余談ですがTUTAYAのゲーム新品コーナーにてダークソウルのDLC同梱版が売り切れていた。
正月に入ってお年玉なりで購入者が増えたのでしょうか?
ダクソ好きが増えてくれればいいなと思いつつ。
寝て覚めたら美少女の顔がドアップにあって思わず後ずさる響。
ここは遠見市住宅街、とあるマンションの一室の出来事である。
「うわおっ!?あいだっ!?」
「あ。」
後ずさった響がベッドから転げ落ちて、頭をぶつける。それを見てついと声を出す美少女。もといフェイト。
頭をさすりながらも美少女の方を見る響はちょっと見惚れつつも、あたりを見渡した。
「あの・・・大丈夫?」
「・・・ええと・・・どこここ?
そしてあなたはどちらさ・・・うおおおおおっ!?」
さらに後ずさる響。
部屋の隅まで逃げていく。
目の前の少女を見て気づいた。
いつぞやにカマをいきなり構えて人のアイスをぶんどっていった少女であることに気づいたからだ。
もちろんフェイトの目的は彼の持っていたパ○コ(バニラ味)ではなく、ジュエルシードであり、○ピコのことは返すのを忘れてしまっただけである。
「も、もうアイスは持ってないぞっ!?」
「・・・?強く打った?」
フェイトは可愛らしく首をかしげながらもそう尋ねる。
あまりにも支離滅裂な言葉に真面目に頭を打ったことの影響の心配をするフェイトである。
『ああ、起きたのね、響。』
「あ、アイシテルっ!?」
「ある程度の事情はそのデバイス・・・アイシテルから聞いた。ごめんなさい。」
このごめんなさいがどのごめんなさいなのか心当たりのありすぎる響としては、ちょっとわからなかったものの、とりあえず彼女は自分に対してなんら誤解を持ってないことにひと安心する。
誤解してないということだけなのに、心の中では安堵の安らぎが渦巻いている。
これだけで心が満たされてしまう響の心理状況は意外とやばかったのかもしれない。などと言いつつ。
頭を下げた少女から自己紹介を受けて、響はとっととお暇することを考える。
下手に関わるとまたややこしいことになる予感がしたからだ。
ただ、ちょっとした興味本位で聞いてみた。
「ええと・・・君はどうしてじゅえるしーどとかいうのを集めてるの?」
「・・・それは・・・」
うつむいて何も言わなくなるフェイト。
「答える必要なんてないよ。フェイト。」
「アルフ。」
「・・・ん?」
後ろから美人さんっぽい声がかかる。
そっちを振り向くと赤いワンコがいた。
「・・・え?赤い・・・ワンコ?」
喋る事よりも、前世ではまず見なかった赤い毛並みでもなく、その大きさにビビってちょっと後ずさる響。
真っ赤なワンコなんていたっけ?そもそもしゃべる犬なんていたっけ?自分の知識の中にはそんな犬種、一種もいなかったがとりあえずスルーした。
痛いのが何よりも嫌な響としては大きなワンコがこっちを睨みつけてる方が問題である。
もし噛み付いてきたらどうなるだろうか?
下手したら腕がちぎれるんじゃないかと戦々恐々な響。
大型犬の顎の力なら人間の、それも子供の細腕など簡単に骨ごと噛みちぎることができるだろう。
「ワンコじゃないっ!狼だっ!!」
「し、失礼しました。」
「・・・って、そうじゃなくて・・・フェイト、こいつらが何者かもよくわかってないんだ!
ここで拘束して尋問するべきだよっ!」
「で、でもアルフ・・・尋問って・・・どうするの?」
「え?・・・えと・・・それは・・・ボコボコに殴る、とか?」
「痛いのは誰だって嫌だよ。」
「そ、そりゃそうだけど・・・だから尋問なんだろ?
痛くなかったら意味がないじゃないか!」
「アルフ。」
「な、なんだよ。」
じっとフェイトはアルフを見る。
「人を殴ったら・・・傷つけたら傷つけられたら痛いよ。」
「いや、だから・・・ね?フェイト、」
「私にはできないよ。誰よりも・・・わかってるつもりだから。」
「・・・フェイト・・・」
「大丈夫。その時はその時。私のやることは変わらない。」
と、言うフェイトの顔には暗い笑みが浮かんでいた。
それを見てなんか意外とシリアスな問題を抱えてるのかなと思った響はもうおウチに帰ることにした。
そもそも流れ的におそらく彼女はレギュラーキャラ。
何かしらのメインキャラであることは気づいている響として、関係もそこそこにとっととここを去りたいものである。助けてあげたいとは思うものの、いろいろな面でデメリットが勝ちすぎている。
ヘタレの響が動くには動機がまるで足らなかった。
なにより高町なのはや山田くんに会いかねないために。
気になるものの、自分の嫌なベクトルに不幸になる体質を鑑みると下手に関係するのは危ない。
彼女となのはの遠距離封印魔法に巻き込まれた際の看護をしてくれた礼を言って、とっととここから出る。
「ううん。私が・・・巻き込んじゃっただけだから。ごめんなさい。」
「あ、いえこちらこそ・・・」
丁寧に謝られ、条件反射で謝り返す。
「いいかい。これだけは言っておく。フェイトがこう言うから今回は見逃すけど、この子の邪魔をしたらこの子がなんと言おうと私はあんたをぶちのめす。これだけは譲れない。・・・肝に銘じておくんだね。」
「は、はぁ・・・」
そもそも全くもって話の流れを理解してない響には何が邪魔になるのかも良くわからないのだが、とりあえず近づくなってことでいいだろうと判断した。
「それじゃあ、介抱してくれてありがとうございました。困ったことがあったらなんでも言ってください。」
という社交辞令を感謝の念をこめつつも言って響は帰ったのだった。
数日後、この言葉が彼の首を絞めることになるとはつゆ知らず。
☆ ☆ ☆
『もう探さないの?』
「なにを?」
『ジュエルシード。』
「・・・触れない宝石を探せたとしてどうやって回収しろと?」
響は家でぐーたらとせんべえを食べながら、リラックスしていた。
家はいい。
誤解されないから。
平和な日常を満喫していた。
『封印処理すればいいじゃん?』
「なにそれ?食えんの?」
『本気で言ってる?』
「半ば。」
『・・・はぁ。』
先日の一件で完全にやる気をなくした響はずっと家にこもっていた。もとい普通の小学生としての生活をしていたのである。
のんべんだらりとぐーたらする日々が過ぎていったある日のことである。
『・・・いるかい?』
「のわっ!?」
目の前に現れた突然のウィンドウ。
魔法陣の中心に映像が写っていた。
その映像はいつぞやの時に世話になったフェイトと一緒にいたワンコであった。
「あの時のワンコ?」
『ワンコじゃないって言ってるだろっ!?』
「ご、ごめんなさい。」
『・・・はぁ。まったく、こっちの気も知らないで。』
「・・・はい、知らないです。知りたくないです。」
なんか嫌な予感がし始めてきた。
どう見ても狼ではなく大型犬の様相だろ?と思いながらもウィンドウに出ているワンコ改め、アルフを眺めていると実に嫌なことを言ってきた。
『・・・不本意だけど・・・どこまでアテにできるか分からないけど・・・あんたの力を借りたいんだ。』
アルフは神妙な顔でそう言った。
犬の顔の識別なんてつかないので、実際はわからないのであるが。
「ええと・・・どゆこと?」
『フェイトが・・・私はフェイトを助けたい。助けてやりたい。
でも、でも・・・私一人の力じゃ絶対無理なんだ。あんた、魔力だけなら私よりもはるかに強いし、デバイスだって持ってる。
力を貸しておくれ。このとおりだよ。』
そういって伏せをする犬・・・いや、アルフ。
内心、犬にとっての伏せは頭を下げることに値するのか、土下座まで行くのかよく分からず、いまいちどれくらい深刻なものなのかもわからなかったが、とりあえず話を聞くことに。
「えと・・・なんで俺?」
『今言ったじゃないかっ!あんたしか頼れる相手がいないんだよっ!
管理局に頼るわけにはいかない!友達がいるわけでもないっ!
親は・・・くそっ!
だからあんたに頼みに来たんだよっ!困ったことがあったらなんでも言えって言ったじゃないかっ!!
男に二言はないだろっ!?』
「・・・がっつり真に受けてらっしゃる?」
どうしよう?と悩む響。
社交辞令を真に受けて・・・とはちょっと違うのはさすがの響にもわかっていた。
正確には社交辞令でもなんでもいいからすがるしかない、わかっていて敢えてそれを一つとして説得しに来るのはよほど追い詰められた状況なのだろうということがアイシテルにはわかった。
しかし響にはわからなかった。
何よりもあんたしか頼れない、友達がいるわけでもない、という言葉が響に多大な共感を抱かさせたのだった。
まるで自分ではないか、と。
人には大まかに分けて自分と似た人間を見て共感を抱く人間と嫌悪感を抱く人間がいる。
響は俄然前者である。
ゆえに、助けるといってもワンコの願いで命に関わることはないだろうと安易に引き受けてしまったのであった。
これが後にとある悲劇・・・いや、喜劇のような結果を引き起こすともしれず。
『ほ、ほんとかいっ!?』
「おうっ!男に二言はないっ!!」
アイシテルはただただ黙って、面白くなりそうだとほくそ笑んでいた。
そもそもボロボロのアルフの姿を見た段階で気づけよと思いつつ。