さて、これにて。
相馬 響。
彼の一世一代の頑張りは幕を閉じた。
良くやったね、響!
余談ではあるが響もアイシテルほどではないにせよ大怪我を負っており、後から駆けつけたなのはたちにドンビキされた。
そのまま響は眠るように意識を失い、アースラにて治療。
アイシテルはその場で体を再生、響の体内で休むことに。
後日。
響はアースラの病室にて目を覚ます。
目を覚まして痛みを感じたのでまだ完治していないようだ。
そういえばあのまま倒れたんだっけ。
ぼんやりと記憶を揺り起こし、おっぱいチートを使おうとしたところで人が居ることに気づく。
たまたま見舞っていたのか、リンディの姿だ。
その表情には安堵と心配と困惑。色々な物がない交ぜになっているようである。
「おはよう。気分はどうかしら?」
「えーっと・・・まずはヤミちゃんは・・・」
「彼女ならすぐに八神はやてさん、彼女と分離して今はゆっくりしてもらっているわ。他の皆も無事よ。そっちの―――可愛い彼女さんもね。いえ、お姉さんって感じかしら?」
「え?」
リンディの視線の先にはアイシテルがスヤスヤと寝ていた。
響の真隣で。一緒にベッドに包まっていたようだ。
「わたたっ!?」
すぐにのけぞる響。
頬は微妙に赤く、驚きが人がいたこと。というよりも年頃の女の子が一緒に寝ていると言うことに比重を占めていることに気づいたリンディが「彼女さんなのかしら?」と呟いてクスリと笑う。
リンディにとっては9歳児と14、5歳の女の子がそうした関係を意識し始めるのは少々早い気がしていたのだが、どうやら違うらしい。と認識を改めた。もちろん誤解である。
その初々しさが自分と旦那との蜜月の時を連想させ、ついつい頬が緩む。誤解なのだが。
が、言うべきことは言わねばなるまい。
「分かっているわね?
自分が何をしたのか?」
「犯罪の助けですよね?」
「ええ。」
ここで言い訳はせず、自分に課せられる罰を素直に受け取るのがカッコいい男と言うものであるが、もちろんそんなものとは程遠い響としては言い訳を始める。
いや、始めようとしたのだが。
「全て守護騎士から聞きました。
響さんは守護騎士の四人に脅されてリンカーコア集めを手伝ったと言うこと―――らしいですが、本当ですか?」
「え?」
響はあくまでも自主的に守護騎士達に協力した。はずなのだが一体どうしてそんな話に?
また何かの勘違いか?と思った響だがもちろんそんなはずがあるわけない。
守護騎士達が響に迷惑が行かないよう、罪を被ったのだ。
どの道守護騎士は多少の情状酌量の余地があったとしても、管理局員を襲ったと言う罪は大きい。
そこに1人の子供を脅して使ったと言う犯罪歴が加わろうとも大した問題ではないのである。
だからこそ、協力者で対等な人間だと認めたシグナムが言い出して、四人が肯定し響を庇うことにしたのだ。
もちろんその言だけであるならば管理局は疑ってかかった。
しかし、響の才能。
シグナムたちがいかに追い詰められていたか。
この状況を鑑みても状況証拠としては十分である。
ここで響の自供があれば響が受けるはずだった責任は全てシグナムたちになすりつけることが出来る。
言い方は悪いが、それをやったとしても別に響が非難を受けるほどではない。
心情的にも辛いだろうが・・・
先に言ったように今更一つ二つ前科が増えようと守護騎士に罪を償うと言う体で、属託魔術師として働くことは決定されているし、監視もつくだろう。
その制限が多少強まるか、属託としての勤務年月が1~3年増える程度だ。
それならば前途ある若者の不遇の処分を一身に受けることはむしろ誉められるべきことで、そうしておいた方が無難と言えよう。
もちろん小心者で、犯罪歴を被ると言うことに二の足を踏んでいた響は嬉々としてその好意を受け取った。
・・・はずだったであろう。
彼が“覚悟”してあの場に行くつもりでなければ。
いや、いまだその好意にすがりたいという気持ちがガンガン湧き出ているのだが、そこを響のちっぽけな男の子の意地で見ないフリをする。
何よりもいつぞやにアイシテルは言った。
自分の行動の理由を他人に求めてどうするのか?と。
ならば自分の行動の結果を他人になすりつけてどうするのか?とも言えるだろう。
さすがにそこまで情けない人間になりたくない。
自分のお尻は自分で拭く。
幼稚園児でも出来ることだ。
「い、いいえ。違います。自分の意志でやったことです。」
断腸の思いでそう答えた。
「・・・そう。
これはしばらく大変になるわね。」
「何の話ですか?」
「大人の話よ。」
「はぁ。」
リンディはもちろんそのことに気づいている。
現場で見て、響の姿も確認している。
彼の様子から、現場の人間が見れば一目瞭然で脅されているわけではないということが分かる。
リンディはそのことに気づきつつも、守護騎士の好意を無下にしない選択をとったのだが、目の前の少年は自分のやったことから逃げるつもりは無いようだ。
法律と言う融通の効かない枠組みに当てはまれば、犯罪であることには違いないのだが状況が状況なだけに弁護の仕方によってはかなりの減刑が望める。
ふぅとため息を吐きつつもその顔にはどこか暖かい笑みが浮かんでいた。
何よりもリンディ自身が幼くして自分のやったことを理解しつつも、その結果から逃げない。
そんな響に好感を抱く。
「色々と聞きたいことはあるのだけれど、それは後回しにしましょうか。・・・彼女さんも起きたようだしね。」
「は、はい・・・って、え?
あ、アイシテルっ!
体は大丈夫っ!?」
「見て分かるでしょ。」
アイシテルも起き上がる。
「いや、そら分かるけど・・・でも確認しておかないと不安と言うか・・・」
「まったく・・・それよりもいいの?
せっかくの好意だったのに。」
「・・・た、確かにそうだけど・・・やっぱり止めとけばよかったかなぁっ!!
でも、でもさっ!!
ほら、アイシテルが言っただろ?
自分の行動の理由に他人を使うな・・・的なことを。自分の行動の結果もそうだよね。やっぱり。他人になすりつけちゃいけない・・・そう思ったんだよ。」
「・・・。」
「アイシテル?」
「・・・の割には顔色悪いけど?」
「・・・憂鬱なんです。」
「・・・はぁ。もうちょっとカッコいいと思ったら、ほんとカッコつかないんだから・・・」
「・・・ごめんなさい。」
「謝らないでよ。響の選んだことでしょ。しっかりする!」
「・・・お、おう。」
「しょうがないなぁ・・・それにしてもそれ何?」
「へ?」
「その右目だよ。」
「・・・そういえば右目がなんか変な気も・・・」
と思って響が寝台の近くにあった化粧台らしき場所の鏡で目を見てみると右目からなぜか黒い魔力がほとばしっていた。
まるで右目が燃えているかのように見えないことも無い。
「なにこれ?」
それに対してはリンディが答える。
リンディも医者から聞いたことだが、という前置きをつけて。
ヤミちゃんと戦った最後のほう、アイシテルが真っ二つにされた時のことである。
響のあまりの激情が魔力を変に噴き出させた。
その際にリンカーコアから流れ出る魔力を通す器官、普通の人で言う血管のようなものに傷が入ったのである。
全身いたるところに傷が入り、マジで死ぬ10分前という状況だったのだが、なんとか峠は越えたものの、目の周辺だけは手を加えることができなかったのである。
失明の危険性が出たために。
もちろんこんな目で日本を歩けるわけがなく、これから先は響の右目には眼帯が必要となる。
戦う際は遠近感や視界の関係上外すが、基本的には眼帯をつけることとなる響の見た目は、もはや完璧に中二病といったところだろう。
内心ちょっとだけ喜んだ彼である。かっこいいし、とか思いつつ。
ちなみに影響としてはそこから漏れ出る分の魔力がロスするというのと、戦闘時に魔力を使う際に目にめぐる魔力も多くなるため、目から漏れる魔力の木漏れ火が大きくなり、かっこよく見えるという程度。
おっぱいチートで戻すことはできたが響はしなかった。
理由はお察しのとおりである。
「さて、これ以上のお話は響さんの体が治ってからでも問題ないでしょう。二人でごゆっくりね。」
と言って去っていくリンディ。
大人の女性の余裕を感じた。
アイシテルにもあれくらいの余裕があれば―――抱きつくくらいいつでもいいわよと言ってくれそうな気がした響である。
次に見舞いに来たのは意外にもプレシアだった。
いや。見舞いではなかった。いつかの約束を守らせるために来たのだ。
今更だけど彼女がヤミちゃん戦で使えればもうちょっと楽できたのでは?と思う。
余計な約束をしてしまったと今更ながら後悔する響とアイシテル。
「それで、約束どおりに手を出さなかったわ。・・・それとも嘘かしら?」
ギロッ!と効果音が聞こえてきそうな眼光で睨むプレシア。
ただの9歳児であれば泣いていただろう。
どうしてこう、9歳児に対してここまで眼光を鋭く出来るのか?と物申したいものだ。
「もちろん・・・でもそれにはその―――非常に複雑怪奇な―――いや、簡潔な工程がというかなんというか・・・」
「何?
はっきり言ってもらわないと分からないわ。」
「胸を揉むのよ。」
うだうだとハッキリしない響の代わりにアイシテルが答える。
それを聞いて一瞬、般若の形相を浮かべたプレシア。
プレシアとしてはせっかくの罪を大きく償え、監視や属託魔導師などという余計な事柄に意識を割かれずに済むであろうチャンスを不意にしてまでアリシアを生かすことを選んだというのに、ふざけやがってコノヤローッ!!という気持ちだったが、仮にもプレシアは研究者。かつ高位の魔導師だ。
すぐに思いなおし、気を落ち着けた。
一応事件の顛末はアースラのモニターから見ていた。
アースラの管理局員はもちろん、リンディやクロノ、プレシアもいきなり敵に愛の告白をしたと思ったら胸を揉みしだいたのである。
その後、闇の書は機能が停止した。正確には暴走が収まった。
おそらく特殊な魔法かレアスキルか手自体が何かあるのか。
何にせよ、その力がアリシアを完全に生き返らせることに繋がるらしい。
そう考えてプレシアは詳しい話を聞いた。
「なるほど・・・でたらめな能力ね。」
「さ、さっそくやります?」
響がご機嫌を伺うように尋ねる。
「・・・まずは私に試しなさい。」
「は?」
「ほら、いつでもいいわよ。」
そう言ってズイと胸を突き出すプレシア。
すごく・・・大きいです。
「えと?なんで?」
「当然でしょう?確かに矛盾は無いし、嘘はついてないようだけど、いきなりアリシアに試させるわけには行かない。万が一というのもあるのよ。」
「いや・・・そんなことはないはずですけど・・・」
「そんなことはないはず―――そう思っていた研究の事故で私のアリシアは死んだわ。
・・・これでもまだそんなことがいえるのかしら?」
「・・・分かりました。えーっと・・・と言っても、揉んでどうしろと?
貴方は生きてますし。」
「とりあえず貴方の言った能力の内のアンチエイジングと治癒を試して頂戴。アンチエイジングの方は若返らせると言う形で。その後しばらく経過を見て問題が無いと十二分に判断できた時に頼むことにするわ。」
「あ、えと・・・それじゃ・・・し、失礼します。」
響は少し頬を赤くして胸に手を添える。失敬。胸ではない。おっぱいに手を添える。
「ん。あ・・・う・・・ん。」
敏感なのか、えっちぃ声がプレシアの口から漏れた。
未亡人の胸を―――失敬。おっぱいを揉んでいるというこの状況に響は言い知れぬ興奮を感じた。と同時にアイシテルに足を思いっきり踏まれる。
「エロイ顔しないっ!!」
「どういう顔だよっ!!してないしっ!!」
「してたでしょっ!!」
あまりの情けなさについアイシテルがツッコみをいれた。
が、大目に見てほしい。
男なんてそんなものなんです。
結果、プレシアは若返り、約18の頃の姿に。
魔法を使っても治らないとされていた病も治癒された。
ちなみに前に言ったとおり、響のおっぱいチートの治癒は時を戻すと言う形であるため、もしもプレシアが遺伝的な病を患っていた場合はまたその病が発動した時にもう一度おっぱいチートを使わなければならない。
さらに彼女は一児の母であったが、今や生娘と変わらぬボディである。
すなわち体の構造的に子を産んでいないことになる。
結果、じゃっかんの母性の低下や乳が出ていた場合、完全に根絶されている。
なおかつ処女となっていた。
まさしくヒロイン候補と言ってもいいだろう。
見た目は少し目つきが鋭く、黒髪の、フェイト大人版である。
プレシアは自身の肉体の変化に驚きを隠せない。
若返ったことで余計な詮索を受けることに面倒だと後々ながら考えたプレシアは変身魔法を使って元の姿に変身する。
「・・・まさかここまでとはね。」
ちなみにここまでの変化は響の自前の魔力ではもちろん不可能だったので、アイシテルの魔力貯蓄機能も使った。
一度に使っても響には操りきれないので小出しにして使ったせいか、ここまでにプレシアの胸を揉んだ時間は嬉はずかしの30分と言う長時間。
プレシアの下着がどうなっているか気になる頃合であ―――閑話休題。
その後、プレシアは少し上気した様子のまま、病室を後にした。
途中、なのはがフェイトと見舞いに来て誤解を深めたことは言うまでもあるまい。
お約束、という意味でなく。
重ねて言うがこれ以上の誤解が増えたところでどうでもいいという意味で。
☆ ☆ ☆
「さて、はやてちゃんのお見舞いにでも行こうか。」
「ん。ま、そうだな。」
「どうしたの?気がすすまなそうだけど・・・」
「いや、その・・・もう俺の過去、聞いちゃってるだろうなぁって。」
「それで?」
「嫌われてるころあいかなぁって。」
いよいよこの日がやってきてしまった。
響とはやてのお別れの日である。
もちろんはやてが響の昔の話を聞いていないなんてはずは無い。
響はまだ知らないことであるが、はやてはヤミちゃんの中でずーっと半覚醒状態―――眠れそうで眠ってない、あの一番気持ちの良い状態で外の様子を見ていた。
すなわち響が魔導師でドンパチやっており、ほんとの髪色が銀でオッドアイと言う見た目であることも知っている。
となればだ。
響のことを疑問に思うがてら魔導師のことを知るだろうし、響がどんな人間であるかも周りの人間―――特になのはと山田君から聞くだろう。
響に関する説明も受けて当然。
仮にそれが無かったとしてもフェイトとなのはは二人揃ってすでにはやてと仲良しモード。
なのはからしたら友達になりうる人(はやて)がいやなヤツ、もといプレシアの―――人妻の胸を揉み揉みしていた意味のわからない人間と仲良くするのを黙ってみているだろうか?
否。
恐らく忠告をするだろう。
こんなこと言いたくないけど、あの人とは縁を切ったほうが良いよ。的な。
「でもさすがに何の挨拶も無しってのはないでしょ?」
アイシテルが仕方ないなぁと風に言う。
☆ ☆ ☆
「はやて。悪いことは言わない。あいつは止めて置け。」
はやての病室の前に響が来ると山田君の声がした。
どうでもいいですけど山田君、いきなり呼び捨てなんですね。
「・・・なんでや?」
「・・・。なのは言ってやってくれ。」
「えと・・・その・・・」
なのはは言いづらそうにする。
それはそうだ。
もともと彼女は過ぎたことをぐちぐち言うような陰気な性格ではない。
今更、ちくちくと昔のことを―――他者の悪いところを告げ口すると言うのはどうかと思われた。
のだが。
今までの彼の奇行が走馬灯のようになのはの頭の中を巡った。
将来おっぱいが大きくなるように私(なのは)の胸を揉んであげよう!と君の悪いことを言いつつ、こちらがヤダと言っても無理やり揉んできたこと。
しかしそれは謝ってくれたこと。
惚れさせるためにジュエルシード。
すずかちゃんの家の床板をぶち抜いての登場(厨房―――もといアイシテルの幻術人形だが)。
自分の胸を揉みし抱いていた。
闇の書との戦いでは自分達を助けてくれたみたいだということ。(容姿が最初と最後で変わっていたためいまだ何だったのか理解していない)
闇の書の胸を揉みし抱いていた。
プレシアの胸を揉みし抱いていた。
なのはは思った。
わけが分からないよ。
分からない。
あの子が全然分からないの。
と。
もっともである。
なのはは混乱した。
忠告するべきか。
しないべきか。
仮に忠告したとして何を言えばいいのだろうか?
胸をもまれるかも?
変な性癖をもっているかも?
胸を揉む。
あれは映像やリンディの言を聞くになんらかのレアスキルである可能性が高いらしい。
すなわち必要なことだったってこと。
変な性癖。
自分の胸を揉むくらいいいじゃないか。
人に迷惑をかけなければ性癖の一つや二つ。常軌を逸していたところで問題は無い。
現実でやると犯罪になってしまうような性癖も別に人様に迷惑がかからないようにすればいいだけ。
となると自分に言えることは無理やり揉んでくるかもしれないから気をつけろ?
それくらい?
でもはやてちゃんの話を聞くにそんなことは一度も無いらしい。
と考えていたところで。
「なのは?」
「あ、うん。なんでもないの。ちー君。」
「・・・確かに今回はあいつの手柄だ。
でもそれはかなり危うい橋であったことには変わりないし、そもそも今回あいつが頑張ったのはおそらくはやてと守護騎士に惚れられるために、ハーレムを作るために―――」
「出て行きや。」
「は、はやて?」
「悪いけど、うちは友達のことを悪く言うようなやつと仲良くできる気がせぇへん。
それにさっきからはやてはやてはやてと馴れ馴れしいやっちゃ。
八神様と呼ばへんかい。」
「ええっ!?」
「ハーレムなんてアホらしいもんをまじめに作ろうだなんて考えるバカがおるかいっ!!どあほう!!」
「いや、おいっ!!」
「シグナム、悪いけどこいつ摘み出してくれへんか?」
「了解しました。我が主。」
「だからこれはオマエのために・・・」
「だまれ。小僧。私も仲間を侮辱されて些か腹を立てている。これ以上の話は無意味だ。立ち去ってもらおう。」
「・・・。分かった。ただこれだけは言わせてくれ。」
「なんや?」
「生きててくれてありがとう。」
「・・・はぁ?」
「別にただ言いたかっただけだ。じゃあな。」
山田君はなんだかんだでプレシアを―――原作を変えた事で本来なら死ぬはずの無い女の子が死ぬような目に遭わせてしまったことに強い罪悪感を感じていた。
もちろん山田君は聖人君子などではない。
見ず知らずの人間ならばともかく、原作知識と言うものではやての人柄を。人格を知っている。
ゆえにこそ山田君は自分の仲間たちを―――同じ職場の仲間が闇の書に蒐集(しゅうしゅう)されることを知りつつもそれを未然にふさがなかった。
見ず知らずの職場が同じだけの仲間よりもかわいそうな女の子1人を助けることを取ったのだ。
男としては正しい選択であるが、仮にも就職している社会人としてはどうかと思う選択である。
職場の仲間を取ってやれよ!と。
とはいえ、男と言うのはそういう馬鹿な生き物なのかもしれない。
何かの枠組みの外に美少女、美女が居ればその枠組みを壊してでも外へ行ってしまうという。
いわば本能である。多分。
なんだかんだでこいつこそ響(一般人レベル)以上の、女好きなんじゃないかという疑いが浮上する。
そして“生きててくれてありがとう”という彼の言葉は彼が罪悪感を感じずに済んだため、その感謝をはやてにしたということ。
いや。
響にしろよ!と。
はやては内心、電波的なアレなんか?と思ったものの、もうかかわることも無いし気にしないことにした。
段々いやなヤツに・・・まぁ、待って欲しい。
彼は嫌なやつじゃないのだ。
ただ先入観と言うか、思い込みが激しいと言うか。
何かを決めたら一直線と言うか。
単純バカというか。
それが証拠に響を相手取る以外は男女問わず感じが良い。
銀髪オッドアイ=厨二かつハーレム願望と言う先入観がちょっとばかし強いだけなのだ。
彼は嫌なやつじゃないのである。
きっと。