まいづる肉じゃが(仮題)   作:まいちん

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第11話

でもね、「まいちん」で提督の指揮下に入ってから、何か変だったんだ。

 

結構、……違和感。

 

提督はたとえ勝利間近だったとしても、誰かの損傷が大きかったら目前の勝利を放棄してでも撤退したりしてた。

 

あれ何でなのカナ?

 

仮にその娘が轟沈したとしても、戦いに勝利することができればその海域を開放できるのに……。

 

それがどれほど鎮守府に、いえ日本国に……それだけじゃないヨ。提督だってにどれほどの恩恵を与えることになるか、提督が知らない訳ないもんネ。

 

「それ、絶対おかしーよ」って提督に詰め寄った事があったんだ。

最後の最後で逃げ出して、……その行いが鎮守府にどれだけの損失になってるか、分からないの? そんなことするうの、提督だけだよ。勝利にどん欲じゃない提督は。

そのせいで舞鶴鎮守府への艦娘の補充や補給が後回しにされていること。

失われた海域を奪還するのが鎮守府艦隊の使命。それが全然できないままじゃ、提督の評価にだって影響が出るんじゃないの? 一体どう思ってるのかって。

 

でもね、提督は寂しそうに笑って、それから私の頭を撫でてくれた。

 

「金剛、お前の言うことはまったくもって正論だよ。でも私は、勝利のためであっても、それ以上に大切なものを失いたくないんだ。それが、たとえ日本のためであったとしてもね。いわんや私の出世なんかのためなんかね」

 

「……私は君たちを戦わせたくなんか無い。君たちが人間なんかの為に戦う理由なんて本当は無いんだ。でも、日本の置かれた状況ではそれは言えない。だから、せめて私の部下である君たちだけは無駄死にさせたくないだけ。まあ、それも……ただの偽善なんだが」

 

「私は大丈夫だよ、テイトク。私たちは兵器。勝利するための道具なんだよ。勝利するために命なんて投げ出す覚悟は生まれながら持ってる。テイトクはただ私たちを使って、効率的に勝利を掴むことだけを考えればいいヨ」

励ましたつもりでもなんでもなく、当たり前のことを当たり前に伝えたつもりだったけど、提督はぜんぜん理解してなかったみたい。

 

なんだかなー。

これが人間と私達の違いなのかなって思った。

 

そんな疑問をずっと持ったまま提督の元で戦っているうちに、何となく提督の気持ちも分からないでもないかなー、とか思うようになってた気がする。

 

提督は私たちを軍艦ではなく「人間」と同じように見ているんだなって。だから私たちがもし轟沈(死)したら、人が死んだのと同じように悲しむんだなってなんとなく分かった。

 

私自身もまいちんでの生活の中で戦いの中にいるときは別として、普段は人間と同じように生活し、人間のように考えるようになっている。

戦場でいるよりも、鎮守府で提督や艦娘と一緒にいる時が楽しいし、この状態がいつまでも続けばいいのになって思ってる。

 

まるで、人間のように。

ありえないことだけれど。

 

そして、ある時、兵器なのに軍艦なのに、……人間である提督に対して何か「特別な感情」を持つようになっている自分に気付いてショックだった。

 

奥底にある規範意識には無い感情。

それが自分の中にあることは衝撃だった。

 

データの中にある「恋」や「愛」といった感情。、もしくは、そこまではいかないまでも、上官に対する信頼とはまた別の感情が芽生えていたのは事実。

 

でも、それはあっさり拒否されたけどネー。

 

私はがんばって、なんとか提督と今以上、提督と旗艦ではない関係を築きたくって接近を試みたんだ。でもね、提督は積極的な拒否はしなかったんだけど、さりげなく普通なら気付かないかもしれないレベルで避けてることにすぐ気付いちゃった。

端からみたらすごく仲よさそうに見えるかもしれないけど、これ以上は近づけないすごく高い壁が、おまけに溝付き、があったんだよ。それは提督に近づいた私にしか分からなかったのかもしれないなあー。

 

まるで私と仲良くしているように見せつける事で、別の誰かを避けるようにしていたのかもって勘ぐりたくなるくらいに。

 

イヤならイヤって言えばいいのに、提督はしなかった。

 

嫌いじゃ無いけど好きでもない。

だから、これ以上は近づかないでくれって無言で言ってる感じ。

 

なんか、なんかね、凄く寂しかったな。辛かったな。

 

でもね、でもでもでもでも!!!

 

どういうわけか知らないけれど、大怪我をして意識を取り戻してからの提督は何か変わった感じ。

 

何が違うけど、どう違うかは分からない。そもそも確証なんてないけどね。

 

私をあるラインまでしか近づけないオーラが消失して、まったくの無防備状態。

 

もう嬉しくってついつい抱きしめちゃった。そしたら泡吹いて気絶しちゃってホント驚いちゃった。

扶桑にはめっちゃ怒られちゃったし。

 

でも、いいんだ。

 

何かわかんないけど、提督は私を嫌いなワケじゃないし、もしかしたら好きになってくれるかもー。

そう思うとなんだかうきうきしてきてしまう。

早く明日にならないかな。

提督とお話したいよ。

 

……でも何か提督変わっちゃったのかな?

頭どかーんってなった時なんかあったのかな?

その時の事を思い出そうとした途端、

「痛ってーいってててててて I have a terrible headache.」

頭を指すような激痛が走って思わずしゃがみ込んでしまった。

 

「一体、何ですか」

 

何かあの夜、提督が怪我をした時のことを思い出そうとすると、頭痛がするみたいなんだなあ。

何でかな。

 

でも痛いのイヤだから、考えるのやめておこう。考えても意味ないし。

 

さっさと寝て、明日に備えないと。

いままでサボってきたから、いろいろやらないといけないことあるしなあ。

 

いやだなあ。

 

すぐに意識が遠のいていくのを感じた。

 

 


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