とあるチートを持って!   作:黒百合

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誰もが幸せになれる最後をきっと

「俺、ちょっと会いづらい。」

「・・・告白したもんね。」

「いや、それは・・・」

「別にぃ。作戦だしぃ。」

 

にやにやしながら言うアイシテル。

 

「くそ、なんてうざい顔を・・・」

 

そんなやりとりをしながら歩いていくと、リインフォースが仮住まいとしてる部屋に着く。

中には残りの守護騎士とリインフォースがいるそうだ。

 

「ええと・・・お加減はどうかな?」

 

そろそろと入っていく響と、ずかずかと入っていくアイシテル。

 

「おう、響かっ!」

 

まずはヴィータが挨拶をして、次にザフィーラ、シャマルとなっていく。

最後に夜天の書改めリインフォースがなにやら様子がおかしかった。

 

響を見た瞬間にほんのりと頬が赤くなり、顔を逸らす。

そして手はぎゅっと堅く結ばれており、自身の服を強くつかんでいる。ありていに言えば緊張している。

アイシテルはそれを見ただけで気づく。

響もはっきりとは行かずとも、鈍いわけではないのであれ?と雰囲気の違いに首を傾げる。

 

そう。

リインフォースは恋をしていた。

もちろんのこと響に対してである。

いや、正確に言えばまだ恋と断言できるほどの強い気持ちではなく、なんかいつも目で追ってしまう、ないしは気になると言ったほうが正しい。

簡単に過ぎる!と思う人もいるかもしれないが、彼女に対して好意的に接する人間は今まで居なかったのだから仕方が無い。

いわばちょっと前の響と同じーーーいや、響の場合はアイシテルという心の支えが居てくれたが、リインフォースの場合には存在しなかった。

ただただ孤独に寂しく酷い人生を送ってきたリインフォースからすると、とても嬉しいことだったのだ。

 

なおかつ―――彼女はデバイスである。

響を含め、概ねのオリ主からすれば1人の美女、もしくは美少女に過ぎないのだが一般的な魔導師にとって人型を取っていても、あくまで道具の範疇を超えることはない。

愛の告白など終ぞ受けるとは思っていなかったのである。

デバイスと言うのは武器であるとの認識であるということもそれに助力した。

はっきり言ってデバイスに対する恋慕と言うのはありえないことなのだ。

分かり易く例えるなら人形に恋をするようなものである。

もちろんこれはあくまでも例えであり、価値観の差異を分かり易くするためのものだ。

実際にデバイスが人形であるというわけではないのだが、少なくともミッドの人間にとっては例え人の形をしていようともそれは人間と同等と扱うことは無い。頼れる相棒となることはあっても恋愛対象になることは無いのだ。それが子供の頃から刷り込まれる価値観で、ミッドの人間からしてみれば響のようにデバイスに惚れたり、仮に作戦だからと臆面もなく好きだと言えるのは変態に分類される。

 

さて、何が言いたいかというと、例え見目麗しくとも恋愛対象としてをデバイスを見ることなど無いというのに、ただでさえ危険物として憎しみや悪意と慣れ親しんできたリインフォーズにとって、響の好意は新鮮で、とても喜ばしく、それだけで相手に惚れこみかけるほどに衝撃的で画期的だったということだ。

 

 

響からしたら変態とののしられることになったとしても本当に彼女を好きであれば、それはそれで良かっただろう。

結局デバイスだろうと美女でおっぱいなのだ。

自分の好意に対して相手もまた好意を返してくれるということに嬉しく無いということは無かった。

だが、しかし。

 

ここで問題が発生する。

その好意。

響の好意はぶっちゃけ嘘なのである。

 

その場しのぎの嘘。

その衝撃を利用するためについた―――言い方は悪いがリインフォースの気持ちを利用した悪趣味な作戦だったのだ。

しかしそれは仕方ないと言えよう。

窮地に立てば眠っている力が覚醒するとか、ありえないほどの天才だとか、絶対に負けないチートを持ってるとかならばともかく、多少魔力量に融通が効く程度のチートしか持たない響にとってそういった卑怯な手段でも使わない限り勝てない戦いだったのだ。

最後にアイシテルが真っ二つにされた時の暴走だって、別に魔力が増えたとかではなく、単に残っていた魔力が動揺によって変に動いた結果、体を傷つけたというだけ。

むしろマイナスで、あの時におっぱいチートによるプログラム改ざんを終了していなければなすすべもなく撃沈されていた。

 

なにはともあれ、響の選択は例え女心を踏みにじる最低な手段だったとしても、それがなければなのはとフェイトは殺されていたのだから仕方が無い。

そう、仕方が無いのだ。

もっと良い方法もあったかもしれないが特別戦闘センスに優れたと言うわけでもない一般人のとっさの手段としては上等と言えよう。

 

 

鈍くは無いが鋭くも無い響はそのことに気づかず、まずはあの日の告白が嘘だったことを謝ろうと思った。

口を開こうとした瞬間―――

 

「その・・・ですね。私は・・・主はやてのデバイスで・・・貴方と一緒にいることは無理なのですが・・・しかし、その響がどうしてもと言うならば―――あ、その・・・名前で呼んでも構わないでしょうか?守護騎士と記憶を共有したから私としては自然なのですけれど、でも、そっちとしては初対面なわけで・・・」

「ええと構わないけど・・・っ!」

 

響もこのセリフを聞いて気づいた。

もしかしてっ!?と。

この頬を赤らめて恥ずかしがる仕草。

ぎこちない喋り方。

そして今の会話内容。

あれ?告白の方、真に受けて、なおかつ結構良い返事をいただけそうな感じ?

そう気づく。

これはまずい。

響は冷や汗を垂らす。

もちろんすぐに否定しようとするが・・・

 

「・・・響の告白は嬉しいです。今まで私を嫌う人間は居ても、好いてくれる人間など1人もいなかったから。あれだけ暴れ、それでも貴方に好かれるとは思っても見なかった。」

「いや、のぞんでやってるようには見えなかったし、泣いてたから・・・」

「・・・優しいのですね。」

 

ほろりと涙を流すリインフォース。

笑顔のひきつる響。

 

 

「いやそんなことは・・・」

「そもそもあそこで私と戦ったのは我が主と殺されるであろう2人を思ってだったのでしょう?」

「うん・・・まぁ、そうかな?」

「それに・・・その・・・あの時私が付けた傷は大丈夫でしょうか?

もう痛くないですか?その・・・片目は見えなくなったのですか?・・・その・・・大丈夫ですか?私など嫌いになりましたよね?」

「そんなことは無いよ?

ほら、しょうがなかったし、半ば暴走してるって聞いてたし。この片目は大したことないし・・・」

「そ、そうですか。それは本当に喜ばしいことです。

本当によかった。

ただでさえ取り返しのつかない罪を繰り返してきた私が・・・貴方の・・・恩人の体に一生モノの傷をつけていたらと思うと・・・」

 

今にも死にそうなほどに悲痛な表情をするリインフォース。

 

「・・・き、気にしなくてイイヨ?」

 

などと会話を続けながらも響は脂汗がにじみ出るのを感じていた。

やばい、やばい、やばい。

この流れはヤバイ。

なんかますます言いづらくなってきた。

 

「ああ、しかしその・・・私には一つ欠点があります。

防衛プログラムの再生。

そうなってはまた主はやてや貴方に迷惑をかけてしまう。

愛しい貴方達に私は傷を付けたくは無い。」

「ええと・・・何か対策は考えたの?」

 

と、笑いをこらえていたアイシテルが言う。

 

「・・・私を消すしかあるません。幸い防衛プログラムは私のプログラムの中に独立した状態で組み込まれているので私を消したところで守護騎士までもが消えることはありません。」

 

雰囲気が暗くなる。

 

守護騎士たちが消えるときは私たちも、と声を上げようとするも、その前にリインフォースが口を開いた。

 

「心苦しいですが、守護騎士であるあなた方には私が犯した罪の償いを押し付けることになります。

申し訳ないです。」

 

ここで響がおっぱいチートのことを喋るが、それをアイシテルが否定。

 

「無理だよ。言ったでしょ?

おっぱいチートはそれぞれの原理がある。その原理的に今すぐどうこうできるものは無いよ。

肉体変化の応用で、暴走した防衛プログラムの撤去をしたけれど闇の書を夜天の書に戻す・・・のは管制人格たるリインフォースではなく、夜天の書本体をいじる必要がある。

夜天の書におっぱいがあればなんとかできたけど、本におっぱいはないしね。

おっぱいを介してできるのは無理のないレベルでの肉体改造と、おっぱいを持ってる生物の時間を戻すこと。

しかも戻せる時間には限りがある。」

「ううむ・・・」

 

そこでヴィータが言う。

 

「それならその時間退行?の能力で響の魔力が回復するまで待って回復したら揉んで、回復したら揉んでってのを繰り返せばいいんじゃないか?」

「それだっ!!」

 

響が名案だとばかりに顔を輝かせるが、アイシテルはちょっとだけ不満そうだ。

今、そのことを言って驚かせようとしたからである。

なのにヴィータに出番を奪われてしまった。

あの赤いのにいつかいたずらしようと思いつつ。

 

その代わりと言ってはなんだがアイシテルはちょっとした概算をしていた。

彼女を完全に戻すまで一体全体何年かかることか。

どんなに少なく見積もろうとも毎日揉んで一年はかかるだろう。

下手したら5年、10年。

いや、一生の間ずーっともみ続けても無理かもしれない。

時を戻すのは大量の魔力を要する。さらにそれは少なくとも1000年単位だろう。

響自身がおっぱいチートで寿命を延ばす必要もある。

かなり長い付き合いになりそうである。

 

 

リインフォースがおっぱいチートのことを聞いてその顔に希望が見えた。

やはり乗る気だろうか?

 

「分かった・・・ただ・・・」

 

☆ ☆ ☆

 

その後、言いづらいことこの上なかったが、リインフォースにあれは作戦だったことを伝え、リンディたちから事情聴取などを受けて、ようやく今回の闇の書事件は幕を閉じた。

それぞれのその後を一度整理する。

まずはプレシア・テスタロッサ。

彼女は今回の件で当初その積極的な働きに管理局側は罪を軽くしようとしたのだが、響のアリシア完全復活の取引により、途中で拒否。

管理局側にはデバイスの不調と銘打ち、協力を拒んだとしてそのことを明確な形で責められなかったものの、属託魔導師としての任期が短くなることはなく、以後10年に渡り属託魔導師としての無償奉仕の義務と、5年間の監視がつけられることとなった。

ちなみにプレシアは響のおっぱいチートにより若返ってるため、おっぱいチートを詳しく知られたくない響の希望によりプレシアの姿は変わらず良い年をしたお姉様の外見である。

が、それは変身魔法によるもので、実際は大人版、黒髪フェイトと言っていいような外見である。

アリシア・テスタロッサは故人とされており、プレシアが全力で隠蔽を行っている。

彼女が生き返ったことを知っているのは生き返らせた山田君と、その場に居た数名の人間、そして響とアイシテルのみである。

 

次に響とそのユニゾンデバイス・アイシテル。

情状酌量と、リンディとクロノの尽力により属託魔導師としての無償奉仕5年となった。

子供であることも手伝い、思慮の浅さは仕方の無いことで友達を救おうとしたその気持ちが罪であるはずがなく。

とはいえ犯罪は犯罪であり、最低限のけじめとしてこの判決となった。

なお、リンディとクロノはそのまま管理局に勤めてくれないかと希望しているが、響の性格的にどう考えても、死の危険があるような職業にはつかないだろう。

せめて仕事が選べるフリーランスの魔導師としてが精精だ。

それすらも怪しい。

 

今回の主役である八神はやてと守護騎士。

八神はやてはもちろんのこと被害者であり、そこに罪は無い。

リンカーコアの蒐集もはやての企てではないことが分かっているため、彼女は裁判を行うまでも無く家に帰された。

しかし守護騎士である彼女達には監視5年と以後20年に渡る無償奉仕。

四人に罪を分散させ、なおかつ情状酌量の余地があり、誰も人を殺していないと言うことからこれだけ軽くすることが出来た。

この裁判の弁護にはグレアムも関わっている。

 

その管制人格である闇の書改めリインフォース。

彼女も罪としてはかなり軽い。

もともと防衛プログラムの暴走が原因であり、それが取り除かれたことがアースラの設備で検閲済みである以上彼女を拘束する理由は無い。

一部の管理局派閥が管理局預かりのロストロギアとして封印・研究されるべきものと主張したがデバイスと言えど感情があるということで非人道的であり、彼女もまた被害者だ。という言により、無実と化す。

リンディとクロノ、さらにはグレアムたちが頑張ってくれたのだ。

超頑張った。

めちゃくちゃ頑張った。

あまりの忙しさにグレアムは寄る年波も手伝って、円形脱毛症と胃潰瘍を併発したほどである。

 

そして山田君。

彼もまた三人の手伝いとして証拠や反論材料集めに奔走した。

が、グレアムのときで空回り癖でも付いたのか、殆どの資料が役立たなかったと言う。

山田君、ざまぁ。

と見るか、

山田君、可哀想

と見るかは人に依るだろう。

日本人として前世をすごし、管理局に務めているとは言えども、その経験の浅い彼ができることは当然ながら少ないのである。

 

 

そしてここからは管理局側には知られていない裏の話も含めた予後話である。

リインフォースは時の経過と共に防衛プログラムが再生するため、本来ならば消去(デリート)しなくてはならなかった。

しかし、その再生を無効化できる人間がいる。

響だ。

なおかつ告白の件の誤解は解けたものの、それでも響に対する恩がどうのこうのということで、治療も際して彼女は響のもとへ。

要するに、元の夜天の書に戻せる能力(レアスキル)を持つ響のデバイスに変わる。

防衛プログラムをリインフォースごと切り離したのである。

もちろんこの作業はグレアムがやった。

グレアム超頑張った。

 

リインフォースごと切り離したため、本気で響のデバイスになっている。

 

 

 

こうして誰一人欠けることなく、重大な人的災害(死者)を出すことも無く。

 

闇の書事件は幕を閉じたのであった。

その最後(エンディング)は2人のイレギュラーによって引き起こされたということを述べておく。

 

 

誰もが幸せになれるエンディングを。

 

Fin

 

 




あとがき

皆様。
ここまでご覧いただき無上の感謝を。
感謝感激雨あられでございます。

拙作はこれにて完結です。
なのですけどストライカーズ、最終的にはアインハルトを出したいと思っているわけで、一応続きます。ですがそれらはぶっちゃけオマケです。外伝みたいなもんです。
Asで誤解が解けるという展開から、この章で終わらせる気だったのは薄々わかっていた人もいるかもしれないですね。
にじファン時代から見ていただいてる方は「そんな感じのことを見た覚えがあるかも」なんて思い出していただければ。

個人的には勘違い物というのは理解者、もとい誤解に惑わされない人が出た時点で完結するべきという指針?主義?そんな感じのものがあります。
あくまで個人的な考えなので、違うという方もいるかもしれないですが・・・勘違いものとしてはこっから先はもはや惰性です。
安心院さんも「10巻以上続くコミックスは惰性だ」みたいなこと言ってました。
おさまりのいいところでやめとけってことですよね、たぶんw


なにはともあれ具体的に言うと、ちょっとした誤解を重ねつつ、これ以降は今までの誤解が解けていったり、ヒロインと仲良くなって行ったりというのが主な展開になる、予定です。
誤解の解けていく過程、ラブコメが好き。
今までとは展開の毛色が多少なりとも変わる予定ですので、それをご了承のもとご覧ください。


それと、ヒロインはフェイトかリインフォースかアインハルトか。その三人の中から一人を選んで進めていこうと思っています。

ただフェイトヒロインは結構あるので・・・リインかアインハルトか。
迷うでござる。
リインは年上のお姉さん風が作者的に好きなのだけど、アインハルトのクールな感じがもっと好き。しかし年齢の問題が、というかそれまでヒロインが出ないというのはちょっと問題が・・・よし原作メンバーが15ぐらいの時にスカさんを絡ませてしまおう・・・なんてことを考えてます。

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