×月○日
日本に行く事になり、親父や母さんに話したら、すんなりと受け入れられた。やはり婆さんが言っていた通り、話は通していたみたいだ。
母さんは素直にシャンプーとの仲を喜んでおり、親父は『一足早いが新婚生活を楽しんでこい!』等とほざいていたが、俺とシャンプーだけじゃなくて婆さんやリンスも一緒だっての。
×月×日
婆さんに『日本に行ったら飯処をするから手伝え』と言われた。店の名前は『猫飯店』。名前の由来を聞いたら『看板娘が猫じゃからのぅ』と言っていた。
シャンプーは猫娘というか娘猫だと思うが余計な事は言わんとこ……
×月△日
村の人達に挨拶をする傍ら、シャンプーとの事を冷やかされる。だが、それ以上にシャンプーの妹分達の視線が痛い。彼女達からしてみれば『シャンプー様を負かした男』と認識されており、シャンプーを慕う妹分達からは嫉妬というか……侮蔑というか……そんな視線を浴びせられていた。うう……こんな視線になんか負けないぞ。
×月◇日
俺やシャンプー、婆さんは猫飯店で仕事をするがリンスはそうはいかない。年齢的にも小学校に通わせなければならないのだ。手続き等は婆さんや族長がしているので俺はリンスに勉強や小学校での過ごし方をレクチャーしていた。この村、閉鎖的すぎて学校自体が存在しない。親が教えたり、私塾みたいなのはあるけど、基本的に学校ではないのだ。俺も当然、小学校には通わなかったが、前世の記憶と本などで得た知識があるので、リンスに教える分には問題なかった。
余談だがシャンプーはリンスに隠れて勉強を始めていた。何故かと言えば勉強でわからない所を聞かれて答えられなかった場合、姉の威厳が損なわれると思ったかららしい。
×月◆日
母さんやシャンプーから女の振る舞いについてレクチャーを(強制的に)受けた。
娘溺泉に落ちて女に変身する体質にはなったけど、女らしく振る舞う気はないから勘弁してほしい。
×月□日
婆さんに聞いたのだが、呪泉郷に落ちた者は落ちた泉の影響を受けやすいらしい。娘溺泉に落ちた俺は変身後の女になった姿に少しだけ人格や体質に影響を受ける。つまりは女らしくなったり、振る舞いに違和感を感じなくなるらしいのだ。
思えば原作で乱馬は初期は女装や女になるのを嫌がっていたが中盤から女の体を利用してたり、ノリノリで女になるシーンがあったな……俺は気を強く持とう。そう誓った。
余談だがシャンプーは猫溺泉に落ちた影響なのか少し猫舌になっており、熱いお茶をフーフーして飲んでいた。可愛いなチクショウ。
◆◇◆◇
来週から日本か……前回は慌ただしかったから今回は観光とかもしたいな。シャンプーやリンスともいろいろな所に連れて行きたいな。
心配事があるとしたら既に原作の流れから大きく変わった事だろう。
本来の流れだとシャンプーと婆さん、シャンプーの親父で日本に来て、乱馬をシャンプーの婿として鍛える話だったが現状その流れではないだろうし。
大きく違うと言えば、俺とシャンプーが恋仲である事。シャンプーの妹のリンス。俺が婆さんに鍛えられてる事。そして俺が落ちた泉が鴨子溺泉ではなく娘溺泉だった事。……とまあ、こんな所か。
まだ絡んでいない九能兄妹や右京の事も気にかかるし……目下最大の不安要素、八宝斎の件もある悩みの種は尽きないな。
「ムース、準備出来たか?来週には日本ネ。ちゃんと旅支度するヨロシ」
「ん、ああ……俺は最低限の着替えや本があれば大丈夫だからさ」
勝手知ったる幼馴染みの部屋とばかりにシャンプーが窓から俺の部屋に。こういう所が本当に原作と違うんだもんな。
「まったく……ムースは他の人の事ばかり気にして自分のが疎かネ。私が荷物纏めしてやるネ」
「待てシャンプー。俺がやるから適当に入れないでくれ」
シャンプーはタンスから適当に旅行鞄に詰め込み始めるのを見て俺は慌てた。一応、持っていく物をリストアップしてから持っていくつもりだったから適当には詰めないでくれ。
「ま、そんときにならなきゃ分からないよな」
俺はシャンプーにも聞こえない位の声で呟いて日記を閉じた。原作を外れても続くであろうドタバタ劇はこれからだ。