魔法少女まどか☆マギカ~心を写す瞳~   作:エントランス

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エントランスです。
スイマセーン
小説を書いていたスマホが水ポチャでオダブツになったしまい、だいぶ遅くなってしまいました。

それと、

前回、決着と言いましたが、ありぁ嘘だ。


お菓子の魔女・守護者

~鳳の魔女結界~

 

───ズッ────ッドォォォォォオオオオオオォォォォ………

 

『ルジャァアアアアァァァアアァッッッ!!!?!?』

 

クロト達がグリーフシードを発見し、魔女の結界に迷い込んでから暫く経った頃。

 

街から少し離れた、海に浮かぶ離島。

その巨大工場の大きなパイプの一本に張られた魔女の結界で、

結界を揺るがすほどの大爆発が、一つ目 四翼、怪鳥の魔女を焼き殺ろしていた。

 

そして、魔女が消えたことで結界も消え、

その場には魔女の落とした一つのグリーフシードと、

空中から妖精のようにフワリと華麗に着地した紅眼の魔法少女───暁美ほむらだけが残っていた。

 

──……七個目……けど、まだ足りない…。

 

彼女は手持ちのグリーフシードと、落ちてきたグリーフシードの数を合わせて、

まだまだ先は長いと若干、疲れの色が見受られる顔になりながらも、頬を叩いて気合いを入れ直す。

 

そんな彼女に、

 

『ほむら様ァァッ!!』

 

「? …アオダ?」

 

美しい紫色の鱗を持つ太長い大蛇──アオダが焦ったような声で、ほむらに近寄ってきた。

彼女もこんなに焦ったアオダが珍しいのか、怪訝に思い何事なのか聞く。

 

「どうしたの? そんなに慌てt──」

 

『まどかお嬢様の飼い犬。戌神(定春)から得られた情報なのですが、病院にあの“お菓子の魔女”が現れ、クロト坊っちゃんと青髪(さやか)さんが取り込まれました!!』

 

「───ッ!! そんな?!!」

──お菓子の魔女が産まれるのは、三日後(・ ・ ・)のハズ……っ! まさか、アイツ…いままで私が居て邪魔だったから、わざとクロト達をそうさせる状況に追い込む為に、私達が居ない時間を狙ってグリーフシードをクロト達の近くに…!?

 

『グリーフシードは卵の状態では産まれて来ない……という事は───間違いありません。奴の仕業(・ ・ ・ ・)です』

 

「くっ…」

 

胸を締め付けられる感覚を味わいながらも、

 

『何故もっと彼らの傍に居なかった!』

『狙われているのは分かっていたのにっ!』

 

───と、自分の失態にほむらは歯をギリッと噛み締める。

 

『今は、まどかお嬢様が金髪ドリル(マミ)を呼びに行っておられるのですが……彼女では…』

 

「分かってる。行くわよっ!」

 

『───お願い致します…』

 

頭を下げるアオダに、ほむらは頷き彼を盾に収納し、張り巡らされている工場のパイプを魔力強化した脚力で駆け上がり、街を一望できる所まで来ると瞳を写輪眼へと変化させ、視覚化した特定の気配を追って病院の位置を確認。

確認後、彼女は鉄骨を蹴り、落下する速度もプラスさせて速度をどんどん上げ街を目指す。

 

真っ直ぐ、クロト達が居るであろう病院へ……。

 

 

──お願い……無事でいて…。

 

 

そして十数分後……。

 

 

─────────

 

──────

 

───

 

 

「はぁ、はぁ…───着いた…」

 

全力疾走で来た彼女の呼吸は荒く、肩で息を整え心臓を落ち着ける。

ほむらが着いた時、現場の駐輪場では定春が魔女の結界の入り口でお座りをして、主人の帰りを待っていた。

───という事は既にマミは到着して、結界の中に入り込んでいるということだ。

 

『いくら相手が悪いといっても、彼女も魔法少女。直ぐには殺られないと思いますが…』

 

「そうね。彼女、心は繊細なクセして魔法少女としては、とても強い…。

…でもアイツ(・ ・ ・)は目的の為に、その巴マミまで犠牲にするつもりなのよ……急がないと…」

 

盾から出て建物の影から話し掛けるアオダに、ほむらは定春の顎をカリカリと掻きながらそう答える。

しかし、もう話してる時間も無いと、彼女は最後に頭を一撫でして結界に足を運んで行く。

 

「────行って来る…!」

 

『ハイ、いってらっしゃいませ』「わん」

 

彼女は二匹の巨大生物に見守られながら、左手に嵌められている指輪型のソウルジェムを掲げ、結界を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ズグッ────

 

 

 

「─────ッ!!? うぐっ…ぁ…」トサッ

 

『ほむら様!?』

 

────通り抜けようとした瞬間、突如として彼女の両眼に強烈な疼きが産まれ、堪らず両眼を押さえて膝を着いて座り込んでしまった。

 

心配したアオダと定春が、ほむらの傍まで駆け寄って来る。

 

「く~ん…」

 

『どうなされたのですか!? 眼…? 写輪眼がなにか!?』

 

 

 ズキッズギッ…

 

「~~~ッ な、に……これ…」

──誰かの見てるモノが……声が、入ってくる…!?

 

疼きが酷くなる度に、ほむらの視界はテレビのノイズの様な酷い砂嵐で覆われていく…。

そして次第にノイズも収まってくると、今度はとある映像と声が鮮明になって彼女の視界を通し、見え、聞こえてきた…。

 

 

──……これは…

 

 

鮮明になってきた光景は、視界の主から観えている情報から整理して、おそらくは魔女の結界内。

なんで突然こんなことが起こったのか、訳も分からず困惑していたほむらだが、其処へ何者かの叫び声が聴こえて来る。

 

『あぶねぇ!!』

 

──……クロト? …どういうこと、なんで彼が……っ!? あの魔女は!

 

その声を聴き、今観えている視界の主は、さっきの…いつもの聞き慣れた声でクロトだと分かった…が、

それよりも衝撃的なモノが、彼の視界に入ってきたのを彼女は観た────…魔女だ。

 

 

自分が見間違えるハズが無い。

 

───黒く、アオダの様に太く、長い胴体。

───触覚の生えたコミカルな顔。

 

己が、とても…とてもよく知っている(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)魔女だ…。

そして、その魔女を見た瞬間、ほむらの心にゾッとする恐怖が生まれた。

 

 

──!! そんなっ!? なんてことを…

 

 

…勘違いしている人もいるかもしれないが、彼女は別に魔女自身に恐怖した訳じゃない。

 

 

────魔女の左眼に、()()()()()()()()()()()が刺さっていたからだ。

 

 

これが意味することは、彼が人間の身で在りながら魔女に戦いを挑もうとしているという事。

おまけに左眼を潰されて、傷付けられた魔女はクロトに対して怒りを抱き、必ず彼に敵意を向ける。

あまりに危険過ぎるその行為は、彼女からしてみれば とても許容できることでは無い。そんな事をさせる為に、自分は彼のクナイ(・ ・ ・ ・ ・)を渡したわけではないというのに…。

 

しかし、今の彼女に出来るのは その光景を眺める事だけ…。

彼が何故、危険を犯してまでそんな事をしたのかも理解している、マミを助ける為だ。彼がああして無ければ、きっと今頃、マミは魔女のエサとして殺されていただろう。

だが、そうした事で魔女の標的は完全にクロトに移ってしまい、彼は魔女の猛攻に晒されてしまった。

 

間一髪のハラハラするような防戦。傍観者なだけのほむらの胸はギュッと締め付ける感覚に陥り、心臓は早鐘を打つようにドッドッドッと心臓を破るような乱れたテンポを刻む。

────…が、遂に彼は使い魔に脚を取られ、魔女はクロト目掛けて突進し、

 

 

──そんな…まさか……待って! や、やめて───ヤメテェェェ!!!

 

 

ほむらの心の叫びは、魔女には届かず無慈悲にも───

 

 

 

────ブツッ…───

 

 

 

 

…彼女の視覚は、そこで…途絶えた……。

 

 

───────────

 

────────

 

─────

 

 

 

 

「────クロトォォッ!!

ハァハァハァ……っあ…ここ、は…」

 

『ほむら様ァ!』

 

瞳の異常事態から回復したほむらは涙を流し、心配するアオダ達を他所にキョロキョロと周囲を見回す。

 

 

『だっ大丈夫ですか? 取り敢えず眼の治療を───』

 

「────行かなきゃ…」

 

『え?』

 

しかし、彼女はアオダの声が聴こえていないかの様にユラリと立ち上がるとポツリと呟き、左手を掲げて魔女の結界への入り口を強引に抉じ開け、開いた穴へ ほむらは跳び込んだ。

 

呆けた声をするアオダを置いて単身、魔女の結界に侵入した彼女は直ぐ様、魔法衣へと変身。

結界の中を、使い魔も無視して最短のルート、今出せる最速のスピードで駆けてゆく…。

 

「ハッハッ…クロト、クロトッ! ───…がい…お願い、死なないでっ!!」

 

頬に流れる雫も拭かず、震える声で彼に無事でいて欲しいと、胸元に掛けられた三日月のペンダントを握り締め、神にもすがる想いで懇願するほむら。

 

彼女自分自身も本能的に察していた。さっきの光景は、きっとリアルタイムのモノ

彼の危機が、彼の眼を通じて自分の眼に伝わってきたのだと…。

 

なら、自分はその危機に応えて救わなくてはならない。

 

 

『玄人を……お願いね』

『クロ君を……よろしくね』

 

とある二人の親娘との間で交わした約束

 

 

 

『彼を護る』───彼女を縛る鉄の誓い…。

 

 

 

 

「今…今行くから…っ!」

 

彼女は、その場に居ないクロトに呼び掛けるように呟き、走り、左腕の盾へ手を伸ばす。

 

 

 

────カシャン────

 

 

 

そのギミック音を最後に彼女の姿はその場から消え失せ、そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~結界最深部~

 

 

「ハァハァハァ…っ」

 

何度かの能力行使で、刻の砂(・ ・ ・)が少々減ってしまっているけど、なんとかお菓子の魔女の部屋前まで辿り着いた。でも、『もうすぐ時間切れ(・ ・ ・ ・)』左腕にある盾を見て、そう思った私は前方にある、板チョコの扉を爆弾で吹き飛ばし、中へ侵入する。

……あれから少し時間が経ってしまった。

私が居ない間に何があったのか…それを確認する為に、私は急いで周囲を見回す。

 

 

まず眼に入ってきたのは巴マミ。

彼女は扉の出入り口から程近い場所で寝かされていて、外傷は無いけど気を喪っている…たぶん、余程怖い目にあったのね。彼が助け無かったら死んでいたのだから。

だから…まぁ彼女の顔に、私が吹き飛ばしたチョコの扉がめり込んでいても、何も問題は無い。

 

次に見えたのは、まどかと美樹さやか。

二人の内、まどかは可愛らしく、必死に腕を振って全力で走ろうと健気に頑張っている……まどか…。

 

だけど、美樹さやか。

貴女、まどかと一緒に走っていたみたいだけど、足元の大きなポッキーに脚を引っ掛けてスッ転んでいる真っ最中で……貴女は何をしているの? 何がしたかったの? ホント、何時まで経っても使えないわね。

 

 

……それにしても…、

 

 

─────クロトは……何処に…? それに魔女も…

 

 

砂時計のタイムリミットが差し迫っているのを感じ、焦っていた私は、救いに来た肝心の彼の姿が見えない事にもしかして…と、一番最悪な未来を想像した。

 

…けどそれは無いと思う。

だって、もしも彼がそうなったとしたら(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、まどか達が真っ先に狙われて……まどか?

 

「ハァハァ…そう、いえば…」

 

…二人は巴マミをあんな所に置いて、走って何処に向かおうとしているの…?

走ってる───という事は、二人とも何か目的があるとしか思えない。

 

疑問に思った私は、まどかの走って行く…その先───部屋の奥へと眼を向ける。

 

 

そこには…、

 

 

「………っっ!!」

 

 

魔女の後ろ姿…そして、その頭の先に彼はいた…。

 

元々白かった筈の紅く染まった学生服

妙な方向に折れ曲がった痛々しい脚

眼を閉じ、右眼と口から流れている血

 

その彼が───

 

 

 

────大きく開いた魔女の口で…噛み砕かれそうに────

 

 

「クロトォォォーーッ!!!」

 

そんな、生きてるか死んでるか分からない彼の姿が私の眼に入ってきた瞬間、私の脚は既に駆けていた。

まどかを追い越し、丁度いい角度(・ ・ ・ ・ ・ ・)で転びかけていた、役に立たない美樹さやかを有効利用すべく、彼女の頭を思いっきり踏み締め、翔び……彼の元へ…。

 

心臓の音が速すぎて張り裂けそう───関係ない…!

まだ整っていない呼吸で息が出来ない───そんなのどうでもいいッッ!!!

盾から聴こえる音が、もう……あと5m───くっ!

 

 

間に合わない!

 

 

宙を魔力で足場を造りながら跳躍していて、そう判断した私は、

盾の中から血文字の描かれた二本のクナイを引っ張り出し、一本をクロトに向かって投擲した後、もう一本のクナイに魔力を注ぎ込みながら、瞳を万華鏡写輪眼へと変化。

……本当はアイツのいる前で、使いたくはなかった“奥の手”を使う事を決意する。

 

───…本当に瀬戸際の賭けだった。

 

 

 

そして…、

 

 

 

 

───カシャン───

 

 

 

 バギィィィィッ!!

 

 

 

「はっ、はっ、はっ…間に、っ……合った…」

 

 

クナイは見事、クロトの真上の壁に突き刺さり、

あの術(・・・)の発動が間に合った私の腕の中には、彼が……私は、賭けに────勝った。

彼の温かさを感じる。…それに、

 

 トクン…トクン…

 

 

───生きてる…。

私の胸に、彼の鼓動が伝わってくる。

その振動が伝わるだけで、自然と私の頬に雫が流れ落ちた…。

 

 

「遅くなって、ごめん…ごめんね」

 

 

それがとても嬉しいと思うと同時に、本当に申し訳なく思う…。

もっと私が傍に付いていれば……こんな事には…でも、

 

「もう、大丈夫だから…」

 

私がいる。もう!貴方を傷付けられる存在はいない。

だって私達を覆う、この術は───

 

 

「カフッ」

 

「クロト!!?」

 

彼の咳き込んだ血飛沫が、私の服と頬に飛び散る。おまけに顔色は真っ青…ハッ、

───そうだった。 彼は傍目から見ても分かる程の重傷だった。

私は急いで手当てをするために、酷く傷付いているクロトの身体に左手を当て、魔法で診断をしてみる……!?

 

「いけない! これは──」

 

多量出血、鎖骨下静脈切断、右足頸骨骨折、指骨三本骨折、肋骨五本粉骨 、肋骨片による左肺裂傷、三つの内蔵破裂、他損傷箇所多数etc…。

 

頭にインストールされていく、眼を覆いたくなるような症状の数々。

…正直、生きているのが不思議なくらいの重傷だった。

元々、治療魔法は簡単なモノ程度で、専門外の私じゃこんなの手に負えない。

 

「───せめて、血を…」

 

彼の心臓の位置に手を置いて、私は自分の貧血を毎回治す為に唯一得意になってしまった治療魔法を、彼に施す。

 

…その前に、

 

「うるさい」

 

『!!? ……Ga…gugu…gu…ッ!』

 

さっきから私達に噛み付こうと躍起になって、何度も襲って来ていた魔女の太い首を、骸から新たに生やした四本腕の一つが掴み、このまま千切ってしまいそうな程の力で、万力の如く握り締める。

 

「私、今機嫌が悪いの───邪魔よッ!!」

 

無造作に振った私の腕は骸の腕と連動し、凄いスピードで投げられた魔女は、カエルを壁にぶつけた様な鳴き声を上げて、グッタリとその巨体を横たえた。

これで邪魔者は消えた。今の内に…、

 

「………ん、これで暫く持つハズ。後は巴マミに診せれば」

 

今出来るのは、増血と止血、肺に空いた穴を塞ぐ事まで。顔色は幾分か良くなったけど、内蔵や多数にある骨折は治療魔法適性の高い彼女の力が必要だ。

私は立ち上がってソッとクロトを骸の掌に乗せ、まどか達を回収してから巴マミの元へ向かう事にする。

 

「待ってて。もうすぐだから」

 

彼の頬に手を添え、そう告げると私は出来るだけ彼を揺らさないよう音も無く、その場を離れた。

 

魔女はまだ死んでいない…けど、今は人目に触れないこの結界が好都合。だけど治療が終らない間に、また襲って来くるなら……今度は容赦しない。

 

 

私達を護る骸の像…私の切り札────“須佐能乎(ス サ ノ オ)”────

この術が在る限り、もう何人たりともクロトを傷付けさせたりなんかさせない!!

 

 

────────

 

 




次回 「お菓子の魔女・焔猛る神々」

今度こそ本当に決着です。

追記

クロトの戦闘描写は、前話に書き足しておきました。

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