アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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シャニマスアイドル追加ヨシッ!


Lesson341 私たち、ドルヲタアイドルです! 3

 

 

 

「というわけでりあむちゃんに俺が『周藤良太郎』だと自然に気付いてもらう方向で進めていきたいわけなんだけど」

 

「………………」

 

「……亜利沙ちゃん? どうしたの?」

 

「ふぁっ!? い、いいえ!? なんでもありませんよ!?」

 

「?」

 

「ふふっ」

 

 集会当日。示し合わせたわけではないけど俺の正体を知っている二人であるみのりさんと亜利沙ちゃんと先に合流することが出来たのだが、なにやら亜利沙ちゃんが何やら落ち着かない様子。みのりさんはそんな彼女の様子を見てクスクスと笑っているが、何か理由を知っているのだろうか。

 

「そ、そんなことより、ついにりあむちゃんに教えてあげるんですか?」

 

「教えてあげるというか、気付いてもらおうと思って。そうしないとりあむちゃんがもんじゃを……」

 

「りあむちゃんがもんじゃを……?」

 

 要するに誰かから教えてもらっては精神的ダメージがデカすぎるので、自力で気付いてもらうという話である。

 

「そこで今回の集会で二人には俺が『周藤良太郎』だっていう前提で接してほしいんだ」

 

「は、はぁ……」

 

「そうは言っても俺たちもリョー君の正体を知ったのはつい最近だったから、そういうのよく分からないんだけどね」

 

 みのりさんから「ね?」と話を振られた亜利沙ちゃんも「そ、そうですね」と同意してくれるが、何故か不安そうな様子である。

 

 とはいえ今回の場合は寧ろポカして俺のことを口走ってくれた方が話が早いので、これはこれで問題ないだろう。

 

「リョーさんの意図は分かりました。でもその場合、一つだけ懸念すべきことがあるんですけど」

 

「分かってる。……結華ちゃんだよね?」

 

 コクコクと頷く亜利沙ちゃん。それは俺も同じことを考えていた。

 

 今回の集会に参加するもう一人の少女も俺の正体を知らない。そしてりあむちゃんの俺の正体を察してもらおうとした場合、彼女だけではなく結華ちゃんにも俺の正体を知られてしまう可能性が存在するのだ。

 

「俺もどうしようかなって考えたんだけど。……結華ちゃんにだったら知られてもいいんじゃないかなって思ってる」

 

「えっ」

 

「いいのかい?」

 

 元々は俺だけがアイドルだったために身バレしないように気を付けていたわけだが。亜利沙ちゃんとりあむちゃんとみのりさんがアイドルになり、なおかつ三人はそのことを隠すことなくしっかりと他のメンバーにも伝えている。

 

「ならいつまでも俺だけ隠しておくわけにはいかないでしょ。亜利沙ちゃんとみのりさんにだって正体を教えたんだから……良き友人として、二人にも知ってもらいたいから」

 

「リョー君……」

 

「ありさの場合、リョーさんの正体を知ったのは完璧に不可抗力でしたが……分かりました! リョーさんがそう仰るのであれば、不肖ながらお手伝いさせていただきます!」

 

「あぁ、俺も手伝うよ」

 

「ありがとう、二人とも」

 

 さてこうして二人の協力を取り付けることが出来た俺は、今回の集会の会場となるカラオケ(ちょっとお高い良いところ)へと向かうのであった。

 

 覚悟しろよ二人とも! 俺の正体に気付く準備をするといいさー!

 

 

 

 

 

 

 私、三峰(みつみね)結華(ゆいか)には一つ気になっていることがある。

 

 

 

「もしかしてリョーさんって『周藤良太郎』なんじゃない?」

 

「あっはっはっ! まっさかー!」

 

 

 

 それは『昔からのアイドルオタク仲間の男性がトップアイドルなのではないか』という傍から聞けば妄言のようなことで、実際それを話したら同じくアイドルオタク仲間であるりあむんに笑われてしまった。

 

「結華ちゃんってば、一体どうすればそんな考えになるのさー」

 

「いや、この前リョーさんがメッセージアプリにあげた写真がさ……」

 

 それはリョーさんが同じくアイドルオタク仲間で最近本当にアイドルになってしまった渡辺みのりさんと一緒に撮った写真。みのりさんのユニットメンバーであるピエール君や恭二君も一緒に映っており、それを見た瞬間は「羨ましい!」と強く思ってしまった。

 

 しかしその写真をよくよく見てみると、いつもリョーさんがかけている眼鏡が少しだけズレていて彼の目が直接見えていた。そしてそんなリョーさんの姿を見た瞬間、今まで一度も思い浮かぶことが無かったこんな考えが、ふと頭を過ったのだ。

 

「『アレ? リョーさんって良太郎君に似てるんじゃない?』って」

 

「アッハハハッ! それは流石にあり得ないって!」

 

「えー? りあむんもよく見てよ! ほらコレ!」

 

 頭ごなしに否定されたことで少しだけムッとしてしまい、再びスマホにリョーさんの写真を表示してりあむんの鼻先に突き付ける。

 

「これ! この眼! よくよく見るとブラウンが混ざってる黒目! 良太郎君のそれにそっくりじゃない!?」

 

「え~? こんな目ぇした日本人なんていくらでもいるって~」

 

「あとリョーさんっておっぱい星人だし、良太郎君も同じことを公言してるし!」

 

「男の人なんてそんなもんでしょ~。確かに周藤良太郎さんもこの前のリモート会議のときに765プロの豊川風花ちゃんのすっごい衣装に興味深々だったけどさ~」

 

 えっ、ちょっと待って、そっちはそっちで私も興味あるから詳しく! ……じゃなくて。

 

「それよりも結華ちゃん! ぼくに何か言うことないの!?」

 

「え? りあむんに?」

 

「そう! ぼくに!」

 

 フンスと胸を張るりあむんに首を傾げる。腰に手を当てたことで髪色以上に自己主張の激しいりあむんの胸部が突き出されて思わず心で泣いてしまいそうになるが、果たして彼女は私に何を求めているのだろうか……。

 

「……あ、分かった!」

 

「おっ!」

 

 

 

「合同ライブの情報を口走った件、相変わらず見事な炎上芸だったよ!」

 

「そうじゃなあああぁぁぁい!?」

 

 

 

 あれ? 違った?

 

 ネットラジオで『実はぼく、周藤良太郎君と一緒にライブすることになって~』とか言い出した途端に突然スタッフによる強制終了。一応123プロから発表があった直後だったから時系列的にはセーフだったことが判明したものの、あのとき一緒に出演していたあきらちゃんやあかりちゃんの青褪めた表情や一瞬聞こえたスタッフのガチ焦り声は、それはそれは印象的だった。

 

「いやホント凄いよねりあむん。アイドルになっておめでとうって言おうとしていた気持ちがアレで全部吹っ飛んでいったもん」

 

「それぇ! 素直にそれを口にしてぇ! ぎぶみーほめことば!」

 

 うんうん、アイドルとしてステージに立ってるりあむんは素直にカッコいいと思うけど、三峰の知ってるりあむんはこうじゃなくちゃ。

 

 そんなやり取りをしつつ、私たちは今回の集会の会場となるカラオケ(ちょっとお高い良いところ)へと辿り着いた。

 

「あっ、結華ちゃんたち来ましたよ!」

 

「やあ、こんにちは」

 

「やっほー」

 

「ありりーん! みのりさーん! リョーさーん!」

 

 どうやら先に到着していたらしく、残りの三人が店舗の前からこちらに向かって手を振っていた。

 

 しっかりと変装はしているものの、そこにいるのは間違いなく765プロの『松田亜利沙』と、315プロの『渡辺みのり』で……そんな二人が昔からの知り合いだというのだから、なんというか本当に実感が湧かなかった。

 

「……結華ちゃん……ぼくにもその感想を……」

 

 りあむんはホラ、りあむんだから。

 

 そして……。

 

「やぁ結華ちゃん、久しぶりだね」

 

「はい、お久しぶりです!」

 

 私が『周藤良太郎』疑惑を抱いている男性、リョーさん。

 

 改めて思い返してみると、私はリョーさんに関して知っていることは意外と少ない。年齢はこの春で二十二になったと聞いているが、本名は知らない。大学に通っているとも聞くし働いているとも聞く。結婚はしていないらしいが最近恋人が出来たとも聞く。知識量ではありさんやみのりさんには及ばないものの、所謂業界事情というものに精通している不思議なアイドルオタク。それぐらい。

 

 いつも無表情だけど感情の起伏はとても分かりやすく、しかし本質は落ち着いた大人の男性。臆面もなくおっぱい星人であることを公言しており、りあむんの胸も度々ガン見しているが、一番の推しアイドルは高垣楓さんらしい。

 

 ……今少しだけ思い返してみた情報だけで見ても、何個か『周藤良太郎』とも合致するところがチラホラ。

 

(ねぇりあむん、やっぱりリョーさんって『周藤良太郎』なんじゃ……)

 

(もー結華ちゃんってば諦めないなー。そんなわけないってー)

 

 

 

「それにしてもこの五人で集まるのも本当に久しぶりですね、みのりさん」

 

「そうだね、()()()()()()君」

 

 

 

 っ!?

 

(ほら今、みのりさんがリョーさんのことを『リョウタロウ君』って呼んだよ!?)

 

(結華ちゃん落ち着いて考えて欲しいんだけど、この日本にリョウタロウさん何人いると思ってんの?)

 

 

 

「そ、そういえばリョーさんのお名前、リョウタロウって仰るんですよねー? ずっとリョーさんってお呼びしてたので、少しだけ違和感がありますねー」

 

「実はそうなんだよ亜利沙ちゃん。自分でも思わず忘れそうになるぐらい」

 

 

 

(亜利沙ちゃんとみのりさんはもう知ってた……? もしかしてアイドルになったから新ためて『周藤良太郎』としての正体を明かした……?)

 

(それだったらぼくが知らないのはおかしいでしょ)

 

(え? なんで?)

 

(結華ちゃん!?)

 

 

 

(みのりさんはいいとして、亜利沙ちゃんはちょっと棒過ぎない?)

 

(す、すみません……お芝居はまだちょっと……)

 

 りあむちゃんと結華ちゃんが何やらコソコソと密談しているので、こちらも今の内に密談開始。まずはジャブとして二人には俺を名前で呼んでもらったんだけど……。

 

(流石に名前だけじゃ気付かないよね)

 

(まぁ流石にね)

 

 変装状態で下の名前を言ってもバレないことはニコちゃんで経験済みだ。

 

 だから本番はここから。カラオケで少しずつヒントを出して、二人には俺の正体に気付いてもらう! 覚悟の準備をしておいてください。

 

 

 

「絶対にそうだと思うんだけどなぁ……」

 

「いいよ! そんなに言うならぼくが逆に証明してあげるから!」

 

 

 




・三峰結華
『アイドルマスターシャイニーカラーズ』のキャラクター。
未来の283プロにおけるアイドルヲタク枠な十八歳。原作では十九歳。
未来の283プロにおけるツッコミ役、ほぼ内定!!!

・「もしかしてリョーさんって『周藤良太郎』なんじゃない?」
早くもリーチ。

・「あっはっはっ! まっさかー!」
なお足を引っ張られる模様。

・りあむん
・ありりん
三峰、他事務所のアイドルを何て呼ぶんだろう問題。
……もしかしてポプマスで呼んでたりしたのかな?

・心で泣いてしまいそう
おむねのおっきなこがたんのとうじょうはまださき!



 今まで名前だけの登場だった三峰結華がついに本格登場です。これでアイドルヲタク仲間五人が勢揃い。(原作には勿論いない良太郎を除いて)プロデューサーならば一度は夢見た組み合わせのはず。

 果たして次回、結華は良太郎の正体に気付けるのか?

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