アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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未来ちゃん、アイドルになるってよ。


Lesson237 私、アイドルになりました!

 

 

 

「……ふーん。で、その未来ちゃん、だっけ? 765に?」

 

「本人は凄いノリ気だったから、オーディション受けるのは間違いないと思うよ」

 

「そっかー」

 

「……興味ない感じ?」

 

「アタシは最初からりょーくん以外のアイドルに大して興味ないよー」

 

 それはそれでどうなんだろうと思いつつ、可愛い奴めとりんの体をギューッと抱きしめる。

 

 夕食の席も終わり、俺の部屋にてりんとイチャつきタイム。相変わらずトップアイドルな二人である俺たち故に一緒の時間は貴重なので、こうして僅かな時間を見付けてはスキンシップを重ねていた。

 

「……えへへ、りょーくんが手の届く場所にいる」

 

 俺の足の間で体重をこちらに預けてくるりんが俺の頬に触れてきた。見上げるように逆さまになったりんの緩み切った笑顔に、俺も優しく触れる。

 

 IE最終決戦前夜。ありとあらゆる感情と想いを全てぶちまけあったことで、ようやく俺はりんからの想いを()()()()ことが出来た。我ながら相変わらず他にも色々と欠陥を抱えていそうな気もするが、それでも今はこうして一人の女性を愛することが出来るようになった幸福を噛みしめていたい。

 

「でも765プロのオーディションなんだから、簡単じゃないでしょ。受かるのかな?」

 

 興味がないと言いつつも、その辺りはちゃんと気にしているりんに内心でニヤニヤとしてしまう。

 

「まぁ大丈夫だと思う。765はアイドルとしての技術よりも、アイドルとしての素質を重視するだろうから」

 

 そういうのを見抜くことに関しては、高木さんは本当に異次元のような才能を発揮する。

 

「きっと未来ちゃんも高木さんのお眼鏡にかかる気がするんだ。勘だけどね」

 

「ふーん」

 

 先ほどからずっと俺の頬をスリスリしていたりんが「そのりょーくんの勘も」と口を開く。

 

 

 

 ――()()()()ってやつなの?

 

 

 

「……いや、これは多分違うと思う」

 

 俺自身のものだと、そう信じている。

 

「……安心して、りょーくん」

 

 体を起こしたりんは、クルリと体の向きを変えてこちらへ向いた。

 

「例えりょーくん自身が自分を否定したとしても、アタシは絶対にりょーくんを肯定してあげる。りょーくんは間違ってないって」

 

「……普通、そこは間違ってたら叱ってあげるって言うところじゃないか?」

 

 ラスボスを全肯定する一番近い存在って一番ダメなやつじゃん。主人公に『間違っていたらそれを止めるのがお前の役目だろう!』って怒られるやつじゃん。

 

「りょーくんにはこれぐらいで丁度いーの」

 

 しかしりんはそう言って正面から抱き着いてくる。

 

「だってこうでもしないと、りょーくんまたやけっぱちになりそーなんだもん」

 

「……その節は大変ご迷惑をおかけいたしました」

 

 言い訳するわけじゃないが、あのときは玲音(バケモノ)との最終決戦直前で、今までのアイドル人生で最大のプレッシャーに曝されて色々と頭がおかしくなっていた。今になって思い返してみれば、普段減少しないSAN値が減るという珍しい状況で盛大に混乱してたんだよな……。

 

 若干の気恥ずかしさと気まずさを勝手に感じていると、りんは「迷惑になんて思ってないよ」と俺の頭をキュッと自分の胸に抱いた。俺の顔面がフニフニと柔らかいものの間に挟まり、後頭部をポンポンと軽く叩かれる。

 

「りょーくんのカッコ悪いところ沢山見れて、アタシは嬉しかった」

 

「カッコ悪かったことは否定してくれないのね……」

 

「カッコ悪いところもカッコよかったよー」

 

 よーしよしよしと、まるで犬猫のような勢いで頭を撫でられる。まぁこれはこれで……。

 

「……ねぇ、りょーくん」

 

 頭の上から聞こえてくるりんの声に、若干の湿っぽさを感じた。

 

「その……そろそろ」

 

「……そうだな、そろそろだな」

 

 りんの肩に手を置いて天国から顔を離すと、眼前には潤んだ瞳のりんの顔が。

 

「……りょーくん」

 

「りん……」

 

 近付いてきたりんの額に、コツンと自分の額を合わせる。

 

 

 

「帰る時間だぞ」

 

「やだあああぁぁぁ! 帰らないいいぃぃぃ!」

 

 

 

 ギューッと力強く俺の体にしがみ付きながらりんはイヤイヤと首を横に振るが、これも既に何度も繰り返したやり取りである。しっかりとこの部屋の空気がギャグ時空に切り替わったことを確認してから、りんの体を「そーい!」と優しくベッドの上に放り投げた。

 

「ほら、送ってくから早く帰り仕度しなさい」

 

 立ち上がり、財布とスマホをポケットに押し込みながら車のカギを指にひっかけてクルクルと回す。

 

「……ふ、ふっふっふ、残念だったね! こんなこともあろうかと! さっきの晩御飯のとき、りょーくんのコップにちょっとだけお酒を混ぜておいたんだ! これでりょーくんは運転出来ないよ!」

 

 何故りんは自分の恋人に対して最低なナンパ野郎みたいなことをしているのだろうか。

 

「それ、早苗ねーちゃんが気付いて取り替えてくれたぞ」

 

「そんな!? くぅっ……こ、これが交通課……!?」

 

「多分それは関係ないと思う」

 

 もしそれが成功していたとしても運転する人が代わるかタクシーになるだけである。

 

「はーい強制帰宅ー」

 

「うわーん! いい雰囲気だったのに、このままギャグ時空で片付けられるなんて不本意だよおおおぉぉぉ!」

 

 なおもグズるりん。ったく、しょうがないなぁ。

 

「りん」

 

「え」

 

 チュッと軽くりんの頬にキスをする。

 

「ほら、今日はこれで()()()()我慢しようぜ」

 

「……い、いひひっ、もう、しょうがないなー」

 

 不満顔から一転して蕩けたニヤケ顔になるりん。俺の嫁さんはチョロいなぁ。

 

 腕にすり寄ってくるりんを伴いながら、ドアを潜り部屋の電気をパチンと落とした。

 

 

 

 

 

 

リョーさん

 

既読

18:32

というわけで!

私、アイドルになりました!

 

おぉ、おめでとー!

合格通知届いたんだね?

 

19:55

 

既読

19:59

はい!

 

既読

20:00

学校から帰ったら家のポストに入ってました!

 

やっぱり俺の目に狂いはなかったようだね

俺も嬉しいよ

 

20:08

 

既読

20:15

えへへ!ありがとうございます!

明日から早速事務所に行くんです!

 

あれからもう一ヶ月かぁ

どんなアイドルになりたいか、何か見つかった?

 

20:30

 

既読

20:33

はい!

全然見つかりませんでした!

 

うん、元気のよいお返事だね()20:40

 

既読

20:55

でもとりあえずステージに立って歌いたいです!

静香ちゃんと一緒に!

 

……なるほど

そういう気持ちは大切だよ

 

23:02

 

あの天海春香ちゃんも

『仲間と一緒にステージに立ちたい』っていう

夢を叶えるために頑張ったらしいからね

 

 

23:03

 

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9:11

春香ちゃんも!?

なんかすごい!

 

既読

9:12

リョーさんは色んなことを知ってるんですね!

 

はっはっは!

アイドルのことなら任せたまえ!

 

12:23

 

既読

12:50

それじゃあ、他に765プロの

マル秘情報とか何かないですか?

 

怪しい薬を飲まされて体が子供に

なっちゃった女性アイドルがいるらしいよ

 

13:52

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 自転車を停め、リョーさんから送られてきたメッセージの内容を確認してビックリする。

 

 アイドルについての豆知識やらなんやら色々と知っているリョーさんだからもしかして……と思って聞いてみたのだが、まさか本当にそんなマル秘情報が飛び出てくるとは思わなかった。

 

「ここに、そんな訳アリのアイドルがいるなんて……!」

 

 自転車を停め、窓ガラスに765とテープが張られた建物を見上げて思わずゴクリと生唾を飲む。い、一体どんな事情があってそんなことになったんだろう……?

 

 ちょっとだけ別の意味でドキドキしつつ、私は事務所への階段を昇り始めた。

 

 765プロについては軽くリョーさんから教えてもらったけど、私が知っていたのは天海春香ちゃんと如月千早ちゃんと星井美希ちゃんぐらいで、他の人たちは名前しか知らなかった。この建物もなんだか少し古いし、それほど大きな事務所じゃないのかな?

 

 ……でもそっかー! 天海春香ちゃんと知り合いになれる可能性もあるのかー! そう考えると、俄然ワクワクしてきた!

 

「こんにちわー!」

 

 第一印象は勿論元気よく! 挨拶をしながら『芸能プロダクション 765プロダクション』と表記された扉を叩く。

 

「はーい」

 

 すると中から人が――。

 

「……あれ」

 

 ――出てきたと思ったら、小さな女の子だった。

 

「……えっと、どちらさまでしょうか」

 

 キョトンとした様子がとても可愛らしい女の子で、精一杯背伸びしたような言葉遣いに思わずホッコリとしてしまった。

 

「えっとね、お姉ちゃんこの事務所に用事があるんだ。だから誰か大人の人を呼んできてくれないかな?」

 

 腰を屈めて女の子と目線を合わせ、ポンッと頭を撫でた。

 

 すると女の子は照れてしまったのか、顔をカァッと赤く染めて――。

 

 

 

「あ、頭を撫でるなー! 私は二十四歳なのー!」

 

 

 

 ――照れ隠しにそんなことを叫んだ。

 

「うんうん、お姉さんなんだねー。パパかママはいるかな?」

 

「信じてないわね!?」

 

 両手を挙げてウガーッと怒りを全身で表現する女の子。怒ってる姿も可愛いなぁ。

 

 ……ん? 待てよ? もしかして、この子がリョーさんが言っていた『子どもにされてしまった女性アイドル』なのでは……!?

 

「………………」

 

「な、何よ、今度はジッと見て……」

 

「あら、このみさん、どうしたんですか?」

 

 女の子の様子をじっくりと確認していると、彼女の後ろから女性が現れた。

 

 今度こそ大人の女性で、口元の黒子がセクシーな緑髪のお姉さん。この人もアイドルなのかなぁ?

 

「……あら? もしかして春日未来ちゃん?」

 

「あ、はい! そうです!」

 

「私は事務員の音無小鳥です。よろしくね」

 

「よろしくお願いします!」

 

 わ、こんなに綺麗な人なのに事務員なんだ!? それはビックリ!

 

 右手で握手をしつつ、音無さんの左手の薬指にキラリと光るシルバーリングがはまっているのに気が付いた。おぉ、美人人妻事務員さん……!

 

「それにしても、随分と早く来たのね?」

 

「え? 十四時ピッタリですよね?」

 

 スマホを出して確認する。うん、間違いなく十四時。我ながら時間調節ピッタリ!

 

 

 

「えぇ、明日のね?」

 

「……え?」

 

 

 




・りんとのイチャラブ
あぁ、ようやくメインヒロインとのイチャつきが書けたんやなって……。
※なお頻回するわけではない模様(メインヒロインとは)

・IE最終決戦前夜
SO2の告白イベントみたいなことがあったんやで。
でもそんなに甘酸っぱいものではなかったんやで。
何せ大の大人が「○ぬ」だの「○す」だの叫びあってたんやからな。

・――転生特典ってやつなの?
Lesson230で語った、同じ墓場まで持っていくと誓った秘密。

・某メッセージアプリ画面
ちょっと試してみたくて他の方が作った奴をアレンジして使ってみたのだが、それでも調節するのがかなり面倒くさかった。
絶対に頻繁には使わない(確固たる意志)

・怪しい薬を飲まされて体が子供に
俺の名前は(ry

・未来の765プロ知識
原作よりもトップアイドルぢからが強まっているため、いくらアイドル事情に無頓着な未来でも名前を聞いたことぐらいはある程度に。それでも色々と勘違いして覚えているところも。

・音無さんの左手の薬指にキラリと光るシルバーリング
結婚しても旧姓で仕事してる女性っていますよね(意味深)



 まるで恋仲○○のような冒頭からの、未来劇場訪問編の第一話でした。

 ちなみにですが、通常の恋仲○○はこれからも書いていきますのでその辺りはご安心を。別腹別腹(ゲス)



『どうでもよくない小話』

 アイドルマスター15周年おめでとおおおぉぉぉ!!!

 先日の生放送楽しかったですね! 仕事とか色々あって全ては観れていないのですが、初めてMマスとシャニマスのライブを観ることが出来ました!

 おかげで作者の中のアイマス熱が過去最高潮となっております!

 例え短編や番外編という形になろうとも、絶対にMマス編もシャニマス編もディアリースター編も全部書いてやるからなあああぁぁぁ!!!

 全アイドルマスター横断作品作者に、俺はなる!

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