~マミ宅~
「ヤメテェェーー!!!!!私の、私の魔法少女の変身シーンが……ああぁぁっ!!!」
ゴロロロロ!!ゴロロロロ!!
「ヒック、酷いよキュウべぇ、こんなの……あんまりだよ!!!」
「く、黒崎君が鹿目さん見たいなピンクドレスを……うええぇぇ!!!」
ドサッ
「オイこらキュウべぇッ!!どうしてくれんだ!おれ、自分がフリフリなリボンのドレスに変身するシーンが頭に浮かんじまったじゃねぇかッ!!!」
『ま、全く…訳が、分からないよ』
現在、マミの部屋ではカオスな状況になっている。
原因はキュゥべえがクロトに『魔法少女になってよ』の一言だ。
マミは自分の変身シーンにクロトを重ねてしまい錯乱し転がり、まどかは泣き出し、ほむらもマミと同じ様な想像したのか、両手を床について吐きそうに苦しんでいた。
そして、クロトはその原因を作り出したキュウべぇの首を締め上げている。
── 一時間後──
キュウべぇの説明でようやく全員が落ち着きを取り戻し、胸を撫で下ろしていた。
どうやら契約時、契約者のイメージを基に魔法衣を構成していくらしく、別にフリフリドレスが必須ではないようだ。
「あー焦った。
これからドレス着てチェーンソーで魔女を切って行かなきゃならねぇのかと思った」
『どうしてそうなるんだい?』
「でも、キュゥべえ。黒崎君『クロトでいいっすよ』そう?じゃあ私もマミで良いわ。それで、クロト君は確かに貴方の姿が見えるけど、契約何て出来るの?」
『僕も彼が僕の姿が見えた事には驚いたけど、契約するほどの資質は無かったさ……でも、彼があの“眼”になった瞬間、資質は跳ね上がった。まどかやマミに匹敵するくらいにね。
僕もこんな事は初めての体験だよ』
その言葉を聞いたマミは、何かを考えるように指を顎に当てて腕を組んでいる。
「…そんなことってあり得るのかしら?」
『事実目の前で起きてるからね。これが現実なんだからどうしようも無いさ』
「クロ君、そもそもその眼は何なの?」
「分かんねぇ。ほむらと逃げて油断して鎌で斬られそうになったら、急に頭に変な風景の光景が浮かんだんだよ」
「光景?」
ほむらはクロトの観たモノが気になり、首を傾げて聞いてみた。
「ああ、森の中にある滝でな。その滝壺に大岩の上に人が居て、この眼について少し教えてくれたんだよ。滝の音で所々聞こえなかったが。…で、斬られそうな元の光景が戻って来たんだけど、それから周りがゆっくりに見えて鎌を避ける事が出来たんだよ。そこからはもう、この眼になってた」
「へー、不思議な事もあるんだね~。それで? 教えてくれたんでしょ?
その眼は何て言うの?」
「写輪眼って言うらしい」
『写輪眼……聞いた事も無いね。まぁいいや、それでクロト。さっきの契約の返事を聞きたいんだけど』
「……あれか」
『うん♪僕と契約して魔法少女になってよ♪』
「「「「……………」」」」
キュウべぇの言葉を聞いた全員が何とも言えない、苦虫を噛んだ様な苦い顔をしていた 。
『どうしたんだい?』
「なぁキュウべぇ。その『魔法少女』ってヤツ何とかなんねーか?男が魔法少女って言われて誰が嬉しいんだよ」
『別にいいけど、何って呼べばいいんだい? 基本、僕は何でも構わないよ』
「そうねぇ。魔法少年じゃ呼びにくい上に、何かシックリ来ないわ」
「そうですね。……それじゃ魔法先せ『それは止めろ!!』うぅ…じゃあほむらちゃん、何かない?」
「え?わ、私ですか!?」
「なんか、話が進まないからほむらが言った奴でいいや」
「ええ、と……それじゃ病院で読んでいた小説からなんですけど『魔道士』なんてどうでしょう」
「………うん、いい感じだな。まどかとマミさんは?」
見てみると二人は頷く。
どうやら反論は無いようだ。
『それじゃあ改めて聞くよ。僕と契約して魔道士になってよ♪』
「それは良いんだが契約の内容はなんだ?」
そう聞くと代わりにマミさんが簡単に教えてくれた。どうやらキュウべぇの契約は何でも一つだけ奇跡を起こせる願いを叶える。しかし代わりに、魔道士として魔女と戦い続けてくれないかというモノだった。……この時、心のどこかで何か変だと俺は思っていたが、キュウべぇと戯れるまどかを見てそんな事は忘れてしまった。
「願い事、ねぇ……何でもいいのか?」
『勿論さ。それが命を賭けて叶えるに値するなら』
「…………」
『命を賭ける』その言葉を聞いたクロトは、此方を見ている三人を見て何かを決意した眼になり、キュウべぇに語りかける。
「……なぁキュウべぇ」
『なんだい?』
「俺さぁ今日みたいな日常が一番好きなんだよ。朝、まどかの家で詢子さん達と朝飯食べたり、さやかや仁美と一緒に通学して先生をからかったり、ほむらがやって来て皆が笑い合ってバカしてるのがな」
「クロ君…」「黒崎君…」「ねぇ私は?」
「そんな日常を『私!私も、ムグっ』『マミさん今良い所ですから!』『空気読んでください』護れるならこの命を賭けても構わないと、俺は思うよ」
『そうか……でも良いのかい?』
「何がだ?」
キュウべぇはクロトから視線を外し、見守っていた三人に顔を向け、
『向こうでマミが口を塞がれながら仲間に入れて欲しそうな目で、さっきからずっと此方に視線を向けているんだけど……』
「問題ない。それがマミさんの日常だからな」
「ええぇ!!?」
『そうか、それじゃ改めて契約の話だけど、写輪眼のままで願い事を言えばいい。その時、君の魔道士としての姿を強くイメージするんだ』
「了解。……じゃ、いくぞ」
──写輪眼──
『黒崎玄人。君はどんな祈りで、ソウルジェムを彩るんだい?』
「…俺は」
クロトの脳裏に色々な人達の顔が浮かんだ。
(父さん、母さん、まどか、詢子さん、知久さん、たっくん、さやか、仁美、先生、クラスの皆、…………マミさん、そして、ほむら)
「……俺は街の人全員を救えるほど強く無いし、ソコまで貪欲になれない。だからせめて自分の知る限りの人を救えるように……あの時、間に合わなかったと後悔しないように」
『空間を飛び越える力が欲しい。皆を護れる俺でありたい!!!』
そう宣言すると、胸に激痛が走り体から紅く黒い光が飛び出してきた。
「────ッ!! なんだよ……っこれ!! スゲーいてぇ…」
『君の願いはエンロピーを凌駕した。解き放ってごらん』
クロトはキュウべぇの言葉を聞き、恐る恐る光に手を伸ばし、触れると全身が紅黒く光り衣服が形成された。
「おお、服が変わってる」
服は黒のコートに赤い雲の模様が書かれ、首には勾玉に変化したソウルジェムが掛けられていた。
「クロ君なんだか悪の親玉みたい」
「ほっとけ」
契約も終わり、四人は雑談をしていた。
「そういえば……黒崎君、巴さんの事を知ってたの?」
「あ? どうした、急に…」
「だって、二人が私達を助けてくれた時に『先輩』って…」
「学年言ってなかったよね?」
「まどか知らないのか?マミさん、学校で結構有名人だぞ……ある意味」
「?どういう事?」
「いや本人の前であれは…ちょっと」
「私も気になるわ。話してくれない?」
クロトはマミに言われ、渋々話し始める
「……俺も噂で聞いたんですが、三年に容姿端麗で学業優秀な先輩がいると結構下級生の間で注目の的だったんです」
「スゴいですね !!マミさん」
「ふふ♪照れる『でもっ』わ」
「でも、ある目撃情報があってかなりドン引きされたそうです」
「目撃情報?」
「まず1つ目が……昼休みに弁当箱を持ってトイレに入ってご飯食べていたと」
「………」「………マミさん」「あー…そのー」
マミは固まり、まどかは弱々しく名前を呼び、ほむらはどいしていいか分からない。
「2つ目のヤツはマミさんのクラスメートが言ってたらしいんですけど、ノートに『ティロ・フィナーレ』と書いてガッツポーズしていたとか」
「あれ?『ティロ・フィナーレ』ってマミさんの必殺技じゃ?」
「うわぁ…」
「いやっ!!あれは」
まどかは思い当たる事があり、ほむらはドン引きしてた。
「それで今マミさんは、下級生の間で、こう呼ばれている」
『ぼっちの巴先輩』
「……」ピキッ
マミは石化した。
叛逆編書こうかなぁ