とあるチートを持って!   作:黒百合

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皆さん色々と含むところがあるようで

 

「お見苦しいところを。」

「ほんと見苦しかったからね。」

「早くアイシテルが言えば良かっただけじゃんっ!!」

「まさか記憶が飛んでるとは思わなかったし。」

「うちからすると、かまへんよ?

面白かったし。」

「八神、貴様、俺はオマエといつか拳で語るーーー日なんてこないですよねハイ。」

 

はやてに拳で語ろうぜ!をしようとしたらシグナムとヴィータに睨まれた。

 

「八神て・・・うちこの名字好きやない。可愛ないし。名前で呼んだって。」

「何を言う。名前の方も大してかわいくはーーーありまくるッスはいっ!!」

 

睨まれたので。

 

「それにしても昼飯が豪華だな。

いつもこんな感じに食べてるの?」

 

食卓の横で寝かされていたわけだが、食卓にはなんか手の込んだ料理がずらりと並んでいる。

そして近くにはザフィーラが犬要の餌皿で伏せて待っている。至極気になったのだが、オマエはそれでいいのか?ペディグリー○ャムでいいのか?とか餌のメーカーがそこでいいのか的な意味ではない。

そのポジションでいいのかという意味である。

 

「何言うてんの?

お客さんが来たら普通はちょっと豪華になるやろ?粗末なもん出したら恥ずかしいやん。」

「お客さん?

寝てる間に誰か・・・まさか奴らの内の誰かかっ!?

これはいかんっ!!

アイシテル、早々に帰るぞ!!ほら、何のんびりしてんの!?そして“こいつマジで言ってんの?せっかくの美味しそうなご飯を食べずに?”みたいな目をやめいっ!!

アンタはずっと見てきたでしょうがっ!!ここでやつらに俺の醜態がばらされた場合、月村家の悲劇の二の舞だ。あんな気まずい状況、とっとと逃げるに限る。ていうか何、あんたは普通にお客さんポジションに付いてるのさッ!!」

「響、落ち着きなさいよ。別に誰も来てないから。」

「・・・は?じゃあどうしてお客さん?

ああ、なるほどアイシテルがお客さんってこと?確かに魔法を良く知らない人間からしたらーーーいや、あんた不法侵入者じゃね?

ま、まて八神っ!!

アイシテルは不法侵入者じゃなくてだなっ!!これにはふかーい事情があって・・・だからこそとりあえず警察は面倒なので呼ばないで欲しいと願ってみたりっ!!ていうか手遅れですかッ!?」

「凄まじい速さで自己完結してるとこ申し訳ないやけど、それら全部勘違いやから。」

「なん・・・だとっ!?」

「確かにアイシテルさん?勝手にアイちゃんって呼ばせてもろとるけど、彼女はお客や。一応、デバイスうんぬんてのも聞いた。不思議なこともあるもんやなぁ。本のこともそうやし・・・」

「そ、そうなのか?だからアイシテルはそのおいしそうなご飯を1人で食べようとしている・・・と?

一応、主人である俺をほっぽって?

1人で?

いや、まぁいまさらこの程度で泣きはしないけど・・・酷く悲しい。なによりアイシテルにほっぽとかれたのが一番辛い。やっぱりちょっと泣きそう。でも泣かない。だって男の子だもんっ!!」

「いや、あんたもお客や。つかキモイで?」

「まさかぁ!?あはははは、なかなか面白いジョークだ。」

「いや、家の主人である私が言うとるのになぜまさか!なんて言葉が出るん?ていうかどこに笑う要素?」

「きっと何か誤解があると思う。というわけでまずはどうして俺をお客だと思ったのかを聞かせてくれ。」

「え?

いや、そら、うちにきたんやからお客さんやろ?」

「うむ確かに・・・うん?あれ?」

「はい?」

「いや・・・何も・・・変じゃない?」

「とにかく座れよっ!はやての飯が冷めちゃうだろ!!」

「ああ、ごめんなさい、赤いの。」

「赤いのじゃねぇ・・・ヴィータだ。次にそのふざけた名前で呼んだら殺すかんな。」

「殺されそうになるとか、やはり俺はお客さんではない?」

「いや、それは響が悪いでしょ。」

「アイシテルはどっちの味方なんだよっ!!」

「響。」

「・・・え。あ、そう。えと・・・ありがとう。でもそう真顔で言われるとこっちが・・・」

「照れてる響君は可愛えな。」

「だまれ八神。照れてなんか無いっ!!」

「せやから名前で呼べと言うてるのに。」

 

なんだかんだで響の目が覚めるまでゴハンを食べるのを待っていたのである。

アイシテルはもちろん、はやても守護騎士達も。

それを聞いた響はまたもや泣いた。

 

ぼろぼろと涙を流しながら。

 

「お、おれ゛を感動させようとしたってそうはいがないんだがらな゛。」

「え、あれ?なんで泣くん!?

えええっ!?ちょ、ちょっとっ!?ええと!?」

 

はやてが戸惑い、守護騎士達も戸惑う。

そらそうである。

普通にお客さんを歓迎しただけで、起きるのを待っていただけで泣かれるのだから。

アイシテルだけがそんな響を聖母のような笑みを浮かべて見守っていた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

帰り際。

 

「八神・・・その、ありがとう。」

「何言うてんねん。お客さんを招いたくらいで泣かれてもうちとしては良く分からんかったわ。礼を言われてもいまいち良く分からん。」

「関係ない、俺が言いたいから言うんだ。」

 

ちょっとオリヌシ臭い言葉を吐いたが、よくよく考えるとあまり格好よくない。

 

「ていうか名前で呼べい。昼ゴハンご馳走してやったんやからそれくらいええやろ?」

「はぁ?

そこにこだわるねぇ・・・高町さんといい、月村さんといい・・・結局俺は呼び合うことはまかりならんかったがな。くそ、山田のやつめ。」

「山田?」

「ハーレムを無自覚に形成し、次々と美少女達をその毒牙にかけるふてえ野郎だ。八神も会ったら気をつけーーーいや、俺が言うことでもないし、言えたものでもないな。」

「はぁ?」

「んじゃ、もう用事は無いから会うこともないだろうけど、さようなら。」

「え、もう来てくれへんのっ!?」

「ん?

当たり前じゃないか。もともと話があって来た訳だし。・・・これ以上優しくされても困る。どのみち別れが来るし。」

「なんて?」

「いや。とにかくそれじゃね。」

「そ、そうけ・・・残念やなぁ、せっかくの友達が出来る思うて腕によりをかけたったのに。」

「う゛」

 

響の良心が痛み出す。

が、響としては仲良くするわけには行かない。

理由はもちろん原作組みだ。

イタイけな少女の胸を揉みしだいた。なんてことがはやてにも伝われば、少なくとも仲良くは居られまい。

むしろ軽蔑の眼差しを受けること請け合いである。

が、さすがにゴハンやアイシテルの擬人化の強力など受けて、身に覚えの無い恩だとか好意を一身に受けるのもバツが悪い。

せめてものお礼としてシグナムたちに協力することにした。

物語がどうなるにせよ、リンカーコアを集めるを手伝うくらいならば問題ないと判断して。

まずかったら山田君が何か言ってくるだろう。その時に全力で逃げてあとはホッポってしまえばいい。

 

蒐集についてだけは秘密にしたいようなので、シグナムに念話を送る。

 

『シグナムさん。なんだかんだでこっちとしては過剰な恩返しをされてしまった気もしないことも無いので、リンカーコア集めくらいなら手伝う。』

『いや、せっかくの申し出はありがたいが、それでは主はやてが悲しむ。受けすぎた恩を返すというならば、たまにはこうして家に遊びに来てもらいたい。』

『いや、それは・・・』

『・・・何か事情があるのか?』

『別に無いと言えば無いですし・・・あるといえば・・・あるような?』

『管理局も出ている。お前も犯罪者の仲間入りはしたくはあるまい?』

『変装すればいいのでは?』

『気持ちだけ受け取っておく。』

『・・・さいですか。』

 

受けすぎた恩を返そうと思ったけれど、いらないというならば押し売りするほどでもあるまい。

家に遊びに来るというのは・・・ちょっと考えてからで。

主人公組みと知り合うまでならいいかなぁとか思いつつ。

響は帰宅するのであった。

 

 

学校をサボったことで文香に怒られたというのは余談。

アイシテルのことで「娘が出来たみたいで嬉しいわ、アイちゃん・・・でいいかしら?」「大丈夫だよ、文香ちゃん。」「ふふふ、こうしてちゃんづけで呼び合うと昔を思い出すわ・・・」というのもまた余談である。

 

 

☆ ☆ ☆

 

一週間後ほど経ち。

 

「ふっ、結局来てしまったな。」

「いらっしゃい、響君。もうこうへんかと思ってたから嬉しいで。そしてかっこつけてるところ悪いけど、ちょっと気持ち悪い。」

「なんだかんだで居心地が良かったみたい。ごめんね、はやてちゃん。気持ち悪くて。」

「別に気にしてへんし、面白いからええねん。アイちゃんは今日はあのばりあじゃけっと?とかいうのじゃないんやな?」

「あれは間に合わせだったし、普通に街中を歩くのは恥ずかしいってば。文香ちゃんのお古の服を仕立て直してもらったの。」

 

アイシテルの服は簡素なワンピースとハイニーソックスだ。ニーソックスは外せませんよね?

 

「ふみかちゃん?」

「響のお母さん。すっごく若くて綺麗よ?響の能力もあるけどね。」

 

文香は非常に若々しい。

響のおっぱいチートによるアンチエイジング、もとい不老ゆえに。

母親のおっぱいを揉むのは非常に居たたまれないが、響としては断れないのだ。

常日頃から非常に愛されてるゆえに母親の望むことならば基本聞く。なのはの件でも苦労をかけてるし。

ちょっとマザコンが入っている。この世界に生まれた当初は母親もヒロイン候補だったというのに、時の流れは素晴らしい。

いや、響が着実に変わっているのだろう。概ね良い方向に。

 

「へぇ、どんなんか見てみたいな。」

「今度遊びに来たら?文香ちゃんも話したがってたし。」

「そうさせてもらう。てか能力て?」

「おっぱいチート。」

「はっ?」

「おっぱいを揉むことによって色々な効果をもたらせる能力よ。」

「・・・なんなん?その変な能力?ほんま?」

「私は嘘つかないもの。」

「俺は嘘をつくみたいな感じで言うの止めてくれないっ!?」

「もまれてみる?」

「いや・・・遠慮しとく。」

「賢明ね。」

「・・・俺はつっこまんぞ。」

 

今日はちゃんと学校を終えてから遊びに来た。

よってすでに夕方。

 

「シグナムさんたちは?」

「シャマル以外はみんな出てっとる。一緒にいて言うてもダメみたいやな。」

「その言い草だとまるで彼女たちのために言った・・・感じに思えるね。」

「そうなの?八神。」

「・・・まぁそやな。やたらと疲れた様子で帰ってくるから・・・ああ言えばちょっとは自分の体を大事にしてくれる思うたんけど・・・結局、早く帰るようになったとは言え、むしろ疲労の度合いは濃くなった気がして・・・」

 

それはそうだ。

はやてを心配させまいと早く帰る場合、その分リンカーコアを短い時間で集めなくてはならない。

多少以上の無理はしていると考えるのが普通だ。

 

そうしてのんびりリビングで話しているとドタバタとシャマルが降りてきた。

 

「ごめんなさい、はやてちゃんっ!ちょっと急用があってーーーあら、2人とも来てたの?出来ればお茶を入れてあげたいんだけど今は・・・」

「大丈夫、お構いなく。」

「・・・。」

「シャマル最近忙しすぎひんか?もっと自分をーーー」

「ごめんなさい、はやてちゃん、お話なら帰ってきてから聞かせてもらうから、それじゃ、2人もごゆっくりっ!!」

 

そのままシャマルはコートを羽織りつつも玄関を駆けて行く。

 

 

「シャマル・・・」

 

はやての寂しそうな声が嫌に響き渡った。

 

☆ ☆ ☆

 

「よし、アイシテル。俺たちも行くぞ!」

「・・・まったく。黙っていたと思ったら・・・いいの?」

「何が?

八神が困っているというならば助けるのもやぶさかではない!」

「・・・ふふ。まあいいか。というわけではやてちゃん。私達も出かけてくるね。」

「べ、別にええけど・・・何?いきなりどこ行くん?」

「ちょっくらそこまで。」

 

寂しそうなはやてを見てビビリな響としては頑張った。

いずれ軽蔑される未来が待っていようとも、目の前の女の子の曇った顔を晴らすため!

響は守護騎士の手助けをすることを決めたようだ。

不思議と響が格好よく見える!!

 

☆ ☆ ☆

 

「はぁ・・・見直したと思ったらこれかい。」

「はっ!何を言う。これも立派に八神を助けてるじゃないか。」

 

さて、あそこまで意気揚々として出かけた響が向かった先は地球と同じような管理外世界。しかしリンカーコアを持つ動物が多い世界である。

 

「てっきりシグナムたちを助けに行くと思ったんだよ、私はね。」

「・・・?アイシテル、ボケた?

そんなことしたら高町さんたちに会ってしまうかもだろう?」

「いや、そうだけど・・・その気まずさをはやてちゃんのために我慢するだろうから格好いい・・・というか見直したというか、でも見下げたと言うか・・・ま、響だもんね。」

「それに今度こそ山田君も容赦せずに襲ってくるかもしれん。そんな恐ろしい戦いに身を任せるほど俺は追い詰められていないっ!!」

「いや・・・そうだけど・・・はやてちゃんのために・・・」

「だからこれは八神のためでしょ?

リンカーコアを集めろやぁ!っていう催促の元、闇の書が八神の体を蝕んでるわけで・・・」

「うん・・・まぁこれも助けになるし、いいか。」

「変なアイシテルだな。」

「逃げ腰が板についてきてるの気づいてる?」

「違うな、適材適所というやつだ。第一、シグナムさんだって気持ちだけで良いって言ってたじゃん?そこで無理に善意の押し売りをしても昔の二の舞になりかねん。」

「・・・今こそ押し売りの時でしょうに。あ、そっちいるよ。」

「おおう・・・予想以上に凶暴そう。こいつは止めにして、むこうのヤツにしよう。」

「いや、あっちは小さいから1行分にもならないと思うよ?」

「アイシテル、俺はな。冒険ってのが嫌いなんだ。八神が病を患っている今。手堅く行くのが正しい選択だと思うんだけどどうよ?」

「ふぬけ。」

「ちょっ!?

だ、だからこれは手堅く行くためであって、決してあの幻獣が強そうだからとかじゃなくてだな。」

「女の子としては日ごろ情けなくてもいいから、ここぞという時は頑張れる男の子の方がモテるだろうなーーー」

「よし、今日は冒険したい気分だ。つーわけであいつからリンカーコアを貰おう!」

 

といいつつ、ちらちらとアイシテルを見る響。

分かり易いやつである。

ちょっと腰が引けてるのはご愛嬌。

 

「・・・くす。」

 

その分かりやすさについ笑みが溢れるアイシテル。

 

「よーし、やるぞ!やってやんよっ!!」

「ほら、とっとといくっ!」

「あがふっ!?」

 

お尻を蹴っ飛ばして、響を敵の下へ送り込む。

 

「ほわぁぁああああっ!?

やっぱりこええええええっ!!

ち、近くこないでぇえええええっ!!ブレイカー!ブレイカー!!もっとブレイカー!!ぶれいかぁぁああああっ!!」

 

焦って収束砲を連発する響。焦ってでたらめに撃ってるので一撃も当たらない。

魔法の威力だけは凄いので、それを見て幻獣は逃げていった。

 

「・・・はぁ、時間がかかりそうね。」

「・・・ぶれいかー、ぶれい・・・かぁ?

おおう、いつの間にか逃げてたっ!?

ふふふ、この俺に恐れをなしたのかっ!!ざまみろっ!!見ててくれたかっ!?アイシテル!!」

「見てたけど全然ダメ。当たってないでしょ。ほら、次。」

「ま、まだやんのか・・・正直勘弁してもらいたいんだが・・・」

 

またちらちらとアイシテルを見て、響は嘆息。

武器を構えて再度、獲物を探しにいくのであった。

幻獣よりも山田君と相対した時のほうがよほど危険な目にあったにも関わらず、見た目で怖い幻獣に恐れを生すのは響のチャームポイント・・・だったら良かったのかもしれない。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「ただいまぁ・・・というかお邪魔します。」

「響君、おつかれさん。

ちょっくらそこまでという割には泥まみれだったり、へとへとになってたりでどう見ても心配なんやけど?」

「ちょっと未開の森まで行ってただけのこと。」

「日本にそんな場所あるんかいな?」

「世界の果てにはあるもんさ。」

「・・・はぁ?そうなん?確かにそら一つや二つくらいはあるかもしれへんけど・・・」

「とりあえずシグナムさんでもヴィータでもいいから呼んでくれる?」

「あがっていかへんの?」

「家の中に泥を散らすわけにはいかないだろ。この気遣い、誉めてくれてもいいんだぞ。」

「いや、それくらいは当たり前やろ。」

「・・・そうけ。ナデナデしてもらいたかったのだが。」

「・・・んま、そういうなら・・・こう?」

「ば、ばかたれっ!ほんとにやるやつがあるかっ!!」

「え、そ、そうなんっ!?ていうか、せっかく撫でてやったのにどうしてそっちが切れるんや!!理不尽やろ!?」

「・・・。」

「どうしたの?アイシテル?」

「・・・別に。私には言わないのね。」

「何を?」

「うるさい。」

「・・・はっ!まさかやきもーーーがはっ!?」

「うるさいって言ったでしょ。」

「だ、だからといって鳩尾はやりすぎだと思います。」

 

アイシテルはちょっとだけ嫉妬した。

懐いていた犬が来客に尻尾を千切れんばかりに振っている姿を見たときのような、アレな嫉妬心ではあるが。

 

「騒々しいな・・・む、響か。それは・・・」

「できることをと思ったんだけど・・・」

 

響はアイシテルに持ってて貰ったリンカーコアをシグナムに渡した。

 

「・・・。」

 

シグナムはそのまま響のいでたちを見る。

そしてふっ、と笑った後。口を開いた。

 

「すまない。いや・・・礼を言う。ありがとう。」

「よ、良かった。・・・ええと本当に迷惑じゃないよね?」

「迷惑なはずがあるまい?」

「・・・そう、それなら本当に良かった。」

 

内心やはり迷惑なんじゃないだろうか?と不安になっていた分、響は心底から安心する。

普通ならばこのくらいでそこまで不安になることも無いだろうが、響の場合はちょっと特殊であり、いまだ勘違い癖や独りよがりな部分がままある。それを自覚してるからこそ湧き上がる自身の無さはそうそうに消すことが出来ない。

“自分のしてることは本当に相手にとって嬉しいことなのか?”という決して良いとは言えない疑念をーーーどんよりとした気持ちを胸に持ったまま、響は他者と触れ合う。それはなのはの一件以来、ずーっと心の奥底にあるトラウマである。

なんだかんだでシグナムたちの方に援護へ行かなかったのは、自分が足手まといになったり下手に気遣わせたりした場合を恐れているためだ。

相手も自分も複数の場合、チームワークというのが出てくる。

一対一に持ち込むように戦ったり、仲間を巻き込まないように戦ったり。

そうした戦闘の動きを感じ取れなかった場合、味方どころかむしろ味方するべき相手を自分のミスで殺しかねない。

そんな危惧があるために響はそちらへ行くのを良しとしなかった。

 

 

ほっと息をつく響を見るアイシテルの目は悲しそうにゆがめられ、その過剰な反応に人の気持ちに敏感なはやては疑念を覚え、シグナムは戦闘による疲れと判断した。

 

「んじゃ、今日はこれで。次に来るのは・・・来週くらい?」

「そうなん?別に毎日来てくれてもええんよ?」

「それはさすがに・・・情が移りすぎるというか・・・」

「なんて?」

「いや、なんでも。」

 

 

あまり仲良くなると遠くない別れが寂しくなる。

今でもそのことを考えるだけで十分に寂しいのだから、これ以上仲良くなったら月村さんの時のように・・・いや、それ以上に号泣してしまうに違いない。

だからこそ響ははやてを名前で呼ばない。

意識的に呼ぼうとはしないのだ。

 

響はそのまま何も言わずに帰った。

 

「あ、ちょいまち、風呂に入っていけば・・・」

 

はやての声は聞こえないフリをした。

 

 


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