アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ようやく本題へ。


Lesson353 Episode of S.E.M 3

 

 

 

 ランニングは一日置きに行うらしいので、翌々日。今日も参加させてもらおうと河川敷にやってきたのだが、今日は新たな参加者がいた。

 

「876プロ所属の秋月涼です。よろしくお願いします」

 

『秋月涼も来ちゃった!?』

 

 昨日たまたま現場で一緒になった涼にランニングのことを話したところ「僕だって今回のライブで同じ白組なんですから!」となかなか積極的に参加の姿勢を見せてくれたのだ。

 

「わぁ! りょうちんも来たんだ! おはよー!」

 

「おはよう、咲ちゃん。うん、今の僕は半分315プロ所属みたいなものだから、これを期にみんなと仲良くなれたらいいなって思ったんだ」

 

 今回のライブで期間限定のユニットを組む咲ちゃんがトテトテと近づいてきて涼とハイタッチを交わした。うーん、美少女同士のやり取り。

 

 ちなみに今回の315プロ側のメンバーは全員揃っていた前回と打って変わり、ドラスタの三人とハイジョの悪ガキトリオの姿がなかった。

 

「ドラスタのお三方は朝から収録があるため不参加となります」

 

 とプロデューサーさんからの補足が。

 

「それじゃあ四季と隼人と春名の三人は?」

 

「寝坊です」

 

「アイツら……」

 

 旬と共に思わずため息が出てしまった。

 

 何はともあれ、今日も早朝ランニングスタートである。

 

 

 

「こうしてお話するのは初めてだったね、秋月君」

 

「そうですね。一応顔合わせはしていましたけど……よろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしく頼む。秋月君も周藤君と同じくアイドルの先輩として、新参者の我々の指導をお願いしたい」

 

「そんな硲さん、僕なんかが指導出来ることなんて……」

 

「俺よりも貴重な体験している身だから、教わることは多いかもしれんな」

 

「それはそうですけど……そんなことありますかね?」

 

「自分の性別を悟られないように着替える方法?」

 

「それ絶対にいらないですよね!?」

 

 

 

「そういえば秋月さん、あの秋月律子さんの親戚なんですよね」

 

「あ、はい。ご存じでしたか?」

 

「いや、俺らに関していえば、散々みのりさんからレクチャーを受けていたので」

 

「れ、レクチャー?」

 

「うん! ボクたちいーっぱい、みのりから涼のこと聞いてるよー!」

 

「いやいや、そんな大それたことではなくて、涼君の以前のアイドルとしての活躍を少しだけ語らせてもらっただけだから……」

 

「そ、そうなん……ですか?」

 

「みのりさん、そういう場合、普通は『語る』って言葉を使わないんですよ」

 

「……え?」

 

「自覚しましょう、それは『オタクが推しのことを面倒臭く話す』際に使うものなんですよ」

 

「なん……だと……!?」

 

「べ、別に面倒臭いなんて感じなかったから大丈夫ですよ」

 

「みのりが楽しそうだったからボクもハッピーだったよ!」

 

 

 

「お、遅れてすみません!」

 

「寝坊しましたー!」

 

「おっ、来たな悪ガキトリオ」

 

「って、なんか美少女が二人並んでるっす!? ……っと思ったら咲ちゃんと涼ちんっすか!」

 

「美少女って……」

 

「今更だけど、基本的に女性アイドル時代と見た目ほぼ変わってないんだよなお前」

 

「一応僕も髪型を変えようとしたこともあったんですけど、愛ちゃんと絵理ちゃんに止められまして……」

 

「まぁアイドルが簡単に髪型変えたら、普通は事務所に怒られるものだからな」

 

「そーいえばリョーさんっち、兄ちゃんは何処行ったっすか?」

 

「兄さんは今日仕事らしいよ」

 

「良太郎さんと四季君のお兄さん!? 誰!?」

 

 

 

 

 

 

 さてさて、更に二日後。早くも早朝ランニングは三回目を迎えた。

 

 今回のランニングが始まるきっかけとなったSEMの三人もだいぶ運動に慣れてきた……とはイマイチ言い切れない感じである。特に次郎さん。この辺りは元々の体力が関係してくるから仕方がないといえば仕方がないのだけれど。

 

 ところで、今回も新たな参加者が現れた。

 

「123プロ所属『Jupiter』の天ヶ瀬冬馬だ。よろしくな」

 

『天ヶ瀬冬馬も来ちゃった!?』

 

 俺や涼が315プロに混ざってランニングをしているという話をしたら、冬馬は想像以上に前のめりになって参加希望を出してきた。

 

「ま、白組としてステージに立つのは俺も同じだからな! お前らがどれだけ根性あるか、俺が直々に見定めてやるよ!」

 

 などと偉そうに格好付けているが、基本的には俺や涼と同じように『315プロのみんなと交友を深めたい』というのが目的であることは想像に容易かった。こいつ基本的にみんなが楽しそうにしてるところには交ぜて欲しがるタイプの人間だし。

 

「す、周藤良太郎でもかなり驚いたけど、まさかあのジュピターも参加するなんて……」

 

「Amazingだね!」

 

「大変心強いではないか」

 

 既に三回目だ。みんなも慣れてきたことだし、粛々とスタートしよう。

 

 

 

「……良太郎から出席率が良いって聞いてたけど、全然いなくねぇか?」

 

「ハイジョと咲ちゃんは学生だからな。今日はバイトの三人も仕事だし」

 

「は? バイト? アルバイト?」

 

「うーん、字面だけで見ると確かにそう聞こえないこともないな……」

 

「あぁ、『Beit』っていうユニットだっけか? 確かお前の昔馴染みがいるんだったな」

 

「そうそう、みのりさん。当然の如くジュピターのファンでもあるから、いたらきっとかなり気持ち悪い……もとい、大袈裟なリアクションしてくれたと思うよ」

 

「お前今気持ち悪いって言ったよな……どんなリアクションだよ……」

 

「うんと……大体まゆちゃん」

 

「理解した」

 

「理解しちゃったか……それはそれでまゆちゃんに失礼だぞ」

 

「その発言も佐久間に失礼なんじゃねぇか?」

 

 

 

「え、舞田さん、北斗と知り合いなんすか」

 

「Yes! 同じ大学のテニスサークル! 向こうの方が一つ年上だけどFriendlyにさせてもらってるよ!」

 

「そういえば北斗さんもちゃんと大学行ってたんだよな。……それに比べて冬馬ときたら」

 

「うぐっ……い、いーんだよ俺は! それ以上にアイドルとして日々精進してんだよ!」

 

「まぁ最近のお前の成長具合は目を見張るものがあるって士郎さんも褒めてたからな」

 

「士郎さん?」

 

「俺と冬馬の共通の師匠……みたいな人です。剣術の達人で……」

 

「Wow! Japanese sword master!?」

 

「え、ちょっと待ってください、なんでアイドルとしての成長に剣術が関係するんですか……!?」

 

「やだなぁ次郎さん、アイドルと剣術は直接関係しませんよ。確かにナイフを持った暴漢相手だったら三人ぐらいは対処できますけど……」

 

「どういうこと!?」

 

「あ、アイドルというものは、まだまだ我々の知らない奥深さがあるのだな……」

 

「あー……硲さん、でしたよね。絶対に参考にはしない方がいいですよ」

 

 

 

「初めまして! 俺、天道輝って言います! お会い出来て光栄です、冬馬さん!」

 

「あぁ、初めまして。えっと、元弁護士でしたっけ」

 

「はい! でも今はアイドルの一番星目指して頑張ってます!」

 

「……へぇ、一番星。ならその道のり、俺が邪魔することになりますが……文句ないっすね?」

 

「っ! 勿論! 真っすぐ突き進むつもりではありますが、冬馬さんが立ち塞がるなら俺は真っ向から受けて立ちます!」

 

「はっ、なかなか威勢が……!」

 

冬馬(とうま)さんがいても遠回(とうまわ)りはしない! ってね!」

 

「………………」

 

「ウチのバカが……! 本当にすまない……!」

 

「頑張れ兄さん」

 

「だから兄と呼ぶな!」

 

 

 

 

 

 

 そんな感じでこちらとしては割と日々楽しくランニングに参加させてもらったわけである。途中、雨の日にもランニングを決行した結果、次郎さんだけが風邪を引くというアクシデントがあったものの……。

 

 

 

『頑張ってるstudentたちに、歌でYellを伝えるよ!』

 

『色々あるけど、今だけでも楽しんでいってくれ!』

 

『君たちの熱き想い、熱き魂を鼓舞するために! 全身全霊を捧げ務めることを……!』

 

 

 

 ――宣誓する! 『S.E,M』!

 

 

 

 SEMの三人の……三人の()()の熱い想いは、きっと生徒たちに届いたことだろう。

 

 

 

 

 

 

 それでは、ライブの成功を祝って~。

 

 

 

「「「「乾杯!」」」」

 

 

 

 四人で生ビールのジョッキを頭上に掲げて乾杯すると、俺と次郎さんと類さんはその中身を一気に煽った。

 

「っ、ぷは~! いやぁ、ライブまでずっとお酒控えてたから、沁みる~!」

 

「これで心置きなくenjoyできるね!」

 

「あら、制限してたんですね」

 

「アイドルは身体が資本ということで、糖質を含むビールや菓子類を禁止させてもらっていた。本来は継続すべきことなのだが……ライブ終了直後なので大目に見よう」

 

「「ありがと~!」」

 

 というわけで、俺とSEMの三人で『受験生応援ライブ』の打ち上げをすべく居酒屋にやって来た。

 

「っていうかいいの? トップアイドルがこんなところで生ビールなんてかっくらってて」

 

「逆にこんなところだからこそトップアイドルがいるなんて思わないんですよ。あ、今日は俺が全部出すんで、じゃんじゃん飲んでくださいね」

 

「「ごちで~す!」」

 

「……そうだな、ここはアイドルの後輩としてその好意に甘えることにしよう。ありがとう、周藤君」

 

「いえいえ」

 

 三人から頭を下げられるが、これぐらいはアイドルの先輩としてはいつものことなので気にしない。

 

「では代わりにと言ってはなんだが――」

 

 

 

 ――我々で()()()()()()に乗らせてもらおう。

 

 

 

「………………」

 

 道夫さんの言葉に、枝豆に伸ばした手が止まる。

 

「……なんのことですか、って惚けてもダメですかね?」

 

「ま、おじさんたち、これでも先生やってたんでね」

 

「ミスターりょーが何かconsultationしたがってたの、なんとなく分かってたよ」

 

 道夫さんだけではなく、次郎さんや類さんにも気付かれていたらしい。

 

 

 

「……それじゃあ、ちょっとだけ聞いてもらえますか?」

 

 

 

 俺が意図せずとはいえ、人生を捻じ曲げてしまった女性の話を……。

 

 

 




・涼参戦
良太郎が参加する以上、やっぱり他事務所男性アイドルも走らないと。

・冬馬参戦
良太郎が参加する以下略

・向こうの方が一つ年上だけど
珍しくsideMのアイドル側で起きている年齢変更による影響。
原作では勿論北斗の方が年下。

・周藤君の相談に
実はこっちが本題。



 珍しくあっさりとライブまでの道のりが終わりまして、残り一話ですがここからが本題。あの美琴編からSEM編に繋がったのはこういう理由がありました。

 普段は相談に乗る側の良太郎なので、今回は先生三人に相談に乗ってもらいます。



『どうでもいい小話』

 あまりにも興が乗りすぎて推しの子の短編一話だけ書きました。かなり短いですがお暇なときにでもどうぞ……。

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