アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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活動報告に書いたようにPCが壊れたのですが……。

「土曜日」PC不調。立ち上がらずセーフモードすら起動しない。

「日曜日」修理に持っていくも「データは諦めてください」と言われ、「じゃあいいです」と新型ノートPCを購入&お持ち帰り。

「月曜日」執筆&投稿。

……自分で言うのもあれだが、PCが壊れてから復帰ってこんなに早いものだっけ……?
(とりあえず小説のデータは別保存してあったので無事でした)


Lesson41 HENSHIN! 3

 

 

 

 ある時は、ただの男子高校生……。

 

 またある時は、謎の美少女メイド……。

 

 かくしてその正体は……!

 

 

 

 ――世間を賑わすトップアイドル、周藤良太郎だったのだ!

 

 

 

「とりあえずご注文を繰り返させていただきます」

 

「あ、はい」

 

 

 

 

 

 

 シュークリームが美味しいという話で有名な喫茶店を訪れたら、そこの美人メイドさんが日本のトップアイドル(男)だったというちょっと何を言っているのか分からない状況にともみさん以外の全員が混乱すること約二分。「……あれで男……じゃあ僕って一体……」と暗黒面(ダークサイド)に落ちかけた真を光明面(ライトサイド)に呼び戻すこと約五分。全員の注文したものが再び美人メイド(男)さんに届けられた辺りで全員がようやく回復した。

 

「お待たせしました。シュークリームとオリジナルブレンドになります」

 

 相変わらずの無表情ながらその美貌で女性の声を出されると、その正体を知っていてなお男の人とは思えない。一体どんな声帯をしているのだろうか。

 

「えっと、聞いていいんですかね……?」

 

「ん? あぁ、大丈夫だよ。今はお客さん少ないし、マスターも大丈夫だって言ってるし」

 

 いつもの声に戻り良太郎さんは頷く。カウンターの向こうを見ると、マスターさんが笑顔でこちらに手を振っていた。

 

「というか、その格好で普通に男の人の声を使われると大変な違和感しかないのですが」

 

「というかキモイ」

 

「ともみさんがひどいっす」

 

 じゃあ女の子バージョンでいくよ、と再び蕩けるような甘い声に変わった。後で聞いた話によると良太郎さんのお母さんの声らしい。これが二児(二十六歳と十八歳)を持つ母親の声だと……!?

 

 良太郎さん……ええい、見た目とのギャップが酷いからもうこの格好の場合は良子さんに統一しちゃえ。良子さんの話では最近大きくお金を使うことがあったらしく、その分の埋め合わせをするためにこうしてアルバイトをしているらしい。まさかトップアイドルがこうして喫茶店でアルバイトをしているとは夢にも思わないだろう。

 

 というか、恐らくその最近あった大きくお金を使うこととは感謝祭ライブで私たちに贈ってくれた多数の花輪のことだろう。詳しい金額を詮索するのは野暮だし何より失礼だろうと思って調べることはしなかったのだが、それが膨大な金額になることぐらいは容易に想像することができた。

 

 私たち四人の顔色が変わったことに気付いたのか、良子さんは気にしないでと手を振った。

 

「あれは私が自分で勝手にしたことだから、君たちが気にすることじゃないよ。アルバイトだって楽しく働かせてもらってるわけだし、大変ってわけじゃないから」

 

「……ありがとうございます」

 

 感謝祭ライブが終わった後に765プロの全員でお礼を言いに行ったのだが、改めてこの場で私たち四人は揃って頭を下げた。

 

「アルバイトの理由は分かった。それで? そのメイド服の理由は?」

 

 私たちの話がひと段落したところで、ともみさんが最も聞きたかった重要な疑問点を聞いてくれた。

 

「ここでアルバイトをする上での変装の代わりみたいなものよ。ほら、いくらここの常連さんと顔なじみだからって堂々とアルバイトしてるのもアレでしょ?」

 

「いつもみたいに眼鏡と帽子でいいじゃない」

 

「室内で、しかも接客中に制服でもないのに帽子被ってるのはどうかと思うんだ」

 

「メイド服はどうかと思わなかったの?」

 

「そりゃあ変だとも思ったけど、よく見てよ」

 

 そう言うと良子さんはその場でクルリとターンを決めた。ひらりとロングスカートが膝の辺りまでめくれ上がる。ちらりと見えた足はしっかりとムダ毛の処理がしてあり、本当に性別が分からなくなるほど綺麗な足で、左手でスカートを軽く持ち上げ、右手を頭の後ろに添えるそのポーズも何故か堂に入っていた。

 

「似合ってるでしょ?」

 

「いや、まぁ」

 

 女としての自信にひびが入りそうになるぐらいには。これは真じゃなくても十分に落ち込むレベル。

 

「普通、男の人ってそういう女の人の格好をするのを嫌がると思うんですけど……」

 

 その言葉に、ポーズを取ったまま堂々と良子さんは言い切った。

 

 

 

「似合っているならそれでいいのよ!」

 

 

 

「「「「……えぇー……」」」」

 

 まさかそこを言い切るとは思わなかった。四人が引き気味に声を揃える。

 

 ……ん? 四人?

 

「ですよね!」

 

「ゆ、雪歩!?」

 

 突然、目を輝かせた雪歩がその場で立ち上がった。その目は何故かキラキラを通り越してギラギラと怪しい光を灯していたような気がした。

 

 

 

「似合っていれば『女の子が男の子の服を着ても』何の問題もないですよね!」

 

 

 

「えぇ、そうよ雪歩ちゃん。問題ないの」

 

「良子さん……!」

 

 何故か感激した様子の雪歩と良子さんがガシッと握手を交わしていた。

 

「あぁ、雪歩が男の人の手を握ってる……成長したんだね、雪歩……!」

 

 そして何故か真が感極まっていた。いや、確かにあの雪歩がいくら顔見知りの男性だからといって手を握ることが出来たことに対しては驚きだが。しかしこれは見た目が完全に女性だから可能だっただけなような気がする。

 

 でも、何だろう、雪歩の成長に真が感激してるけど……将来的に真が割を食うことになるような気がするのは気のせいだろうか。……気のせいだろう、真が男の子の格好をしているのなんて割とよくある話だった。

 

「どうぞ」

 

「え?」

 

 良子さんと雪歩のやり取りを微妙な気分で見ていると、別の女性の店員さんが私たちのテーブルにイチゴのショートケーキを人数分置き始めた。

 

「えっと、私たち頼んでないですけど……」

 

「良子のお知り合いの方のようですので、マスターからのサービスです」

 

 にっこりと笑顔を見せる店員さんはこれまたすごい美人だった。亜麻色の髪に碧眼の日本人離れした美人。これでまた良子さんみたいに性別が違うなどと言われたらもう私は女としての自信を喪失すると共に人を信じることが出来なくなるだろう。

 

 ……って、あれ? この人、どこかで見たことあるような……。

 

「……え!? も、ももも、もしかして……!?」

 

 誰だっただろうかと考えていると、突然千早ちゃんが狼狽しながら立ち上がった。

 

「ふぃふぃふぃ、フィアッセ・クリステラさん、ですか……!?」

 

「あら、バレちゃった?」

 

 フィアッセ・クリステラ!? イギリスが誇る世界の歌姫が何でこんなところに!?

 

「あ、あの、わわわ、私、貴方の大ファンで、えっと、その……!」

 

 お、おぉ、あの千早ちゃんが初めて良太郎さんと対面した時の美希みたいになってる。美希にとっての良太郎さんみたいに、歌メインの千早ちゃんはフィアッセさんに強い憧れを持っているのだろうと容易に想像できた。しかしまさか千早ちゃんがこんな風になっちゃうとは。

 

「あら嬉しい。私も貴方のファンだったのよ? 如月千早」

 

「え、えぇ!?」

 

 フィアッセさんの突然の告白に顔を真っ赤にして驚く千早ちゃん。余りにもレア過ぎるその表情を思わず写メしておきたかったが、流石に空気を読んで携帯電話は仕舞っておく。

 

「今はちょっとお仕事をお休みしてるところだけど、いつか機会があったら同じステージで歌えるといいわね」

 

「あ、あ、ありがとうございます!」

 

 差し出されたフィアッセさんの手を両手で包み込むようにして握る千早ちゃんはとても興奮しつつも凄く嬉しそうだった。

 

「………………」

 

 それにしても、と我に返る。

 

 女性店員二人と握手を交わす二人と、感極まっている一人。そんな三人が同席するテーブルで、なんか逆に私だけが浮いているような気がしてならなかった。いくらお客さんが少なくても当然いないわけではないので多くの視線は向けられており、それが暖かく見守るような視線なのが余計に恥ずかしくて……。

 

「えっと、ともみさん……」

 

「頑張って」

 

「まだ何も言ってませんよ!?」

 

 いつの間にか自分のシュークリームを頬張っていたともみさんに、相談する前から見放された。どうやら一切関与するつもりはないらしい。

 

(変装、しておけばよかった……)

 

 顔が若干熱くなるのを感じながら、入店する前に外してしまったマスクをぎゅっと握りしめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 良太郎とフィアッセさんが業務に戻ったところで全員が落ち着き、シュークリームとショートケーキとコーヒーに舌鼓を打つ。

 

「うぅ、疲れた身体にシュークリームとショートケーキの甘さが染み渡るよ……」

 

「どうしたの春香?」

 

「ううん、何でもないよ千早ちゃん……」

 

 天海春香が一人だけ疲れた様子だったが、今後のことを考えると頑張ってもらいたいところだ。

 

「それにしても、変装、変装かぁ……」

 

「真ちゃん?」

 

 カチャカチャとティースプーンでコーヒーをかき混ぜながら菊地真が唸る。

 

「流石に良太郎さんみたいに性別まで偽って、とは言わないけどさ。僕たちも周りの人たちにバレないように気を付けないといけないわけだよね」

 

「うーん……」

 

「いつも普通に通っていたお店とか、普段の姿で行って騒がれでもしたら迷惑かかっちゃうし……」

 

「確かにそうだね……」

 

 ここに入る時もそうだったが、どうやら彼女たちは有名になったことによる弊害の一つである身バレについて悩んでいる様子だった。

 

「………………」

 

 わたしは、麗華やりんみたいに先輩風を吹かせるつもりは一切なかった。彼女たちもアイドルになった以上、時に一緒に頑張り時に競い合う、そんな関係であればいいと考えていた。

 

 

 

 しかしそんな彼女たちを見て。

 

 

 

 ……少しだけ、意地悪がしたくなった。

 

 

 

 

 

 

おまけ『ニアミス』

 

「そういえば、今日は麗華やりんは一緒じゃないんだな」

 

「うん、二人で買い物に行くって言ってた」

 

「ふーん……」

 

 

 

 

 

 

「……りょーくんとニアミスした気がする!?」

「……良太郎さんとニアミスした気がする!?」

 

 

 

「「……ん?」」

 

 

 

 某ショッピングモールにて。

 

 同じアイドルメンバーと共に買い物に来ていたツインテール少女と、兄の恋人と共に買い物に来ていた三つ編み眼鏡少女の叫びが重なったとか重ならなかったとか。

 

 

 




・ちょっと何を言っているのか分からない
度々使用しているが、今更ながら補足するとサンドウィッチマンネタ。
最近ネタ番組本当に減ったなぁ……。

・暗黒面と光明面
帝王○ーグ「お前の父は私だ」
バ○「嘘だぁぁぁ!?」

・雪歩と良子さんがガシッと握手を交わしていた。
生っすかへの布石と共にここにキマシタワーを建てよう(提案)

・千早とフィアッセ
相変わらずちゃんとフィアッセさんになってるかどうかはまぁ別として。
普段クールなちーちゃんはこういう風に尊敬している人に対してはミーハーになるんじゃないかと妄想してみる。

・おまけ『ニアミス』
しかし片やヒロイン級、片や不憫担当。
……全ては髪型が作者のストライクに入るか入らないかが決め手であった。
あとおっぱい。



 PCが新しくなり、気分も一新!

 ……アイチューンズの中身が全部飛んだけど小説が無事ならそれでいいし(涙声)

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