アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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123プロでまったり。


Lesson380 最高のアイドルたち 2

 

 

 

「お疲れ様ー……おや」

 

 現在時刻は午後三時。一仕事を終えて確認事項があったため一度事務所に戻ると、ラウンジに恵美ちゃんたちがいた。

 

「あ、リョータローさんお疲れ様ー!」

 

「お疲れ様ですぅ、良太郎さぁん!」

 

「お疲れ様です」

 

「リョータローやっほー」

 

「お疲れ様です……」

 

「お疲れ様、良太郎君」

 

 ひーふーみー……あれ、どうやら123プロの女性陣が留美さんを含めて全員集合しているらしい。

 

「もしかして女子会中だった?」

 

 見るとテーブルの上にはチョコレートやクッキーなどのお菓子やら飲み物やらが所狭しと並べられていて、そのテーブルを囲むように彼女たちはクッションやソファーに座っている。

 

「女子会ってほどじゃないけど、だいたいそんな感じでーす」

 

「最近の近況報告会に近いですねぇ」

 

「主にそれぞれの出向先でのことです」

 

 恵美ちゃんとまゆちゃんと志保ちゃんの説明にふむふむと頷く。恵美ちゃんたち123五人娘がそれぞれ別々の事務所に出向して四ヶ月ぐらいになるし、きっとすっかり打ち解けているに違いない。

 

「リョータローも参加するー?」

 

「え? うーん、興味はある」

 

 志希からお誘いを受けるが、なんとなくこの女子会然とした空間に一人男が交ざることが若干躊躇われてしまった。普段から似たような状況に臆面もなく交ざっている自覚はあるが、なんとなく空気感の問題。

 

「……あ、そうだ」

 

 閃いた。

 

「ちょっと待ってて」

 

『?』

 

 確かアレがあったはず……。

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね。九年振り二度目の登場、周藤ハーマイオニーよ」

 

『女になったー!?』

 

 

 

 女子会に参加する以上、正装(じょそう)せねばこちらも無作法というもの。ということで以前涼関連で動画を撮影したときに使ったカツラと衣装を身にまとい化粧をして女子になってきた。

 

「これで問題なく女子会に参加出来るわね」

 

「誰も男のままでの参加を拒否してなかったんですけど……」

 

「声が良子ママだ……」

 

「めっちゃ胸盛ってるし……」

 

「それでも身長があるから違和感がないわね……」

 

 志保ちゃんと志希と恵美ちゃんと留美さんの呆れた目線をスルーして、俺も女子会の輪に入れてもらう。お隣失礼するわね。

 

「座り方だけじゃなくて、腰を下ろす仕草まで完璧に女性ですね……」

 

「はぁ……良太郎さん、女性になっても素敵……」

 

 美優さんとまゆちゃんの評価は誉め言葉として受け取っておく。

 

 

 

「それで、出向先のお話よね」

 

「はい。まゆと志希ちゃんが346プロでぇ」

 

「アタシは765プロー」

 

「283プロです」

 

「私は876プロにお邪魔しています……」

 

 さて我ら123プロダクションは戦力分散という意味で五人娘に各プロダクションでユニットを組んでもらうことになった。志希は元々組んでいた『LiPPS』を再結成するという形になっているが、それ以外は新規ユニットである。

 

「とりあえず一番気になっていたことを最初に聞いちゃうんだけど……ねぇ志保ちゃん」

 

「女性の声であることに違和感がないことに違和感が……えっと、なんですか」

 

「ぶっちゃけ美琴と組んでキツくない?」

 

「めっちゃきつい」

 

 志保ちゃんの目が死んでる……。

 

「正直『123プロダクションのレッスンで慣れているから大丈夫』って舐めてました……なんですかあの人……レッスンの擬人化ですか……」

 

 志保ちゃんにしては珍しい語彙による弱音である。

 

「美琴はレッスン中毒だから……あの子ってば、放っておくと食事も休憩も忘れてレッスンしちゃうのよ」

 

「ずっと踊り続けるっていう点で言えば良太郎さんを筆頭にした123プロダクションのレッスン方針みたいなところありますけど、そういう次元の話じゃなかったですよ」

 

「寝ても覚めてもレッスンのことにしか興味の無い子だから、逆に今回のライブへの出演を承諾してくれたことが本当に驚きなのよね」

 

「なんかレッスンが何かの隠語みたいに聞こえてきたー」

 

 しかしそんな美琴に、やや辟易としながらも付いていけている志保ちゃんが本当に凄いのである。寧ろ123プロ五人娘の中で唯一美琴に付いていけそうなのが志保ちゃんだ。

 

「ずっと前から、あの子はしっかりと表舞台に立つべきアイドルだって私は思っていたの。……だから美琴のことをお願いね、志保ちゃん。私がお願いするのは、なんだかお門違いかもしれないけど」

 

「分かってますよ。……私も、美琴さんのことはなんだかほっとけないですから」

 

 ……この面倒見の良さ、そして123でもトップクラスの向上心と根性を持ち合わせているからこそ、志保ちゃんを美琴にあてがわせたのだが……やっぱりこの判断は間違っていなかったらしい。

 

「ちゃんとご飯食べさせてあげてね」

 

「お願いがまるでお母さんじゃないですか……」

 

「今は見た目が女の人だから余計にね……」

 

 

 

「美優さんは876だったわね。どう? 元気でしょう? 特に愛ちゃんは」

 

「それはもう……とてもとても……」

 

 志保ちゃんとは別ベクトルで疲れた様子を見せる美優さん。愛ちゃんも絵理ちゃんも、年上のお姉さんと一緒のステージに立てることが嬉しいらしい。

 

「ですが、私もその……妹が二人も出来たみたいで……少し楽しいです……」

 

「えー!? ってことは美優さん、アタシたちのことはそー思ってなかったのー!?」

 

「ぶーぶー、しきちゃんは美優おねーちゃんに抗議するぞー」

 

「ひゃわっ……!?」

 

 恵美ちゃんと志希が美優さんの両側から妹のように抱き着いた。確かに年齢的に見れば美優さんは他のアイドルよりも年上なわけだけど……。

 

「寧ろウチだと美優さん、ポジション的には妹じゃないかしら」

 

『……確かに』

 

「留美さんはともかく、みんなまで……!?」

 

 なーんかこう、甘やかしたくなるんだよなぁ。

 

「876だとお姉さんしないといけないでしょうから、ウチで存分に甘えていってくださいね」

 

「私、別に甘えたいとは一言も言ってませんよ……!?」

 

 

 

「恵美ちゃんは765だったわね」

 

「うん! 765(むこう)は知ってる子たち多いから、顔出すのすっごい楽しいんだー!」

 

「765プロのアリーナライブも、もう三年前になるんですねぇ」

 

「懐かしいですね」

 

 あの頃はまだまだアイドルの卵だった恵美ちゃんたちが、今ではこんなに立派になって……。

 

「お姉さん、涙が出ちゃう……」

 

「見た目が見た目だから『お兄さんでは』というツッコミがしづらい……」

 

「良太郎君、頭が混乱するから元に戻らない?」

 

 志保ちゃんと留美さんが苦い顔をしているが、残念ながらこのページは残り全部このままです。

 

「でも今回一緒のユニット組むことになった琴葉とエレナも、なんかもーすっごい気が合うの! まるで昔からずーっとユニット組んでたみたいに!」

 

「そんな! 恵美ちゃん、私とのユニットは遊びだったんですかぁ……!?」

 

「えぇ!?」

 

 およよ……と目元を拭うまゆちゃん。うーん涙の演技が上手くなっている。

 

 あまりにもわざとらしい演技ではあるものの、恵美ちゃんはしっかりとそれを認識しつつもしっかりとそれに乗っていた。

 

「私の初めて(のユニットデビュー)を捧げたのに……!」

 

「言い草酷くない!?」

 

「良太郎さん、コレ絶対貴方の影響ですよね」

 

「言い逃れはしないわ」

 

 

 

「そんなまゆちゃんはありすちゃんとユニットを組んでるのよね」

 

「はい。とーっても良い子なんですよぉ」

 

 茶番も終わってケロッと元に戻ったまゆちゃんが頬に手を当ててうふふと微笑んだ。

 

「アイドルとしてもとっても素直で……そしてなにより! 熱心な! それはもう熱心な私の受講生なんですぅ……!」

 

「……受講生?」

 

 家庭教師でもしているのかと首を傾げる。

 

「実はありすちゃん、りょーいん患者らしいんですよ」

 

「あら」

 

 それは意外。確かに以前346プロでレッスンを見てあげたときもやたらと素直で、前評判として聞いていた少しツンケンした子とは全然違っていたとは思っていたけど。

 

「受講生って言うのは、つまり『佐久間流周藤良太郎学』の受講生ってことね。まゆちゃんの授業は私も好きよ」

 

「自分のことじゃないんですか……?」

 

 まゆちゃん独自の目線からの考察だから、まるで他人のことのように聞いてて面白いんだよね。普通に勉強になることもあるし。

 

「特に最近の『周藤良太郎の楽曲の発表日時に秘められた十二星座の因果関係』はとても面白かったわ」

 

「それこそ本来はリョータローさん自身が知らなきゃいけないことでは!?」

 

「つまりそれ本当にただのまゆさんの妄想じゃないですか!?」

 

「よく出来てる考察だったからいっそのこと公式設定ってことにしちゃおうかなって」

 

「盛大な後付け!」

 

 実際兄貴もノリノリだった。

 

「大変光栄なのですがぁ、まゆは非公式であることに誇りがあるのでちょっとぉ……」

 

「まゆちゃんから拒否しちゃうんですか……!?」

 

「というか事務所の公式チャンネル使って配信してるのに非公式扱いなの……!?」

 

 

 

「私たちとしては、寧ろ良太郎君の話を聞きたいわね」

 

「私の?」

 

 志希がまたしてもリップスでやらかした騒動についてのお叱りが終わったところで、留美さんがそんなことを言い出した。

 

「出向してないとはいえ、一人で315プロに行ってるわけじゃない」

 

「そうですね……今回一緒のステージに立つ人たちですし……」

 

「あー確かに! 聞いてみたいでーす!」

 

「まゆは良太郎さんのお話ならば何でも大歓迎でぇす」

 

「アタシはいいかな」

 

「逃がさないわよー」

 

 失踪させると面倒になるので逃げようとした志希の腕をガッチリと掴む。

 

「……そうねぇ」

 

 チラリと時計を見る。そろそろ次の予定の時間が迫ってきているが……まぁ、もう少しぐらい大丈夫だろう。

 

 ……みんなとは最近、こうしてゆっくり話す時間も無かったし。

 

 

 

「それじゃあそうねぇ……ドラスタの柏木翼さんを連れて、貴音ちゃんと一緒に佐竹飯店で美奈子ちゃんに真っ向勝負を申し出たときの話でもしましょうか」

 

『なにそれ!?』

 

 

 

 八事務所合同ライブまで、残り二ヶ月。

 

 

 




・女装良太郎再び
本編中に登場するのは多分Lesson42以来。

・美優さんは妹ポジ
お姉さんなのに年上に見えない。不思議。

・佐竹飯店with翼&貴音~史上最大の戦い~
多分何処かで書く(予定)



 残りは男子サイド。



『どうでもよくない小話』

 前回触れ忘れてましたが、シャニソン配信されましたね。皆さんプレイされているでしょうか?

 自分は星3で冬優子が実装されてからリセマラしようかなーって……。

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