ムース1/2   作:残月

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ムースの日記⑥と原作介入

◯月×日

 

シャンプーが乱馬を追ってから一ヶ月が経過した。

未だに帰ってこないって事はまだ仕留めていないんだろう。そりゃそうか、原作でも乱馬はシャンプーの追跡を振り切って日本に帰ったんだし。

しかし……シャンプーがいないと静かなもんだな。思えばシャンプーとは幼なじみとして育ち十年以上も一緒だったんだ。考えてみたらシャンプーとこんなに長期間離ればなれって今回が初めてな気がする。

 

 

△月◯日

 

シャンプーが乱馬を追ってから二ヶ月が経過した。

最近、どうにも調子が上がらない。修行にも身が入らないのだ。心眼の修行で座禅してても雑念だらけで婆さんに叱られた。

それに最近、リンスの元気もない。やはり仲の良い姉と離れているのがツラいのだろう。昼寝に付き合っていたら『……シャンプー姉様』と涙を浮かべて寝言を言っていた。正直、俺もシャンプーに会いたい。

 

 

□月△日

 

シャンプーが乱馬を追ってから三ヶ月が経過した。

俺は俺が思っていた以上にシャンプーに惹かれていたんだと思う。会えないだけで、こんなにツラい思いになるとは……。

ただ、シャンプーに会いたいと思う気持ちと原作が始まった事でシャンプーが乱馬に惚れてしまうのだろうかと邪推してしまう。原作でもシャンプーは乱馬に負けた瞬間から乱馬にベタ惚れだった。もしもシャンプーが原作通りに乱馬に負けた場合、俺は原作のムースと同じ憂き目に会ってしまう。

何よりも防ごうと思っていた原作を防げなかったんだ。心配にもなるわ。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

シャンプーが乱馬を追い掛けて遂に四ヶ月が経過した。

早々と乱馬を始末して帰ってくると考えていた村の人達は困惑し、騒ぎになり始めてる。

 

 

「ムース兄様……シャンプー姉様はいつ帰ってきますか?」

「使命を果たしたら帰ってくる筈だから……そろそろ帰ってくるさ」

 

 

リンスには掟の内容はちゃんと伝えていないのだが、不安そうに俺を見上げていた。俺はリンスの頭を撫でながらも不安は隠しきれていなかった。もしかしたら今ごろ、乱馬を追って日本に行ってる可能性もあるからだ。

 

 

「你好」

 

 

そう、シャンプーの声が聞こえるくらいに不安な気持ちに……って、あれ?

 

 

「ただいま、帰ったネ」

「シャ、シャンプー!?」

「シャンプー姉様!」

 

 

 

にこやかに手を上げて帰って来たシャンプーに俺は固まり、リンスはシャンプーに抱き付いた。

 

 

「流石はムース兄様です!本当にシャンプー姉様がすぐに帰ってきました!」

「ムース、リンスに何を言ったカ?」

 

 

嬉しそうに俺を誉めるリンスだが、まさか本当にすぐに帰って来るとは思わなかった。だからリンスも『流石、お兄様』と目をキラキラさせないで。信頼で胸が痛むから。シャンプーはシャンプーで俺に疑いの視線を向けてるし。

 

 

「いや、リンスがシャンプーがいつ帰って来るか不安そうにしてたから、すぐに帰ってくるさと言ったんだが……掟は果たしたのか?」

「いや……まだネ。その事で曾バアちゃんに相談に来たヨ」

 

 

まさか、乱馬を仕留めたかと思ったが違ったらしい。悔しそうにしているシャンプーは婆さんに何か相談を持ってきたみたいだ。

 

 

「んじゃ、婆さんの所に行くとするか」

「ムース、お前も曾バアちゃんの所に行くのカ?」

 

 

俺は抱き合ってるシャンプーとリンスを連れて婆さんの所に行く事にした。俺も現在の状況を確認したいしね。

 

 

「久し振りにシャンプーに会えたんだ。もう少し、一緒に居たいんだよ」

「私もです!」

「ムース、リンス……ありがとう」

 

 

するとシャンプーは頬を赤く染めていた。久し振りに見る照れたシャンプーが可愛くてヤバい。

そんな話をした後に俺達は婆さんに会いに行った。

 

 

「ふむ……あの娘とパンダは日本へと行ったか」

「そうネ。あの女の名は乱馬。追い詰めたけどギリギリの所で逃げられたネ」

 

 

所変わってシャンプーの実家。最初は掟を果たしたかと思われたシャンプーだが、実際は乱馬とパンダに逃げられた報告だった。更に乱馬とパンダは日本に航り、これ以上の追跡が困難になったのだ。そこでシャンプーは婆さんに相談して日本に行く方法を相談に来たのだという。

 

 

「ふむ……ならば行商人が使っとる船を手配させるかの。行商人に連絡を取っておくからシャンプー、お主は準備と母共にも挨拶を済ませておくがよい」

「わかったネ」

「行きましょうシャンプー姉様!お母様達もシャンプー姉様に会いたがってますよ!」

 

 

婆さんはアッサリと日本に行く術を提示した。しかし、飛行機とかじゃないのね。まあ、誰かを仕留めたいからなんて理由じゃ入国ビザは通らないわな。

 

 

「ムース、お主は残れ。少し話がある」

「ん、ああ……わかったよ。シャンプーはお母さん達に会ってくるといい」

「………うん」

「ムース兄様、また後で」

 

 

俺も席を立とうとしたけど婆さんに止められた。なんの話かは分からないけど重要な話みたいだ。俺はシャンプーとリンスを先に行かせる事にした。シャンプーは少し俯き気味だったけどリンスを引き連れて部屋を後にする。

 

 

「……さて、ムースよ。シャンプーは日本に乱馬を追っていくが、お主も同行してくれんか?」

「へ……俺も?」

 

 

婆さんの意外な提案に俺の思考は追い付かなかった。原作だとシャンプーは一人で乱馬を追ってた筈だけど……

 

 

「シャンプーを一人で異国に行かせるのは、ちと不安での。博識な、お主が一緒なら安心なんじゃよ。シャンプーを頼む」

 

 

驚いていた俺だったが婆さんに頭を下げられる。そっか俺もこの四ヶ月間、シャンプーが心配だったけど、婆さんも心配してたんだな。

 

 

「わかったよ。どこまで力になれるか分からないけど俺もシャンプーと一緒に日本に行くよ」

「うむ。ならば、ムースの分の準備もさせるとするかの」

 

 

 

こうして俺はシャンプーと一緒に日本に行く事となる。久し振りの……転生してから初めての日本か。楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

◆◇sideシャンプー◆◇

 

 

ママ達の所に行く前に曾バアちゃんとムースの話が気になって私とリンスは扉の前で聞き耳を立てていた。

すると曾バアちゃんはムースに私と一緒に日本に行くようにとお願いしてた。

 

私は内心、凄く嬉しかった。本当なら乱馬を追うのも一人で問題なかったし、本当は村に戻らずに追っても良かった。でも……

 

 

「日本に行く前に一目会いたかったなんて……言えないネ」

「シャンプー姉様?」

 

 

リンスに話し掛けられてハッとなる。考えていた事を口に出してしまっていたらしい。私の呟きはリンスには聞かれなかったみたいだったけど私は慌ててリンスの手を取る。

 

 

「さ、リンス。ママ達に会いに行くね」

「はい、シャンプー姉様!」

 

 

私が手を繋ぐとリンスは笑顔で返してくれる。なんとか誤魔化せたらしいけど……私の頬はまだ熱を帯びていた。

 

 


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