まいづる肉じゃが(仮題)   作:まいちん

183 / 255
第183話 囚われし冷泉。そして光。

「痛……」

浅い眠りの中で身をよじらせたせいだろう……。全身を貫くような痛みで目が覚める。その痛みで思わずのけぞり、そのためにまた違う場所からの激痛を引き出してしまう。芋虫のような状態で転がりまわる。

悲鳴を上げそうになるが、それを必死に堪える。

そして、自分の置かれた状況を思いだした。

 

冷泉は憲兵隊に捕らえられた。否……はずだった。けれど自分の現在の状況からして、どうやら憲兵隊ではあるものの、本筋から外れた……もっと厄介な連中に拉致されてしまったみたいだ。

 

彼等の会話を盗み聞きして得た情報からすると、どうやら彼等は冷泉の知らない何者かに依頼されて、冷泉を連れ去ったらしい。本来、冷泉を捕らえるために派遣される憲兵隊は、もう少し後から来る予定だったそうだ。そのために急遽編成された部隊らしい。

 

確かに、鎮守府指令官である冷泉を連れ去るには、様々な手続きが必要だ。司令官という地位からして、逃走の危険性は相当に低い。ならばきちんと事務手続きを行え……と各部署は命じるだろう。昔からの縦割り行政は変わるはずもなく、そう簡単には許可が降りないはずだ。

 

なのに、現場は随分と小回りが効いたようだ。……どう考えても鎮守府警備を担当している陸軍に何らかのツテがある連中が噛んでいるとしか思えない。

後からやって来た憲兵隊の連中は本気で激怒しているだろうな。当然、陸軍との間で一悶着は無しでは済まないだろう。憲兵隊としては重大な失態だからだ。彼等的には誰かに責任を擦り付けないと、指揮官は失態の処分を免れないだろう。

その状況を想像すると大変愉快だろうと思うけれど、今の自分の状況を慮るとそんな事で喜んでいる場合じゃない。

 

それにしても理不尽だ。理不尽すぎるだろ、これは!

 

長時間に渡って尋問にかけられているのだが、いくら正直に答えても、連中は納得してくれないのだから。何を言っても埒があかない。

連中は、冷泉と永末が裏で繋がっていると決めつけている。どこをどうやって推理すれば、そういった結論になるのかと疑問を感じてしまうが、連中には連中の情報網と考え方があるのだろう。それはともかく、彼等なりの思考および目的の下、冷泉から情報を引き出して可能であれば失踪した艦娘達を捕らえようと考えているみたいなのである。

とにかく、答えありきでの尋問。彼等の意に沿う答えをしない限り、これは永遠に続けられるとしか思えない。

 

そして、手段を問わずに吐かせるつもりらしく、まずは精神攻撃をしてくる。

取り調べに使用される、非合法ないろんな拷問について詳しく解説され、どれからやってほしいか聞かれたりする。聞いているだけで、目眩がする。

 

ただのサディスト集団だな、こりゃ。

こういった職業についていたら、頭までおかしくなってしまうのだろうか。それが正直な感想だ。

 

少々の暴力行為では、冷泉は自白なんてするつもりもないという強い意志がある。もっとも、そもそも連中が欲しがるような答えを持っていないから答えようもないのだけれど……。

 

相変わらずの生意気なその態度が連中の怒りを買ったのか、長時間に渡る執拗な暴行を受けてしまった。

冷泉は、途中から意識が無くなり、何度か無理矢理起こされたりしながら「取り調べ」は続けられた。

 

そして現在。冷泉の両手の指は何本か折られているため、動かすという感覚が得られない。顔も殴られたせいか、熱を持ってるのが分かる。恐らくぱんぱんに腫れ上がっているのだろう。視界も狭いし、少し動かすだけでも痛みが走る。腔内に違和感を感じてはき出すと、折れた歯が転がり落ちる。

 

こういった状況で知ったこと。……痛みは慣れないもので、ちょっと動くだけで泣きそうになるくらいに痛い。こんな酷い事をして、連中には罪悪感とか憐憫の情といったものは感じないのか。

そして、不安が襲ってくる。これほどの外傷を受けてしまった状態で、軍法会議なんて場に自分を連れ出せるのか? と言う事。もしかして……こいつら、俺が死んでも構わないって思っているんじゃないか? と。

 

しかし……そもそも、冷泉が永末とその勢力と繋がっている考え自体があり得ない。それをまともに信じるなんて損得論で考えたら分かるようなものだ。彼等は適当な理由を付けて拷問し、その取り調べの結果事故死でもするようなシナリオでも考えているのだろうか……。

しかし、冷泉を殺したところで、何のメリットがあるというのか? それに殺すならさっさと殺しておけばいいはず。変に拉致なんてしていたら、足が付いて彼等の正体が明るみにでる危険性さえあるというのに。

 

「おい、冷泉。そろそろ吐く気になっただろう」

冷泉を拉致した隊のトップである佐味が、ニヤニヤしながらこちらを見ている。自分のテリトリーに連れ込んでいる為か、妙に自信に溢れた態度だ。

 

この取調室……というか拷問室には机はない。

広さは、10畳程度だ。コンクリートの打ちっ放しだ。

パイプ椅子に佐味がふんぞり返って腰掛けて、こちらを見ている。両脇にはゴリラみたいな兵士が立っている。その背後にはテーブルがあり、パソコンを操作している普通の兵士もいる。また、入口の扉の前にも兵士が一人立っている。

 

「だから、知らないものは知らない……と言っている」

なんとか声を出す。少し喋るだけでも顔のあちこちが痛いため、聞き取りにくい声しか出せない。簡素な丸椅子に座らされ、両手を後ろで手錠を掛けられている。両足も拘束されている状態だ。実はこの状態を維持するのも苦しいのだけれど、油断すると椅子から転げ落ちてしまうため、必死に堪えている状態だ。両手両足を拘束された状態で転倒すれば、受け身など取れずにコンクリートの床にぶつかってしまう。健常体なら耐えられるが、あちこちを拷問による損傷を受けている今の体では、どんなことになるか予想もできない。

 

「馬鹿か? お前が知らない訳がないだろう? お前が鎮守府の司令官なんだからな。お前の許可なくして、鎮守府に絵入りなんてできないのだろう。だったら、お前が永末を手引きしたに違い無い。永末とグルだという明確な証明だな、これは」

 

「俺がそんな事をして、何のメリットがあるんだよ。艦娘達を戦わせ、おまけに部下達に多くの死傷者を出させるなんて……。そして、俺は今、捕らえられている。馬鹿でも分かるだろう? 」

反論した途端、座った椅子を思い切り蹴り飛ばされ、冷泉はバランスを崩して転倒する。まともに床で体を打ち付ける。

「ぐえ」

負傷した所をさらに強打してしまい、情けない声を上げて転がりまわってしまう。

それを見て大笑いする佐味。周りのゴリラも一緒に笑う。

 

再びゴリラに両脇を抱えられて引き起こされ、椅子に座らされる。

 

「情けないですなあ、提督。惨めですなあ、提督」

哀れむように見つめる憲兵を、冷泉は、にらみ返す余裕すらもう無い。痛みは全身を貫くほどである。

「なあ、冷泉提督。ちゃんと答えたら、助けてやるよ。だから、正直に答えろよ」

急に真剣な表情になり顔を近づけて来る。

「お前、香月少佐がどこにいるか知っているだろう? 」

 

唐突に出てきた男の名前に、冷泉はポカンとするしかない。誰だ? 香月って。

冷泉の表情を見て、彼にも不審げな表情が出る。

「お前、少佐を知らないのか? 嘘だろう」

 

「そんな奴は俺は知らない。会ったこともない。そもそも、誰だっていうんだよ、そいつは」

 

「フッ、どこまでしらを切っているのか知らないけれど、教えてやろう」

 

「大尉、しかしそれは! 」

慌てて横にいたゴリラが声を上げる。

 

「いや、構わん。全部こいつに話して様子を見るんだよ。それに、どうせな」

とニヤリと笑うと、ゴリラは何か思うところがあったのか、頷いて引き下がる。

 

意味がわからん。

 

「さて、少佐は永末を駒として使用していたのだよ。かつて舞鶴鎮守府で働いていた男を利用価値ありとしてな。永末は舞鶴鎮守府に潜り込み、少佐の指示通りに活動し、目的達成のためにずいぶんと励んでくれた。そのおかげで、戦艦扶桑や他の艦娘を舞鶴から離脱させることに成功した。そして、さらには、かつての舞鶴鎮守府指令官であった男が密かに隠匿した艦娘さえも手に入れることに成功したのだ。これは想定外の物だった。そして、我々は歓喜して永末の待つ海上基地へ少佐を送り込んだのだ」

話を聞いている内に、冷泉の心に怒りが満ちあふれてくるのを感じていた。こいつらのせいで、こいつらのくだらない目的の為に扶桑達が道を外してしまったというのか。そして、多くの部下が巻き添えで殺されたのかと。

 

今すぐにでも飛びかかり、この男を殴り斃したい。その欲望が充ち満ちてくるが、現状では逆転のチャンスが無いと判断する冷静さもまだ持っていた冷泉は、必死に堪えることができた。

 

「しかし、少佐は永末との接触以降、連絡が取れなくなったのだ。丁度お前が永末討伐のために出撃する頃にな。そうなると、どんな人間でも勘ぐってしまうだろう? 少佐の失踪には、お前が関係しているのではないかと。つまりは、お前と永末はどこかで繋がっていて、何か悪巧みを考えているのだってな。お前達二人で謀ったんじゃないか? お前は永末の目的を知り、何らかの方法で翻意させることに成功させたんじゃないのか? お前には舞鶴鎮守府指令官の地位さえ捨てても、それ以上に得られる物がある選択肢があったんじゃないかってな」

 

「馬鹿な……愚かすぎる……。どのようなメリットがあろうとも、艦娘や部下に犠牲を出してまで得ようとする選択肢など存在するはずがない。たとえあったとしても、それを選択するような司令官など、この世界には存在しない。そもそも考えることさえない。そんなゲスな考えにたどり着くような奴は、人として下の下以下の存在だ。俺はそんな人間がいたとしたら本気で軽蔑するし、視界に存在することさえ許せない」

睨み付けるように佐味を見る。

 

「偉そうな事を抜かすな、糞野郎が」

激高した佐味は立ち上がると、力任せに冷泉を蹴り上げる。衝撃で吹き飛んだ冷泉は、まともに後頭部から床に転倒する。全体重が拷問により折られた指にのしかかる。さすがにその激痛に耐えきれず、呻きながら転がりまわってしまう。堪えようとも悲鳴は口からあふれ出し、情けない音を室内に響かせてしまう。

 

「ぎゃあっはっは。偉そうな事を抜かしてそのざまかよ。馬鹿みたいだな、お前。ぷー! 笑える」

近寄ってくると、思い切り勢いを付けて、冷泉の腹部を蹴り上げる。蹴る蹴る蹴り上げる踏みつける。笑ってはいるが、左頬が痙攣し、目が血走っている。

 

「大尉、それ以上はこの男が持ちません」

再びゴリラたちが佐味を制しようと動く。

 

「五月蠅い離せ。……この男はどうやら何も知らないようだ。上が言って来た永末との関連性も怪しいんじゃないのか。これほどの事を話しても挙動は普通だ。上の推理は間違っている証左だ。ならば、プランを意向するだけだろう。さっさとこいつをぶっ殺して、ここから撤退するしかないだろう? 文句あるか」

反論する事ができないのか、ゴリラは黙り込んでしまう。

 

「あまり長居をしているわけにもいかんことくらい、お前達にも分かるだろう。我々に与えられている時間は有限なのだ。今は誤魔化してくれているが、いつまでもそれができるとは限らん。我々も組織人なのだからな。命令無くして動いていることが発覚したら、立場がやばくなることくらい、お前等も分かるだろう? そろそろ潮時ということだ。どうせ、こいつを殺すのは既定事項なのだからな。情報が得られないのなら、さっさと処分だ」

至極あっさりと結論づけられる。やはり、最初から殺すつもりだったのだと予想が当たったことに心が折れそうになる。

 

しかし、結論は簡単に出たとしても、出された側は納得するわけにはいかない。冷泉は、まさに絶体絶命。激痛にのたうちまわりながらも、なんとかこの場を逃れる術はないかと必死に考える冷泉。

しかし、痛みに思考を中断されてしまう。仮に元気でも、この状況では何の結論も出せないだろう。

 

「なあ……首をかっ切るか、絞め殺すか。どっちがいいんだ」

冗談めかして聞いて来ているが、本気の目をしている。

「簡単に殺したら、せっかく出張ってきたのにつまらんな。じっくりと痛みを味わいながら殺さないと調子が悪い。軍の高官を殺す……こんなチャンス二度と無いからな、楽しませてもらうぞ。でないと、リスクを冒した意味がないもんな」

 

両手両足を拘束されている上に、拷問による負傷でまともに動けるとは思えない。

……これは、駄目かな。と、諦めの結論にたどり着いてしまう。

艦隊戦で戦死するならば、嫌だけれど軍人ならば想定内のことだ。しかし、無実の罪で拉致されて、用無しだからと無意味に殺されるなどとは思っても見なかった。どうもこの状態では、誰にも知られること無く、惨めに死んでしまいそうだ。死が現実になると恐怖が芽生える。もちろん、死ぬ事は怖い。しかし、冷泉にとっては何ら為すことも無く無意味に死ぬと言う事の方が遙かに怖い。

 

こちらに来る前の世界なら、どのように生きたとしてもたいした成果もあげられなかっただろう。あの時の自分なら、無意味な死さえ受け入れただろう。ただ生きているだけならば、死んだ方がマシだと何度も思ったことがあるから……。

けれど、今の自分には受け入れられない。受け入れたくない。まだ死にたくない。まだ死ぬわけにはいかないんだ……と。

 

そして、唐突にドアがノックされる。

 

「あん、なんだよこれからって時なのに」

ナイフを手にし、気持ち悪い顔をしていた佐味の表情に苛立ちが表れる。

再び、扉はノックされる。

佐味はゴリラの一人に指示をする。指示されたゴリラ的憲兵が扉を開け、何か言葉を交わしている。

 

「あああ? おい、どうしたって言うんだよ」

苛立ちが頂点に達した佐味が吠える。

 

「は! 大尉殿、よろしいでしょうか」

恐縮気味にゴリラが発言をする。

 

「だから、何だよ。さっさと報告しろよ」

 

上司にどやされ、ゴリラは扉を開きながら返答をする。

「外で彷徨いてたい艦娘を捕らえたそうです」

 

「は? 」

間の抜けた声を佐味が上げる。

 

「おい、入れ」

ゴリラではない、普通の体型の兵士が一人の少女を連れてきた。押されるようにして、中へと入ってくる。

黒髪のセミショートカットでセーラー服を着ている。大きな瞳をした美少女。……まさに艦娘だ。

そしてその顔は、冷泉も見覚えがあった。もちろん、この世界に来て見た訳では無い。ゲームやアニメの中で見たというだけだ。

その顔は、どちらかというとアニメに出ていた時の顔に近いといえる。

 

「この艦娘が、ここの周りをうろうろしていました。捕らえると、冷泉提督はどこか、冷泉提督に会わせろと騒ぐので、こちらに連れてきた次第であります! 」

敬礼しながら兵士が報告する。

 

少女は、後ろ手に手錠を掛けられているために、動きが鈍くなっている。

それでも冷泉を見つけるなり、瞳を見開いて叫ぶ。

「そちらにいらっしゃるあなたが、冷泉提督でしょうか? 」

 

「……ああ、そうだよ」

仕方無く返事をする冷泉。

この子がどういった経緯で冷泉を探していたのかは不明だけれど、どちらにしても、こんな危険な連中に捕らえられてしまったということで、より一層頭が痛くなるのを感じた。事態は最悪の更に深刻だ。よりにもよって、何でこんな所にやって来たんだよ! と文句の一つも言いたくなる。それが詮無き事であってもだ。

 

そんな冷泉の気持ちなどお構いなしに、艦娘は会話を続ける。

「冷泉提督、お初にお目にかかります。私は、呉鎮守府所属……あ、もう所属じゃありませんでした! 今は無所属の特型駆逐艦吹雪型一番艦の吹雪です。よろしくお願いします! 」

敬礼しようとするが、後ろ手に拘束されているため、よろけてしまう。

 

「吹雪……だと? おい、なんでこんな艦娘がここに来ているんだ」

困惑したような表情で佐味が問いかける。

 

「お待ちください」

パソコンで記録を取っている兵士が素早くキーボードを叩く。

「駆逐艦吹雪。一月前まで呉鎮守府に所属。ただし、深海棲艦との戦闘において、潜水艦の雷撃を受けて艦は轟沈。艦娘吹雪のみ救助されています。その後、司令官の判断により返納となり、つい先日、海軍研究所牛尾実験場へと送致されています」

どうやら海軍か何かのデータベースにでもアクセスして、情報を取り出したのだろう。

インターネットというものは、深海棲艦の侵攻を受けて以後は完全に消失している。民間のネットワーク網は軍が完全に制圧し、一般市民は使えない状態となっている。携帯電話というものもただのガラクタになってしまっている。情報ネットワークは軍および一部の人間のみが独占的に使用しているのだ。。

 

「ならば、どうしてこの女がここにいるんだ? 」

不機嫌そうに佐味が兵士を睨む。

 

「はあ、すみません。そこまではわかりません」

そう答えるしかできない兵士。

 

「用済みになった艦娘がどうして自由気ままにフラフラと歩き回れるんだ。こんなことありえない。牛尾に送り込まれた艦娘は二度と表に出ることは無いはずじゃないのか。最後はバラバラに分解されるまで研究されるんだったよなあ」

 

「おい、それはどういいうことだ? 」

何気なく口走った佐味の言葉……。それに冷泉は反応する。

 

「はあ? 」

 

「今言った事だ。牛尾実験場って何だ。艦娘が送り込まれるとはどういうことだ。今すぐ答えろ」

佐味の口走った事が冷泉の不安をかき立ててしまう。猛烈に嫌な予感しかしないのだ。今、自分がどれほどのダメージを受けているかさえ忘れてしまうほどに……。

 

「なんでお前に教えなきゃいけないの? お前、偉そう過ぎじゃないか? そもそも、鎮守府指令官のお前が知らないっていうの? お前、本当に知らないのか? おいおい、何だよそれ」

本気で不思議そうに男が答える。そして終いには笑い出してしまう。

 

今すぐこの馬鹿面を殴り飛ばしてやる。立ち上がろうとするが、まるで自由がきかない。

 

「何ごにょごにょ動いてるんだよ、気持ち悪い」

そう言うと、佐味は冷泉を蹴飛ばす。

「あ、そうだ。良いこと思いついたぞ」

急に何かが閃いたのか、男の瞳に邪悪な光が宿るのを冷泉は感じる。

 

「お前、艦娘を異常に大事にする男だったよなあ。艦娘の為なら自分の命なんて何とも思わないほどの馬鹿だと聞いているぞ。……するとだな、廃棄処分されるとはいっても、こいつも艦娘なんだよな」

 

「おい、何を言っているんだ? 」

冷泉は佐味が何を考え、何をしようと企んでいるかが分かってしまい、それ以上を喋らせまいと声を上げる。

しかし、それを無視して佐味は喋る。

 

「お前の艦娘じゃないけど、この女を拷問にかけたら、お前ならどうする? 」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。