改めて今回の合同ライブのコンセプトを簡単に説明すると、男女別に分かれた紅白歌合戦的な奴である。正直男性アイドルは俺とJupiterだけで屋台骨を支えている状況なので、そろそろ他の人たちにも頑張ってもらいたいのだ。
そんな男性アイドルは三事務所から二十二人が参加する。123プロからは俺とJupiterの四人、876プロからは涼、そして315プロからは十七人という内訳だ。
女性アイドルもバランスを取るために大体それぐらいの人数に出演してもらいたいと考えている。それと全く同じ人数というは少々無理があるので……三十人ぐらいかな。
そもそも所属アイドルが少ないところから考えていくと、1054プロからは魔王エンジェルの三人、283プロからは美琴、876プロからは愛ちゃんと絵理ちゃん、310プロからはなのはちゃんたち三人が出演してくれる。これで九人。あと二十人ぐらい。
そして未だに女性アイドルの出演が確定していない参加事務所は346プロと765プロの二事務所。基本的に選出は各事務所にお願いしている。……ただ一つだけ、我らが123プロからとある『提案』がしてあるけど。
はてさて、一体誰が出演することになるのかな?
「はい、というわけでじゃんけんで決めます」
『ちょっと待って!?』
律子さんがご乱心だ!?
「うっさいわね! こっちだっていよいよ限界なのよ!? 毎日毎日『私を出演させろ!』だの『出演したい!』だのなんだの!」
これは本当にご乱心しているが、その理由が明らかにこちら側の非であることは明白だった。
「ちょっと~ミキミキのせいじゃ~ん!」
「それを言うなら真美のせいなの! もしくは春香!」
「なんで私!?」
酷い言いがかりを押し付けられた。……いやまぁ、一切「出演したい」と言わなかったかと言われればそんなことはないんだけど……。
「す、少なくとも真美や美希よりは言ってないよ!」
「ぶっぶ~! 一言でも口にした時点ではるるんも同罪で~す!」
「大人しく今回のライブは辞退するの!」
「な、なにを~!?」
「喧しい!!!」
「「「ごめんなさい」」」
さて、一先ず落ち着いて現状を確認しよう。
年末に行われる八事務所合同ライブに私たち765プロも参加させてもらうことになったのだが……私たちの事務所から参加できるアイドルの人数が騒動の発端であった。
「そもそもなんでミキたち
「そうだよ~確か十人ぐらい枠あるんでしょ~?」
改めて不満を口にする二人だが、この不満はこうして事務所に揃ったAS組全員が感じていることでもあった。
「しょうがないじゃない。先方の希望は『出来るだけ若手アイドルに出演枠を譲ること』なんだから」
「真美まだ若いよ」
「ミキだって少なくとも律子やあずさよりは若いの」
げ ん
こ つ
「「ごめんなさい」」
「素直に謝れる子は嫌いじゃないわ」
目が座ったまま笑う律子さんは本当に怖いけど、律子さんに殴られて美希はよかったと思う。後ろのあずささんがもっと怖い笑顔をしてるから……。
「ったく、話を戻すわよ」
765プロにおける若手アイドルとなると、真っ先に候補に挙がるのは勿論『シアター組』のアイドルたちだ。だから律子さん含めプロデューサーさんたちの話し合いを行った結果、そこから
「だからAS組から出演するメンバーは三人ってわけ。納得した?」
「「したけど~……」」
文句を言うつもりはないが不満は多そうな真美と美希。言葉にしていないだけで、正直他のメンバーも不満はありそうだ。
しかし……若手アイドルに機会を上げたい、という良太郎さんの考えもさ、だんだんと分かるようになってきた。
私が自分でステージに立つことは勿論今でも変わらず楽しいのだけれど、それと同じぐらい新しいアイドルがステージに立つところを見るのが楽しいし嬉しいのだ。
新しいアイドルが羽ばたいていく様が、まるでアイドルという世界そのものが広がっているように思えることが嬉しい。そう感じる。きっと、昔の良太郎さんもこんな気持ちで私たちのことを見守ってくれていたのだろう。
……でもそれはそれとして、やっぱり私もステージに立ちたい。
「というわけでじゃんけんよ」
「結局その結論になっちゃうの!?」
律子さん面倒臭くなってるでしょ!?
「プロデューサーさん!」
「本当にすまん……」
プロデューサーさんに助けを求めるが疲れた表情で首を横に振られてしまった。どうやら今回の一件に関していえば、プロデューサーさんも律子さんには強く出ることが出来ないらしい。
「さぁアンタたち! 覚悟を決めなさい! ……合同ライブに、
『おおおぉぉぉ!』
あぁ!? なんかもう取り返しのつかない感じになっちゃってる!? 律子さん以外もみんなヤケクソだ!?
……え、えぇぇい! こうなったら私もヤケだあああぁぁぁ!
『じゃーんけーん!』
――後に雑誌の取材で私、天海春香はこんなコメントを残す。
『今回のライブの人選は、それはもう大変でしたよ。八事務所合同ライブなんていう大舞台、みんな出演したいに決まってますから』
――しかし私は本当のことを口にすることはない。
『だからみんなでとても話し合いました。そうやって、全員が頑張って納得できる答えを探したんです』
――いや、もしかしたら数年後ぐらいには笑い話として話すかもしれない。
『765プロオールスターズとして、精一杯頑張ります!』
――「この人選はじゃんけんで決まりました」……と。
765プロダクションAS組より。
『天海春香』
『星井美希』
『双海真美』
以上三名、参加決定。
「……あの、Pサマ」
「はい、なんでしょうか」
「……今回の集まりって、合同ライブに参加する人たちの顔合わせってことなんだよね」
「はい、そうです」
ボクたち『シンデレラプロジェクト』を統括する総合プロデューサーであるPサマこと武内プロデューサーは、ボクからの疑問を端的に肯定した。
「……り、『LiPPS』は聞いてないんだけどぉ……!?」
『LiPPS』だよリップス! 一年にも満たない僅かな活動期間で女子中高生の圧倒的なカリスマとなって二年前に解散しちゃったあの346プロ伝説のユニットだよ!? あの『城ヶ崎美嘉』と『速水奏』と『宮本フレデリカ』と『塩見周子』のユニットなんだよ!? 顔面偏差値一億のアイドルが揃っちゃってるよ!? もし何かの間違いで
「アンタたちがアレ? ユニボとかいう変わったユニット名の子たち?」
「ひゃ、ひゃい!」
うわあああぁぁぁ!? カリスマギャルに話しかけられたあああぁぁぁ!?
「今回は初めて一緒のライブだね、よろしく」
「よよよよよろししししくおねががががががが」
ダメだ口が回らない頭も回らないでも視界だけがなんかグルグル回ってるうぅぅ!?
っていうかなんでボク!? ぶっちゃけユニボの三人の中では一番の奇抜枠だよ!? 一番話しかけづらいタイプの人間だよ!? なんでボクに話しかけてくるの!? あかりちゃんの方がセンターっぽいし、あきらちゃんの方がしっかりしてるっぽいでしょ!?
「「………………」」
二人とも露骨に目を逸らすなぁぁぁ! ボクに押し付けるなぁぁぁ! こういうときに限って最年長扱いするなぁぁぁ!
「なんか向こうの子は元気だねー」
「その代わり、こっちの子は大人しいわね」
「はいありすちゃん飴上げるー」
「い、いりません! それに、橘です!」
リップスの残りの三人プラス、何故か一人でこの部屋に集まっている橘ありすちゃんのそんなやり取りが聞こえてきたが、正直そっちに意識を割けない。目の前のカリスマが強すぎる…ボクのクソ雑魚メンタルでは耐えきれない……。
「……Pサン、これで全員じゃないんですか?」
「こ、これ以上まだ誰かが来るんですか?」
「はい。……美城専務が直々に連れてこられる方が、二名ほど」
「え、美城専務が!?」
しかしありがたいことに、あきらちゃんとあかりちゃんとPサマの会話内容に美嘉ちゃんが反応してボクから意識が逸れた。……た、助かった……このままだと溶けてメンダコみたいになるところだった……。
「はい。今回の合同ライブ限定でこちらに参加していただける方がお二人いらっしゃるとのことです」
「えー誰だろ……」
「別部署のアイドルかな?」
「分かった! ちひろさんだ!」
「ちひろさん来たらマジでビビるよ!?」
あーだこーだ予想を立てるボクたちだったが……その答え合わせの時間は意外と早くやって来た。
「諸君、集まっているな」
ガチャリとドアが開き、美城常務が
『……え、えええぇぇぇ!!!???』
――後に雑誌の取材でボク、夢見りあむはこんなコメントを残す。
『……ねぇ、取材先間違ってない? 本当にボク? ボクでいいんだね?』
――正直今でも信じられないけど。
『選ばれたからには頑張ろうって思うよ、うん。そりゃあね』
――ボクだって、自分でアイドルをやるって決めたんだから。
『……でもちょっとだけ吐きそう』
――まさかあんなことになるなんて思わないじゃん……。
346プロダクションより。
『夢見りあむ』『辻野あかり』『砂塚あきら』
『城ヶ崎美嘉』『速水奏』『宮本フレデリカ』『塩見周子』
『橘ありす』
『?????』『?????』
以上十名、参加決定。
・「じゃんけんで決めます」
正直一番これが揉めないんじゃないかなって()
・後に雑誌の取材で
『花山VSスペック』のアレって言えば分かる人には分かってもらえると思う。
・AS組参加メンバー
選考理由:安定性
・メンダコ
髪の毛の色一緒だなって思った。
・346プロ参加メンバー
大多数の方が思っているであろう疑問「なんで、ありす?」
・『?????』
もったいぶる枠
今回から参加アイドルを発表していきます。正直人選に半日かかった。