ムース1/2   作:残月

87 / 94
調査の結果と今後

 

 

 

 

 

 

婆さんが鏡屋敷に向かってから数日。今の所、乱華に変化は無い。いや、正確には乱華本人には変わりはないが周囲に変化が起きている。

 

まず乱馬は以前よりも気遣いが出来る様になった気がする。妹が出来てからしっかりしなきゃと思う様になったみたいだ。

あかねは乱馬への風当たりが多少マシになった気がする。乱華が間に入って喧嘩の仲裁をする様になったからなのだろう。

 

乱華は既に天道家に馴染んでいる。問題があるとすれば外部の方か……九能兄から話を聞いた小太刀が乱華に会いに来た。今までの謝罪と「私の事は『お姉様』と呼んでくださっても良いのですよ?」と言っていた。外堀から埋めていく気なんだな。上手くいくかは別問題だが。

 

九能兄は乱華へのアプローチが増えていた。乱華も断るのが悪いと毎回、花束やぬいぐるみを受け取ってしまうので荷物が凄い事になってしまっている様だ。その度に佐助が謝りに来ていた。

 

良牙は迷子になる率が多少下がった。いや、アイツの方向音痴が直った訳じゃないのだが、迷子の良牙を乱華が見付けて道案内するパターンが多くなったのだ。流石の良牙もあかねの時と同様に乱華には素直に案内されているらしい。

 

 

今の所は日々平穏に過ごしている。このまま上手い事、乱華が生きていける環境が続けば良いけど……そんな事を思いながら店番をしていると乱馬とあかねと乱華が猫飯店に来た。毎日、通ってくれるのは嬉しいが日に日に顔色が悪くなっていくのを見るのはツラいもんだ。でも気持ちもわかる。そろそろ婆さんが鏡屋敷の調査を終えて帰ってくる頃だ。その結果次第では乱華は鏡屋敷の呪いの鏡に戻さなければならない。それを思えば日に日に顔色が悪くなるのも無理はない。

原作には無い流れの話だ……出来る事なら乱華生存でグダグダな終わり方をして欲しいもんだ。

 

そんな日々が続き……遂に婆さんと玄馬さんが鏡屋敷から帰ってきた。その日は皆で話を聞いた方が良いと天道家に関係者が揃えられた。

俺、シャンプー、リンス、婆さん。乱馬、玄馬さん、あかね、なびき、かすみさん、早雲さん、爺さん。そして偶々来ていた良牙だ。普段道に迷うくせにこんな時だけピンポイントで天道家に来るな良牙め。

 

 

「さて……ワシと玄馬で鏡屋敷に赴き、呪いの鏡を調査した。その結果……」

 

 

婆さんが口を開き、皆が息を呑む。そして次の言葉を待った。

 

 

「呪いの中から出てきたもう一人の乱馬……早乙女乱華は今は様子を見ながら生きる事が可能じゃと判断する」

「や、やった!」

「良かった!」

 

 

婆さんの言葉に乱馬とあかねは手放しに喜ぶ。早雲さんやかすみさん、なびき、良牙も喜んでいた。シャンプー、リンスも抱き合って喜んでいるが……俺には言葉の端々に不安を感じた。玄馬さんも難しい顔してるし。

 

 

「婆さん……『今は様子見』『生きる事が可能』って言ったよな。今後は違うって事か?」

「やはり、お主は気付いたか。そうじゃの……現状では不具合が無かったというだけでの。今後の生活の中で乱華に変化があった場合、対処が必要になった。勿論、ワシはそんな心配は無用じゃと思っておるのじゃが鏡屋敷の主人からは念を押されての」

 

 

俺の言葉に婆さんはコンパクトを取り出す。アレって様々なものを吸い込む魔法の鏡だったな。つまり、何かしら乱華が悪い事を仕出かしたら封印しろって事なんだろう。

 

 

「そんな事させるかよ!」

「そうよ、乱華は悪い子じゃないもの!」

「そうですな、乱華ちゃんは既に早乙女君の娘として、そして我が家の娘として認識しております。何かあった場合は家長の私が責任を持ちましょう」

 

 

婆さんの言葉に乱馬、あかねが反発し、早雲さんがキリッとした顔でハッキリと宣言した。普段からこうなら渋くて格好良いんだけどな。

 

 

「ホッホッホッ……玄馬も同じ事を言うとったぞ。乱華が生きていく事に渋っておった鏡屋敷の主人に必死に頭を下げておったわ」

「そ、それは言わぬ約束でしょう」

「親父……」

「お父さん……」

「オジ様……」

「早乙女君……キミって奴は……」

 

 

婆さんのカミングアウトに照れる玄馬さん。成る程、鏡屋敷の主人は乱華を呪いの鏡に戻さない事を渋ったが玄馬さんが必死に頼み込んだのだろう。乱馬、乱華、あかね、早雲さんが感動してる。かすみさん、なびき、良牙、爺さんも同様の様だ。

 

 

「ま、まあ……ワシにも責任があるんでな」

「兎に角、早乙女乱華は改めて今日より天道道場で面倒を見るのが良かろう。戸籍等はワシに任せよ。昔のツテでどうにかなるじゃろ」

 

 

ゴホンと咳払いをする玄馬さんに戸籍はどうにかすると豪語した婆さん。いや、どうにか出来るもんなのか?なんかダーティな笑みを浮かべてんだけど。

ま、何はともあれ……乱華が生きていけるだけで良かったと思う。乱馬やあかねと抱き合って喜んでる乱華を見るとそう思えた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。