温泉アスレチック当日。俺はソワソワしながら、乱馬達の到着を待っていた。シャンプー経由で乱馬とあかねがペアで参加する事を聞いてはいたが、どう言った経緯でそうなったかまでは聞かなかったからだ。頼むから喧嘩した雰囲気のまま来るなよ。それこそ原作と話がそれてるとどう転ぶかわからないから怖いんだよなぁ……
「何そわそわしてるカ?」
「乱馬とあかねが心配でな。ま、俺とシャンプーの優勝は決まりだろうけど」
「そうはいくかよ。呪泉郷行きのチケットは俺の物だ!」
「シャンプーから聞いてたけどムースも参加なのね。スフレさんとかも、もしかしたら参加してるのかしら?」
「皆さんは頑張って下さいね」
「怪我しないでね」
俺と腕を組みながら見上げるシャンプー。くそ可愛いです。
俺の呟きに丁度、それを聞いていた乱馬がいきり立っており、あかねは周囲を見回してスフレが居ないかを探してる。流石の俺も同時に二役は無理です。
ちなみに今回、リンスと乱華はモニターで俺達のレースを見学予定となっている。二人共、参加したがっていたが危険だから参加しない様に言含めておいた。
「よう、乱馬。珍しく素直になったか?あかねと諍いもなく来るとは驚いたぞ」
「う、うっせーよ。俺の事よりもそっちはどうなんだよ?」
乱馬と肩を組みながらシャンプー達から離れる。コソコソと男子トークをする俺達にシャンプーやあかねは訝しげな表情を浮かべ、乱華とリンスはキョトンとしていた。
「俺の方は問題ねーよ。むしろ、優勝したら婚前旅行に行けるから譲る気はないからな。で、そっちは?」
「う……あかねから温泉アスレチックの事を聞いてから……まあ、オジさんと色々あったけど、あかねと一緒に行く事にしたんだよ。あかねと旅……いや呪泉郷に行けるチャンスを逃す訳には行かないからよ」
事の経緯を聞けば、やはり原作同様にあかねが乱馬に話を持ち掛けて、早雲のオジさんが余計な事をして失敗。ここまでは原作通りだったんだろうが乱馬が奮起したらしいな。何気に本音が溢れてたし。
「乱馬、ムース。こっちに来て食べましょう」
「右京が出店を出してたネ」
「美味しいです!」
「良牙さんも来ていたみたいです」
乱馬と男子トークをしていると、あかねに声を掛けられる。振り向くとシャンプー達が右京の出店で出しているお好み焼きを食べていた。屋台の端では良牙が体育座りをしている。
乱馬にアスレチックに出るのかと問われた良牙が出ないと言っているが好きな温泉に行けるチケット。つまり呪泉郷に行けるチャンスなのだと理解するとわかりやすく目の色を変えていた。
「よおし行くぜ、右京!」
「ん、なんやねん?」
気合いが入った良牙は右京を連れて参加申し込みへと向かう。意気込みは兎も角、参加受付は右手のロビーだぞ。何故わざわざ左手の通路に進むんだ。右手に受付って大きく書いてあるのに。
でも、どうなるかな……乱馬とあかねは喧嘩してないし、俺とシャンプーはペアを崩す気はない。良牙と右京は放っておけば自滅の確率が一番高いんだし。原作だとペアを何度も入れ替えたから全員が前に進んだ様なもんだが、放っておけば間違いなく良牙は自滅するだろうし。
「これも修行の一環にもなるか」
「さ、ムース。ギュッとするヨロシ」
達観し、平静を保とうとした俺の心は一瞬で乱れた。二人三脚の為に足を結んだ俺とシャンプーは密着する事となりシャンプーの体の柔らかさに俺は身を固くしてしまった。ヤバい、俺にとっても予想外の試練が待ち構えてた。