あれから某鳳凰院よろしく高笑いしながら去って行った束は
「一番大事な事忘れてた☆てへぺろ(・ω<)」
と言いながら戻って来た。
その際、『てへぺろ(・ω<)』が堪に触ったのか千冬にアイアンクローをかまされていた。
束の頭がミシメキ言っているが大丈夫なのだろうか。
「ち、ちーちゃん?
絞まってる、すっごく絞まってるよぉぉぉぉ!?」
ギリギリ……
千冬が絞める。
ビクンビクン!
束が痙攣する。
ぷらーん……
「「「動かなくなったぁぁぁぁ!?」」」
一夏達が声を上げた、その時。
ザバン!!
「ひどいよ、ちーちゃん!!」
束が出てきた。
海から。
「え……? あ、あれ?」
一夏が困惑する。
無理もない、何故なら、海から出て来た束と同時に千冬にアイアンクローをかまされている束も存在しているのだ。
「ふっふっふ……
甘いよちーちゃん!
それは残像だっ!」
束がそう言った瞬間、千冬が絞めていた束がスゥ……と消えていった。
「質量を持った残像……だと?」
千冬が少し目を大きくする。
千冬に続き束もなにかおかしな存在だった。
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千冬と遊んでいた束だったが、本来の用事を思い出し、やっと箒にISを渡す事が出来た。
箒の専用機【紅椿】
全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISらしい。
そして、それを聞いたバルバトスの目が鷹が獲物を捉えたような獰猛なモノになり「ほう……」と言っていた。
箒は犠牲になったのだ……
「さぁ、箒ちゃん!
そのISで諸悪の根源をやっつけて!!」
と、唐突に束がバルバトスを指差しながらそんな事を言った。
「え」
いきなり過ぎて箒の思考が追いついていない。
「大丈夫!束さん特製のその紅椿ならきっと大丈夫だよ!」
そんな箒を気にする事もなくはやし立てる束。
「さぁ、勇者よ! 魔王を倒し、姫を救「やかましい!」おおう!?」
見かねた千冬に蹴り飛ばされる束。
ズシャァ!!と顔面から砂浜を滑る束、しかしすぐに復活して戻ってくる。
コイツは一体何者だ。
「あーあ……
あんな事言ったら……」
と、一連の流れを傍観していた鈴が呟く。
「箒さん、トラウマにならなければいいんですけれど……」
その呟きを聞いたセシリアが心配そうに箒を見る。
「ぶぅるぁぁ……」
そう、二人の心配の原因、バルバトスである。
束の言葉を聞いた辺りからバルバトスから徐々に闘気が漏れ出していた。
完全にや(殺)る気である。
「おお!!師匠がやる気だ!
頑張ってください!」
ラウラがバルバトスを応援する。
それに応えるかのようにバルバトスはディアボリックファングを出現させ、構えた。
それから数分後。
バルバトスの雄叫びが轟き、箒は症候群を発症した。
敢えてもう一度言おう、箒は犠牲になったのだ。