とあるチートを持って!   作:黒百合

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ここからは旧バージョンとは違い、大きく改稿され追加展開が続きます。
主人公の不幸具合をお楽しみください。


じゅえるしーど怖い

響はと言うと。

管理外世界の地球を出て、ミッドチルダへと来ていた。

ちなみに現在滞在して一週間が経過している。

 

『え?

なんで?』

「今更過ぎる疑問だな。アイシテル。」

『うん・・・まぁ。』

「ふふふふ。どうして?

そう思ったことだろう?」

『・・・うん、まぁ。』

「ほら、聞いてごらん?

どうしてこんなとこに来たの?って。

かもーん。りっすんみー。」

『うざキモいってこういうのを言うのかな?』

「そんなことを聞けとはいっとらんっ!!」

『・・・はいはい。で、どうしてミッドチルダにまで来たの?

地球、ほっといてよかったの?』

「ふふふ、良くぞ聞いてくれた。」

『聞けって言うから・・・面倒くさいな、もう。』

「簡単な話だ。

俺のことを誤解しまくるバカドモなど知ったことかっ!!

という真理にたどり着いたのだ!!」

『・・・それで?』

「は?」

『オチは?』

「いや・・・あの・・・」

『オチは無いの?』

「えと・・・その・・・あれだよアレ。」

『無いのね。つまらない男は嫌われーーー』

「いや、待てっ!!

それで俺は気づいたんだよっ!!」

『何に?』

 

アイシテルはもちろんオチなどないことは気づいている。

理由もきっとなんとなく前々からアイシテルに聞かされ、興味が深かった魔法の世界というものの典型。ミッドチルダ。ここに来てみたかったとかそんなところだろう。

端的に言うなら響をちょっと苛めて楽しんでいたのである。

余裕綽綽である。

しかし、次の響の一言で爆弾を投下された。

 

「アイシテルを人型にするのだっ!!」

『え゛?』

「俺はアイシテルが好きだ。

前回の一件でアイシテル以上の友はいないと気づいたっ!!

しかしデバイスが友達なんて声を大にしてはいえないっ!!ならばアイシテルを人にしてしまえば良いっ!!

ゆえに俺はアイシテルの改造方法を知るため、ミッドチルダの無限書庫とやらに行こうと思ったのであるっ!!」

『・・・へぇ。』

「リアクションが極端に薄いな。」

『うん・・・まぁ体があっても別に・・・ねぇ』

「俺は結構本気だっ!!」

『・・・その、私デバイスだよ?ぶっちゃけ肉の器に閉じ込められても・・・』

「お、俺と夕日を背にして拳で語り合うとかしたくないのかっ!?」

『少なくともそれをしようと言うならば全力で拒否する。』

「じょ、冗談です。」

『第一、普通に友達作ればいいじゃん。原作に関係ある人間以外で。』

「・・・精神年齢20を余裕で超えてる人間に9歳児を友達に?

どう考えても無理だろ。あいつら・・・子供の残酷さを知ってるだろ?

ちょっと髪の色が違うだけで仲間に入れてくれないんだ。皆死ねばいいのに。いや、今は大丈夫だけどさ。髪の色が黒くなっただけで手のひらを返すように仲間に入れてくるあの単細胞生物どもの仲間になんて加わってやるかという――」

『・・・。』

 

9歳児に恨み言を言う20過ぎの大人。

情けないと思ったが、きっとこのごろの周りの当たりが厳しいせいだとあまり深く考えないことにしたアイシテル。

彼は疲れているのだ。そう断じる事にした。

 

「アイシテル?」

『・・・別に。勝手にすればいいじゃない。』

「えーっと・・・手伝ってはくれないんでしょうか?」

『いや。』

「え?」

『イヤだって言ってるの。』

「な?」

 

響が泣きそうになる。

 

『情けないし、ビビリだし、逃げ腰だし、誤解されやすいし、アホだし、馬鹿だし、少しナルシ入ってるし、イケメンといっても見た目だけだし、魔法の腕も下手だし、戦闘も弱いし、おっぱい揉む揉むって下品だし。銀髪でオッドアイで気持ち悪いし。なんでそんな人の友達にならねばならんのかと。』

「・・・ぐずり。」

 

響はさめざめと泣いてしまった。

 

『でも・・・その・・・まぁ、仕方ないから。私が友達としてそばに居てあげてもいいよ?』

 

いいよ?のあたりで響の眼下には黒髪黒目のツインテール美少女が小首を傾げて頬を軽く染めながらこちらを上目遣いかつ流し目で見てくるような幻視が見えた。

感動で泣きそうである。

 

『ど、どうしたの?』

「いや、なんでも・・・。でも本当にいいの?

そのあれだけ言っておいて・・・」

『なんだかんだでずっと見てきたんだから。

貴方がどういう人間かは分かってるつもり。

・・・デバイスを好きだって言うほどの変態だとは思わなかったけど・・・デバイスしか友達が出来ないほどのコミュ障とは思わなかったけど・・・別に悪い気はしないし・・・どうせずっと一緒にいるんだから隣にいる形として、デバイスとして・・・道具としてじゃなくて・・・友達として大事にされながらも悪くないかなぁって・・・』

「あ、あいしてるぅ・・・」

『キモイから鼻水拭いてよ。

もうっ!』

「ずず、ごめん。」

『ちゃんと友達として私が誇れるような男の子に成長してよ。』

「うん!

まかせとけっ!!」

『まかしといたら不安だから私も手助けするけどさ。』

 

「・・・あいかわらず一言余計だな、オイ。」

『それで、無限書庫に入るんでしょ?

身分証明とか大丈夫なのかな?』

「ふっ。安心しろ。

俺は出来る男。

そこで身分証明書を売ってるオッサンから結構な高額で買い取った。

この世界に来て稼いだ金がぱーになってしまったが、これもアイシテルのためを思えばこそ。

痛くも痒くもない。財布には痛いけれど。」

『・・・怪しいとは思わなかったの?』

「何が?」

『・・・もういいわ。どうせ通れないだろうし。』

「何を言ってるんだよ?

そろそろ行くぞ。」

『はいはい。』

 

 

もちろんのこと。

 

 

「だ、騙された・・・。」

『でしょう?』

「良い人だったのに・・・」

『身分証明書をその辺の人に売って歩く人間が良い人なわけないでしょうに・・・馬鹿のままじゃ、友達になってあげないよ?』

「ま、まてっ!

今のは何かの間違い、手違いで・・・」

『言い訳しない。

とっとと次の手段を考えて。』

「・・・うん」

 

ちなみに無限書庫には普通に立ち寄れた。

変な身分証明書を見せたがために引き止められただけだったのである。

 

「なんという無駄金。」

『アホ過ぎる・・・』

「まぁ・・・高い授業料だとでも思って置こう。」

『そうでなきゃやってられないわよ。』

 

無限書庫で調べていくと、デバイスの擬人化。

もとい人化は現在ではほぼ失われた技術だと言われている。

現存する人型デバイスは全てユニゾンデバイスといわれ、デバイス単体での戦闘やデバイスを術者が展開した場合の戦闘力の飛躍的な向上から需要や研究は盛んにされているものの、未だ一般化できるほどの報告はないとのこと。

現在は一部の試験機が研究所のいくつかに点在してるのみで、もちろんのことそういったところの技術が外に漏れるわけもなし。

早くも手詰まってしまった。

 

「どうしよう?」

『気長に見ていくしかないと思うよ?』

「この・・・図書館をですか。」

 

響は無限書庫を見回し、げんなりする。

 

「・・・とてもじゃないがそんな気にはなれない。」

『魔法を使えば?』

「どんな?」

『グーグレ先生っていう魔法があってね・・・』

 

さっそくその魔法で検索をかけてみると検索に引っかかった本がひとりでにやってきた。

やったね!グーグレ先生!!

 

「便利すぎる。」

『ほら、とっとと読む。私を人にしてくれるんでしょ?』

「おうともさっ!!」

 

日が暮れるまで読み続けた響であった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

一ヵ月後。

 

「こ、これだぁっ!!

ふむふむ・・・なになに?

古代ベルカの夜店の書?

お酒の造り方の本だろうか?間違えた?」

『それだと訳し方が違う。

私に良く見せて。』

「うん。はい。」

『えーっと夜天の書・・・なるほど、確かに。夜天の主に守護騎士・・・か。』

「で、結局どうすればいいの?」

『この手法だと、まず私の本体はナイフであることには変わりない。

それとは別に依り代を用意する・・・人形に私の魂を移すって言った方がわかりやすい?』

「へー。」

『ナイフは心臓代わり。依り代は死なない操り人形って言ってもいいかも。作るのに半月はかかりそう。』

「・・・ふふふ、ようやくアイシテルと抱き合える日が・・・」

『・・・なんで抱き合うのっ!?』

「い、いや・・・あくまで、あくまでその・・・出来た人形の柔らかの確認であってだな・・・」

『スケベ。』

「う、うるさいな。男は皆スケベなんだ。」

『ふぅん。そう。』

「・・・うぐぐ・・・恥ずかしがってると言うならばまぁ・・・許そう。」

『恥ずかしがってないけど。どこを見たらそうなるの。』

「いや、そう言いながらも顔が赤くなっているぞっ!!

顔があればの話だが。」

『・・・へぇ。』

「・・・スルーやめて。」

 

 

☆ ☆ ☆

 

というわけで。

 

 

『とりあえず一回帰る?

文香ちゃんもいい加減心配してると思うよ?』

「・・・それもそうだな。必要な材料はすでに買い込んであるし。」

 

ちなみにミッドチルダのお金はフリーの魔導師として稼いでいる。

ちょっとした家が買えるほど稼げたのはひとえに響の魔力的な才能とアイシテルがあったからこそだ。

 

 

『あら?もう帰っちゃうのね?』

『ええ、またこっちに来た時はよろしくお願いします。』

『はい了解。気をつけて帰ってね。』

『ありがとうござました。』

 

今通信している相手はリンディ・ハラウオン。

フリーの魔導師として名前が売れ始めた響のことを聞き、クロノとか言う少年と一緒に仕事をしていた。

もっぱらクロノが指揮で、響が現場で動くといった具合だ。

外来の手助けが必要なほど人手不足らしい。

 

「ほっと・・・。ついた。」

『ちょっと座標がずれたね。』

「ん。まね。

ここは・・・街のど真ん中って場所か。」

『あ、響。』

「ん?」

『近くにジュエルシードがあるわよ。ていうか、ほらすぐそこにある。』

「じゅえるしーど?

・・・ああ、じゅえるしーどね。どうしようか。

もはや誤解なんて解きようが無いんだけど。っと、手にとって見るとただの綺麗な石ころにしか見えないんだけどな。」

『・・・それもそうね・・・響っ!?』

「うん?ってうおおおおおおっ!?なんかすっごいスピードで黄色の光と桃色の光がこっちに来てるっ!?」

 

響に襲い掛かる桃色と黄色の光。

これはなのはとフェイトが遠距離からジュエルシードを封印しようとしたためである。

遠距離なので響の存在に気づかず、撃ち放った砲撃は響の持つジュエルシードを狙っているため、響が逃げてもずっと追ってくる。

 

「ひいぃぃいいいいいっ!?」

『響っ!!

手の中のジュエルシードを早く捨ててっ!!』

「そ、それがっ!!

にぎってる手が動かんのだっ!!」

『はぁっ!?

何を馬鹿なこと――やばっ!!

発動しかかってるっ!!』

「はいっ!?」

『ジュエルシードは不完全ながらも近くの生物の強い思いに反応するから・・・多分響の願いを・・・根っこにある「誤解を解きたい」って願いをかなえようとしてる。』

「なんだって!?

それじゃあ・・・このまま持ってれば誤解が解けて原作ヒロインと恋仲になることも可能?」

『でも、ジュエルシードの願いをかなえる力は不完全でいびつ。

きっとろくな形にはならないと思う。ほら早速。』

「いででででででっ!?

握ってる手が猛烈に痛くなってきたんだけどっ!?」

『こっちが見る限り、体の腕を通してリンカーコアにアクセスしようとしてるみたい。』

「つまり?」

『のっとられるんじゃないかな?』

「はいっ!?願いをかなえようとしてなぜ乗っ取られるのっ!?」

『さぁ。

私に聞かれてもジュエルシードじゃないし分からないよ。

所詮鉱物だしね・・・至極簡単に解決するとしたら響の体を乗っ取って誤解してる人間を皆殺しとか?』

「・・・why?」

『誤解してる人間を皆殺しにすれば結果的に誤解が無いも同然じゃない。』

「なにそれこわい。」

『あとは、誤解されてる行為を実際にやるとか?

ハーレムを本当に目指すようになれば誤解というわけではなくなるじゃない。

昔の響にもどればこれまた誤解というわけではなくなる。』

「な、なんて物騒な鉱物なんだ。

俺としたことが浅慮が過ぎたか。くそっ!!変な欲かいてこんなもの見なかったことにすれば良かったのにっ!!というか、いい加減走るのも疲れたし、街中なのに人が一人もいないんだけどどういうことっ!?」

『結界を使ってるんでしょう。ていうか腕の痛み無くなってきたの?余裕そうだけど。』

「ああ、そういえば・・・」

『侵食されてるのね。』

「ちょっ!!落ち着いてないでどうにかしてくれっ!!」

『簡単よ。ほら、背後を見て。』

「ん?」

 

響は走りながら背後を振り返る。

二つの光線が目に入る。

 

『あれに当たればいいじゃない。』

「・・・なん・・・だと?」

『でも当たんないとどうなるかわかんないよ?

下手したら人殺しになるかもしれないし、下手したら人格が強制的に昔に戻されちゃうかも。』

「くっそたれがぁあああああああ、ぐあああああああああああああああっ!!」

 

二つの光に包まれ、響が爆発した。

いや、正確には響が、ではなく響に当たった光線が爆発したように光り輝いたのだが。

 

「ぐふ。無念なり。」

『・・・ちょっと!ここで気絶したら風邪引くよ!!』

 

そして気絶した響の下にほぼ同時に降り立つフェイトとなのは。

 

「一般人?

いや、結界に入れるはずはない。ということは関係者?」

 

心配そうな目で響を見るフェイト。

しかしなのはは響だと気づくと警戒した様子を見せる。

ジュエルシードを求めるのは自分を含め、自分の友達の心を操り惚れさせるためと誤解してるからだ。

フェイトは響の鎧姿しか知らないためその辺は良く知らない。

いつかに会った男の子だということも、今の髪色とは結びつかず気づけない。

封印処理とはいわば対象の魔力を無効化することだ。

ジュエルシードと一緒に封印処理魔法にぶつかった響の髪色は髪染めの魔法が解除されて銀髪に戻っている。

 

「フェイト、何をボーっとしてるんだい!

早く行く・・・」

「でも、アルフ。無関係の人を巻き込んじゃったみたいで・・・」

「そんなの気にしてられる状況じゃないだろっ!!」

「待って、フェイトちゃんっ!!」

「・・・。」

 

ジュエルシードを回収しようとしたところで、なのはと相対するフェイト。

 

「アルフ。

その人をお願い。」

「フェイトっ!」

「アルフ。」

「・・・まったく、お人よしなんだから、フェイトは。

分かったよ。」

「ありがとう。アルフ。」

「フェイトちゃんっ!」

「前に言ったはず。話すだけじゃ何も変わらない。」

 

そう言ってフェイトはバルディッシュを構えて、なのはに相対する。

なのはもそれを見て、ひとまずはぶつかることを決意した。

 

「それでも・・・話すことに意味があると思うから。」

 

 

フェイトとなのはは幾度目かの交差を果たす。

 

 

 


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