよ。」

 

「その未練が大きすぎた、とか?」

 

「その通り、しかもその人形の未練を晴らしてやるとルシフェル様が近づいた。」

 

「でもなぜ、殺戮を?」

 

「実は肉体を無くした者が再び肉体を手に入れる方法があるんだ。」

 

「それが、殺戮か?」

 

「詳しく言うと、千人の肉体を繋げた体で復活することができるらしいよ。」

解説するように言うがその両目には涙が溜まっていた。自分で言っといて怖くなったのだろう。

「泣くなよ……ったく、」

 

「ん……ありがとう、」

目を細めながら天が言う。

「で、の人形はどんくらい強いんだ?」

天がへ? と声を出す。確かにいきなり過ぎたな……

「調査票によるとすばしっこくて運動能力がずば抜けて高いらしいけど……」

 

「攻撃能力は?」

 

「えーっと、生身では未測定でほとんどナイフに頼ってるようにも見えるらしいよ。」

その言葉を聞いて勝機があることを悟る。接近の殴り合いに持ち込めば勝機はあるはずだ。殴り合いとなればあいつにも協力を持ち寄るしかない。

いつの間にか横に座っていたそいつに話しかける。ほんとにいつの間にいたんだよ。

「上腕二頭筋の神、いや、めんどくさいな、おいマッチョ!」

 

「もしかしてそれは俺の事か?」

 

「ああ、そうだ。話聞いてたろ? お前にも協力して欲しい。」

 

「構わんが、なぜだ?」

 

「俺をムキムキにしてくれ。あと、カバンの神は知ってるか?」

 

「まあまあ仲は良いが、」

 

「ならいい、そいつを呼んでくれ。」

 

「ちょ、ちょっと八尾君……?」

 

「大丈夫だ、問題ない。」

 

「その言い方的に負けて帰ってきそうなのは気のせいかな?」

天もそのネタを知ってたか……

俺はジャンパーを着て生徒カバンを手に取り出ていこうとする。

「レイには何も言わないでくれ。心配させたくない。」

一応吐き捨てて出ていった。

……すまんなレイ、でも俺だって平凡な日常が欲しいんだ。少しくらい目を瞑ってくれ。


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