(;゚ Д゚)ドウイウコトナノ
楓さんスキー多すぎぃ!
※原作タグに「アイドルマスター」が追加されたので、これを期に変更しました。
多事務所合同野外ライブ『アイドルJAM』。文字通り、様々な事務所のアイドルが一堂に会する野外ライブだ。毎年十二月の第一日曜日に開催され、一年で最も遅く行われる合同イベントのために別名『年忘れライブ』とも呼ばれる。
出演するのは主に芸歴五年未満の所謂若手アイドル。俺たちジュピターも芸歴で言えばまだ三年目なので若手と呼ばれても納得できる。しかしいくら芸歴が四年とはいえ良太郎や魔王エンジェルが若手扱いというのが若干納得いかない。いやまぁ、芸歴四年であそこまでのレベルに到達する方が『アレ』なのだが。
さて、そんな良太郎とはコラボユニットとして参加することになった俺たち。当然ながら楽屋は同じになり――。
「どうもー!
「こちらこそよろしく。関西では有名な『納豆小町』が
「関東進出の足掛かりということで! お近づきの印にどうぞ! 松永納豆!」
「あ、ごめん。納豆って腐った大豆みたいな感じがして苦手なんだ」
「それって存在そのものの否定じゃない!?」
「それでは周藤さん、今日はよろしくお願いします」
「「よろしくお願いしまーす!」」
「はい、こちらこそよろしくね、シュレリアさん、織香ちゃん、ミシャちゃん」
「……あの、周藤さん、どうして織香とミシャは『ちゃん』で私だけ『さん』なのでしょうか?」
「え? だってシュレリアさん俺より年上……」
「私は十六歳です!」
「ア、ハイ」
「信じていませんね!?」
――先ほどからこのように、他事務所のアイドルが引っ切り無しに挨拶のためやって来ていた。芸歴では本来先輩のはずのアイドルですら良太郎に挨拶に来ていることから、改めて芸能界における良太郎のポジションの高さが窺える。
「ふぅ、みんな律儀に挨拶に来てくれるのは有難いけど、正直多すぎてメンドイ」
「ぶっちゃけたな」
108プロの『アルトリ猫』が楽屋のテントを出て行ったところで良太郎は疲れたように首を回した。
「そもそも俺自身あんまり先輩方に対する楽屋回りってのをやんなかったからなぁ」
「まぁ、だろうな」
「正直りょーたろーくんの下積み時代っていうのが想像できない」
デビュー数か月の段階で先輩アイドルがこぞって楽屋に挨拶に来る様子が容易に想像できた。俺もこの業界に入り、そして実際に出会ったことがある身からするとあの『日高舞』の再来と称されるアイドルの存在というのはそれほどまでに恐ろしいものなのだ。アイドルに恐ろしいという形容詞が付属している時点で何かが間違っているような気がするが。
「というかお前、番組やライブがある度にこんな感じなのか?」
「こんな感じと言うと?」
「いや、こうやって出演者がこぞって挨拶に来るのかっていう意味」
「んー、まぁ概ねこんな感じだけど、今回はお前らも一緒の楽屋だっていうのもあるんじゃないかと」
「?」
「分かんないならいい。一生分からなくていい」
やけに遠い目をしながら呟いた「カケザンコワイオ」という言葉の意味はよく分からなかったが、とにかく今回は俺たちジュピターと同じ楽屋だから挨拶に来るアイドルが多かったということでいいのだろう。
「失礼します」
お茶を飲みながら台本を確認していると再び楽屋の外から声がかかった。多分良太郎への挨拶だろう。
「どうぞー」
台本を確認しつつ今度はどんな奴が来たのだろうかと横目で見ていると、それは意外な人物だった。
「失礼します。本日共演させていただきます、高垣楓です」
一礼と共に楽屋に入って来たのは、346プロダクションの高垣楓だった。緑を基調としたフリル付の衣装が、公表している実年齢二十三には全く見えない童顔と非常に合っていた。
「おぉ! 楓さん、お久しぶりです」
「お久しぶり、良太郎君」
「こちらこそ今日はよろしくお願いします。あと遅ればせながらアイドルデビューおめでとうございます」
「ふふ、ありがとう。これからよろしくお願いしますね、先輩」
どうやら良太郎は高垣楓と面識があったらしい。
「あれ? 高垣楓さんってモデルじゃ……?」
「この間アイドルデビューしたんだよ」
どうやら事情を知らなかったらしい翔太が後ろで北斗に説明を受けていた。
しかし相変わらず他事務所のアイドルと仲がいいな、こいつ。いや、そもそも事務所に所属していないからアイドル全員が他事務所になるのは当たり前なのだが。一体こいつの顔の広さはどうなってるんだ。
「先日のお酒、美味しかったですね」
「ふふ、また機会があれば」
「待て待て待て」
年上だしモデル歴を入れれば芸歴も向こうの方が上だから良太郎への挨拶が終わったら一応自分も挨拶をしようと思っていたら、聞き捨てならない会話が聞こえてきて思わず割って入ってしまった。
「あら、天ヶ瀬冬馬君よね? 初めまして、高垣楓です。本日はよろしくお願いします」
「ご、ご丁寧に、こちらこそよろしくお願いします……じゃねーよ!」
丁寧にお辞儀をされたので思わず返してしまったが、今はそれどころじゃない。
「良太郎! てめー未成年の癖してなに飲酒してんだよ!? 自分の立場分かってんのか!? でもって高垣楓! アンタも止めろよ!」
「「………………」」
俺の言葉に良太郎と高垣楓は顔を見合わせ。
「そんなことありました?」
「いえ、無かったわ」
「じゃあ今の会話は何だったんだよ!?」
「んー、前世の話ってことになるんですかね?」
「時系列的に言えば未来だから来世じゃないかしら」
「何お前らの会話怖いんだけど!?」
二人の話す内容が異次元過ぎて付いていけなかった。というか本当に何だ時系列って。
「はぁ……」
「お疲れだな。発声練習も大事だがステージに立つ前にバテるなよ?」
もうお前が言うなと言うのも疲れた。
良太郎との会話が終わった後、俺たち三人にもしっかりと挨拶をしてから(極々普通の大人の対応だった)高垣楓は楽屋を出て行った。波長が合っているというのだろうか、何と言うか良太郎が二人いるような感覚だった。
「いやぁ、良太郎君と同じ楽屋になると色々な人との色々なやり取りが見れるから楽しいね」
北斗がそんな風に楽しそうに笑えるのは何故だ。というか何故俺だけこんなにツッコミで疲れなければならないのか。
「そこはほら、適材適所って奴だよ、とーまくん」
「何だ、俺がツッコミキャラだってのか翔太」
「それも間違ってないけど、多分『不憫枠』じゃないか」
「誰のせいだと思ってんだよ!」
そう認識されるだけでも不本意であるというのに、自分でも少し納得してしまったのが更に腹立たしい。
「失礼します」
そんなことを話していると再び楽屋へと訪れる声が。本当に引っ切り無しだなオイ。
「って……!?」
「っ……!」
「………………」
入って来たその人物が誰なのかを認識した途端、俺と翔太は言葉に詰まり、北斗も目を見開いて驚いていた。
「お、おはようございます!」
「765プロダクションを代表してご挨拶に伺いました」
入って来たのは二人、765プロの天海春香と如月千早だった。
「おはよう、春香ちゃん、千早ちゃん。あの時以来だね」
「はい。その節は大変ご迷惑をおかけしました」
勿論あの時というのは『千早ちゃん引き籠り騒動』の時のことである。……他に言い方があるだろって? いや、こっちの方がまだ穏便かなと思って。
……それにしても、やっぱり来ちゃったかぁ。人数多いから来ないかなとか考えてたけど、そうだよな、普通代表者が来るよな、そりゃそうだ。
チラリと横目でジュピターの面々を見てみる。翔太はやや落ち着かない様子でソワソワしており、北斗さんはいつもの笑みを浮かべて春香ちゃんたちに手を振っているが何処かぎこちない。
でもって冬馬はと言うと……。
「………………」
すっごい苦い表情をしていた。聞こえなかったものの、多分アレ舌打ちしてるんだと思う。
「………………」
「……え、えっと、ジュ、ジュピターの皆さんも、今日はよろしくお願いします」
それに対して千早ちゃんと春香ちゃん。千早ちゃんは冬馬に負けず劣らずな感じで眉間に皺を寄せて三人を睨んでおり、春香ちゃんだけは唯一気まずそうながらもちゃんと笑顔で三人に対しても頭を下げていた。
「ほら、お前たちもちゃんと挨拶しろよ。折角可愛い女の子が来てくれたんだから」
「ん、よろしくね」
「よ、よろしく」
「………………半端なステージだけはするんじゃねーぞ」
北斗さんと翔太は普通に挨拶を返したものの、冬馬だけやや間が長かった。具体的には三点リーダーがいつもより四つ分ぐらい多かった気がする。しかも挨拶じゃないし。
ったく、こいつは……。
「ごめんね、春香ちゃん、千早ちゃん。気を悪くしないでくれると助かる」
「い、いえ! 別にそんな!」
「……所属が違う良太郎さんが謝るべきことではないと思うのですが」
春香ちゃんは頭と手を横にブンブンと振りながら大丈夫ですよ的なリアクションを取ってくれたのに対して千早ちゃんのリアクションが冷たい! いやまぁ、彼女たちからすれば色々と妨害をしてきた961プロの人間なんだから、こういう対応になってもおかしくないのかもしれないけど。
……ふと思ったのだが、何故この二人が挨拶に来たのだろうか。
今の765プロを代表して挨拶に来るとしたら、どちらかというと竜宮小町の三人……いや、多分伊織ちゃんが嫌がったんだろうな。同じようにジュピターに対する風当たりが強そうな真ちゃんや響ちゃんもアウト。男アイドルなので雪歩ちゃんも論外。逆に俺に対するリアクションが大きそうな美希ちゃんと真美も除外。貴音ちゃんは移籍騒動の一件で一番961の妨害の矢面に立たされたから来づらい。残ってるメンバーで俺に対してもジュピターに対しても普通に接することが出来そうなのは、春香ちゃんとやよいちゃん。で、やよいちゃんをここに寄越すのを良しとしなかった千早ちゃんが代わりに来た……ってところかな。
お? これ我ながら結構的を射た推理なんじゃなかろうか。
……さて、ギスギスとした感じのまま二人を帰すのもアレだしな。フォローぐらいしておくか。
「ちゃんと挨拶しろっての。ホントごめんね、二人とも」
「いえ、本当に大丈夫ですので……」
「こいつ、春香ちゃんみたいな純朴そうな女の子がタイプだからついつい意地悪したくなっちゃうんだよ」
「何言ってんだおめえええぇぇぇ!?」
わーい、クールっぽくやり過ごそうとしてた冬馬に火が点いたー。
「タ、タイプって……!? そ、そんなこと急に言われても……!?」
「……っ……!!」
春香ちゃんが顔をやや朱に染めて恥ずかしがっている一方で、千早ちゃんは先ほどよりも更にキツい目つきで冬馬のことを睨み付けていた。こ、これは以前テレビ局の廊下で偶々一緒に歩いていて巨乳グラビアアイドルの集団とすれ違った時に見せたものと同じぐらいキツい目つきだ!
ギャーギャーと喚く冬馬に胸倉を掴まれて前後にガックンガックンと揺さぶられながら、とりあえず先ほどの空気は払拭できたかなーと考えるのだった。
・松永燕
『真剣で私に恋しなさい!S』のヒロインの一人。
この世界の武術のレベルは定かではないが、多分美由希以上恭也未満ぐらい。
武神? エクシーズモンスターがどうかしましたか?(すっとぼけ)
・『アルトリ猫』
まさかの再登場。シュレリアさんじゅうろくさい。ぶっちゃけ三十六でも全然足りない。
これだけ出しても実は2のクローシェ派の作者。
・「カケザンコワイオ」
「天井×床」というのは鉄板らしいのだが、初めてそれを知った時は度肝を抜かれた。
・高垣楓
皆が出せ出せっていうから予定よりも早く登場することに。
ちなみに衣装は有名な「胸元キャベツ」のイメージ。
・「何お前らの会話怖いんだけど!?」
その結果こんなことに。
こういうメタネタを堂々と出来るのがこの小説の作風の強み。
・『千早ちゃん引き籠り騒動』
過去報道が無かったため、この呼称が一番適していると思います()
・「春香ちゃんみたいな純朴そうな女の子がタイプ」
ぶっちゃけアニメ見てるとそうとしか見えない。
だって他の765の面子に対する対応と春香に対する対応が違いすぎるし。
ライバル視? 愛情の裏返しですよ(どやぁ)
今回からアニメ21話編(別名黒井ふるぼっこ編)のスタートとなります。若干ちーちゃんの出番が薄れて良太郎無双となりますのでご注意を。
そして前書きでも触れましたが、楓さんの番外編に対するワッフルコメが異様に多くて唖然としました。正直楓さん人気舐めてました。
いくら書かないと言っていても、ここまで要望されては引くわけにいきません。
という訳で。
『楓 さ ん の 新 規 S R が 配 信 さ れ た ら』続編を書くことを約束しましょう!
さ、プロデューサーの皆さん、頑張ってちひろさんにお願いしてみてくださいね(ゲスマイル)
『デレマス八話を視聴して思った三つのこと』
※作者はアニメをニコニコ動画で視聴しているので、総集編だった今回はお休みです。