Infinite possibility world ~ ver Servant of zero 旧版 作:花極四季
巨大な人型の土塊が私達に影を落とす。
学院を襲ったゴーレムと同一の形状をしているそれは、フーケが召還したものだという確証を得るには充分な証拠だった。
「避けろ!」
怒号にも似たヴァルディの叫びに、誰しもが反射的に回避行動を取る。
瞬間、先程立っていた場所が、ゴーレムのパンチで背後の小屋と共に無惨に破壊される。
その圧倒的なまでの威力に、私の中に恐怖心が芽生えるのがわかる。
「これは―――フーケのゴーレム!?」
「待ち伏せされた」
私達の動揺を尻目に、巨躯を振るわせ拳を引きずるようにそのまま薙ぎ払おうと土腕が迫る。
その容赦も慈悲もない動きが、私達を始末しようと必死なことが窺い知れる。
拳に誰よりも近かった私は、ヴァルディに抱えられ紙一重で避けることに成功する。
一瞬、ヴァルディの顔色を伺う。
圧倒的な性能を見せつけられて尚、彼の表情は陰りを見せることなく凛々しさを維持していた。
それを見たお陰か、先程までの震えが収まっていく。
彼がいれば、あれを倒すことができる。
そんな確証もないが、しかし確信できる想いが内に沸いてくる。
壊れ物を扱うかのように、優しくその場に降ろされる。
お姫様抱っこをされていたという事実が、恐怖に上塗りされていた羞恥を込み上がらせていく。
でも、それは余裕ができた証拠。
いつも通りの自分を維持出来る心の余裕を、彼が作ってくれたのだ。
「キュルケ、タバサ、ロングビルを探してくれ!先悲鳴は彼女のものだった!危機が迫っている可能性がある!」
「でも、このゴーレムはどうするの!?」
「俺が引きつけておく。なに、この程度の相手に遅れを取ることはないさ」
あくまでも毅然とした態度で、そう告げる。
虚勢でもなんでもない。確証の籠もった声色。
「………わかったわ。ダーリンも無理しないで!」
ヴァルディを信頼して、二人は森林の中へと駆けていく。
させまいと鈍重な動きでその後ろ姿を攻撃しようとしたゴーレムは、次の瞬間片方の足を両断され、バランスを崩し地に伏す。
「おうし、相棒!時間稼ぎだなんてケチケチしたことは言わねぇ!あんな土人形、細切れにしちまいな!」
デルフリンガーの愉しそうな声が響く。
剣としては、あそこまで綺麗な一撃を与えた事実を前に興奮せずにはいられないのだろう。
私も、先の光景を目の当たりにしたことで、最早一切の不安は拭われた。
「主、援護を頼む」
「―――え」
しかし、直ぐさま別の形でそれは私を襲う。
信頼の表れの一言。
喜ぶべきことなのだろう。
しかし、それは自らの恥部を晒すことに他ならない。
ヴァルディは私が魔法を使えないことを知らない。
貴族は魔法が使えるのが当たり前とされているのだ。あの一言が自然と出るのは信頼を抜きにしてもおかしいことではない。
だが、この土壇場で彼の背中を護るという行為が、どれだけの悲劇を招くことになろう?
「―――駄目、できない」
「主?」
「だって私、本当は――――――」
ヴァルディに嫌われるのは、見捨てられるのは嫌だ。
でも、彼が必要のない傷を負うことはもっと嫌だ。
だから、この場ですべてを告白しよう。そう思った。
だが、それを隙と見たのかゴーレムはヴァルディに拳を叩き込まんと襲いかかる。
それに気が付いたヴァルディは、直ぐさま迎撃態勢に移行し、私との距離が離れていく。
言いそびれてしまったことで、彼は未だ援護を期待しているかどうかさえも定かではなくなった。
………何も出来ないという事実が、初めて重くのし掛かる。
ヴァルディの主なのに。彼が必死に戦っている光景を眼前に置きながらも、何一つできやしない。
初めて、心の底から自分が憎くてたまらなくなった。
無力な自分が。
才能のない自分が。
―――こんな事態になるまで保身に走って、結果彼を苦しめることになった自分の行いが。
脱出の際に咄嗟に回収した『破壊の剣飾』を強く握りしめる。
剣状の装飾が手に突き刺さっても関係ないと言わんばかりに、強く。
そんな痛み、彼に負担を強いていることに比べたらなんてことはない。
デルフリンガーの宣言通り、ゴーレムは再生速度を超えた剣閃で細切れになっていく。
時には地面が抉られる程の踏み込みと共に繰り出される突きや、ゴーレムの頭の高さまで跳躍してからの兜割りなど、一見以前見たものと比べて地味な攻撃手段だが、彼の踊っているかのような身のこなしは、その地味さを補って余りあるほどに美しかった。
私の―――いや、キュルケやタバサでさえもあの場に割って入るなんて不可能だろう。
それ程までに圧倒的。それ程までに一方的。それ程までに無慈悲。
ついに再生の限界に達したのか、ゴーレムは音を立てて崩れ落ちた。
「やった………の?」
事実を噛み締めるように呟く。
ヴァルディは土に還るゴーレムを一瞥し、まるで何事もなかったかのような表情でこちらに歩み寄ってくる。
私はその変わらない表情を前に、身震いを起こす。
圧倒的なまでの強さを持つヴァルディにとって、私は一体どんな価値があるというのだろう。
主と呼んでくれている。それだけを見れば主従関係は成立しているように見えるが、当事者からすればそんなもの信じられない。
ヴァルディはメイジが畏れるエルフであり、その武術の才は私達の常識を容易に覆していく。
片や私は、魔法をまともに行使することができない自他共に認める落ちこぼれメイジ。
捨てる捨てないの決定権がどちらにあるかと問われれば、語るまでもないだろう。
「大事ないか、主」
「え、ええ………」
彼はいつも通り、優しい声色で私の身を案じてくれる。
でも、それは私が最低限の主としての価値があると誤解しているから。
………今度こそ邪魔されることはない。すべてを話そう。
「あのね、ヴァルディ。私―――」
「やっぱり強いね、アンタ。でも、私の勝ちだよ」
そう思った時、再び私の言葉は遮られる。
声の主の方へと顔を向けると、そこには―――ツェルプストーの首下に杖を向けたミス・ロングビルの姿があった。
「な―――え?」
その予想外の光景を前に、呆然となる。
「ヴァルディと言ったかい。アンタはやはり強い。どこぞの貴族の餓鬼との決闘騒ぎの時、あれは一切本気を出していないことはわかっていた。だけど、まさか私の最高傑作を玩具のように弄ぶとは、流石に予想外だったよ」
ミス・ロングビルは普段の温厚そうな表情とは打って変わって邪悪に歪んでいる。
そこから、ひとつの結論を導き出す。
「まさか、貴方がフーケだったの?」
「そうさ。アンタ達をここにおびき寄せたのは、破壊の剣飾がどんなマジックアイテムか判別するためさ。特にエルフの知識を持つコイツを誘導することが出来たのは、好機でもあり誤算でもあった」
「タバサはどうしたの!?」
「人質となったミス・ツェルプストーの身の安全を保証する代償として、杖を折らせてもらった。本人には何もしちゃあいないが、杖もないメイジなんてただの小娘。放置したところでどうとでもなる。公言すればミス・ツェルプストーの命の保証がなくなることぐらい、聡明な彼女なら言わずともわかるだろうしね」
「ごめんなさい、ヴァリエール。ダーリン………。私が油断してミス・ロングビル―――いえ、フーケに近づいたばっかりに」
「ふん、どんなに才能があると謳われても、友達を人質に取れば簡単に無力化できる。戦いのなんたるかも知らないお子様を手玉に取るのなんざ、簡単なんだよ」
ヴァルディが神妙な表情のまま、デルフリンガーを抜こうと手を動かすことすら、フーケは見逃さなかった。
「おっと、動くんじゃないよ。妙な動きを見せたら、コイツの首はポン、だよ。土系統がメインとはいえ、こちとらスクウェアメイジなんだ。ブレイドを瞬時に形成することぐらい屁でもないんだよ。わかったら大人しくしな!」
脅しの一言は、彼の動きを止めるには充分なものだった。
彼一人だったら、何の問題もなかっただろう。
それも理解しているからこそ、キュルケも悔しさと情けなさで表情が歪んでいるのだろう。
「で、どうやら破壊の剣飾の使い方は誰もわからなかったようだね。だったら、それは返してもらうよ。同じネタで今度は違う奴をおびき寄せるからね」
「なっ―――そんなこと!」
「そっちには選択権なんてないんだよ。で、破壊の剣飾はどっちが持ってるんだい?」
「………私よ」
「そりゃあ好都合だ。それを持ったままこっちにきな。破壊の剣飾と一緒にアンタを人質に取れば、エルフの方も身動きできなくなるだろうしね」
「私に人質としての価値があると思ってるの?」
「思ってるさ。何せツェルプストーでさえも私ごと斬り捨てなかったんだ。奴の主人であるアンタなら、尚更価値があるってものじゃない?ハハハ!落ちこぼれのアンタでも、他人の役に立てる時が来たんだ。光栄に思いなさいよ」
耳障りな笑い声が響く。
勝利を確信し、陶酔している。
しかし慢心することなく、少しでも変な真似をすればツェルプストーの命はないだろう。
悔しさに歯噛みすることしかできない。
どこまでも足手まといにしかならない自分に腹が立つ。
「さぁ、杖を捨ててこっちにきな。まぁ、アンタから杖を奪ったところで脅威にはならないのは知っているけどね」
どこまでも余裕な表情で急かしてくる。
ツェルプストーがどうなろうと知ったことではない、が―――それでも見捨てるのは気分が悪い。
それに、誰かが死ぬ光景なんて見たくもない。
躊躇えばフーケが下手な行動に出てしまうかもしれない。
この限られた行動範囲で何をすべきかすら、考える暇は与えてくれない。
一歩一歩、最悪な結末に向かって歩き出す。
ヴァルディと影が交差したとき、彼の表情を盗み見る。
すると、目があった。
彼はこの状況下でも、決して動揺してはいなかった。
ただ一度、私に向かって頷く。
それがどんな意味を込められてのものだったかは、私にはわからなかった。
だけど、絶望の淵に立たされていた私の心は、再び熱を帯び始めていた。
そしてとうとう、手を伸ばせば届く距離まで近づいた。
「さて、渡してもらおうじゃないか」
手に握られた破壊の剣飾の感触を今一度確かめる。
これをフーケに奪われた瞬間、私達は敗北する。
無抵抗のまま、情けないまま、惨めに。
―――嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!
私は何もしていない。
私はお荷物なんかじゃない。
私はヴァルディの重荷になったまま、終わりたくない!
「……―――なに、」
「は?なんだって―――」
「―――そんなに欲しけりゃ、くれてやるわよぉぉぉ!!」
自分でも何故このような行動に出たかわからない。
ただ、一瞬でも隙が出来ればヴァルディが助けてくれると、そう思っていたからかもしれない。
単純に、この女に一矢報いたいというやけくそな思いばかりが先行していただけかもしれない。
私は怒りのまま、破壊の剣飾が握られた手でフーケを殴りつけた。
「――――――!!!」
フーケも、まさかメイジが物理的攻撃手段に出るとは思っていなかったのだろう。
その予想外の行動に目を見開きながらも、身動きを取ることはなかった。
そして拳がフーケのみぞおちに触れた瞬間、聞き慣れた爆発音が私を中心に拡がった。
フーケを殴りつけた瞬間、私の失敗魔法のような衝撃が拳を通して発現する。
爆発による痛みはない。せいぜい、殴り方がわからなかったせいで、拳を痛めた程度だ。
フーケは爆発の衝撃で遙か後方まで吹っ飛んでいく。
声を上げることなく、ただの一撃で沈黙した。
―――私が、やったの?
呆然とした私の肩をヴァルディが背後から叩く。
「それが正解だ、主」
「せい、かい?」
おぼつかない思考で、それだけを口にする。
「ああ。あれは破壊の剣飾という名前ではない。―――エクスプロージョン。あの爆発の力の名だ」
「エクス、プロージョン」
その名前は、布に水が染みこむかのように容易く受け入れられた。
開いた掌から、破壊の剣飾が顔を出す。
忌み嫌っていた爆発の力が、皮肉にも私達を助ける要となった。
―――少し。ほんの少しではあるけれど、前に比べて自分の魔法に対して劣等感が薄れていく気がした。
………ふう、焦った。
ボスであるゴーレムをデビル○イクライ的なノリで討伐したかと思えば、まさかのロングビルさんが土くれのフーケで、油断していたキュルケさんが人質に取られてしまった。
だけど、知ってか知らずか、破壊の剣飾を握りしめた手でフーケを殴った結果、その効果を発揮した。
戦闘が終わって、ふと破壊の剣飾がどういうものかを思い出したんだけど、その前にフーケが出てきたせいで引き延ばしになっちゃんだけど、結果オーライだった。
「ダーリーン!!」
大声を出しながら抱きついてくるキュルケさん。
怖かったのだろう。身体が震えているのが分かる。
ゲームとはいえ、死に安心感を覚えられるほど経験はないのだろう。
取り敢えず背中をポンポンと叩いておく。こんな時、どんな接し方をすればわからないの。
「………ごめんなさい。ダーリンにもヴァリエールにも迷惑を掛けちゃったわね」
「………別にいいわよ。騙されていたのはみんな一緒だったんだし、結果として助かったんだからいいわ」
実は学院内でフーケが説明していた段階で疑問には思ってたんだけど、いらぬ火種にしかならないだろうし黙っておく。
「それより、さっきの―――エクスプロージョン?だったかしら。それが破壊の剣飾の正式名称なの?」
「正確には違う。これ単体の効果を指すならば間違いではないが、これは―――」
これは、RA○Eと呼ばれる漫画に出てくる、ホーリー○リングだ。
僕自身もよく覚えてはいないんだけど、これは専用の剣にはめ込むことで剣の性質が変化する、場合によっては使用者本人にまで影響を及ぼす力を得ることができるもの。
色々な種類がある中で、これは第二の剣「エクスプロージョン」と呼ばれているものだ。
斬るという概念を排斥し、刃に触れた際に爆発が起こるようになる性質を持つ。
因みにルイズさんがやったように、それ自身を握った状態で殴ったりしても効果は発動する。
爆発の威力は、少なくとも人相手にモロに当てたら気絶するレベルだろうか。フーケが実際そうなってるし。
「そんな凄いものだったなんて………」
「爆発、ね。何かと爆発に縁があるんじゃなくて?ヴァリエール」
「………うっさい」
縁とは?と質問しようと思った先、この場にいなかった者が声を発する。
「フーケを捕獲しないと」
「あ―――タバサ。ごめん!すっかり忘れてた」
そう言いながらフーケの捕縛作業に入る。
「そういえばタバサ。私のせいで杖を折るような真似をさせちゃってごめんなさい」
「構わない。直すことは可能」
見ると、タバサちゃんの身の丈以上の杖がない。
人質を取られたんじゃあ仕方ないけど、そういう状況下での感情の機微も表現できるのは流石としか言いようがない。
「じゃあ、帰りましょう?フーケが目覚める前に帰らないと、また面倒なことになりそうだし」
キュルケの意見に皆が頷く。
フーケを拘束した状態にしてから、馬車に乗せる。
気絶とかしたことはないけど、半日の移動の間一度も目を覚まさないなんてあるのかな。
まぁ、そこはご都合主義的に一度も目を覚まさないんだろうけどさ。
「ほっほ。見事破壊の剣飾を取り戻してくれたようで、ごくろうじゃった。それにしても、フーケの正体がミス・ロングビルだったとはのう」
学院長室にて、ミッション終了の旨を伝えると、オスマンさんは悲しそうにそう呟く。
データ上とはいえ、長年の付き合い(?)をしてきた相手に裏切られたという事実は受け入れがたいのだろう。
そして、ルイズさんがフーケとの馴れ初めを問うたところ、酒場でセクハラしても笑顔で返してくれたからとか、なんかそんな理由だった。
取って付けたようだけど、もしこれがフーケがオスマンさんの正体を知った上でわざとそうしたのであれば、辻褄は合わなくもない。
まぁ、僕の中でのオスマンさんの株は落ちたけどね。聡明な老人から、セクハラ爺レベルには。
それからは、報酬の話になった。
僕を除いたメンバーはシュヴァリエという称号を―――タバサちゃんはもう持っているという設定から、精霊勲章とやらが授与された―――ゲット。
僕に何もないということに不満を漏らしたルイズさんだったが、もともとお手伝いでの同伴のようなものだったし、報酬がないことも仕方ない。
気にしていないことを伝えると、しぶしぶだけど引き下がってくれた。やっぱり優しい子だなぁ。
「あの、オールド・オスマン。破壊の剣飾のことなんですが………」
「うん、どうかしたかね?」
「私があれを握った手でフーケを殴った際、爆発を起こしました。あれが破壊の剣飾と呼ばれる所以なのでしょうか?」
「あ、それは私も気になりました。あんなちっちゃなものがルイズの魔法レベルの爆発を発生させるなんて、尋常じゃないですよ」
「それに、ヴァルディが破壊の剣飾のことを、エクスプロージョンだと言っていました」
「―――それは確かかね?ヴァルディ殿」
「それ単体を指すのであれば、違う。爆発の効果の方を指すのであれば、そう呼べる」
「………何故ヴァルディ殿がこれを知っているのかは知らぬが、その様子ではこれの正しい使い方も知っておるのじゃろうな」
無言で頷く。
「正しい、使い方?」
キュルケさんが首をかしげる。
「そもそもオールド・オスマンは、これをどこで手に入れたのですか?」
「それはのう―――」
オスマンさんの話を要約すると、昔やんちゃしていた頃にワイバーンに襲われたんだけど、その時に助けてくれた男性がRA○Eを嵌めた剣で撃退してくれたとか。
オスマンさんはその際、その男性にRA○Eを手渡され、『いずれそれを扱える者が現れた時、それを受け渡し、私を再び訪ねよ』と告げ、去っていったとのこと。
「それで、その人物とは何物なのだ?」
「ヴァルディ殿は知らないだろうが、シュペー卿と呼ばれる有名な武器職人じゃよ」
「シュペー卿って、マジックアイテムまで作れるの?!?」
キュルケさんが目を見開いて驚きを表す。
そういえば、キュルケさんから貰った剣もシュペー卿の業物らしいね。
まぁ、見た目だけの代物だったけど。
「本人が作ったという証拠はない。それよりもヴァルディ殿、これの使い方を知っている、ということで相違ないな?」
「ああ」
「ならば、これはお主に与えよう」
「いいのか?」
「構わんよ。元より恩人との約束じゃ。何を思ってそうしたのかはわからぬが、彼が無意味にこんな貴重品を渡すとは思えん。折角じゃし、シュペー卿に接触してみたらどうかね?」
「そうだな。そうさせてもらおう」
お、これが報酬という扱いになるのか。やったね。
予想外にもこれがキーとなり、次するべきことも示してくれた。
もしかして自分が気付いていないだけで、ミッションを受けていた扱いだったのかな?
「さて、フーケ討伐の祝いも兼ねて、今夜はフリッグの舞踏会が開かれる。当然ながら、主役は君達じゃ。それまでの間、英気を養っておくといい。では、解散じゃ」
ぱんぱんと手を叩きながら、解散の音頭が告げられる。
ルイズさんの部屋に戻る前の間、次のイベントについて想いを馳せていた。