それは、あり得るかもしれない可能性の話。
ぷち転、前回までの三つの出来事!
一つ! 良太郎からの贈り物として、765プロ事務所に『チヴィット』がやって来る!
二つ! 春香モデルのチヴィットが増殖し、大混乱!
三つ! あずさモデルのチヴィットの能力により、良太郎が事務所にワープ!
「あー、びっくりしたぁ……」
「いきなり増えるんだもんねー」
春香もどきの増殖によってもたらされた混乱は、彼女たちを送り付けてきた張本人が直接事務所にやって来ることで収束された。具体的には良太郎が増殖した春香もどきを元に戻す方法(手を叩いた後で腕を左右に開き「戻れ!」と言う)を実践したことにより、春香もどきは一瞬にして元の一匹に戻ったのである。
「でも気に入ってもらえただろ?」
「とりあえずもう一回殴らせなさい」
「ロープロープ」
表情は変わらないもののこいつの「どうだ良いことをしてやったぜ」という態度が非常にムカついた。100%の悪意だけで動いているわけではないということが分かっているだけに余計に腹立たしかった。
「それで? さっさと詳しい説明とやらをしてもらいたいんだけど?」
また春香もどきのように突然変な出来事にならないためにも迅速に良太郎から詳しい話を聞きださねばならない。
「了解。えっと、じゃあ順番に――」
「きゃあ!?」
「わわわっ!?」
「今度は何だぁ!?」
良太郎の口から説明がなされるその瞬間、後ろから聞こえてきた小さな悲鳴と驚きの声。
またかええい面倒くさいと勢いよく後ろを振り返る。
「りょー!」
「あ、あらあら~?」
「ち、小さい良太郎さん!?」
――サイズの小さい『良太郎もどき』が、あずささんの胸にしがみ付いていた。
「……一応、弁解を聞いておいてあげるわ」
「……流石グランツ研究所、モデルの性格と趣味をしっかりとトレースしている」
「……言いたいことはそれだけね?」
全くいい仕事をしやがるぜ、と本気なのか苦し紛れの冗談なのか区別がつかない良太郎の脇腹に、今度は全力の肘鉄を叩きこんだ。
「まぁ言わなくても分かるだろうけど、あれは俺をモデルに作られた第一世代型のチヴィットだ」
「あは! ちょっとエッチだけどかわいいの!」
「ミキミキ! 次、マミに抱かしてー!」
何が面白いのか、美希や真美が代わる代わる良太郎もどきを抱っこするのを尻目に見つつ、脇腹を抑える良太郎の説明を聞く。良太郎もどきは良太郎自身と同じように一切の表情を動かすことが無く、けれど美希の胸に抱かれて大変満足そうな様子が見て取れた。というか腰辺りから生えている犬のような尻尾が凄い勢いでぶんぶんと横に振られていた。
「あれは第一世代型の一部に見られる特徴で、何かしらの動物の一部が出現するんだ」
こいつの場合は嬉しいことがあると犬の尻尾が現れるというわけだ、と良太郎。
もう面倒くさいからロボットの感情云々は突っ込まないことにする。
「ねぇねぇ、りょーたろーさん! この子に名前ってあるの!?」
「名前?」
良太郎もどきを真美に引き渡し(良太郎もどき自身は大変名残惜しそうに尻尾を垂れ下げていた)、真美に抱かれた良太郎もどきの頭を撫でながら美希はそんなことを尋ねてきた。
「ウチでは『りょたろ』って呼んでる」
「アンタの家でアレは受け入れられてるわけ?」
「『昔を思い出すよー!』って言って母さんが大層可愛がってる。あいつ自身も母さんに抱っこされて満足そうだし」
「……アンタって……」
「おいおい『こいつマザコンかよ』みたいな目でこっちを見るのはNGだ」
ちゃうねん大乳な女性に見境が無いだけやねん、と良太郎は言うがそっちはそっちで問題である。
「そうだ。ついでだし、チヴィットたちの説明をしながらこいつらの名前を決めたらいいんじゃないか?」
「はぁ?」
「あ! それいいですね!」
「いつまでも呼び名が無いと大変ですし」
良太郎の提案に賛同する他の面々。
……まぁ、名前を付けるぐらいなら別にいいか。
「それじゃあ
「おい」
まず始めは雪歩もどきから
「この子は特殊能力を持たない第一世代型のチヴィットで、冬になるとタヌキの尻尾が生えてくるよ」
「……えっと、どうしてタヌキなんでしょうか?」
「さあ?」
最新鋭の機能云々に関しては詳しく説明する癖に、微妙なところで適当だった。
「雪歩ちゃんの性格そっくりだから比較的大人しいけど、何処からともなくスコップを取り出してきて穴を掘ってそこに入ろうとするから室内では注意が必要――」
「ぽえー」
「あっぶなぁぁぁい!?」
良太郎の言葉通り、雪歩もどきが何処からともなくスコップを取り出したのでさっと抱き抱えて床から離す。
「……あの、この子たちの性格や特徴っていうのは良太郎さんが提供したんですか?」
「まぁ、簡単にではあるけど」
「じゃあつまり、この子たちの行動は普段良太郎さんが私達のことをどういう風に見ているか――」
「『ぽえー』って鳴く雪歩ちゃんだから名前は『ゆきぽ』でいいかな」
露骨に話題を逸らした良太郎だった。
次は美希もどき。
「美希ちゃんモデルも第一世代型のチヴィットで、動物の一部は出てこないけど夏になると髪の毛が生え変わって茶髪のショートヘアになるらしいよ」
「あれ? ゆきぽの尻尾が生えていないってことは冬じゃなくて、この子は茶髪じゃないから夏じゃない。じゃあ今の季節って?」
「春か秋なんじゃないの」
番外編の詳しい時系列なんて考えるだけ野暮ってものよ。
「あふぅ~」
「昼寝好きだから、適当な寝床を作ってあげるといいよ」
「ロボットが昼寝好きってどういうことよ……」
「む~……!」
良太郎の膝の上で眠る美希もどきに対して厳しい視線を向ける美希。
「あとおにぎりが好き。ということでここに俺が家で握って来たおにぎりが一つ――」
「美希が貰うの!」
「なの!」
おにぎりと聞いて目の色を変えた美希(『おにぎり』に反応したのか『良太郎が握って来た』に反応したのかは考えない)と飛び起きた美希もどきが一つのおにぎりを巡って取っ組み合いの喧嘩を始めるが、今更喧嘩ぐらいの喧噪に反応していたら身が持たないので放っておくことにする。
「名前は『あふぅ』かな」
「もうそれでいいわよ」
次は千早もどき。
「千早ちゃんモデルも第一世代型のチヴィット。冬になると髪の毛のボリュームが増大して猫耳みたいな形になるよ」
「あの、その前にこの子離してもらえませんか?」
「くっ! くっ!」
千早もどきは先ほどから千早本人の頭上で彼女の頭をペシペシと叩いていた。痛くはなさそうだが、鬱陶しいというよりは困惑した様子だった。
「それはその子が気に入った相手にする行動だよ。随分と千早ちゃんは気に入られたみたいだね」
「そう、なのでしょうか……」
「それじゃあ、この子の名前を――」
「『ゴンザレス』がいいと思います!」
「………………」
「………………」
「もしくは『ごんたくれ』で!」
「『ちひゃー』とかいいんじゃないかな?」
「そうね」
「え、ちょ」
次は春香もどき。
「この子はさっきも言った通り、水をかけると増殖するっていう特殊能力を備えた第三世代型のチヴィットだ」
「さっき身をもって思い知ったわよ……」
実害の有無に関わらず目の前でロボットが増殖していく様は恐怖以外の何物でもなかった。
「その他には潮水をかけると巨大化して、夜中十二時以降に食料を与えると狂暴化するから」
「何か私のチヴィットだけ扱い酷くありませんか!?」
「あと日光も苦手だから外出する時は日傘か帽子で対策してあげてくれ」
「……あれ、それってもしかしてグレ――」
「それ以上はいけない」
名前は春香の希望により『はるかさん』となった。
次はやよいもどき。
「やよいちゃんモデルも第一世代型のチヴィットで、冬になると髪の毛が増量して春になると頭から筍が生えるよ」
「はいはい、筍ね……筍!?」
流そうにも流せない情報が良太郎の口から語られた。
「えっと……食べれるの?」
「煮ると美味いってさ」
「……やよい、これで春に筍食べ放題よ」
「嬉しいです!」
「あ、頑張って流した」
流さなきゃやってらんないわよこんなこと!
名前はやよいがモデルなのでシンプルに『やよ』に決まった。
次は……。
「私もどき、ね……」
「めっ」
椅子の上で仁王立ちになって立つ私もどき。髪型は今の私ではなくアイドル時代のお下げ髪だった。
「りっちゃんモデルは第一世代型のチヴィットだ」
「……え? それだけ?」
「うん。それ以外にこれといった特徴はないよ」
何かそれはそれでムカつくものがある。
「名前は小さいりっちゃんだから『ちっちゃん』とかいいんじゃないかな?」
そう言いながら私もどきの頭を撫でる良太郎。
その瞬間、私もどきの顔が真っ赤になって頭から白い湯気が上がり始めた。
「ん? オーバーヒートか?」
訝しげに首を傾げる良太郎。
良太郎が頭を撫でた途端に顔を真っ赤にするなんて、あれではまるで私が良太郎に惚れ――。
「ってそんなわけがあるかぁぁぁい!」
「あ痛っ!? え、今俺何で殴られたの?」
「煩い!」
……つづく?
【特報】
『覇王』周藤良太郎は『トップアイドル』である。
しかし、生まれた時から『覇王』と称されていたわけでも、アイドルになった時から『トップアイドル』であったわけではない。
周藤良太郎にも極々普通の駆け出しアイドルだった時期が存在するのだ。
――そしてこれは、周藤良太郎が『覇王』となった『始まり』の物語。
「テレビ出演が決まったんだってな」
「あぁ、今日テレビ局でその打ち合わせだ」
『駆け出しアイドル』周藤良太郎は、初のテレビ出演に向けて幾ばくかの緊張とそれを数倍上回る期待で胸を躍らせていた。
「……随分と余裕そうね、アンタ」
「そういう君たちは随分と緊張してるな」
「き、緊張なんかしてないわよ!」
「れ、麗華、声大きいって!」
しかし、そのテレビ出演の機会は良太郎の眼前で消えてしまうこととなる。
「え!? しゅ、出演キャンセル!?」
「ど、どうして!」
「まぁ、今回は縁がなかったと思って諦めてくれ」
「新人アイドルはお呼びでないってことよ」
告げられたのは、非情な現実と無情な洗礼。
良太郎自身もまた、自身のテレビ出演の機会を失い失意に暮れていた。
しかし、そんな良太郎を突き動かしたのは。
少女たちの『涙』だった。
「分かってるのか、良太郎。もしかしたら、二度とテレビ出演出来なくなるかもしれないんだぞ?」
「兄貴、俺はテレビに出たいんじゃない。……笑顔にしたいんだよ」
ついに明かされる、四年前の真実。
これは『覇王』周藤良太郎が誕生した夜――。
「素敵なダンスね。思わず見惚れちゃったわ」
「……お褒めに預かり光栄だよ、
――『始まりの夜』の物語。
アイドルの世界に転生したようです。
外伝『ビギンズナイト』
coming soon…
・前回までの三つの出来事
オーズのOPアバン。ドライブはOPアバンが無いのでちょっと違和感。
・りょたろ
良太郎のぷち。小型の良太郎でやはり無表情。「りょー」と鳴く。
モデルに似て大乳スキーだが、すぐ抱き着くなどアグレッシブ。
感情表現が出来ない良太郎とは違い、犬尻尾による感情表現が可能である。
・
二次創作を書く上で大変お世話になるサイト。
・ゆきぽ
雪歩のぷち。お茶好き。見た目によらず力持ち。
・あふぅ
美希のぷち。昼寝好き。後姿は完全に金髪毛虫。
・ちひゃー
千早のぷち。演歌と牛乳が好き。寝相が悪い。
・「『ゴンザレス』がいいと思います!」
何故かネーミングセンスが酷いぷちますの千早。「ごん」から始まる名前が好きらしい。
・「それってもしかしてグレ――」
もしかして、というかどう考えても元ネタ。
・やよ
やよいのぷち。小銭の音に反応してやって来る。
やよいの「うっうー↑」に対して「うっうー↓」と鳴く。
・ちっちゃん
律子のぷち。頭がいい。原作ではPにお熱だったが、どうやらこの世界では……。
・【特報】
嘘予告ではない普通の予告。ただ実際の公開は第二章終了後になるかと。
一周年記念ということで予告編だけ。
なおタイトルはムービー対戦コアより。
というわけでぷちます番外編の続きです。多すぎてぷち全員の紹介が出来なかったのでまた続く羽目に。
そして良太郎のぷち登場。作者からして特徴が「無表情」と「胸好き」しかない主人公ってどうなんだろうか。
特報はまだまだ先の話なのですが、つい最近見てたノベマスのサブタイにそれがあったので使ってみたくなった結果です。
ちなみに前回の「自動最適化能力」のルビに関しての感想を多数いただきました。
今後使用されるかどうかは分かりませんが、折角なのでその中から
『
案を考えてくださった方々、ありがとうございました。