アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ついに明かされるリョーさんの正体……!


Lesson326 サイコーなアイドルたち 4

 

 

 

「こうして直接会うのは久しぶりでゲスなぁ」

 

「語尾語尾」

 

「そろそろ面倒臭くなったきたでヤンス」

 

 自分でキャラ付けしておいてそりゃねえってリョーさん。

 

 ともあれ、みのりさんはリョーさんとプライベートでの知り合いだったらしい。

 

「なんとなく芸能界での仕事をしてるっていうのは知っていたけど、まさか本当に業界の人間だとは思わなかったよ」

 

「立場上色々と言えないことが多かったでヤンス。ちなみに先にアイドルになってた亜利沙ちゃんやりあむちゃんも、先日会う機会があったから知っているでヤンス」

 

「……結華ちゃんは?」

 

「………………」

 

 みのりさんからの問いかけに、リョーさんはそっと目を逸らした。

 

「事情があるとはいえ、それはそれで可哀そうなんじゃないかな……?」

 

「アッシもそう思うでヤンスから、近々久しぶりに『集会』を開くでヤンスかねぇ」

 

 そんな知り合い同士の個人的なやり取りを終え、みのりさんはリョーさんへ自分のユニットメンバーを紹介し始めた。

 

「リョー君のことだから下調べはしてるだろうけど、俺の方から改めて紹介させてもらうよ。この事務所で組ませてもらっているユニット『Beit(バイト)』のメンバー」

 

「やふー! キミがリョー!? みのりから話、聞いてるよー! ボク、ピエール! よろしくー!」

 

 異国の王族という異色な経歴を持つ少年がリョーさんと握手をする。

 

「よろしくでヤンス、ピエール」

 

「ヤンス? 面白い言葉だね! ボクも使う! でヤンス!」

 

「リョー君、ピエールの教育に悪いのでちょっと……」

 

「教育的指導で草。……いやもうちょっとで終わる予定なのでご勘弁をでヤンス」

 

 リョーさんのそのよく分からないこだわりは一体なんなんだ……?

 

「えっと……鷹城(たかじょう)恭二(きょうじ)です。初めまして」

 

「初めましてでヤンス……ん?」

 

 二人目のユニットメンバーと握手をするリョーさんだったが、恭二の顔を見るなりなにやら首を傾げた。

 

「……綺麗な目でヤンスね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

(青と緑のオッドアイ……泣き黒子……なにやら既視感が……)

 

 唐突に恭二の目を褒めたかと思うと、再び首を傾げるリョーさん。一体何なのだろうか。

 

「二人は俺が以前アルバイトをしていた商店街で知り合った友人でもあるんだ。前にちらっと話したことがあったかな?」

 

「もしかして三人まとめてスカウトされた感じでヤンスか?」

 

「そうだよー! ボクとみのりと恭二、一緒にアイドルになったんだ!」

 

 ウチのプロデューサーはアイドルをユニット単位で見つけてくることが多い。ドラスタ(おれたち)や咲は例外だけど。

 

「これでアイドルは全員紹介し終わったかな?」

 

「所属アイドル十五人中十五人でヤンスね」

 

 

「流石にそろそろ社長も戻ってくるだろうし、それじゃあ――」

 

 

 

「諸君! ここに集まっていたか!」

 

 

 

「――噂をすれば」

 

「相変わらず声の圧が強い社長さんでヤンスね」

 

 ドバーンッ! と勢いよく会議室に入って来たのは、我が315プロダクションの齋藤社長である。後ろには先ほど別れたばかりのプロデューサーも一緒だ。

 

「いやぁ遅れてすまなかったな! 次回のイベントについて各事務所の社長たちとの打ち合わせを調整していたのだ!」

 

『次回のイベント!?』

 

 社長の言葉に、その場にいたリョーさん以外の全員が反応した。

 

「何かイベントが決まったんですか!?」

 

「しかも各事務所のってことは……!」

 

「あぁ! 聞いて驚くがいい! なんとあの123プロと1054プロが主催する『八事務所合同ライブ』に、我々315プロも参加させてもらうことになったのだ!」

 

『え、えええぇぇぇ!?』

 

 社長からもたらされた突然の爆弾情報に、全員の驚愕の絶叫が会議室に響き渡る。

 

 123プロと1054プロ。それはアイドルとして活動している人間が知らないわけがない事務所で、日本で一番有名な事務所と二番目に有名な事務所だ。何せあの『周藤良太郎』と『魔王エンジェル』がそれぞれ所属しているのだから、アイドルになる前の俺ですら知っているぐらいだ。

 

 そんな二つの事務所が主催のライブに参加出来るなんて、突然やって来たあまりにも大きすぎる仕事に驚かない奴なんているわけがなかった。

 

「ほ、本当ですか社長!」

 

「本当だとも! というか、まだ彼から聞いていなかったのだな!」

 

「そういうのは社長である齋藤さんの口から直接お話されるべきだと思って黙っていたでヤンス」

 

「はっはっは! 随分と愉快な喋り方だな! もしかしてそれも()()の一環かな!?」

 

 リョーさんの喋り方はともかく……へ、変装?

 

「りょ、リョーさん、アンタは一体……!?」

 

「リョー君……!?」

 

「……黙っていたことは謝りますよ。一応これでも気軽に話せない理由がありますから」

 

 変な語尾を外したリョーさんのその言葉は、これまで俺たちと軽口を叩いていた人物から発せられたものとは到底思えないような『重さ』が感じられた。

 

 突然雰囲気が変わったリョーさんに全員が戸惑う中、リョーさんは何故かずっと被ったままだった帽子を脱ぎながら社長の隣に立つ。

 

「まずはちゃんとした自己紹介をしてこなかったことに対する謝罪を。『俺』という存在を意識しない自然な皆さんの様子を見たかったとはいえ、騙すようなことをしてすみませんでした」

 

「それで? 直接君の目で見たウチのアイドルたちはどうだったかな?」

 

「申し分ないです。みんなとならばきっと、最高のステージを作り上げることが出来ると確信しました。……まぁ、ステージ上でのパフォーマンスのレベルはまだ見れていませんが」

 

 社長の問いかけに答えながら、リョーさんは眼鏡に手をかけて……。

 

「……えっ」

 

「なっ!?」

 

「嘘……」

 

 その眼鏡の下から現れたリョーさんの素顔に全員が絶句した。

 

 まさか。そんな。なんで。ありえない。どうして。

 

 そこに立っていたはずの『仕事人リョーさん』が消え、代わりに現れた()()()()の存在に誰もが信じられずに言葉を失い、ただ戸惑う。

 

 

 

「改めて初めまして。123プロ所属アイドルの『周藤良太郎』だ」

 

 

 

 絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 なんか俺すっげぇ大物アイドルしてる!

 

 いや普通に大物アイドルというか世界的なトップアイドルなんだけど、ここまでしっかりと驚いてもらえるのは久しぶりなんだよ。

 

「す、周藤良太郎……!?」

 

「こ、この人が……!?」

 

「ほ、本物……!?」

 

「うわやべーっす周藤良太郎っす本物っすハイパーメガマックスやべーっす!」

 

「あらら……」

 

「うわー! この人が周藤良太郎なんだねー! すごいアイドル!」

 

 ピエールだけはなんというか普通のリアクションだが、それ以外は普通に驚いてくれている。いやぁ懐かしいなぁ初めて765プロに顔を出したときもこんな感じにプチパニック状態で大騒ぎになったもんだよ。これこれ、これが見たかった。

 

「というわけです。黙っててすみませんでした」

 

「……え? あ、いや、その、はい、大丈夫、です、周藤さん」

 

 一応一番最初にお世話になったからという理由で天道さんに声をかけたのだが、返ってきたリアクションはまだ事態を飲みこみきれていない感じだった。

 

「敬語はいいですよ。アイドルの経歴なんかよりも、人生の経歴が長い貴方の方が先輩であることには変わりないんですから」

 

「えっと……そ、それじゃあリョーさんぐらいで勘弁してほしい……かな」

 

 うん、十分十分。

 

「っと、そうだみのりさん」

 

 ここにいる中では一番付き合いの長いみのりさん。アイドル好きの仲間として、昔から亜利沙ちゃんやりあむちゃんや結華ちゃんと共に色々と楽しくやって来たのだが、結果として俺は彼を騙し続けてきた。

 

 つい先日、割と事故のような理由で亜利沙ちゃんにも『リョーさん=周藤良太郎』だということを知られてしまったし、同じようにアイドルになったみのりさんにも教えてあげるいい機会だと思ったのだ。……りあむちゃんもそろそろかなぁ?

 

「すみませんみのりさん、今まで黙ってて」

 

「………………」

 

「でも貴方が俺の友人であることには変わりません。今後はプライベートのアイドルオタク仲間としてだけじゃなくて、仕事仲間としてもよろしくお願いします」

 

「………………」

 

「……みのりさん?」

 

 リアクションがない。というかまるで俺のように表情が動かない。寧ろ瞬きすらしない。

 

 ……王大人(わんたーれん)が、死亡確認! って言ってる場合じゃねぇ!

 

「桜庭せんせぇ! 急患でぇす! みのりさんが息してませぇん!」

 

「なっ!? おい大丈夫か!?」

 

「みのりさん!?」

 

「わわわっ!? みのり、しっかり!」

 

 ひゅー! この展開(ノリ)もなんだかそれっぽいけど今はそれどころじゃねぇ!

 

「みのりさんしっかり! 後で前にみのりさんが欲しがってた周藤良太郎とのツーショット撮ってあげるから!」

 

「リョーさんそれ多分トドメというか死体蹴り!」

 

「はっはっは! 早速周藤君がウチの事務所に馴染めたようでなによりだ!」

 

「社長、今はそれどころではないと思うんですけど……!?」

 

 多分今ほど『しっちゃかめっちゃか』という形容動詞がピッタリな状況もないだろう。

 

 ……けどとりあえず、みのりさんはこちらの世界に帰ってきて!?

 

 

 

 

 

 

「……ん? みんな、良太郎知らないか?」

 

『……えっ』

 

「どうした? みんなしてそんな変な声出して」

 

「……えっと、社長、良太郎が今何処にいるのか知らないんですか……?」

 

「というか聞かされてないんですか……?」

 

「……今日は一日時間が空いているから事務所にいる、としか聞いていないぞ、俺は」

 

『………………』

 

「……事情は察した、うん、そういうことか。……すぅ」

 

 

 

 ――あのバカは何処に行った!?

 

 

 

「さ、315プロらしいですよ!?」

 

「最近大人しくなったかと思ったら……」

 

「うふふっ、やっぱり良太郎さんは良太郎さんですねぇ」

 

 

 




・ピエール
アイドルマスターsideMのキャラクター。
異国からやって来た着ぐるみ系王子様なじゅーごさい。
国名は明かされていないものの、なんと本物の王子様。
かわいい(迫真)

・鷹城恭二
アイドルマスターsideMのキャラクター。
「うなるレジ打ち! 光るメス!」のうなるレジ打ちの方な20歳。
青と緑のオッドアイで、目元には泣き黒子。誰かを髣髴とさせるが、オッドアイは遺伝しないからなぁ……。

・なんか俺すっげぇ大物アイドルしてる!
久しぶりに王道ムーブしてる気がする。

・王大人が死亡確認
類似例:水落ち 崖落ち

・大原部長オチ
これも久しぶり。



 315プロの面々との邂逅編でした。ミリマス編がちょっと引っ張りすぎたので今回はあっさりと。というかそもそもライブで一緒に仕事するっていうのに正体隠したままにするわけにゃいかんので……。

 アニメ版との相違としては、まずはWの二人が加入前ということ。ご安心を、ちゃんと登場していただきます。Wも大好き。

 そして次回は恋仲○○です。

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