楽しみです。
ああ、この二次をお楽しみにしてもらってる方はご安心を。更新は変わらず今までどおり、お昼になります。
響はというと、今日もコア集めと勤しんでいた。
ついでとばかりにミッドのお金も稼いでいる。
そんなある日のこと。
『お願いできないかしら?』
『はぁ・・・ええと、娘さんのサポートですか?』
響はリンディに仕事として娘のサポートをお願いされている。
娘とは言え、義理の娘でフェイトと言うらしい。
どこかで聞いたような気がしないことも無い。
というか、いつぞやの金髪少女が思い出されたがたまたま同姓同名なのだろうと深く考えなかった。
コア集めで疲れていて頭が働かなかったと言うのもある。
いや、この場にアイシテルがたまたま居なかったと言うのもまた災難であった。
アイシテルが居れば諌めていたものを。
響はそのままリンカーコアを一応見られないようにリンディから隠しつつも仕事を快く承諾したのである。
コレが後に面倒なことを引き起こすとも知らずに。
☆ ☆ ☆
「どうしてこうなった?」
『・・・なぜ私を呼ばなかった?私がいれば・・・響のバカな行為を止められたのに。』
リンディに呼ばれたその日。
艦に来て、響は驚愕した。
なんとなのは達一行がいたのである。
会うなんて毛ほどもにも思っていなかったので、ビックリしすぎたあまり、ちょっと呼吸困難に陥ったレベルである。
ちなみにアイシテルは響の体内にユニゾンしている状態。
こいつらをサポートしなくてはいけないのか・・・気が滅入り、彼女たちの姿を見た瞬間に隠れる響。
山田君がいないのが幸いだが、バリアジャケットの姿を一時的に変え、顔を隠せばなんとかなるかもしれない。が、山田君も後からくるとのこと。このままではまずい。
山田君はどんな手段にせよ響を認識する術がある。
顔を隠すだけではいつぞやの二の舞であろう。
となればどうするか?
一応プロの魔導師としてここに居る以上は「昔、喧嘩別れした友人が職場に居るので、仕事をしたくありません」などと仕事を放棄できるはずも無い。というか、魔導師というよりも社会人としてダメである。
いっそのこと年齢のことを持ち出して「9歳児なので戦いなんて怖いですぅ~」とでも駄々を捏ねてみようかと思ったが、ミッドではバリバリ戦っていた。
今更無理があるし、地球人をよく知らないリンディ達にとっては『地球人=なのは達』となっているため、何か違う事情があると勘ぐられる可能性も。勘違いなのであるが。
もとい9歳児くらいでもあれくらい意思がはっきりしてますよ~みたいな認識を持っているかもしれない。
でなければ、本来の9歳児を知っているなれば、である。
例え人手不足でも、なのは達に任せるようなことにはならないだろう。
もう一度言う。
力を持ってるからといって世界の命運を9歳児にかける馬鹿なんて漫画やアニメの世界の中だけである。
もともとそういう世界だったりするという異論は認める。
そういったもろもろの諸事情はこの際、置いておいて協力するにしても、問題がある。
仕事内容は「闇の書を守護する騎士人格の捕縛、もしくは消去」であった。
うん、無理。
そう響は断じた。
協力しておいていきなり対立勢力にいるとか、意味不明である。
しかもこっちとしてはこのままでははやてが死ぬことも理解している。
友人であるとも認めている。
友人が死ぬと分かっているのに、なぜその真逆の行為をするのか。
もちろん理由ならばある。
闇の書が完成すると一つの世界を滅ぼしかねないからであるが、それでも彼女たちははやてを諦めないだろう。納得しないだろう。
1人の主君のために自身の身はもちろんのこと、世界と主君を天秤にかけて主君に傾くくらいには彼女たち守護騎士四人衆は騎士らしくある。
響としても今まで酷くされた分、はやてに依存している部分が出始めている。
本来、戦いを好まず、ビビリであり、なおかつ将来的に嫌われると分かっているのにも関わらず。
例え巻き込まれても、他の巻き込まれ型主人公とは違い、まずは逃げることを考える彼がわざわざリンカーコアを集めているのは結局のところ、はやての笑顔がーーーというと少し素敵に過ぎる言い方か。
甘えてる。
そう言った方が正しい。
もっと優しくされたい。
ただその自分の満足を第一に、「どうせ、主人公がなんとかするだろう、チートオリヌシの山田君が修正してくれるだろう」という考えの下に、原作がずれることによって世界への滅亡への可能性が高まる懸念を無視して、はやてのために動いている。
結局のところ。
彼は単に自分のために。
自分にもっと優しくしてくれるように。
そのためだけに頑張っているのである。
多かれ少なかれ人とは見返りを求めるものだ。
仮に「何もお礼はいりませんよ、自分が勝手にやったことですから」という善人らしい人間がいたとしよう。
しかしこれは「人を助けたと言う満足感」を見返りに貰っていると考えることも出来る。
このような屁理屈を言っていてはキリが無いのだが、何がいいたいかと言うとだ。
彼の行為は人間である以上―――いや、動物である以上仕方の無いことで誰も責められないことである。
そしてそれは響自身も自覚している。
ゆえに響は世界の滅亡よりもはやてをーーー正確には自身に優しくしてくれる人間を優先する。
これにはもともとはこの世界は物語であったと言うそういった「現実を舐めている」感覚が抜け切っていないと言う部分もある。
すなわち、この世界に生きている人間はフィクションのようなもので、ゲームの主人公が途中で
そこで響がとった選択は。
「・・・勝負のどさくさに紛れて高町さんとフェイトとやらのリンカーコアも奪っちゃう?」
『本気で言ってるの?』
「いんや。八割くらい冗談。」
『・・・ダメだよ?次元犯罪者になりたくないでしょ?』
「わかってるってば。」
リンカーコアを集めて分かったことだが、これはひどく集まりにくい。
経験値稼ぎがやりづらいゲームなんて目じゃないほどに。
小ぶりの幻獣から奪うリンカーコアでは一行埋まるのがせいぜい。
モンハンで言う所のG級クラスの大型で良くて3ページ。悪いと1ページに満たないこともあった。
さらにこれは“通常”の場合。
やはり何の罪の無い幻獣達に影響を与えるのは気が引ける響としてはリンカーコアの一部を切除し、回収することにしていたため、それに拍車をかける。
無理に全てを取れば前にアイシテルが言ったような副作用が出るのは分かりきっている。
むしろなのはがやられたように、やられてなお魔法がすぐに回復、そしてまるで無かったことのように振舞えるのはひとえに闇の書のリンカーコアの摘出技能が卓越しているからできること。
しかし、そんなものを持たない響としてはより魔力を集めづらくしていた。
ついつい、なのはやフェイトのリンカーコアを集めようと、ちょっと本気で魔が刺しかけたのは誰も責められないというものだろう。
何はともあれ、響を悩ませるタネはそれだけではない。
はっきり言おう。
ここの艦の戦力は過剰である。
管理局のモブが一生かかっても差を詰められそうに無い才能持ちが響を始めとして、なのは、フェイト、クロノ、山田君、そして・・・
「くそ・・・いつぞやの鬼婆もいるぞ。」
『そら、いるでしょうよ。
だって、原作メンバーの一人だし。』
プレシアテスタロッサ。
フェイトの母である。
いや、今はアリシアテスタロッサの母か。
フェイトはちらちらとそちらを伺いつつも、ため息を吐く。
以前、軽く触れたとおりプレシア事件は収束したが、本来は起こりえぬことであり、プレシアはここにいないはずだった。
それらはひとえに山田くんの介入の結果である。
しかしプレシアがここにいるということに違和感を持つことができない響たちは元からプレシアが原作組で、いつぞやのように響をハメてボコろうとしたという誤解をより深めることになるのだった。
なお、現在は自分の所業に反省はしたものの、フェイトを娘としては見てない。
人形としては見てないものの、娘としては見れないのである。
しかし、フェイトの幼少の頃の記憶は全てアリシアのであったもの。
フェイトからすると唯一の無二であるが、あくまでもフェイトはクローン体で記憶を受け継いだだけに過ぎない。
昨日パンを食べた。
その記憶が人格に影響を与えないように、人格に影響を与えるのは周りの環境や人が第一である。
アリシアの記憶こそ受け継ぎ、口調や嗜好は一緒であるもののやはり細かい部分で差異が出てくる。
プレシアは自身がフェイトを作り出したとして、その罪から逃げようとはしていないものの、別人を娘と言ってはフェイトにとってもアリシアにとっても自分の母性に対しても大変失礼なことだ。
ゆえにフェイトを我が子ではなく、1人の人間としてみている。
だが、そんな関係に満足いかないのがフェイトのようであった。
さてはて、なぜこの話をしたかというとこれまた問題なのである。
彼女。
今までやってきた罪を軽くするためにアースラ艦に奉仕に来ていた。
司法取引といってもいいかもしれない。
「罪を軽くする代わりに反省した証として管理局の手伝いしてよね!」
砕けて分かり易く言うならばそういうこと。
もちろん誰しもがこういった取引を出来るわけではなく、例外であり能力がある人間に限られる。
大魔導師であった彼女はもちろんのこと例外である。
山田君の忍術で生き返ったアリシアと一緒に過ごすためにもプレシアはやる気満々。むしろ今回の守護騎士を全て自分で捉えてやるという意気込みなのだ。
いまだ彼女が前戦に出てないのはなんとか山田君が押さえ込んでいるため。
ここに山田君がいないのも裏からなんとかかんとかやっている。というわけである。
一番無難なエンドへ向けて山田君は原作をあまり改変したくない。
いや、仮に。
ここではやてを捉えたとすればはやては死ぬしかない。
一つの次元世界と少女の命。
どちらを重視するかは火を見るよりも明らか。
さらには管理局と言う仮にも一般人の安全を守る仕事をしている彼らに博打と言う概念は存在しない。
いちかばちかなどというのは本来、一番避けられてしかるべき手法なのだ。
すなわちはやてが管理局に見つかるとそれでもうはやての人生はバッドエンド。
かといって山田君が下手に介入して何か一つでも歯車が狂えば一番避けるべき最悪なカルマエンドとなる。
はっきり言おう。
そこに響まで混じると、まずもって守護騎士達に勝ちは無い。
いや、彼女たちに味方する勢力もある。
それは以前の闇の書事件を担当し、なおかつ今回使い魔にはやての周りを探らせている管理局グラハム提督だ。
が。
彼は一度闇の書を解放した後、そのまま宿主であるはやてを永久的な封印処理に処するつもりである。
これまたはやてにとってはバッドエンドである。
響はどうするべきか迷ったまま、戦場へと身を投じた。
☆ ☆ ☆
結局、響は甲冑のデザインを変えて戦うことにした。
双方に対して少なくともすぐにばれるということはないはず。
戦いながらどうするかを考えることにしたのだ。
響がサポートするのはフェイトのほう。
なのはへはプレシアが行く。
これはリンディがフェイトとプレシアの関係を鑑みての組み合わせである。
2人一組で1人の守護騎士を捕らえると言う作戦―――というほどでもない基本方針だ。
ちなみにさすがの山田君もこれ以上プレシアを抑えるのは無理だった。
「よ、よろしくお願いします。」
「・・・。」
フルフェイスの甲冑を身に纏っている9歳児(身長約120センチ)に戸惑いつつ、フェイトの挨拶に首肯して答える響。カチャリと鎧が擦れる音がする。
一応、声は出しはしない。
響にとってはいまだフェイトは性悪女である。
出来うることなら顔も見たくないレベルだ。
さて、守護騎士達が現れたのは海鳴市上空。
下っ端局員が包囲網を敷き、クロノによる範囲攻撃後、まだ立っているようならば弱らせて捕獲。それが今回の仕事である。
「お願い、バルディッシュ。」
『セットアップ。』
セットアップするフェイトたち。
戦場に出る前にやっとけと思った。
そして発現したバルディッシュとレイジングハートはその見た目を変えていた。
『カートリッジシステム・・・これは本格的にまずいかもね。』
「・・・。」
響の体内にいるアイシテルがぼやく。
どんどんはやてが捕まる可能性が上がっていく。
響は選択した。
「しょうがない。このまま適度に力を抜いて戦おう。」
『いいの?それだとはやてちゃんが・・・』
「・・・どうしろっていうんだよ。ここでシグナムさんたちの味方に付いたところでどんな理由があるにせよ犯罪者・・・前科がかかることは間違いない。世の中ってのはそんなに甘くない。八神には悪いが・・・俺にそこまでする理由はないはずだ。」
『・・・分かった。響がそういうなら仕方ないね。』
「・・・叱らないのか?」
『女の子の笑顔すら守れないのかっ!?って感じ?
少年ジャンプじゃあるまいし、そんなことしないよ。この場ではやてちゃんの味方に付かないのは無難ってところ。はやてちゃんが犠牲になるのは仕方の無いこと。もちろん今回の件は後を考えなかった山田君のせいもある。というかそこが一番だから響は気にするべきでないよ。もし山田君がプレシアテスタロッサを救わなければ響がこの場でわざと負けてハイ終了、だったんだから。むしろ良くやった方だよ。リンカーコアを集めて協力したことがバレればそれだけで捕まりかねないんだから。』
「・・・。」
『それとも叱咤激励して欲しかったの?』
「ああ・・・そうかもしれない。」
『甘ったれたことを言うんじゃない。自分の行動に他者の理由を借りてどうするの?自分で選択した結果、はやてちゃんの味方をすることを諦めた。後悔しようと罪悪感にさいなまれようとそれが響の選択である以上、私に口を挟む筋は無い。』
「・・・ああ、そうだな。せめてばれないように手を抜こう。」
『・・・響は変わらず冒険をしないね。』
「それが俺だからな。」
アイシテルの言葉に非難の色は含まれていなかった。
そんな念話をしていると、何時の間にかシグナムも来ていてフェイトが戦っていた。
カートリッジシステムを搭載したため、シグナムたちが劣勢である。
どんなに経験が技術が年季があったとしても、圧倒的な力押しの前にはさすがに歯が立たない。
「ここで・・・つったってるわけにも行かないか。」
『どうしたって過剰だよね、戦力が。』
響も戦いに加わる。
「一対一・・・かと思ったのだがな。」
「・・・。」
シグナムは辟易としつつも、絶望的な状況にも関わらずも。
その双眸にはいっぺんたりとも弱い光は存在しなかった。
勝てるはずが無いのに。
負ける道しかないはずなのに。
微塵も負けるつもりの無い顔だ。
なぜそこまで頑張れるのか。
なぜそこまで気張れるのか。
なぜそこまで体を張れるのか。
心底から理解できなかった。
彼女達の話によるとたかだか半年にも満たない付き合いだそうだ。
仕えるべき主―――主君だからといって、そこまではやてに心酔する理由はなんだというのだろうか?
プログラムとして組み込まれているからでもなく、闇の書の機能の一部だから、というわけでも無い紛れも無い強い意思を感じた。
そんな人間がいる彼女達に響は嫉妬した。
「どうして・・・」
ついと言葉が漏れる。
「どうしてそんなにがんばれる?」
「・・・それが我が使命―――いや、そんな無粋な言葉で飾るのも味気ない・・・―――助けたいーーーと思った・・・いや、”決めた”からだ。」
戦場に出た人間が悠長に話に付き合うのは意外だったが、それは少しでも時間を稼いで自分の体力を回復させるのと自身を激励する意味もあるのだろう。
助けたいから。
そう決めたから負けられない。
そう言葉に出して自分を激励する。
響の声は鎧でくぐもっていて、幸いに気づかれなかったがそれは最早どうでも良かった。
羨ましい。
羨ましい。
羨ましい。
ただそれだけが胸を埋め尽くす。
自分の身を第一に考える響にとってそれは酷くまぶしく妬ましく。
なによりも羨ましいことだった。
果たして響が同じく追い詰められた時、彼女のように頑張れるのだろうか?
自分の醜さに嫌悪しながら、しかしいまだ彼女達に味方する気になどなれない。
響は腰に刺さる一振りのロングソードを抜いた。
とにかくこの人の目の前から消えたかった。
早々にやられて消え去ろう。
『っ!?
ひびーーー』
突如、腕が視界に入った。
なんだこれは?
「あぐ・・・が・・・あ・・・」
目の前には腕。人の腕が自分の胸から突き出ているように見えた。
そしてその腕の先には光り輝く一つの球体。
最近になって見慣れるようになってきたリンカーコア。
響のリンカーコアが燦然と輝いている。
「このまま闇の書が捕らえられては困るのでな。そしてついでに貴様のリンカーコアも頂いておく。」
「・・・おま・・・え・・・は勇者王?」
響はとあるアニメで勇者王と呼ばれた彼と同じ声を聞き、とぼけたことを言ってそのまま意識を閉じた。
なんとなく動いた視線の先には同じように勇者王にプレシアテスタロッサがリンカーコアを取り出されていた。
ああ、ここで魔力を失えば俺の顔が見られるな。と暢気に考えつつ。
感想返信(感想を簡潔に短くまとめてます)
>リンカーコアって持てるものだっけ?
A,とりあえずアニメでは守護騎士の四人がバラバラの場所で集めているってことから持ち運びできるんではないかなぁと。
なのはの胸からシャマルの腕が突き出た時も、示し合わせたかのようにシャマルの手の上にリンカーコアが浮いてたわけですし。おそらく魔法的な何かです。多分。
そのへんはあまり深く考えてません。
>~応援してます
ありがとうございます。
感想は励みです。力です。勇気です!!(?)
>主人公がはやて家を除くみんなに苦手意識を持ってるのは前もそうじゃなかった?
A,今作ではフェイトに対する苦手度、というか主人公はフェイトに敵意すら持っています。
始めはいがみ合っていたところから徐々に仲良くなる。というのが好きなんです。作者は。
だからといって別にフェイトがヒロイン枠というわけではないです。
前にも書いたと思いますが、まだ未定。ヒロインに決定したらそのへんの誤解を活かして書けたらなぁというレベル。
>ヴィータデレないのかな~
A,すまなんだ。作者はヴィータよりもシグナム派なのです。仮にあったとしてもシグナムデレだよ!この作品ではかなり脇役です・・・うむ。