ある映画をモチーフにしています。
読まなくても本編には問題ない完全に外伝的な話。
と言うか、裏設定的なものなので読まない方がいいかも。
自己満足的な話です。
今回はFateの正義の味方の話です。
君の事情
「ふぅ〜。焦った焦った。一先ずコレで物語の主要人物は全員参加したかな?」
「ええ、全く……最近はどの支部も下手くそで困りますね」
「ああ、なろう支部はやり過ぎて崩壊しちゃったし、理想郷は少数派が集まり過ぎて手の施しようがないみたいだ。ソリッドブックは今だに健在だけど」
そんな事を話す美青年と美少女の後ろで黒い肌で屈強な男は渋い表情を浮かべていた。
男はモニターを見ながらまた渋い表情を浮かべる。
数あるモニターにはトラックに引かれる少年が、病魔に魘される青年が、世をはかなんで首をつる成年が映し出されていた。
「あら、貴方……まだ慣れないの?」
「当然です。彼等にも、その後の彼女達にも……同情する」
「駄目よ、慣れないと。私達がこうしないと……」
「分かってはいる。任務は果たします。ただ、彼等の犠牲に感謝を忘れないだけです」
男はそれだけ言うと画面に視線を戻した。
美少女はふっ と綺麗な笑みを浮かべてモニターの前に集まる男達を見る。
「まあ、貴方が気に病むのは無理もないわね。彼女達は本当に気の毒だもの」
男達が見ている画面には女の子が敗北し、男達に追い詰めらる光景だ。
後に起きることを考えれば吐き気もするだろう。
ある画面では正義を目指す少年が仲間にも敵にも否定され絶望の中で死ぬ瞬間が、ある画面には狂ったように組織の正しさを信仰し死ぬ男が、ある画面には、ある画面には、ある画面には、ある画面には。
無限とも呼べる画面の向こうで繰り返される悲劇と喜劇。
快楽と絶望、まるで人の心を映し出したかの様な闇という闇。
誰かが蹴落とされ、誰かが見下され、誰かが殺され、誰かがその分の幸福を貪る。
それを、ここにいる人達は酒を飲みながら、スナックを摘みながらホロ酔い気分で楽しんでいた。
「……ん?ああ、またFateの主人公くんか。お〜いブラック1。君の任務だ」
「……了解。コードイエロー!ブラック小隊各員はFateルームを包囲。相手は何時もの正義の味方だ……投影魔術を使いこなせるぞ…注意しろ!!」
男は叫ぶとゲートを潜り走る。
憂鬱な気分ではあるが任務は任務だ。
自分はまた……あの勇敢な少年を処刑しなければならないのだろう。
俺は何故ここにいるのだろう?
確か……そうだ、遠坂に人形の身体を与えられそうになって……。
「拒絶したんだよな……たしか」
何故?と問われたけども……俺にはもうその答えは用意されていた。
人は蘇らないし、やり直し何てきかない。
それをしようとしてはいけないし……やってしまえば彼女に顔向けが出来ない。
あの、黄金の別離を今でも憶えている。
セイバーと言う少女を好きだったという想いも。
「まあ、顔は忘れてしまったけどな」
兎に角、今はこの状況を把握しなくては。
見たところ……硝子状の物体で作られたキューブに閉じ込められているらしい。
構成材質は……不明?
莫耶を投影して叩きつける……破損しない。
「馬鹿な……」
宝具で傷つけられない材質などオーバーテクノロジーかロストテクノロジーか?
少なくとも……こんなあり得ないものを創り出し、人をこんな場所に閉じ込める存在に好意的な感情を持てないと判断する。
何か脱出する方法がないかと目を凝らす。
瞬間、湧き上がる悲鳴を必死に堪えた。
目の前に広がるのは自分と同じように捕らえられたひとという人の数々。
魔法少女の様なカラフルな格好の女の子、筋肉で出来ている様な屈強すぎる男、悪魔の様な姿の男、アニメのパイロットスーツみたいなものを着ている男女。
そして……
かつて、己に行けと告げた背中を持つ男。
キューブが動く。
まるでこの光景を見せつける様にゆっくりと……。
ガタンっ と動きを止めたと思えば自分のキューブの隣にはピンクの髪の少女が入ったキューブがあった。
「なあ!ここは一体何処なんだ!?」
「……また、貴方が来たの?お願い、もしも貴方の扉が開いたら何も考えずに戦って」
女の子は疲れた様に……懐かしい人に会ったようにそう告げる。
「お願い……もう…死なないで。希望を与えないで……お願いだから…助けようとしないで……逃げてよ!!」
「ふざけるな!こんな意味も分からない所に囚われてる奴等を放っておけるか!!絶対に助けてみせる!安心してくれ…だって俺は…」
「正義の味方だから?」
彼はその言葉にギョッとした。
何故、そう言おうとしたことを彼女は気づいたのか?
格好こそ魔法使い……いや、どちらかと言えば女神を連想させる服だが纏っているのは普通の女の子にしか見えない。
なら、どうして……
「もう、私は貴方に……何万回も同んなじ事を言われたよ」
ガタンっ とキューブが動き出す。
少女はそれを見て最後にと告げる。
「お願い。私達はサンプルだから……そう簡単には殺されないけど貴方は違う。扉が開いたら全力で逃げて……それが…」
後に……私達を救う希望になるから。
少女は確かにそう告げていた。
報告書
今作戦では50616体目の衛宮士郎が我々の世界に迷い込んだものだ。
原因としては、科学班がこの世界の衛宮士郎に投薬を忘れていたことが原因と言える。
警備班は迷い込んだ衛宮士郎を捕らえる事に失敗はしたものの処刑には成功した。
元々、研究班には衛宮士郎のストックは多くあるため愚者へと与える能力自体には問題はない。
破棄された衛宮士郎はこれで47658体目。
逃亡を許してしまった個体が6体。
残りはクロスオーバー、逆行に成功している。
やはり、彼等を確実にシナリオ上に置くには信念の改変が必要不可欠と思われる。
何故、君の事情かは察してくれると嬉しい。
というか、この君は自分も含めているんだけどね。