アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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主人公が蚊帳の外はデフォルト。


Lesson369 Episode of High×Joker 3

 

 

 

「………………」

 

『はい今のtakeオッケーでーす!』

 

「………………」

 

『それじゃそのまま次のtake行きまーす。準備オッケーですねー?』

 

「………………」

 

『はーい周藤君が闇落ちキャラみたいなオーラを纏い始めたから休憩にしまーす』

 

「ふぅ……」

 

『休憩時間五分でーす』

 

「もうちょっと手加減してくんない!?」

 

 チクショウいくら今日はいつも以上にスケジュールが詰まってるからって無茶苦茶言いやがるぜここのスタッフ! 普段から俺からの無茶ぶりとか殺人スケジュールとかに対応し続けた結果スタッフたちも精鋭になってやがるぜ! ……概ね俺のせいだな!

 

「はい周藤君お疲れ様。お腹空いたでしょ」

 

 三時間ぶりに収録ブースから外に出ると、女性スタッフから差し入れを手渡された。

 

「……確かにまともな食事をする時間はないんだけど、ゼリー飲料じゃなくてせめておにぎりとかパンとかにして欲しかったな。……お米が禁止されるなんて、まるで!」

 

「次の休憩までにおにぎり用意するからそれ以上は言っちゃダメよ!?」

 

「シャケとオカカでお願いします」

 

 ジュルジュルとゼリーを飲みながらスマホを弄る。果たして次にスマホを触ることが出来るのは何時間後になることやら……ん? 志希と四季からメッセージが来てる。

 

 

 

『リップスの五人とカラオケに来てるっすよ~』

『ハイジョの五人とカラオケ~』

 

 

 

 あいつらなに俺の知らないところで面白そうなことしてるの!?

 

「はいそろそろ時間で~す大人しく収録ブースに戻ってくださ~い」

 

「ああそんなご無体な……」

 

 滅茶苦茶気になる内容のメッセージだったのに、無慈悲にもスマホを取り上げられてしまった。

 

「ホラホラこの収録が終わったら次はグラビアアイドルとの番組収録なんでしょ? 頑張ってください」

 

そんな月並みな応援じゃあなぁ(よっしゃきあいいれるぞ)

 

 後ろ髪を引かれる思いをグッと我慢してきっちりとお仕事をこなすことにしよう。

 

 ……果たしてどんな状況になっていることやら。

 

 

 

 

 

 

 346プロダクションという事務所の名前を知らなかったとしても『高垣楓』や『LiPPS』の名前を知らない人はいない。そう思えるほど、彼女たちは日本でも有数のトップアイドルである。

 

 流石に純粋な知名度や人気で言えば『周藤良太郎』や『魔王エンジェル』とは比べ物にならないが、それでも街往く中高生に知っているアイドルユニット名を答えてもらえば確実に名前が挙がる程度には凄いアイドルであるということには間違いなかった。

 

 

 

「えっ!? 本当にハイジョの曲って隼人君が作ってるの!?」

 

「あっいえ!? 全部ではないですし!? 仕上げはプロの人にお願いしてますし!?」

 

「それって逆に言えばプロの人に後をお願い出来るレベルってことじゃん!? え、メッチャすごい!」

 

「い、いえ……そ、そんなことは……」

 

「しかも隼人君ハイジョのリーダーでもあるんでしょ?」

 

「あっ、はい、一応、そうなってます……!」

 

「ふっふーん、凄いでしょ美嘉ちゃん」

 

「なんで周子ちゃんが自慢げなのよ……」

 

 ……そんな凄いアイドルであるリップスの五人と同じカラオケボックスの一室にいるということがまるで夢のようで、さらに言うと塩見周子と城ヶ崎美嘉の間に座っているという状況が信じられなかった。

 

 失礼を承知を言わせてもらえば、別に俺はリップスの熱心なファンというわけではない。しかし()()()()()()()()()()()に囲まれている状況をなんとも思わない男子高校生なんているはずがないのだ。いるはずがないのだ!

 

 しかもこのお姉さんたちかなり薄着! 夏だからしょうがないんだけどすっごい薄着! 目のやり場に困りすぎる! 何処見ていいのか分からない! 両隣を見れない!

 

 ジュン! ナツキ! ハルナ! シキ! 誰でもいいから助けて!?

 

 

 

『『いぇ~い!』』

 

「ひゅーっ! ダブルシキのオンステージいいぞー!」

 

「世界獲れるよー! フレちゃん保証しちゃうよー!」

 

 

 

「もしかして貴女たちも苦労してるんじゃない?」

 

「苦労……とまでは言いません。でももうちょっと落ち着いてほしいっていう気持ちはありますね」

 

「でも……ジュン、いつも楽しそうだよ」

 

 

 

 なんか四人とも普通に楽しんでない!? ハルナとシキはともかく、ジュンとナツキもなんだか楽しそうじゃない!? アレ!? こんなに緊張してるの俺だけ!?

 

「ちょっと美嘉、周子、隼人君が困ってるからほどほどにしてあげなさい」

 

「あ、ごめんごめん」

 

「ちょっとお姉さんたちグイグイ行きすぎちゃった?」

 

「い、イエソンナコトハ……」

 

 どうやら俺が緊張でガチガチになっていることに気付いたらしい奏さんに咎められた美嘉さんと周子さんがほんの少しだけ距離を離してくれた。……嬉しいような寂しいような。

 

「ふふっ、隼人君顔赤いよ~?」

 

「エッイヤコレハ!?」

 

「ホラ美嘉、慣れないことしないの。内心ではテンパってるから自分でも訳分からないことしてるのはバレてるのよ」

 

「そーゆーこと言わなくてもいいじゃん!?」

 

 それまで揶揄うような笑みを浮かべていた美嘉さんだったが、奏さんからのリークによりあっという間にその表情が崩れてしまった。

 

「え、意外。城ヶ崎美嘉って言えば読者モデル時代から中高生女子の憧れのカリスマギャルっていうイメージだったのに」

 

「あくまでもイメージよ。実際は異性耐性皆無のクソ雑魚ギャルだから」

 

「クソ雑魚言うな!?」

 

 ハルナの疑問に答える形での奏さんからの更なる追撃が美嘉さんを襲う。なんだろう……哀れみとはまた少し違う、親近感のような空気を彼女から感じる。

 

「そういうのフツーに営業妨害だからね!? まるでアタシが初心(うぶ)みたいじゃない!?」

 

「「「「………………」」」」

 

「ちょっとぉ!?」

 

 無言でジッと美嘉さんを見つめる他のリップスの四人の視線が、きっと答えなのだろう。

 

「よかったっすねハヤトっち! あのリップスの城ヶ崎美嘉ですらコレなんすから、ハヤトっちも自信を持っていいっすよ!」

 

「やかましいわ!」

 

 シキ的には慰めてくれてるんだろうけど普通にフレンドリーファイアなんだよ!

 

「いいじゃないっすか、元々今日はそれが目的だったんすから」

 

「? どういうこと?」

 

「えっとっすねー」

 

 シキの発言に首を傾げた奏さんに、シキ本人から説明が入る。女性相手に『女の子相手に緊張せずにお喋り出来るか試す』とかそういうの言わないで欲しかったなぁ!?

 

「……あら、それはそれは」

 

「丁度いいじゃん。美嘉ちゃんも隼人君と一緒に克服したら?」

 

「「えっ!?」」

 

 突然の提案に俺と美嘉さんは揃って驚愕の声を上げてしまった。

 

「ほら、美嘉も良太郎先輩以外の男性アイドルと関わること殆どないじゃない?」

 

「あたしたちもちょっと心配だったんだよね」

 

「余計なお世話ですぅ!」

 

 まさかあのリップスの城ヶ崎美嘉が、俺と似たような心配をされていたなんて。……でもなんだろう、親近感というよりは『同病相憐れむ』に近い感情が……。

 

「大体、さっきまでの私と隼人君のやり取り見てたでしょ!? アタシだって普通にしてればアレぐらい余裕なんだからね!?」

 

「あら? 良太郎先輩からの密告によると、貴女初めて良太郎先輩に会ったときに聞かれてもいない自分のプロフィールを……」

 

「あああぁぁぁ!?」

 

 うーん、まさかリップス内では美嘉さんが弄られ役だったとは……。

 

「ますますハヤトっちと似てるっすね!」

 

「シキ、そろそろ俺も実力行使に移るぞ?」

 

 なんか妙な流れになってきちゃったぞ……!?

 

 

 

 

 

 

「地獄のようなスケジュールがなんぼのもんじゃい……!」

 

『まさかこのtakeを一時間で終わらせるなんて……』

 

 今の俺にかかればこんなもんよ……!

 

 先ほどよりも気合を入れてさらに集中した結果、先ほどよりも早く収録ブースから脱出することが出来た。これがトップアイドルの為せる業ってやつですよ……。

 

「お疲れ様です。ご希望のおにぎり買ってありますよ」

 

「は、白米じゃあ……!」

 

「そんな昭和初期じゃないんですから……そんなにおにぎり食べたかったんですか?」

 

「しゃけ」

 

「……普通に喋りません?」

 

「おかか」

 

 もそもそとおにぎりを食べながらスマホを覗き込む。先ほど収録ブースに再収監される前に大変気になるメッセージが届いていたので、その続報がどちらからか届いてないかを確認したかった。

 

 いやホント、どういう流れでリップスとハイジョの合コンという面白い状況になるんだよ。しかも年齢的には男子高校生(ハイジョ)女子大生(リップス)という構図である。性別で考えても知名度で考えても、世間的に見れば『ハイジョが羨ましい』という意見の方が多いことだろう。

 

 きっと四季と春名、志希とフレちゃん辺りはテンション高く意気投合してるんだろうなぁと予想する。そんな四人を旬と奏が呆れてる光景が目に浮かぶ。

 

 そしてなんとなくだけど、隼人は美嘉ちゃんと相性良い気がするんだよなぁ。隼人は旬とはまた別ベクトルの苦労人感が滲み出ている。

 

 ……あれ? そういえば周子ちゃん、ハイジョのファンとかいう話を奏から聞いたような気がする。

 

 ……ますます様子が気になってきたんだけど!?

 

「………………」

 

「どうしましたか周藤君、そんなにジッと私を見て。残念ながら私の胸はそんなに大きくないですよ」

 

「いや、どうすればここを抜け出せるかなぁと……」

 

「ぜっっったいに逃がしませんよ!?」

 

 冗談のつもりではあったのだが、俺の余計な一言でスタジオ内の緊迫感が上がってしまった。そんなに警戒して出入り口を固めなくても逃げないって……。

 

「周藤君は色々と前科がありますからね」

 

「志希ほど逃げたつもりはないんだけどなぁ……」

 

 しいて言うならば、リハーサルやゲネを全部すっ飛ばしたぐらいかな……?

 

(仕方ない、観念して四季と志希から送られてくるであろう現状報告だけで我慢するか……)

 

 おっ、早速志希から来た。

 

 

 

 ――美嘉ちゃんがハヤト君相手にガールズバーみたいなことしてるー。

 

 

 

「……俺ちょっと外の空気を吸って――」

 

「確保ー!」

 

 ちょっ、まだ一歩も動いてな、やめっ、ヤメロー!?

 

 

 




・お米が禁止
何がとは言わない(愛知県民)

・しゃけ おかか
しゃけが肯定でおかかが否定って聞いた。

・年上の美人なお姉様たち
以下は現在の時間軸のリップスの年齢
美嘉 19歳
奏 19歳
周子 20歳
志希 20歳
フレデリカ 21歳

・初めて良太郎先輩に会ったとき
Lesson82参照



 相変わらずこの主人公現場にいねぇなぁ……。



『どうでもいい小話』

 加蓮が引けない僕だけど元気です(訳:SOL楽しみですね!)

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