アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ただ作者がカキタカッタダケー

※番外編なので深く考えずに緩く読んでいただけると幸いです。


番外編62 とある転生者がこの世界を考察するお話

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 突然だが、俺は転生者である。前世で不慮の事故により命を落とし、神様によって転生特典を貰ってこの世界に生まれ落ちたテンプレートな転生者である。

 

 ロボットモノの作品が好きだった俺は何も考えずに『ロボットを操る才能』を望んだが、転生した先がSFなんかとは縁の無さそうな世界だったという不幸もあった。しかし完全に死に特典というわけでもなく、ロボットを操縦するタイプのゲームでは完全無敗の絶対王者としてそれなりに活躍出来ているので、これはこれでありだと思っている。

 

 

 

 さて、そんな俺が転生したこの世界は一体なんの世界なのかというと……ぶっちゃけよく分からない。というかかなり不思議な世界だった。

 

 基本は多分『アイドルマスター』シリーズだ。前世よりもアイドルという存在の認知度が高く、テレビを付ければ765プロや346プロのアイドルを見かけない日は存在しない。しかしアニメでは一切登場していない1054プロや、他にも聞いたことがない芸能事務所が多数存在していた。アニメで描写されていなかっただけという可能性もあるので、それだけならば俺はここが『アイドルマスター』シリーズの世界だと確信していただろう。

 

 しかし、それ以外に色々な作品の要素が()()()()()()()()のだ。

 

 

 

「どうしたんだ、ボーっとして」

 

「ん?」

 

 放課後、自分の席で色々と考え事をしていた俺に声をかけてきたのは友人の織斑(おりむら)一夏(いちか)。そう、あの『インフィニット・ストラトス』の主人公である織斑一夏なのだ。

 

 高校に入学してコイツとクラスメイトになったことで「やったISの世界だ!」と喜んだのも束の間、そもそもここはIS学園でなければ藍越学園ですらなく、やっぱりどれだけ調べても篠ノ之(しののの)(たばね)がインフィニット・ストラトスを開発したという歴史は存在しなかった。

 

 いや、正確には『インフィニット・ストラトス』は存在しているのだが……。

 

「なぁ、今日もゲーセン寄っていこうぜ! 今度こそISでお前に勝つ!」

 

「だから俺に勝つのは生まれ変わらない限り無理だって」

 

「言ったな!? その自信、今日こそへし折ってやる!」

 

 この世界のISこと『インフィニット・ストラトス』はコックピットに乗り込んで遊ぶタイプのアーケードゲームだった。織斑はそれに大層ハマっていてかなりやりこんでいるのだが、当然俺の特典範囲内であるゲームで負ける要素は一切なかった。

 

「おい一夏! 今日は私と剣の修行をするはずだ!」

 

「なにをおっしゃいますか! 今日はわたくしとデートをする約束ですわ!」

 

「はぁ!? なによアンタら、一夏はアタシと出かけるの!」

 

「ちょ、ちょっと、僕だって……!」

 

「おい嫁、さっさと行くぞ」

 

「……俺、帰るな」

 

「えっ!? ちょっ、待っ……!?」

 

 色とりどりの髪色の少女たちに詰め寄られている織斑を見捨て、俺は早々に教室を後にした。

 

 

 

 先ほどのISヒロインズもそうだったが、この世界は地毛のカラフルな人が多い。『アイドルマスター』シリーズのアイドルが特に顕著だが、そんなカラフルな髪の毛の色に対して誰も違和感を覚えないのもこの世界の特徴だった。それでいて日本人といえば黒髪という認識はしっかりと存在するのだから、一体どういうことなんだか。

 

 帰り道を一人歩きながら、この世界に関する考察を続けることにする。

 

 先ほども言ったが、基本的にこの世界は『アイドルマスター』シリーズだ。そこに色々な作品が()()()()()()のが、この世界の正体なのではないかと考える。そしてその際、『アイドルマスター』の世界観に合わせて色々と設定が変更されているようだ。

 

 織斑たちも基本的なキャラクター設定はそのままで、その他のロボット作品としての要素が殆ど抜け落ちていた。他にも一つ上の学年の先輩には『俺、ツインテールになります』の観束総二や津辺愛香やトゥアールなどがいるのだが、宇宙からエメリアンは侵略してきていない。

 

 アニメや漫画の創作物の日常パートのみを抽出した世界、所謂『やさしいせかい』という表現があっているのかもしれない。

 

 

 

 そんなことを考えながら、俺は一軒の喫茶店に立ち寄る。そこは高校への進学と同時に発見してかなりテンション高く通い詰めるようになってしまった、前世で好きだった作品に登場する喫茶店――『翠屋』だ。

 

「いらっしゃい」

 

 カウンターの向こうから高町士郎さんに声をかけられ、若干ビビりながら会釈をする。十五年以上生きていても、こうやって割とお気に入りだった人物に声をかけられるというのはどうにも慣れない。

 

 いつものカウンター席に座っていつもと同じブレンドを注文しつつ、この世界についての考察を再開する。

 

 『翠屋』は『とらいあんぐるハート3』もしくは『魔法少女リリカルなのは』シリーズに、それぞれの主人公である高町恭也や高町なのはの実家として登場する喫茶店だ。

 

 前者の作品において高町士郎は既に故人となっているため、その点でいえばこの世界は後者の作品の設定が適用されているようにも見える。しかし、残念ながら少なくとも『魔法少女リリカルなのは』の世界ではないことは確実だ。

 

 その証拠が、店内の片隅のポスター。落ち着いた店の景観を決して崩すことがないように飾られているそのポスターにはフリフリの衣装を身に纏ってポーズを取る高町なのはの姿が映っている。

 

 

 

 なんと、この世界の高町なのはは()()()()なのだ。

 

 

 

 なんでも310プロダクションという芸能事務所で、フェイト・テスタロッサや八神はやてと共にアイドルとして所属しているらしい。その芸能事務所も社長がリンディ・ハラオウンだったり副社長がプレシア・テスタロッサだったり、アリシア・テスタロッサが健在だったり、ここも『やさしいせかい』状態だった。

 

 これも『アイドルマスター』の世界だと確信している理由の一つ。高町なのは以外にもアイドルや芸能人になっているキャラクターが多数存在するのだ。

 

 例えば、この世界の日曜朝に放送している特撮番組『覆面ライダーデク』の主演を務めているのは『僕のヒーローアカデミア』の主人公である緑谷出久。彼はアイドルではないが『UAプロダクション』という事務所に所属している若手スタント俳優になっていた。所属しているメンバーも爆豪勝己や他の雄英のメンバーが揃っているので、ヒロアカ組は大体この事務所に所属しているらしい。

 

 さらに『覆面ライダーデク』の前作である『覆面ライダーガングニール』の主演を務めるのは『戦姫絶唱シンフォギア』の主人公である立花響。彼女も他の奏者と共に『209プロダクション』に所属するアイドル兼スタント女優として活動している。しかも原作では組織の指令だった風鳴弦十郎が社長兼伝説のスタント俳優で、さらに天羽(あもう)(かなで)が生存していてツヴァイウィングが現役で活動しているというおまけつきだ。

 

 『覆面ライダー』シリーズはさらに前作が765プロの双海姉妹が主演の『覆面ライダージェミニ』になったりするのだが、特撮談義は少し横に置いておこう。

 

 他にアイドルに関していえば、海の向こうで『魔法先生ネギま』のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがアイドルになっていたり、世間ではスクールアイドルが流行り始めていたりと、一つ一つ枚挙していてはキリがないほど話題に事欠かない。ちなみにスクールアイドルに関しては『μ’s』どころか『A-RISE』すらいないので、恐らく『ラブライブ』無印本編前の時系列なのではないかと考える。

 

 世間では『第三次アイドルブーム』と呼ばれ、前世以上にアイドルたちが活発に活動するこの世界。きっと『アイドルマスター』だと思われるこの世界で、一つだけ全く分からない存在があった。

 

 

 

 それが――『周藤良太郎』というアイドルだった。

 

 

 

 七年ほど前にデビューして以来、常に日本の頂点に立ち続ける正真正銘の()()()()()()()。今の日本のアイドルブームの火付け役であり、765プロや346プロの人気アイドルですら彼のファンであることを公言して憚らないアイドルすら憧れるアイドル。

 

 しかし、俺は周藤良太郎というキャラクターを知らなかった。

 

 かつての世界で、あんな男性キャラクターを見たことがあっただろうか? アレだけ徹底した鉄面皮キャラならば何かしらの話題に上がってもおかしくない。日本のみならず世界からも注目を浴びて老若男女問わず人気の中心にいる彼が、なんの何かの作品のキャラクターではないとは考えづらかった。

 

 いや、全てのアニメや漫画やゲームを網羅していたわけではないので知らないキャラがいても不思議ではない。特に女性向けコンテンツだったりしたら殆ど分からなくて当然なので、もしかしたらそっち方面のキャラなのかもしれない。

 

 ……いや、()()()()()()という呼び方はあまりよろしくなかったな。

 

 彼らは()()()()()。例え俺の前世に似たようなキャラクターが登場した作品があったとしても……今こうして俺にコーヒーを出してくれた高町士郎さんのように、俺を遊びに誘ってくれた織斑一夏のように、みんな俺と同じようにこの世界に生きている。そこに差なんてなくて、俺がこうやって上から目線で語ること自体も間違っているのかもしれない。

 

 結局何が言いたかったのかと言うと。

 

 

 

(あ~今回の新曲も安定の神だったわ~)

 

 すっかり俺も周藤良太郎のファンだった、というだけの話である。

 

 

 

 俺は転生者である。神様から貰った特典をゲームセンターで無駄遣いしているような少し残念な転生者で、転生直前に期待したファンタジーやSF溢れる世界に生まれ変わることは出来なかったが。

 

 俺はこの世界を楽しんでいる。

 

 

 




・とある転生者
今後登場することはないただのモブ転生者君です。

・ロボットを操る才能
良太郎が選択をミスってたらこうなってたっていうアレ。

・織斑一夏
『インフィニット・ストラトス』の主人公。王道を往く朴念仁系。
最近ようやくIS動かせる理由が明かされたってきいたけど、結局まだ確定じゃないんすね。

・篠ノ之束
ISを作り出した天才科学者。
作者内における良太郎のお母様のイメージモデルでもある。

・色とりどりの髪色の少女たち
面倒くさいの以下略。
まぁ今更ISヒロイン知らない人もいないでしょ()

・緑谷出久
・UAプロダクション
この更新作業日に発売されたジャンプのネタバレを見て情緒不安定になった作者がここにいます(虚無)

・天羽奏
『戦姫絶唱シンフォギア』の主人公。……え?主人公は響?
はっはっは、何をおっしゃる、ホラちゃんと放映前の特集記事でメインキャラとして紹介されてるじゃないですかやだなぁ()



 たまにはヤマなしオチなしなお話を書いてみたかったんです。最近気分が乗らなくて……べ、別にトレーナーとの兼業に忙しいわけじゃないよ?()

 今回、モブ転生者が登場しましたが、あくまで『アイドルの世界に転生したようです。』という世界を振り返るための作者の分身みたいな存在なので、ご心配なく。今後登場しませんし、何かしらの事件を起こしたりすることもありません。

 次回こそアイル編のスタートです。

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