天道道場が賭博場になっていた。この話は博打王キングの話だ。幼い頃の乱馬と右京は博打王キングを相手に賭博行為で天道道場と右京の親父の屋台を賭けの代価としていた。負けてしまった二人は博打王キングを簀巻きにして川に流したらしいのだが、後にキングのイカサマが発覚。しかし勝負の後での発覚に加えて幼い頃の事とは言えど証文がある以上、天道道場は博打王キングの物だ。
「で、道場の他に天道家の部屋を担保に賭けをして負け続けて家を追い出されたと」
「ご、ごめんね……ムース」
「いや、まったく申し訳ない……」
本日の営業を終了して暖簾を片付けたタイミングで天道家の皆さんと玄馬さんが来店した。
博打王キングから天道道場を取り戻すべく天道家の部屋を担保に戦いを挑んだ天道家の皆さんだが、博打王キングのイカサマに敗北。
家を追い出され、行く当てがなく彷徨う最中、天道家と交流も深くある程度の人数を入れられる候補として猫飯店を思い浮かべたらしい。因みに乱馬はお好みうっちゃんに居候している。
原作だと乱馬が居候したお好みうっちゃんに行くのだが、原作と違ってシャンプーとあかねが仲が良いからこっちに来たのだろう。そして、その話を聞いた乱馬も右京を連れて猫飯店に来ていた。
「しかし、道場取り戻す為に家を担保に賭け事をしますか普通?」
「キングの賭けに応じないと道場が賭博場にさせられてしまっていてね……背に腹はかえられなかったんだよ」
早雲さんにお茶を出しながら問うと早雲さんは仕方なかったんだと悲痛な面持ちで答えた。この人、ギャンブルで身を滅ぼすタイプだな。
「はい、私の勝ちです」
「あー、負けたーっ!」
そしてリンスにババ抜きで敗北している乱馬。小学生にババ抜きで負ける高校生って……
「弱いんだから、止めとけよ乱馬。明日、俺が行って家も道場も取り返してやるから」
「そ、そんなに言うって事はムースは強いんだろうな!?」
俺の発言に食いつく乱馬だが、気付いても良さそうなもんだが……ま、仕方ないか。俺は乱馬とババ抜きをする事に。まあ、言うまでもなく乱馬の惨敗であった。
「ま、負けた……」
「清々しいまでの惨敗ね」
項垂れる乱馬に、なびきがトドメの一言を放つ。
「乱馬、俺は暗器使いだぞ?視線誘導もポーカーフェイスも得意じゃなきゃ出来ないんだぞ?ついでを言うなら手先も器用なんだからイカサマも得意だ」
乱馬は俺が暗器使いってのを忘れているのだろうか。少し考えれば暗器使いが視線誘導や顔に出さない仕草、手先の器用さ等を考えれば、この手の勝負に強いと分かりそうなもんだが。
「イカサマしたアルか?」
「やろうと思えば出来るけど乱馬相手にイカサマは必要ないし」
シャンプーからの問いに答える。ぶっちゃけ乱馬相手にイカサマするよりも普通にやりあって倒した方が早いし。弱すぎなんだよ、コイツ。
「ぢ、ぢぐしょー……」
「が、頑張りましょう乱馬さん!」
「悔しがってる乱ちゃんも可愛いわぁ」
マジ凹みをする乱馬に慰めるリンス。小学生に慰められる高校生の図に少々呆れていると隣の右京が乱馬を見てポツリと呟いた。俺にしか聞こえなかったのだろうけど、恋する乙女の顔してたよ右京。
「やるぜ、特訓だ!俺のしでかした事で道場を潰されてたまるか!」
「おお、よく言った乱馬君!」
「それでこそ無差別格闘流の後継者じゃ!」
「あれ、そう言えば爺さんは?」
乱馬の気合いに満ち溢れた発言に感動した早雲さんと玄馬さん。俺はその発言で天道道場もう一人の居候を思い出した。
「お爺ちゃんなら少し前から出掛けてるのよ。古い友達に会って来るって言ってたわよ」
あかねが爺さんの行方について教えてくれたが凄い不安になった。爺さんの古い友達って段階で嫌な予感しかしねーわ。
翌日、乱馬は天道道場を取り返した。ババ抜きの特訓により顔に包帯を巻いた乱馬は表情を隠して博打王キングとの戦いに勝利した。まあ、真っ当なババ抜きではなく、お互いにイカサマをした結果だったのだが。今回は結果オーライって感じだな。大袈裟に包帯を巻いて中にトランプを仕込んで正解だった。
まあ、乱馬が負けても俺が勝てば天道道場を取り戻せたのは野暮ってもんだな。