アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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合宿スタート!


Lesson360 Summer is here! 2

 

 

 

「で、このタンコブが出来たってわけ」

 

「どうしてそんな漫画のようなタンコブを頭に乗せているのかと思えば……」

 

「そういうのって普通すぐ消えねぇか……?」

 

 俺もそう思う。

 

「というかリョーさん、流石に女子中学生相手にその発言は些か問題があると思うんだけど」

 

「輝さんの言うこともご尤も。同じようなお葉書(かんそう)が何通か届いていました」

 

「お葉書!?」

 

 ただここで一つしっかりとしておきたいことがある。

 

「俺は女性の胸が好きです。大きな胸が好きです」

 

「……お、おう」

 

 

 

「でもそれはあくまでも『趣味嗜好』なだけで『性癖』ではないんですっ!」

 

 

 

 これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 

「……冬馬、任せていい?」

 

「はい、輝さん。このバカ無駄に耐久力があるんで躊躇せずに振り抜くことがコツです。こう、斜め下四十五度からねじり込むような感じで打つ!」

 

「お゛っ!?」

 

 

 

 

 

 

 そんな心温まる交流(レバーブロー)はさておき、ついに迎えた男性アイドル限定三事務所合同合宿当日。俺たちは福井県にあるとある民宿へとやって来た。

 

「いやぁ、久しぶりに来たなぁ、民宿『わかさ』」

 

「良太郎さんと冬馬さんは、以前にも来たことあるんですか?」

 

 涼からの質問に「あぁ」と頷く。

 

「前に来たのは765プロ(アイツら)の面倒を見てやったときだから……もう三年も前になるのか」

 

「懐かしいな」

 

 民宿へと続く長い階段を見上げながら初めてここを訪れた時のことを思い出す。

 

 かつてトップアイドル一歩手前ぐらいだった春香ちゃん765プロのアイドルや、そんな彼女たちのバックダンサーとして出演することになった志保ちゃんたち。彼女たちとの思い出が、こう……。

 

「……いや、あれからまだ三年しか経ってないってマジ?」

 

「島村たちとのアレコレとか、色々あったせいで感覚がバグってんな……」

 

 なんか凄い昔の話のように思える。本当にビックリである。

 

「いえーい!」

 

「海だー!」

 

「ウェミだー!」

 

「テンアゲっすー!」

 

「やふー!」

 

 そんな感じで冬馬と二人で時の流れはフシギダネしている中、それなりに長時間の旅を終えたばかりの類と隼人と春名と四季とピエールの五人が、目の前の海に向かって大声を張りあげた。

 

 抜けるような青い空と白い雲、そして太陽の光で煌めく水面……まぁ、テンションが上がる気持ちもよく分かるし、なんだったら五人がやらなかったら俺が同じことをやってた。

 

「よっしゃ! 早速下降りてひと泳ぎしようぜ!」

 

「「「「らじゃー!」」」」

 

「はいはい。楽しみたい気持ちは分かるけど、今はお預けだよ」

 

「「「「は~い……」」」」

 

 今にも海へと突撃しそうな五人だったが、手を叩いて注目を集めた北斗さんに諫められたことで大人しく諦めた。

 

「海への一番乗りは諦めたが……それじゃあ宿には俺が一番乗りー!」

 

「あ! 待てハルナ!」

 

「負けないっすよ!」

 

「ボクもボクもー!」

 

「おっとこいつぁ負けてらんねぇな!」

 

 長い階段を駆け上がり始めた悪ガキトリオとピエールを追いかける。

 

「ったく、ガキかよ」

 

「冬馬は俺より足短いから階段駆け上がるの大変だもんなー」

 

「よぉしもう一発ぶん殴ってやらぁ!」

 

 冬馬も緊急参戦した315プロ階段ダービー! 果たして勝者は!?

 

「よぉし! 良太郎―冬馬―隼人の三連単で勝負だぁ!」

 

「山下くん……」

 

「それじゃあ僕は春名―冬馬―良太郎で勝負しよーっと」

 

「翔太まで……」

 

 果たして結果は!? 掲示板の結果はCMの後!

 

 

 

 

 

 

『すっきりさやわか!』

 

マダゼスチンサイダー!

 

 

 

「にゃ、にゃんと……こ、これが先日二十一歳になったばかりの美波ちゃんの、水着姿……!」

 

「う、うひゃぁ……え、えっちだ……」

 

「み、みくちゃんも李衣菜ちゃんも、変な反応しないでってば!」

 

「ふーん、えっちじゃん」

 

「凛ちゃん!?」

 

「コレは流石に認めざるを得ません……」

 

「アーニャちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 えー只今のレース、一着『若里春名』二着『天ヶ瀬冬馬』三着『周藤良太郎』となります。

 

「外したあああぁぁぁ!」

 

「いえーい! あったりー!」

 

 くそぉ……最初は先頭をキープしてたのに、脇腹に冬馬の拳を受けてしまってな……。

 

「それでも足を止めなかったリョーさんっちパネェっす……」

 

「あのスピードであれだけ重そうなパンチする冬馬さんも凄いけどね……」

 

「そもそも妨害では……?」

 

 のんびりと登って来たメンバーと合流し、少々騒がしくなってしまったがそろそろ民宿の旦那さんと奥さんに挨拶を……。

 

 

 

「残念でしたー」

 

「本当の一着はオレたちだよー!」

 

 

 

 ……そこには、よく似た見た目の少年二人がコチラに向かってピースをしていた。

 

「あぁ!?」

 

 この二人は……などという感想を抱く前に、真っ先に冬馬が反応した。

 

「あ、蒼井悠介選手! 蒼井享介選手!」

 

 そう、つい最近315プロにやってきた新たな仲間、蒼井兄弟である。

 

「もう俺たち選手じゃないですよ」

 

「ステージという名のフィールドに立つプレイヤーっていう意味なら、オレたちもまだ選手だけどね!」

 

「あ、すみません! お二人のファンなんです!」

 

 笑いながらヒラヒラと手を振る蒼井兄弟に、冬馬はビシッと頭を下げた。

 

「……熱心なサポーターだとは知っていたが、ここまでだったとは」

 

「315プロに入ったって話を聞いたとき、すっごい喜んでたよね冬馬君」

 

「珍しく目を輝かせながら、志保ちゃんに二人のことを熱く語っていたね」

 

「志保ちゃんに?」

 

 北斗さんからの少々不思議な目撃情報はともかく、とりあえず俺も二人に挨拶をしたいんだけど……。

 

「サインください!」

 

 ……冬馬がわざわざ用意してきていたらしい色紙とサインペンを差し出してるから、もうちょっとだけそっとしておいてあげよう。俺は空気が読める大人である。

 

「と言いつつりょーたろーくん、スマホで録画するんだね」

 

 後々何かに使えるかなって思って。

 

 

 

「あ、次郎さん、支払いは後日でいいよ」

 

「くそぉ……すどうさんなら堅いと思ったんだけどなぁ……」

 

「翔太、ちょっと話がある」

 

「山下くん、君も少しこっちに来なさい」

 

 

 

 

 

 

 さて、三年ぶりの再会となる旦那さんと奥さん(二人とも俺と冬馬のことを覚えていてくれた)への挨拶を終え、全員レッスン着に着替えて運動場へとやって来た。

 

「えええぇぇぇ!? ナニコレェェェ!?」

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「みのり、どうかした?」

 

 そして中に入った途端、みのりさんが奇声を上げて恭二とピエールの二人に心配されていた。

 

「どうしました? 何か見つけました?」

 

「オタカラがぁ! とんでもないオタカラがぁぁぁ!」

 

 みのりさんの語彙力が死んでる。……元々語彙力が死ぬタイプのオタクだったな。

 

「って、あぁこれですか」

 

 みのりさんが指差す先を見ると、そこには三年前に春香ちゃんたちが書いたサイン色紙と俺と冬馬が書いたサイン色紙が並べてあった。そして現在はその二枚の色紙の隣に更に二枚の色紙が飾られている。

 

「わ、346プロのシンデレラプロジェクトのサインですか?」

 

「こっちは去年のトロフェスで話題になった765プロシアター組のサイン!」

 

 涼と咲ちゃんもその二枚に書かれたサインに驚いていた。

 

「おぉ……これはご利益ありそうっすね!」

 

「拝んどこ拝んどこ!」

 

「ダンス上手くなれますように!」

 

 手を合わせて拝み始めた悪ガキトリオに釣られるように、他のアイドルも数名そっと手を合わせていた。ちなみにみのりさんはさらにその上をいく土下座崇拝スタイルである。

 

「ここで合宿をする以上、みんなもこのサインに並んで恥ずかしくないようなトップアイドルを目指すんだからな。それぐらいの意気込みでいるように」

 

『はいっ!』

 

 

 

 そんなひと悶着を終え、ようやく落ち着いたところでプロデューサーさんから蒼井兄弟が改めて紹介される。

 

「先日お伝えした通り、今日から蒼井悠介さんと蒼井享介さんの双子ユニット『(ダブル)』も正式に合流することになりました」

 

「「よろしくお願いしまーす!」」

 

 全員で『よろしくー』と熱烈歓迎する。

 

「Wのお二人は合同ライブに向けてユニット曲も同時進行で練習していただくのですが……この合宿では、315プロダクションの全体曲となる()()()の練習をしていただきます。その際……」

 

 プロデューサーさんの視線がチラリとコチラに向いたので、他のみんなと一緒に座っていた俺は立ち上がって彼の隣へと向かう。

 

「俺や冬馬、翔太と北斗さんの四人は主に指導側に回らせてもらいます」

 

 今回の合宿は『全員が全体曲の振り付けを覚えている』ということが前提の下で行われているのだが、俺たち四人はその上で()()()()()()()きている。

 

「リョーさんたち、忙しいのによくそんな時間あったな……」

 

「寧ろ忙しくないときはありませんから、そんな中で完璧に仕上げるのはトップアイドルなんですよ」

 

 ガンランス装備の砲術レベルの必須スキルなので、皆さん頑張って習得してください。

 

()()()は、315プロ全員で歌う初めての曲です。この練習の中で、きっと色々な課題が見えてくると思います。目標は全員のレベルアップ……皆さん、張り切っていきましょう!」

 

『おーっ!』

 

 こうして、315プロの……合同ライブ参加男性アイドル全員の、熱い夏が幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

おまけ『仲間外れ?』

 

 

 

「……あれ? このサイン、翔太君と北斗さんのはないんだ?」

 

「あー、指導には参加したけど、合宿そのものには参加しなかったからね」

 

「勿体ない……! でもこれはこれで価値のあるサイン……!」

 

「なんか悔しいから、ここに書き足しちゃおっかなー」

 

「あぁなんてことを!? ……いや付加価値が上がるからそれもアリでは!?」

 

「とりあえずみのりさん、練習始まる前にテンション振り切るのはやめてくださいね?」

 

 

 




・「で、このタンコブが出来たってわけ」
延々とネットで使われ続ける赤ちゃん。

・「そういうのって普通すぐ消えねぇか……?」
作者のヒロアカ最推しは瀬呂君です。

・『趣味嗜好』なだけで『性癖』ではない
ここテストに出ます。

・「あれからまだ三年しか」
しかし着実に三年の年月が経っているという。
春香さんが成人済みですぜ?

・「ウェミだー!」
元ネタFFだったのか……。

・315プロ階段ダービー!
ニンダイで凄い驚いた。ただその後の奴で驚きが塗りつぶされたけど。

・すっきりさわやか!マダゼスチンサイダー!
今更なネタ。
カラーリングはアニメ版にしてみた。

・おまけ『仲間外れ?』
確かいなかったはず……?(あいまいな記憶)



 ついに四年目となってしまったアイマス恒例夏合宿回となります。リアル時間で言うと、初の合宿は八年前になるのか……。



『どうでもよくない小話』

 デレSoLにななみん参戦決定だぁぁぁ!!!

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