むりがく   作:kzm

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今回は無理矢理エロ注意よー。本番シーンはないけど。


校則その4『不純異性交遊禁止』・6

 

「……ここは、どこだ」

 

 目を開けて沙羅は呟いた。

 沙羅は一人用のベッドの上に寝かされていた。他に部屋の中にあるものは小さな机と椅子と冷蔵庫だけ。窓はあるが沙羅のほうからだとどんな景色なのか見ることもできない。

 寮に似てる気がするが、寮じゃない気もする。

 ここには生活しているという匂いがまったくしない。

 

「……ちっ」

 

 沙羅は自分の腕が頭の上で縛られていることにも気付いた。

 

 ――そしてすぐそばには椅子に座って沙羅の様子を見守っている彩人がいた。

 

「ここがどこか不思議? ここは外から来た人達が泊まっていく施設なんだ。でもここには滅多に来客がなくてね。ははは、おかしいよね、研究都市なのに。まぁ、穴場だよ、穴場」

 

 何の穴場なのか聞く気にもなれない。

 相変わらずさわやかな笑みを浮かべているが不穏な気配はもう隠しきれていない。

 少し眠ったせいか、さっきよりも沙羅の頭は動くようになっていた。でも気を抜けばその瞬間に眠りに落ちてしまいそうだ。たぶん、何か混ぜられたものを飲まされたのだろう。

 

「やはりお前もどこかの世界から追放された奴か」

「本当に気付いてたのかい?」

「……罪を犯した存在は反省室に行く。だから普通の生徒は我々を体が弱い生徒だと思うはずだ。罪を犯したから追い出されるなんて発想はこの世界のことを知ってる存在だけがすることだ」

 

 白羽磨子のように反省室に行かない程度のイタズラをする生徒こそ問題があると思われるだろう。だがあれは例外とも言えるくらいのバカだ。

 しかし女子高生の姿じゃないということはそれなりに真面目に生活した証拠でもある。李亜やみかどのように間違って飛ばされてきたものかもしれない。もしくはさくりんやぷちりんのようにバカなだけで、本当にサポートする側の人間かもしれない。

 だから聞いても教えてくれないだろうと沙羅は思っていた。

 

「目的はなんだ。しらはまちゃんのように上下関係を決めたいのか?」

「そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える」

「意味がわからん。はっきり言え」

「わかった、はっきり言う。君を(自主規制)して身も心も性奴隷にしたい!」

「はっきり言いすぎだ! 気持ち悪い!」

 

 沙羅はベッドの上で釣り上げられたばかりの魚のようにじだじだと暴れた。縛られているのは腕だけだから力を入れれば起き上がれないこともない。だが目覚めたばかりの沙羅の体はうまく力が入らない。

 しかもびちびちとはねているうちに、彩人に腕を押さえつけられてしまった。

 

「あのな、私は元男だぞ。この世界のことを知っているなら理解できるだろう」

「何も問題はない。むしろそこがいい!」

 

 とてもいい笑顔で彩人は言い切った。何も理解できない、したくなかった沙羅は

 

「……ぐぅ……」

 

 目を閉じて眠ることにした。

 これはきっと夢に違いない、その証拠にこんなに眠いじゃないか。ほーらヒツジさんが一匹ヒツジさんが二匹……。

 彩人は寝息を立て始めた沙羅のアゴを指先でコチョコチョとくすぐった。

 

「あひゃっあひゃひゃひゃっ、やめろこら!! 問題あるわバカか!」

「ないよ。どうせどこかで誰かを苦しめてた存在だろう? 俺は女としての悦びを教えてあげてるだけだよ」

 

 アゴの下をくすぐっていた彩人の手が、そっと沙羅の頬を嫌味なくらいに優しく撫で付けた。

 

「大丈夫、最後にはみんな従順になってくれた。元の性格なんて忘れてしまうほどにね。俺はどこかを支配していた存在の心をこの手で地に落として屈服させることができると思うとゾクゾクするんだ。君も俺も幸せになれる、需要と供給が一致したすばらしい関係だと思わないかい」

「……気持ち悪いな」

 

 吐き気がする。

 彩人だけでなく、似たようなことをしてきた自分自身にも。今までの行為を反省しているわけではない。自分のやりたいことをやってきただけのことに悔いる要素は沙羅にとってはない。

 だがどうしてだろう、理由がわからないけど気持ち悪い。

 

「人殺しは反省室行きだ。だが骨を折るなどの深い傷を負わせてもそれは変わらない。人を殺すよりかは時間は短いけどね」

 

 そんなことを言いながら彩人は沙羅の腰の上に乗り上げてきた。飲まされた薬のせいで頭も体も動いてくれない。

 相手の正体に気付いていたのにまさかこんなことになるなんて。たとえ相手に悪意があってもすぐに手を出すことはないだろうと思っていた。

 沙羅は自分のバカさに舌打ちした。

 

「お前、あの場所に行ったことあるのか」

「そのことについては話さないほうがお互いのためだろ?」

 

 にっこり。彩人は教室で挨拶するときのようにさわやかに沙羅に微笑んだ。

 反省室について話したくないのは沙羅も一緒だが、今は笑いかける顔が気持ち悪くて仕方ない。

 

「まぁ、さっきの人形も言ってたとおり、こういう行為は見つかれば反省室行きだ。つまり見つからなければ実行できると言うことだよ。――さて、君はどうされたい? いや、君は今までどうしてきた?」

「……そうだな」

 

 沙羅は小さくため息を吐いた。

 答えればその通りに実行されてしまうのは目に見えている。かと言って答えずに顔にツバを吐きかけても似たような結果にしかならないだろう。

 

「嫌がる女の腕を押さえつけ、服は無理矢理引き裂くな。ボロボロにすればするほど女に惨めな気持ちを与えることができる。だがすぐには貫かん。体中に噛み痕を残し、いつ食われるかの恐怖を与える。その次に愛撫だ。鞭と飴を交互に与えられた女の自我は崩壊して、やがて自分から欲しいと言い出すぞ」

「なるほど、なかなか参考になるね」

 

 沙羅が着ているシャツの襟首の左右をつかみながら彩人はにっこりと笑った。

 そして左右に引っ張った。

 急に加えられた力のせいでシャツのボタンは外れてしまい、いくつかのボタンは弾け飛んで床へ転がった。

 

「っっ! っこの! 離せ! いい加減にしろ!」

 

 沙羅は縛られた腕で彩人を殴りつけようとするがうまくいかない。逆に縛られた上から押さえつけられてしまった。もう片方の手がキャミソールをつかんだ。

 薄いキャミソールは簡単にビリビリと破れてしまい、小さくレースで縁取られただけのシンプルなブラがとうとう晒されてしまった。

 

「さっきも見たけど、とてもかわいいと思うよ」

「っ!」

 

 沙羅の顔がサッと赤くなった。

 今まで裸を見られても恥ずかしいなんて一度も思わなかったのに。性的な視線を意識してしまった途端、恥ずかしさと不愉快さを感じてしまった。

 いったいどうして。

 疑問に対して深く考えている余裕は今の沙羅にはない。

 

「こんなことをして許されると思うなっ! 殺す、絶対に殺す!! 死ね死ね死ね!!」

 

 頭が熱くなり、衝動のままに沙羅は彩人に怒鳴りつけた。

 

「へぇ怖いな。どうやって殺すんだい? 殺したら反省室に行くだけってわかってて言ってる?」

 

 沙羅は顔を怒りで真っ赤にしながらわめいた。腹の上に乗られているせいで膝で攻撃しようとしてもうまくいかない。両腕は押さえつけられたままだ。

 それに力もうまく入らない。

 

「次に噛み痕を残すんだっけ?」

 

 彩人は沙羅の腕を押さえながら沙羅の白い首筋に吸い付いた。

 

「っんンッ!」

 

 思わぬ高い声が漏れてしまい、沙羅は動揺した。だが心を落ち着かせる暇もなく彩人は沙羅の首筋をやわく噛み、ちゅくちゅくと水音を立てた。

 

「ば、……バカ……! まずは噛むだけだって……んんっ、言っただろぉ……っ」

「ああ、そうだったかな? 君の反応がかわいくて、つい」

「か、かわいいとか、……アホ!!」

 

 自分でまねいた結果だからこそ沙羅は後悔した。

 多少の愛撫なら平気だと思っていたのにまさかここまで感度がいい体だなんて。店員に胸をもまれたときに気付いておけばよかった。

 

「……っ……! ……く……」

 

 噛み痕ではなくキスマークをつけられ、沙羅は唇を噛み締めて耐えた。

 嫌だ嫌だ、こんなのは本当に嫌だ。

 ぞわぞわとする悪寒のせいで吐いてしまいそうだ。

 もしかして本当にこのままやられてしまうのではないだろうか。磨子の貸してくれた漫画のように身も心も堕ちてしまうのではないだろうか。

 

 ――ああ、そう言えばしらはまちゃんはデートのことを知っていたな。あいつのせいで。あの漫画もあいつの差し金だろうが……。まぁ、もうそろそろいいか。これだけひどくやられれば、いい証拠にもなるはずだ。

 

 巻いているだけと言われたブラを上へとずらされてしまった瞬間、沙羅はニヤリと笑い、大きく口を開いた。

 

 

「そんなところで盗み聞きしてないで早く私を助けろ! 勇者トビア!!」

 

 

 グワッシャーン!!

 

 部屋の窓に何かが投げ込まれ、壁にバチコーンとぶつかった。

 

「ぐえっ!」

 

 そのぶつかった何かは悲鳴をあげて、むき出しになったままの沙羅の体の上にぽたっと転がり落ちた。

 

「ふ、不純異性こーゆーの、げんこーはんたいほれすぅ~~」

「このばかっ! よく見ろっ、私は被害者だっ!」

 

 ほぼ平面の胸の間で目をぐるぐるさせている人形に沙羅は怒鳴りつけた。ぷちりんかさくりんか見分けはつかないが、この際どっちでもいい。

 

「くそ……! こんなところにどうして!」

 

 彩人は慌てて沙羅から飛びのいた。こんな羽虫相手に何を恐れているんだと思う前に今度は部屋のドアから鍵が開く音がした。

 

「こんにちは黒樹君。それを聞きたいのは私のほうなんだけど?」

 

 部屋の中に入ってにっこりと笑ったのは――李亜だった。

 手にはここのものと思われる鍵が握られ、頭と首には沙羅のものであるはずのイヤーマフとマフラーが存在していた。

 

「どけ!」

「もう見られてるんだから逃げても無駄だと思うけどなぁ。でも一発くらい入れておかないと気がすまないや。えーと殴る蹴るは度が過ぎなければいいんだっけ?」

 

 ねぇ、と沙羅の胸に転がったままのぷちりん(仮)に確かめながら、李亜は横をすり抜けようとしている彩人の腕をつかみ、投げ捨てた。驚くほど簡単に宙に浮いた彩人の体が床へと叩きつけられた。

 

「ふぅー」

 

 軽く深呼吸をして息を整える李亜。「ぐぅっ」と痛みにうめきながらもだえる彩人。気は失っていない。が、しばらく起き上がりそうにはない。

 

「ここに来たら力は失うんじゃなかったのか……?」

「やだな、体の使いかたって言うのは頭で覚えるものだよ」

 

 つんつん、と自分の頭を指で突きながら沙羅の問いに李亜は答えた。

 自分はどうだったかと沙羅は思い返した。殴りたいときに殴って蹴りたいときに蹴ってきた。考えて戦ったことなんてほとんどない。同じことができるかどうかはちょっと怪しい。

 

「すんません、ここらへん硬くて寝心地悪いんすけどー、どーにかしてくれませんかねぇー?」

 

 気付いたら、と言うより視界から外しているうちにぷちりん(たぶん)は沙羅のなだらかな胸の間でごろごろくつろいでいた。

 

「お前は仕事しろ!」

 

 縛られたままの手で沙羅はぷちりん(推定)を横で転がっている彩人のほうへと弾き飛ばした。人形が自分のそばで転がったところを見た彩人は諦めの笑みを浮かべ、起き上がろうとすることさえしなくなった。

 

「……早く捕まえればいいじゃないか」

「えーとえーと、とりあえずたいほでーす!」

 

 ぷちりん(どうでもいい)は杖を振り上げた。

 彩人の体の周辺にだけノイズが走り、瞬きをする間もなく彩人は消えてしまった。あっけなかった。思わず沙羅は部屋の中を見渡した。

 どこかに隠れたわけじゃない。本当に送られてしまったんだ、おそらく反省室へと。

 

「ごきょーりょく感謝です!」

「いえいえ」

 

 ふよふよと浮いている人形に敬礼をされ、李亜も同じように敬礼を返した。

 沙羅は大きくため息を吐いて全身の力を抜いた。忘れかけていた睡魔がまた襲ってきたが、さすがに抵抗する気はなかった。

 

 ――仕方ない。だいたいお前のせいだからな。……後は任せ……。

 

「じゃあ終わったことだし、もう帰ろうか?」

 

 などと李亜が声をかけた頃には沙羅はすぅすぅと寝息を立て、深い眠りに落ちていた。

 

 ……上半身を派手に晒したまま。

 

 シャツのボタンは弾けとび、キャミソールは破られ、鎖骨の周りには赤い淫らな痕が散っている。下着もずらされているせいで少しでも動かせば胸が全部見えてしまいそうだ。

 しかも疲れきった表情で意識を飛ばしているから、ほぼ事後にしか見えない。

 

「……あの、この子を寮まで運んでくれない?」

 

 李亜がぷちりんに頼むとぷちりんは力強くうなずいてくれた。李亜は安心してため息を吐いた。

 

「よかった。どうすればいいのかわからなか……」

「無理です!! あ、鍵回収したいから早めにここから出ちゃってくださいねー。出ないとふほーしんにゅーでたいほしちゃいますよぅ?」

 

 李亜はここに来て初めて人形を踏み潰してやりたいと思った。

 

 


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